取組紹介

ダイベストメント:Earth Companyの取り組み事例

2019.04.10

(出所:国際環境NGO 350.org Japan)

 

企業の本気度があらわれるオペレーション、オフィスのエコ化ですが、取引先などオフィスの外と動くことで成果をあげる取り組みもあります。「ダイベストメント」はその一つ。日本ではまだまだ馴染みが薄いですが、2011年にアメリカの学生たちがムーブメントを起こし、2017年には世界銀行もダイベストメントを宣言しています(世界のダイベストメント宣言集はこちら)。

 

ダイベストメントは、省エネや節水などと違い、環境面の成果が直接の結果として感じられるものではないですが、お金の力を使って環境への取り組みを促せる上、組織としての首尾一貫性を社内外に発信することができます。

「どこを見られても胸を張れる団体でありたい」と日本でもいち早くダイベストメントを実施したEarth Company。そのメリットとは?

 

1.エコ施策検討の3つの視点

まず、導入するエコ施策を決める上で、気になるのが「コストパフォーマンス」ですが、整理すると次のようなポイントがあります。

  1. 環境パフォーマンス

    1. 施策が関係する「環境問題の深刻さ」
    2. 企業オペレーションが生み出す「環境負荷の大きさ」
    3. 施策を実施することで見込める「環境への好影響の大きさ」
  2. 経営パフォーマンス

    1. 対外イメージアップなどの「ブランディング・PR効果」
    2. 社員のエンゲージメントアップ、優秀な人材の採用などの「HR効果」
  3. コスト

    1. 施策実施にかかるコスト(お金、時間、手間など)

経営パフォーマンスから考えだし、メディアのCSRランキングや投資家の評価を重視して、取り組みを検討する企業は多くあります。

一方、環境問題への取り組みを事業の中核に据え、環境問題の解決を真摯に考えることを検討の起点に置く企業もあります(「環境パフォーマンス」を最初に考える)。そうした企業は環境への取り組みが本気で、ユニークなため、結果的に独自のブランディングや人材獲得につながる例も少なくありません。

アジア・太平洋の社会起業家支援を本業とする一般社団法人Earth Companyは、環境パフォーマンス、経営パフォーマンス、コストのバランスを考えて多くのエコ施策を実施しています。その一つとして、ダイベストメント」をご紹介します。

 

 

2.具体的なエコ施策

ダイベストメントとは投資(インベストメント)の対義語で、すでに投資・預託している金融資産を引き揚げることを指し、保有株式の売却や融資の引き揚げ・停止等により実行されます。ダイベストメントの対象や方法は多様ですが、近年活発なのが地球温暖化を悪化させる化石燃料ビジネスや、地域にとって安全でない原子力ビジネスから資金を撤退する動きです。

 

  1. 取り組み内容

    銀行などの金融機関に地球温暖化などへの対策を促すために、
    ①化石燃料ビジネスへの投融資の多い銀行の口座を解約し、
    ②「地球にやさしい銀行」に乗り換え、
    ③乗り換えたことを公に宣言・報告する
    ことで、銀行の投融資方針を変えることを目指します。
    銀行預金は、間接的に化石燃料や原子力に関わる事業への融資に使われており、銀行口座の乗り換えはその原資を断つ取り組みです。

    2017年9月にEarth Companyは団体の寄付金口座を、みずほ銀行からジャパンネット銀行に変更し、寄付者などに報告しています。

     

  2. 効果

    上述の通り、省エネや節水などと違い、環境面の成果がすぐには出てきませんが、ダイベストメントされた総額は世界で約960兆円($8.68 Trillion, 2019年3月29日時点、350.org Fossil Fuel Divestmentより)にのぼり、火力発電所の新設や油田開発などに資金が集まりにくくなっています。少しずつですが日本でもその動きが広がっています。

    経営面の効果としては、持続可能な未来に向けて環境に配慮した団体としてのブランディングがより明確になり、各種メディアで取り上げられることによるPR効果があります。さらに、理念と行動が一致している団体として、寄付者・支援者、スタッフとの信頼関係が一層強くなるという定性的なメリットもありました。

     

  3. 取り組み実施のポイント

    環境配慮の少ない銀行や「地球にやさしい銀行」についての情報(Cool Bank Ranking)は多くあり、口座乗り換え自体は難しくありません。ダイベストメントをした団体の事例もEarth Companyの他、環境NGOのFoE Japanなどが公表されています(Earth Companyの事例FoE Japanの事例)。

    銀行移管の実務よりも、

    (1)組織が大切にし、行動と一致させたい理念は何かを組織内で共有する

    (2)組織外のステークホルダーにダイベストメントの意図・想いをしっかりと伝える

    など、の関係者との対話の方がより重要なポイントとなります。

3.最後に

 

電気の省エネに努めたり、プラスチック削減のためにマイボトルを持参したりと、自身の日々の行動の積み重ねはもちろん大切です。それと同時に、お金や技術を有効に使い、環境負荷を生み出すシステムに働きかけることにも取り組みたいところです。

ダイベストメントは環境への効果がすぐにはあらわれにくく、ステークホルダーとの関係にもかかわることなので、丁寧な対話が必要ですが、実施することで本気さが社員に伝わり、お客様・取引先にも独自のブランディングが認識されるようになるはずです。

まずは、「自分がお金を預けている銀行が、どのような投融資を行っているかに関心を持つ」ことから始めてみてはいかがでしょうか。

 

4.参考

個人でも始められるダイベストメントの進め方については、国際環境NGO350.org JapanのLet’s Divest!キャンペーンサイトが参考になります。

世界・日本のダイベストメントの動きについてより包括的に知りたい方は、自然エネルギー財団のレポート『石炭火力発電から撤退する世界の動きと日本』(2018年7月)がおすすめです。