「『環境ボランティア』っていう言葉を聞くけど、具体的にどういった活動なのだろう?」
そのような疑問を持たれたことはありませんか?
また、勉学に集中すべき在学中に、あえて環境のために活動する時間を取る理由に疑問を感じている方もいるのではないかと思います。
そこで今回は、
についてまとめましたので、今後のエコスクールの題材の参考にしていただければ幸いです。
環境ボランティアとは簡潔に言うと『環境のために行なうボランティア』を指します。
例えば植物などを植えたり、川や海などのゴミを除去したりして自然環境を再生・再活性化させる活動や、ゴミ拾いなど街をクリーン化させることで衛生的な環境と整える活動、地球温暖化のための啓蒙活動へのイベント運営なども、全て環境ボランティアに分類されます。
ボランティアは自発的に行っていきたい活動ではあるものの、社会経験の浅い生徒にとっては”未知の活動”であることが多いです。ご両親などの影響でボランティア活動に参加したことがあるという人も中にはいるかもしれませんが、そうでない生徒が圧倒的です。
だからこそ学校で環境について深く学び、ボランティアをする機会や関わる環境を作ることに、人々と協力して日本を豊かにするための方法を見出していくことが大切です。そうすれば、”大人になったときに時間・経済的な余裕ができたらしたいこと”の選択肢に、このような『ボランティア』が加えられやすくなります。
もし学校でそのようなそのようなことをやらなくても、テレビや動画広告などからボランティアについて知る機会はあるかもしれませんが、やったことがないことに手を出す勇気がある人はごくわずかです。学生生活を送っているときに、何か少しでもボランティア活動に携わり、このような活動と関わりを持ったことがあるという経験がありさえすれば、社会人になってからもボランティアに参加するための一歩が踏み出しやすくなるでしょう。
〈参考〉ボランティア活動 |厚生労働省
オイスカ浜松国際高等学校ではベルマークを収集し、『植林が必要な地域に苗木を送る』という東南アジアへの農産業支援を行っています。過去15年にわたって毎年60〜116万点以上ものポイントのベルマークを送り続けているこの学校ですが、2022年度には年間で100万点(苗木1万本)もの海外支援と、年間1000本のマングローブを水質浄化や生態系観察のために学校に面した浜名湖の湖岸に植林しました。
<ベルマーク活動>
- 回収対象:ベルマーク、リサイクルテトラパック、使用済みインクカートリッジ、グリーンスタンプ
- 回収方法:回収BOX設置、PR活動
- (校内、学生寮、地域の商店、小学校、キリンビバレッジ 自動販売機等に協力設置)
(引用元:オイスカ浜松国際高等学校 奉仕活動委員会報告)
森林の過剰伐採による地域に送るための苗木を”ベルマーク”で購入することができます。日本国内、また国外の東南アジアなどの植林が必要な地域へ苗木を送ることで、人によって破壊が進む自然の復活を手助けすることができます。
そもそも、日本の建築木材の多くは海外から取り寄せた輸入木材を中心に利用してきました。特に資源が豊富だった東南アジアなどからは大量に木材を輸入し、人口増加に伴い増加した住居の建設に充てていました。海外の豊かな自然環境には木材がいくらでもあったため安価で取引をし、大量に輸出を繰り返していましたが、気づけば肝心の木材は枯渇状態になってしまいました。
その状況を改善すべく立ち上がったのが『ベルマーク教育助成財団』です。東南アジアの緑化計画である「子供の森」事業を計画し、ベルマーク約100点で苗木1本購入して植えることができるシステムを作り上げました。
苗を購入するための資金集めや、現地に赴いて植林を行うのは手間も時間もかかってしまいますが、ベルマークの収集をするだけなら時間があまり取れない生徒にも可能なので、ぜひおすすめしたいボランティアです。
静岡県の清水桜が丘高等学校の生徒によるボランティアチームが結成されました。そのチームによるイベントが2022年の7月に清水駅前銀座商店街で行われ、古着回収とフードドライブが実施されました。
このイベントで集まった食材は、施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動を行う『フードバンクふじのくに』へ、古着はリサイクル業者である『安藤紙業』を通して東南アジアの国々に送られました。
また、スタンプラリーや将棋部による対局なども立案し、大人にはない生徒の目線からイベントを盛り上げるための知恵を出し合いました。
古着や家庭で食べないと判断された食料はリサイクルされずに捨てられがちですが、このような団体へ寄付することで、ごみにならずに本当に必要としている人の元へ届けることができます。
このようなボランティア活動は学校全体、もしくは1学年全体で行わなくても、有志などの一部の人が活動することで、ボランティアに参加しなかった生徒にもこのような取り組みがあることを知らせることができます。さらに、自分たちでイベントを成り立たせる企画力も身に付くので、非常に有意義な活動と言えるでしょう。
〈参考〉
日本赤十字社神奈川支部により行われている『青少年赤十字』の学校教育の実施が100周年を迎えました。それを記念するイベントとして、『100年後も綺麗な海で』を掲げた海岸清掃活動が2022年9月に行われました。
横浜高校、海洋科学高校、武山養護学校、横須賀南高校の生徒と赤十字ボランティア、共産企業などの総勢53人が、ガラス片やマイクロプラスチックなど、砂浜にあるゴミを回収しました。海岸に打ち上げられたごみ回収をすることで、環境問題に向き合うだけでなく、普段一緒に活動することのない学校とも交流しながら活動することができました。
6月に行われた同イベントの参加者からは「マイクロプラスチックがこんなに落ちてるんだ!とびっくりしました。」や「交流しながら楽しくゴミ拾いができたので、あっという間に時間が過ぎました。これからもボランティアに積極的に参加していきたいです。」とボランティアへのボジティブな意見が多く見られたようです。
海岸のごみに関わらず、川や街中にあるゴミ拾いも同様、初めてボランティアに参加する人にも取り組みやすい活動です。そのため、あまり準備に時間をかけられない先生方、短期間で活動の成果を出したい学校にももってこいの取り組みであるといえます。
〈参考〉
在学中に行うボランティアには、環境問題を解決するだけでなく、生徒や日本社会にとって大きく3つのメリットがあります。
1つ目はボランティア活動を行うことや携わることで、『自分以外の何かのために行った行動によって環境のためになることを行うことや、大変な思いをしながら何かをやり遂げる』という経験が、人や物に対して思いやりの心を持つ力や忍耐力の種になることです。
また、ボランティア活動を通して家族や友達、学校関係の人以外との交流ができることもメリットの一つでしょう。自分の気持ちや意見に固執することなく、「このような意見もあるのか」「相手も頑張っているのだから自分も頑張りたい」と、コミュニケーション能力と意欲を相互的に高め合うこともできます。
そして、環境ボランティアを行う最大のメリットは『世界が広がる』ということです。人間は全く関わりのないことを見聞きしても興味を持ちませんが、一度関わりを持った物事に関しては不思議と反応してしまう動物です。
例えば、環境についてのエコ教育やボランティア活動をしたことがないなら、テレビやラジオ、ネットで”環境問題”や”ボランティア”という言葉が出たとしても聞き流してしまうでしょう。しかし、環境問題などについて一生懸命に思考を繰り広げたことがある人は、必ずと言ってもいいほどそのワードが耳にしっかり届くはずです。
このように、ボランティアに参加することで日々の生活を見直すきっかけや、狭くなりがちな視野を広げて周囲のための奉仕の意識を育むことができます。社会人になってから一人でボランティアに参加するようなチャンスにはあまり巡り会えないので、自然環境を守る具体的な行動として在学中に行っておくことは非常に有意義ですし、日本全体で見てもボランティア人数の増加が見込めるようになります。
日本財団ジャーナルが令和元年に行った調査によると、日本人のボランティア経験者は世界に比べて圧倒的に少ないことがわかっています。その理由としては、『学業や仕事の忙しさで時間が取れないこと』の他に、『ボランティア活動に関する十分な知識を持っていない』ことも問題だという結果も出ました。
また、ギャラップ世界世論調査という各国における『ボランティアについての国際比較(2006〜2008年)』の調査でも、国際的に日本はボランティア人数の総数と寄付額が低いことがわかっています。
『日本人はボランティアに対する知識が少ない』という問題が最も顕著ではありますが、趣味より仕事にウェイトが掛かりがちな日本社会において自分が汗水垂らして働いたお金は自分のために投資したい、という意識がどうしても働いてしまうこと、もしくは今後のために貯金をしっかり貯めておかなければと将来への不安を感じてしまうことなど、生きていくのに精一杯であることも問題かもしれません。
かといって、余裕がないから”他者への寄付”や”差し伸べる手”は無くても良いかと言われれば、そうではありません。
ボランティアや寄付をすることでどのように社会貢献できるのか、寄付ができるくらい余裕のある生活を送るためにはどうすればよいのかを考えていくことができれば、ゆくゆくは誰かに手を差し伸べることができるようになるのではないでしょうか。可能であれば、それを教えるのは各家庭や地域ではなく、多くの生徒に平等に教育を受けさせられる学校教育の現場が理想です。
〈参考〉日本財団ジャーナル『ボランティア活動を後押しし、確実に支援の手が届く社会に』
(ライター:堀内 香菜)