「企業は利益だけではなく、環境や社会への貢献も評価される時代」こんなことがよく言われていますし、そういったことができている企業には私も魅力を感じます。環境や社会への取り組みに対する方針(ステートメント)を策定し、社内外に対して発信することは、社員の意識を高め、同時に企業価値も高めることにつながります。
とはいえ、いざ始めるとなると、「 実際にどんな取り組みをすれば評価されるのか、どのようなステートメントを策定したらよいのか、導入の仕方がわからない」というケースも多いのではないでしょうか。
そこでこの記事ではステートメント策定導入について、
・ ステートメント策定とは?
・日本の有名企業にみるステートメント策定の導入事例
・導入につなげるアクション
の順番に日本の有名企業の事例をもとに重要なポイントを絞ってご紹介いたします。さっと読めますので、まずはご一読を!
「ステートメント」とは社内での環境への取り組みを決めるときに指針となるものです。「この企業は何を目指しているのか」「環境や社会課題にどう取り組むのか」をステークホルダーに示す、重要な役割をはたします。
なぜなら、「ステートメント」によって会社の行動規範を示すことで、ステークホルダーに対して「どういう企業なのか」、「何を大切にしている」のかを説明ことができるからです。そして、ステートメント策定により、企業のロイヤリティが向上したり、組織の理念に共感した新しい顧客が増えることが期待できます。
では実際の導入事例をみていきましょう。ここでは、日本を代表する
1. キッコーマン株式会社
2. 凸版印刷株式会社
の2社の導入事例をご紹介します。
「キッコーマングループは、自然のいとなみを尊重し、環境と調和のとれた企業活動を通して、ゆとりある社会の実現に貢献します。」
キッコーマンでは、上記の環境憲章を策定しています。環境憲章はこの一文ですが、「自然のいとなみとは何か」「環境と調和のとれた企業活動とは何か」「ゆとりある社会とは何か」をそれぞれ説明し、企業としての考えを明確にし、さらに5つの行動指針を策定し、生産や物流の過程で排出されるCO2を削減するために、設備投資をおこなうほか、環境コミュニケーションの推進を行っています。
環境コミュニケーションとは、地域の行政機関や教育機関と協働で、培ってきたノウハウを地域社会の環境保全に役立てるはたらきのことです。具体的には、
・ インターンシップの受け入れ(大学生向け)
・「エコ学習」の開催
・生物多様性サテライトの設置
・クリーン作戦(地域の清掃活動)
などを行い、地域と協働で環境課題に取り組んでいます。自社の事業と絡めて、ステートメントを策定し、環境問題に取り組んでいることがうかがえます。
「凸版印刷株式会社は、事業活動を通じ持続可能な社会づくりに貢献するため、SDGsの取り組みを強化し、経営への統合を目指す」
凸版印刷では、上記のステートメントを、「社会的価値創造企業」の実現を推進するエンジンと位置付け、ステートメントの策定・公表により、凸版印刷のSDGsの基本的な考え方を全てのステークホルダーに共有しています。
さらにトッパングループでは、働くひとり一人がよりどころとすべき価値観を示し、目指すべき目標を共有するためにある「TOPPAN VISION 21」を出発点とし、そこに長期的視点でグローバルな社会的課題を示したSDGsの考え方を取り入れてマテリアリティ(重要課題)を選定しています。
マテリアリティには、良き企業市民を目指すための「全社活動マテリアリティ」と、トッパンの事業活動を通じてSDGsの課題解決に貢献する「事業活動マテリアリティ」があります。
「全社活動マテリアリティ」では、「環境配慮・持続可能な生産」「従業員の健康・働きがい」を選定。「環境配慮・持続可能な生産」では、「2030年度中長期温室効果ガス削減目標」として、温室効果ガスの排出量削減目標を設定しています。具体的には、
1. 自社での燃料の使用や、工場プロセスによる直接排出
2. 自社が購入した電気・熱の使用に伴う間接排出
3. その他の間接排出
という3つの活動にフォーカスし、 1と2を対象とした温室効果ガス削減目標を「2017年比30%削減」、3を対象とした温室効果ガス削減目標を「2017年比20%削減」としました。
「従業員の健康・働きがい」では、2015年に「健康経営宣言」を定め、従業員の健康づくり、ダイバーシティマネジメントの実現についても2030年度目標を設定し、働きがいを感じられる職場環境づくりに取り組んでいます。
また、「事業活動マテリアリティ」では、「サステナブルな地球環境」「安心安全で豊かなまちづくり」「心と身体の豊かさと人のエンパワーメント」を選定。環境に関連するところでは、「サステナブルな地球環境」の実現に貢献する取り組みとして、以下の5つの新たな事業アイデアの実現に注力すると宣言しています。
1. パッケージリサイクルシステムの普及促進
2. CO2を削減する「光合成する家」
3. 食品ロスを削減する、スマート流通サプライチェーンの開発
4. 包装資材に関する環境技術レポートの発行
5. サステナブルな販売の仕組みづくり、「シャンプー自販機」
凸版印刷のステートメントは、企業の理念とSDGsへの取り組みに一貫性があり、相乗効果を産み出しています。
ここまでみてきたように、ステートメントを策定することで、ステークホルダーの共感をえたり、企業の社会的価値をあげることにつながります。さらに、実際の導入する際には、先ほど紹介した2つの企業の導入事例からもわかるように2つのポイントがありました。
・ 自社の事業を環境課題への取り組みに活かす
・企業の理念とSDGsへの取り組みに一貫性を持たせる
以上の2点を意識して、ステートメント策定に取り組んでみてはいかがでしょうか。
(ライター:はたのゆうた)
<参考サイト>
「環境への取組み」(キッコーマン株式会社)
「TOPPAN SDGs STATEMENT」(凸版印刷株式会社)
「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」(凸版印刷株式会社)