コラム省エネ

オフィス適温化で作業効率アップ!導入事例とメリ ットを紹介

2020.03.02

オフィスの適温化

環境省の推奨室温は、「夏は28℃、冬は20℃」です。私もそう思っていました。しかし、実際にオフィスをこの室温にすると

・夏は暑くて仕事に集中できない
・冬は足元が寒い
・そもそも何を基準に28℃、20℃なのか

という疑問をお持ちではありませんか?そこでこの記事ではそんなオフィス環境の空調について、実用的な導入事例を紹介して解決します。具体的には

・本当のオフィスの適性温度とは?
・ オフィス適温化のメリット
・ オフィス適温化の課題
・オフィス適温化の導入

の順番にご紹介していきます。3分くらいで読めますし、オフィス環境が劇的に改善される可能性が高いので、まずはご一読を!

本当のオフィスの適性温度とは?

オフィスの適温は空間にいるそれぞれが、快適に感じるということが目安になります。なぜなら、人によって体感温度が違うからです。たとえば

・男女の違いによる代謝機能の差
・痩せている人は冷えやすいなどの、体格による差

などがあります。もともと、この28℃というのは「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令」及び労働安全衛生法の「事務所衛生基準規則」で定められた室温設定の範囲(17℃以上28℃以下)に基づいて、法律で定められている室内温度の上限であって、必ずしも28℃に設定することが好ましいというわけではありません。

そしてこの28℃の元になっているのは、「1966年の厚生科学研究「ビルディングの環境衛生基準に関する研究」(小林陽太郎)だ。この研究の中で根拠とされ引用された研究はさらに古く、戦前から60年前後にかけてのもの」(オフィスの温度 「28度設定」の根拠は50年前の研究 AERA dot)だそうです。

また、この28℃はあくまで「室温」であって、エアコンの設定温度でないということにも注意が必要です。エアコンの温度を28℃にしても、空調があたる位置や陽があたる窓際かどうかで室温は異なるでしょう。

さらに、オフィスの適温には温度だけでなく、湿度も関係してきます。なぜなら湿度は体感温度に関係するからです。さらに湿度は体調にも影響を与えます。

早稲田大学の研究によると、湿度が35%以下になると乾燥よる不快感を感じるそうです。また、まばたきの回数が増えて作業効率の低下がみられたという実験結果が出ています。逆に湿度が70%を超えると、汗などが蒸発せず、疲れを感じやすくなるため、注意が必要です。そのため、目安として

・夏は湿度40~55%
・冬は湿度45~60%

に保つのがよいようです。

オフィス適温化と作業効率

オフィスの適温化

アメリカの研究結果で、室温を含め、オフィス環境を適正に保つことで、生産性が0.5~5%向上するとされています。(引用元:William J. Fisk, Arthur H. Rosenfeld(1997), Estimates of Improved Productivity and Health from Better Indoor Environments)

また、日本でも建築環境学を専門とする早稲田大学理工学術院の田辺新一教授が2004年にコールセンターでの研究を行い、「室温が1℃あがると、生産性が2%低下」することを報告。「室温が25℃から28℃になると生産性は6%下がり、その分を残業でカバーするとなると、その分電力消費も人件費もかさむ」と指摘しています(オフィスの温度 「28度設定」の根拠は50年前の研究 AERA dot)。

言い返すと、オフィスの適性温度を保てば、作業効率が向上し、残業時間の短縮による節電効果が期待できるといえるのではないでしょうか。

オフィス適温化の課題

ではどのように適温化をしていけばよいのでしょうか。それには

・個人の体感温度に差がある
・室温は外的環境にも影響を受ける

の2つの課題があると思います。

1つめの「個人の体感温度に差がある」ですが、室温を一定に保っていても、それぞれがちょうどよいと感じる温度は人それぞれ異なってきます。よく言われるのが、「夏に男性にとっては快適な室温は、女性には寒すぎる」という問題ではないでしょうか。

なので、暑い人はミニ扇風機をデスクに置く、寒い人はカーディガンやストールなどを用意することで微調整を行うとよいでしょう。また、エアコンの設定温度と室温が同じではないことを理解し、温度を管理する係を決めて、こまめに室温をチェックするというのも考えられます。

2つめの「室温は外的環境にも影響を受ける」ですが、室温はエアコンだけでなく、蛍光灯の熱や外気、人口密度などの影響を受けます。ですので、オフィスに温度計を設置し、エアコンの設定温度ではなく「室温」を定期的に確認できるようにしてみるのはいかがでしょうか。

エコにオフィスの適温化を目指すには?

オフィス適温化

「あれ?ということは、エアコンの温度を28℃以下に設定してもいいの?でもそうしたら電気代がかかってエコじゃないんじゃない?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、前述の早稲田大学田辺教授の研究にあるように、室温が高いことで作業効率が下がり、残業が増えればその方がエコでない可能性もあります。また、同じAERAの記事で、田辺教授は「日本の照明は750ルクスが標準だが、世界的に見れば500ルクスほどで設計・運用している国が多い。照明を絞れば、その消費電力も減りますが、発熱も減る。空調で冷やす量も減り、ぐっと省エネになるんです」とも指摘しています。

作業効率が下がる空調ではなく、照明を見直すことで、総合的にエコになるという考え方もあるのではないでしょうか。

また他にも

・「夏は朝夕に冷房を弱くして、日中は強く。冬は朝夕に暖房を強くして、日中に弱く」など外気に合わせてエアコンを調節
・加湿器や除湿器を設置
・サーキュレーターを設置
・観葉植物をおく

なども考えられます。最後の「観葉植物」については、「なぜ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、観葉植物には癒し効果だけではなく観葉植物は葉から水を蒸散することで加湿効果があり、NASAの研究でも空気清浄効果があることが報告されています。

最後に

調べてみると、オフィスの適温化は「エアコンの設定温度を28℃」にすることではなく、「室温」の管理でした。しかし、室温もあまり高すぎると作業効率が下がることから、単に室温管理だけでエコを目指すのではなく、残業削減や照明調節などもふまえて総合的にエコな在り方を考えていくことが求められているとわかります。

環境にも優しく、従業員の作業効率も上がるオフィスの適温については、温度設定以外のことも考えながら検討していく必要がありそうです。

(ライター:はたのけいた)

<参考記事>

・「オフィスの温度 「28度設定」の根拠は50年前の研究」(AERA dot.)

・「どうして28℃?」(COOL CHOICE、環境省)

・「観葉植物が職場にもたらす効果とは?」(tree)

・「オフィスの適正温度を知って快適な環境を作ろう」(Fellows 、フェローズジャパン株式会社)

・「オフィスの空調問題を産業医が解決。冷房は寒い人、暑がりな人、どちらに合わせるべきか?」(Carely)

・「室温28度のオフィスで仕事の生産性は15%落ちる」(ダイヤモンド・オンライン )

・「生産性を上げたければ「温度」と「湿度」に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた。」 (STUDY  HUCKER)


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