みなさんは「環境経営度調査」をご存知でしょうか?
「環境経営度調査」は、日本経済新聞が1997年から毎年実施しており、2019年で22回目となるランキング調査で、温暖化ガスや廃棄物の低減などの環境対策と経営効率の向上をいかに両立しているか評価する調査で、環境対策と経営効率両方の向上に取り組む企業が評価されています。
この記事では、実際の企業の取り組み事例や実績を踏まえながら、明日からCO2削減に取り組める手段を紹介していきます。
CO2削減に取り組むべき理由は、ズバリ、地球温暖化対策に他なりません。2016年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で結ばれたパリ協定では、地球温暖化を目指し、温室効果ガスの排出目標が159ヵ国・地域で締結されました。
このパリ協定は、トランプ大統領が離脱を表明するなど、議論が巻き起こっているものの、気候変動対策のために私たち人類が一丸となって、CO2削減に取り組まなければいけませんが、企業が積極的にCO2削減に取り組むと、環境によいだけでなく、他のメリットにもつながります。
そのメリットとは、
①コスト削減
②企業価値の向上
③持続可能な発展
といったことです。今の時代、企業を評価する際の判断基準に、環境問題への取り組み内容や活動実績も含まれているわけですね。
では具体的に、企業がCO2削減のためにどのような取り組みをしているのか、冒頭に紹介した「第22回環境経営度調査2019企業ランキング」を参考に、
・非製造業部門1位:丸井グループ
・運輸部門1位:佐川急便株式会社
・製造業部門1位:コニカミノルタ株式会社
3社について紹介していきます。
「2019環境経営度調査」非製造部門ランキング1位の丸井グループでは、ガバナンスへの取組とビジネスを一体化した「共創サステナビリティ経営」の下、先進的な環境対策に挑戦。その取り組みは、環境省が運営するWEBサイト「COOL CHOICE」でも先進事例として紹介されています。
出典:COOL CHOICE(環境省)
丸井グループは、CO2などの温室効果ガス排出量の削減目標に関しては、グループ全体の排出量に加え、2014年以降は「原材料の調達・輸送からお客さまご購入後の排出量まで」を含む、バリューチェーン全体に対象を広げ取り組んでいます。
さらに、2018年には日本の小売業界で初めてSBTイニシアチブの認定を取得。同じく2018年に再生エネルギー100%を目指す国際的イニシアチブ「RE100」に加入。
首都圏を中心に小売店舗を運営する丸井グループは、使用するエネルギーの大半は、店舗の空調や照明に必要な電力であり、この他に全国にあるクレジットカードセンターや物流センター、データセンターの電力消費も含め、CO2排出量の84%が電力を占めています。
そこで、省エネ対策を進めると共に、すべての店舗や事業拠点に自然エネルギーの電力導入。「2030年までに事業活動で消費する電力の100%を再生可能エネルギーにする」ことを目標に、CO2排出量の削減を目指しています。
また、バリューチェーン全体のCO2排出量削減のために、シェアリングサービスを中心にグリーンビジネスを拡大させています。
これらの取組みにより、2020年1月に丸井グループは気候変動に対する取り組みと情報開示が国際的に高いレベルにあると評価され、国際的な非営利団体であるCDPより、2年連続で最高評価の「気候変動 Aリスト」企業としても認定されています。
運輸部門で1位となった佐川急便株式会社では、CO2排出量の削減目標として「前年比1%削減」を掲げ、
①環境対応車の導入
②CO2排出の少ない鉄道や船に切り替えるモーダルシフト
③大型集約施設や倉庫の効率活用による物流効率化
④最寄りのサービスセンターからの自転車や台車での集配
➄CO2排出量ゼロを実現した「カーボン・ニュートラル宅配便」
など、主に輸配送におけるCO2排出量削減に取組み、2017年度にはCO2排出量37万8,788トンと前年度比95.4%を実現しています。
この「カーボン・ニュートラル宅配便」では、地域のサービスセンターを拠点として台車や自転車などで集配を行うことでCO2排出量をゼロに。そして、CO2削減が困難な営業所⇔サービスセンター間の貨物輸送とサービスセンター内の電気使用におけるCO2排出量は、グループ会社の佐川林業株式会社が行う森林保全活動により創出されたオフセット・クレジットクレジットを利用してオフセットすることで「カーボン・ニュートラル」を実現しています。
この取り組みは東京駅八重洲口サービスセンターなど全国6拠点で導入され、2017年12月に「第7回カーボン・オフセット大賞」で「環境大臣賞」を受賞しています。
さらに輸配送面だけでなく
・営業所や大型物流施設でのLED照明の導入促進
・ユニフォームや軍手には、ペットボトルを再利用したエコマーク認定品を採用
にも取り組み、CO2削減を実現しています。
丸井グループや佐川急便株式会社では、企業全体で取り組んでいますが、明日からオフィスですぐに取り組めることもあります。すぐに行動に移せるCO2削減にも取り組んでいるのが、製造業部門1位に選ばれたコニカミノルタ株式会社です。
コニカミノルタ株式会社は「エコビジョン2050」を策定し、「製品ライフサイクルにおける CO2 排出量を、2050 年までに 2005 年度比で 80%削減する」等の目標を設定。生産技術の開発・改善を進め、環境負荷低減とコストダウンを同時に実現する「グリーンファクトリー活動」や、取引先と一体となって環境負荷低減に取り組む「グリーンサプライヤー活動」に取り組んでいます。
こうした取り組みが評価され、2019年12月には日本経済新聞社より「日経SDGs経営大賞 大賞」を受賞していますが、同社のすごいところは、事業活動だけでなく、社内での環境への取組みについても「エコオフィスの5アクション」として推進しているところです。
①オフィス内で省エネ・節電を推進する
②エレベーターの効率運用に努める
③水の節約に努める
④ゴミの排出量削減及び再資源化に努める
⑤購入時は環境に配慮されたものを選択する
これらのアクションは、明日からでもすぐに取り組める内容ではないでしょうか。ひとつひとつは、小さなアクションですが、会社全体で取り組めば大きな成果につながります。
CO2削減と企業の取り組み事例を見てきました。CO2削減は、地球全体での重要な問題である気候変動対策へのアクションとなるだけでなく、企業価値向上にもつながります。
丸井グループのようなサプライチェーンを巻き込んだ取り組みもありますが、オフィスのなかでCO2削減のために、明日から出来ることも多くあります。
なぜCO2削減をしていく必要があるのか、意義を考えながら実際に行動に移すことが重要です。ぜひ自社内でもCO2削減のために、明日からできる小さな一歩を踏み出してみましょう!
(ライター:サイトウケイ)
<参考記事・サイト>
・「グループ一体ですすめる環境負荷の低減」 (丸井グループ)
・「CO2排出削減に向けた取り組み」 (佐川急便株式会社)
・「エコビジョン2050」(コニカミノルタ株式会社)
・「環境活動の取り組み」 (コニカミノルタ株式会社)
・先進企業の自然エネルギー利用計画 (第8回)「丸井グループ 地球環境と共存するグリーンビジネス拡大 証書に頼らず自然エネルギーの電力を100%使う」(公益財団法人 自然エネルギー財団)