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食事から広がるSDGs!社員食堂のサステナブルな取組みとは?

2023.03.22

社員食堂

わたしたちが日々選択している食事は、環境問題と密接に関わっています。食と関連する環境問題として、魚や貝などの水産資源の減少、畜産による水質汚濁や温室効果ガス排出・水の大量使用、フードロスによる温室効果ガス排出などがありますが、これらはほんの一部。地球環境に多大な影響を与えている上、地球の人口は増え続けているため、食事をサステナブルにすることは急務なのです。

とは言っても、日々忙しい現代人が自分の食事を一から見直すのは非常に労力を使いますし、日本のレストランでもサステナブルな食事の選択肢は多くありません。

そこで今回取り上げたいのは、「社員食堂」でサステナブルな食事を提供している会社の事例です。会社として社会貢献ができると同時に、従業員にサステナブルな食の魅力や食と環境問題の関わりについて浸透させることができます。

この記事では、食が地球環境に与える影響や実際に社員食堂で行われている取り組み、その取り組みから学べることを詳しくお伝えしますのでぜひ最後までお読みください。

食が環境問題に与える影響

まずは食が環境問題にどのような影響を与えているのか、詳しくご説明します。

水産資源の減少

海ではサンゴの白化減少、魚や貝などの水産資源の減少、海洋プラスチックごみなど多くの問題が起きています。

特に、水産資源が減少している理由のひとつとして「乱獲」があります。乱獲により、主要な魚種の4分の1が枯渇の危機にさらされているのです。自然に再生できる数を超えて収穫してしまうと、水産資源は枯渇への道をたどる一方です。

必要以上に魚を獲らず、海の資源を持続可能にする取り組みが必要になっています。

畜産による温室効果ガス排出、水の大量使用

地球温暖化の原因となる温室効果ガスは二酸化炭素だけではありません。その一つが、牛から排出される「メタンガス」です。

牛などの反すう動物由来のメタンガスは、全世界で年間約20億トン(CO2換算)と推定されており、温室効果ガスの約4~5%(CO2換算)を占めています。

さらに、畜産業は多くの水を必要とします。例えば、1kg のトウモロコシを生産するには、1,800 リットルの水が必要です。牛はこのような穀物を大量に消費するため、牛肉1kg を生産するには、その約20,000 倍の水が必要になります。

温暖化が非常に深刻で水不足も危惧されている中、現在のように畜産業を続けることはサステナブルではありません。

温室効果ガスを排出させないために、すぐにでも肉の消費量を減らさなければいけない状況なのです。

【参考資料】

今、海で何が起きているのか|環境省 海洋生物多様性保全戦略公式サイト
【研究成果】新たな牛のメタン排出量算出式を開発しマニュアル化 ~牛のゲップ由来メタン削減技術開発の加速化に期待~|広島大学
バーチャルウォーター|環境省

社員食堂で行われているサステナブルな取り組み

そんな食にまつわる環境負荷を抑えるため、社員食堂でもサステナブルな食事が提供されています。ここからは具体的な取り組みをご紹介します。

サステナブルなシーフードを提供

パナソニック株式会社では、2018年3月から2拠点の社員食堂でMSC認証およびASC認証を取得した持続可能な水産物の提供を始めました。それぞれの認証制度の概要は下記の通りです。

・MSC認証

水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業であることを証明する認証です。つまり、対象は天然の水産物となります。第三者が「水産資源の持続可能性」、「漁業が生態系に与える影響」、「漁業の管理システム」について審査を行い、規格を満たしていれば認証が取得できます。

・ASC認証

責任ある養殖水産物を対象とする認証です。自然環境の汚染や資源の過剰利用の防止、労働者や地域住民との誠実な関係構築などを求めています。

このような認証ラベルのついた水産物を積極的に消費することで認証を取得する企業の増加につながり、海の生物が守られるのです。

日本の社員食堂でMSC認証・ASC認証を取得した水産物を継続的に提供したのは、パナソニックが初めてです。2022年3月時点で、54拠点の社員食堂にこの取り組みが広がっています。

三井住友海上火災保険株式会社でも、2019年10月よりMSC認証およびASC認証を 取得した水産物を導入しています。毎月「サステナブル・ シーフードデー」を設け、社員食堂利用者にサステナブル・シーフードを使ったメニューを提供しているそうです。

毎日サステナブル・シーフードを提供するのが難しい場合は、月ごと・週ごとの提供から始めてみるのも良いかもしれません。

ミートフリーデーの導入

伸和コントロールズ株式会社では、社員食堂で週1回の「ミートフリーデー」を設けています。ミートフリーデーをきっかけに、食文化の多様性、環境保全への理解の促進を目的としています。

元ビートルズのポール・マッカートニーさんらが2009年に開始した「ミートフリーマンデー」という運動をきっかけに、伸和コントロールズのようにミートフリーデーを導入する社員食堂が出てきているのです。

ミートフリーマンデーの英語版サイトによると、週1日肉を食べないことを1年間続けるだけで車で約700キロメートルを移動する時に出る温室効果ガスとほぼ同量の削減や、約789杯分の水が節約できるそうです。

ミートフリーデーの活動が長く続くように、このような効果についても周知してミートフリーデーを従業員の習慣として浸透させたいですね。

肉を食べる量を減らしたいと思っていても、自ら行動に移せる人は少ないかもしれません。ですが、毎日のように利用する社員食堂にミートフリーのメニューがあれば、肉を減らした食事に興味を持つきっかけになるでしょう。

ヴィーガンメニューの提供

衆議院第二議員会館の食堂では、ヴィーガンメニューが毎日提供されています。公的機関の食堂としては、2017年から内閣府の食堂でヴィーガンメニューが提供されていましたが、2021年9月にはついに、国会内の食堂でもヴィーガンメニューが導入されました。

日本の中枢である国会でこのような取り組みが行われていることで、ヴィーガンメニューの導入が多方面に広まっていくことが期待されています。

ヴィーガンメニューは「満足感が得られなそう」と敬遠されることも多いと思いますが、内閣府食堂などでは試行錯誤を重ね、「ヴィーガン三色海鮮丼」といったメニューも開発しています。食堂をきっかけに、ヴィーガンメニューの印象が変わることも期待できますね。

飢餓問題に向き合う社員食堂も

環境問題以外の課題に取り組む社員食堂の例もご紹介します。ANAのグループ総合トレーニングセンターの社員食堂は、「TABLE FOR TWOプログラム(以下、TFT)」という飢餓問題に取り組むプログラムに参画しています。

生活習慣病予防になるカロリーを抑えたメニューや野菜を多く含むメニューを購入すると、 1食あたり20円の寄付金が、TFTを通じて開発途上国の子どもの学校給食のために寄付されるプログラムです。開発途上国の給食1食分の金額は約20円とされており、1食につき1人の子どもに給食を寄付できるのです。

この背景には、世界で約8億人が飢餓・栄養失調の問題で苦しむ一方、20億人近くが肥満などの食事が原因の生活習慣病に苦しんでいる状況があります。生活習慣病を予防する健康的なメニューを食べることで開発途上国への寄付ができるTFTは、win-winの仕組みと言えるでしょう。

このように無理なく社会貢献に参加できるプログラムは、より広く浸透してほしいですね。

TFTプログラムについて詳しく知りたい方は、リンク先のHPをご覧ください。

TABLE FOR TWO

【参考資料】

『海を守る選択!』 サステナブル・シーフードを社員食堂から拡げる|パナソニック ホールディングス株式会社
MSC認証の概要|Marine Stewardship Council
ASCの戦略|Aquaculture Stewardship Council Foundation
「サステナブル・シーフード」の社員食堂への導入について|三井住友海上火災保険株式会社
伸和コントロールズ 週1回 社食で代替肉|タウンニュース
Meat Free Monday(英語版)
社員食堂で「Meat Free Friday」|伸和コントロールズ株式会社
内閣府の食堂に「ヴィーガン三色海鮮丼」、材料は? 広がる「ミートフリー」の選択肢|The Asahi Shimbun GLOBE
ANA Future promise 社員食堂で誰もが参加できる社会貢献~TABLE FOR TWOへの参画~|ANA
ついに国会でMeat Free Everydayが実現 !! ~ 衆議院第二議員会館食堂でヴィーガンメニューの提供開始|ミートフリーマンデーオールジャパン

サステナブルな社員食堂が与える影響

社員食堂で行われているサステナブルな取り組みについてご紹介してきました。最後に、これらの取り組みが従業員に与える影響をまとめます。

・環境負荷の軽減に貢献できる
・食にまつわる環境問題や、環境負荷を減らす方法を浸透させられる
・従業員の生活習慣病防止になる
・社員食堂以外でもベジタリアンメニューやヴィーガンメニューを選ぶハードルが低くなる
・社会貢献できる
・さまざまな食文化に対して理解を深められる

サステナブルな食事を提供することで、このように多くのメリットを得られる可能性があります。

会社でSDGsへの貢献を推進していても、なかなか従業員に浸透しないことも多いと思います。今回ご紹介した社員食堂での取り組みのように、自然と従業員に浸透するサステナブルな取り組みをぜひ検討してみてください!

(ライター:小森 さほ


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