地域の小学校や中学校、またはみなさんのお子さんが通う学校で、どのようなエコの取り組みをしているかご存知でしょうか?
今回の記事では、子どもたちが取り組む「エコスクール」について、NPOと学校の取り組み事例を紹介していきます。次世代を担う子どもたちのために、環境教育を検討されるみなさんにとって参考になれば幸いです!
地球温暖化、プラスチックによる海洋汚染、森林の破壊、希少生物の絶滅、オゾン層の破壊など、多くの環境問題がニュースになるようになりましたが、スーパーに行けば未だにエコバックを持ってくる人は多くなく、家庭でのエコ意識は「高い」とは言えません。
実際に花王株式会社の「生活者研究センター」が行った調査では、東日本大震災後、10年ほどで環境やエコへの関心は25%も低下。「日々の行動の効果を実感できないから」という理由で、「ゴミの分別」や「洗剤やシャンプーなどは詰め替え用を購入する」などの行動を心がけている人は2008年から減少しているという驚きの結果がでています。
しかし、たとえ日々の行動の効果が目の前で実感できなくても、一人一人の1つ1つの行動が積み重なって未来にもたらす影響は甚大です。
だからこそ今、学校で子どもたちにエコ(エコは「生態(せいたい)学」を意味するecology(エコロジー)を指し、人間の生活と自然とが調和できる環境を目指すことです)への取り組みの重要性が高まっています。
一方で、学校では様々な取り組みがなされていますが、規模のや程度の差があるのが現状です。そもそも、どんな取り組みをすればいいかわからないという学校もあるのではないでしょうか。そのために、今回は他の学校で実際に行われている取り組みを紹介していきます。
1992年に京都で誕生した環境NGOの「環境市民」。この団体は「持続可能で豊かな社会・生活を実現する」をミッションに、環境問題に対して多角的にアプローチし、このミッションを実現するために4つの角度から活動を行なっています。
1. 社会を変える買い物
2. 社会を変える街づくり
3. 社会を変える人づくり
4. 社会を変える発信
今回取り上げるのは、なかでも社会を変える「人づくり」についてです。同団体の「エコスクールプロジェクト」は、子どもたちに大きな影響を与えています。
エコスクールは、国際NGOのFEEが運営するプロジェクト。自然、水、生物多様性など、さまざまなテーマで取り組む学校の環境学習プログラムです。
ひとつの特徴としては、子どもたちがプログラム対して主体的に、積極的に取り組み、先生や保護者、地域の方も巻き込んで行う点です。
「環境市民」は、エコスクールに参加するためのフォローやをコーディネートをする団体として活動しています。
実際の取り組み事例について、次の2校の例を見ていきましょう。どちらも国際エコ認証「グリーンフラッグ」の取得を達成した小学校となります。
1つ目は、生駒市立生駒南第二小学校。
生駒南第二小学校では、校内で組織されたエコ委員会が中心となり、どんな学校を目指すべきか、ニーズの汲み取りから実際の行動までを行いました。
具体的には、
・学校の前にある川をきれいに
・標語作りや呼びかけ、分別BOXの作成
・エコ新聞の発行
といった活動です。
問題の発見や解決方法まで、子ども同士の話し合いで進めた点が非常に有意義な取り組みとなります。また、小学校内に留まらず、エコ新聞を回覧板に入れることで、地域の自治体にも、エコの輪を広げることができました。
最終的に、取得が難しいとされるグリーンフラッグの審査を通過して、獲得できたのです。子どもたちにとっても、非常に嬉しい実績となります。
2つ目は、加西市立西在田小学校。「自然、川、生き物、ゴミ」といったテーマで、エコスクールの活動に取り組みました。遠足で訪れた川が汚いことに気づいた児童達は、
・魚のすみかを作る
・ホタルの養殖をする
・昔の川の姿を取り戻す
ことが重要ではないかと気づきました。
あくまで主役は子どもたちで、先生ではありません。児童らは、グループごとでアイデアを出したり、地域のお年寄りに話を聞きに行く機会を自ら作りました。
子どもたちが自分たちの頭で考えることによって、計画の立て方や物事の流れを学ぶこともできます。
さらに、こういった活動を校内で共有するだけなく、学習発表会も開きました。保護者や地域・役所の方など、多くの人たちに川の現状や理想の姿を伝えることができたそうです。
こういった活動を通して、
・学校全体(先生・児童)の環境やエコへの意識向上
・子どもたちに主体的な行動力が育まれること
・地域コミュニティとしての連帯感の醸成
がメリットとして得ることができます。
「問題の発見→原因の追求→解決への取り組み」といったことを、子どもたちが自ら学ぶチャンスは非常に大きな財産となります。エコに限らず、様々な場所でこの経験が生かされるのではないでしょうか。
そして注目すべきことは2校とも、それほど大きな小学校ではないことです。生駒南第二小学校の児童数は、平均して1学年35人ほど。西在田小学校は、なんと14人ほどです。(2019年4月時点)
学校の規模は関係ありませんが、むしろ少ない学校の方が一丸となって取り組めるのかもしれません。もちろん大きい小学校であれば、それだけ幅の広い活動に取り組めるでしょう。
自分たちの学校の良い点に着目して、それを生かしたエコ活動が求められます。
このように、子どもたちに環境やエコへの関心を上げることは、主体的な活動力や行動力が育まれるなど、子どもたちの成長においてもよい影響をもたらします。
今回紹介したエコスクールプロジェクトは、「7つのステップ」として体系化されており、どの小学校でも取り組みことができます。また参加する条件を満たせるかどうか、不安なことがあったとしても、NGOの環境市民に問い合わせることが可能です。
また、環境省でも環境教育のための教材を「ECO学習ライブラリー」として紹介しています。
こうした事例を参考に、学校や地域でエコスクールの取り組みを通して環境教育の輪を広げていきましょう。
(ライター:サイトウケイ)
<参考資料>
・「環境・エコ意識はこの10年で25%低下。しかし行動は習慣化。背景には、効果を実感できないという課題が。【生活者実態調査】」(花王 生活者研究センター)
・「エコスクールプロジェクト」(認定NPO法人 環境市民)
・「エコスクール」(特定非営利活動法人 FEE Japan)
・「 エコスクールの取り組み」(生駒市立生駒南第二小学校)
・「グリーンフラッグ取得事例 加西市立西在田小学校」(特定非営利活動法人 FEE Japan)