CO2削減や気候変動などの環境問題に対して、「教育」という面から考える機会が今までどれ程ありましたでしょうか?
日本での環境教育は、ほとんどが環境保護などの「今ある問題をどう解決するか」という問題解決的なものに対し、海外では問題の根本から考える機会を設けるようなものとなっています。
環境問題はすぐに解決できるものは少ないです。中長期的な目線で物事を解決していくことが求められます。
そこでこの記事では、イタリアでの環境教育改革やスウェーデンの環境教育の考え方などの海外の先進事例や、日本の中で前衛的な環境教育をしている学校を紹介していきます。
世界中で、特に先進国において、環境問題を考えることは非常に重要です。特に環境問題を考える上で、CO2削減について考慮することは避けられません。この問題解決する上では、長期的な目線・戦略を行うことが必要となります。
イタリア政府はその考えから、2020年9月より学校教育で気候変動に関する授業を必修化することを決定。世界で初めて、環境教育を教育制度上で義務化しました。
対象は小学生から高校生までで、最低でも年間で最低でも33時間以上の授業を行う方針です。週に1時間のペースで授業が行われ、その内容は2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」について、人間がどのように自然環境に変化をもたらしているか地球温暖化の原因と影響を学んでいきます。
具体的には小学生では自然界との関係を主題にした、世界のさまざまな国の物語や童話を題材にし、中学校ではより専門的な内容に触れ、高校ではSDGsの目標17項目が織り込まれ、地理、数学、物理はサステナビリティの観点から授業を行われるそうです。
今年の9月からの実施のために、すでに1月から教員への環境教育に関する指導が始まっています。
今回の環境教育の義務化を決めたイタリアの教育・大学・研究大臣であるロレンツォ・フィオラモンティ氏は若者の支持を得ていると自信を持っています。
もちろんそのことに対しての批判などの反対意見もありますが、若い世代が環境教育に関心を持って活動していくことは、長期的な活動を必要とする環境問題において非常に重要なことといえるでしょう。
環境問題を学ぶことは、解決手段を考えることに繋がり、そしてそれは様々な学問分野と繋がっていきます。環境問題という人類において非常に重要な問題を長期的に解決しようと試みるイタリアの教育体系を参考にしていく国や機関は増えていくでしょう。
環境教育において、世界で最も進んでいると言われているスウェーデン。
1960年代に酸性雨が深刻な問題となり、酸性沈着物による自然生態系への被害がはじめて記録されたスウェーデンは、67年に環境保護庁を設置。翌年から本格的に環境教育が開始されるなど、世界に先駆けて環境教育に取り組んでいます。
さらにチェルノブイリ原発事故で被害を経験したことから、1986年頃より環境教育が積極的に進められ、1993年に学校法が改正され、義務教育の科目のなかで環境教育が行われることになりました。
その教育は4歳から始まり、幼稚園の頃から自然を体験すること、野外に出て学ぶことを通じて、体やこころを使った環境教育の場が作られています。ミミズを使って生ゴミのコンポストを行う等の活動も、幼稚園から実施。幼少期からの活動を通じて、「自然を敬い、守っていく」という意識が広く浸透しています。
日本は後発的な環境保護として環境教育が行われることが多いですが、イタリアやスウェーデンのような考え方が今後必要になっていくのではないでしょうか。
このように世界の環境教育が進んでいく中で、日本でも以前より環境問題について学ぶ機会が増えています。その中でも今回は少し前の事例になりますが、東京都教育委員会による取り組みと、について紹介します。
東京都教育委員会では、平成21年度から平成24年度までの4年間、環境月間である6月を「CO2削減 アクション月間」として位置付け、都内の小学校・中学校・都立学校に節水や省資源など、環境に配慮した行動の実践を呼びかけました。
取り組み結果として、平成24年度に約19万7千人の小・中学生から活動の報告があり、約790トンのCO2の排出を削減できました。環境の教育を小学校などの小さい頃から行うことで、一人一人が環境問題について考える機会が増え長期的な環境改善に繋がっていくことでしょう。
日本でも、高校にもなるとより実践的な教育を行っています。たとえば神奈川県立海老名高等学校では、学校の施設として最大で14教室分の蛍光灯の電気をまかなえる発電量をつくることができる太陽光発電施設をつくりました。
その他にもアルミ缶回収ボックスを設け、週1コマ(55分)の「総合的な学習の時間」の一部を環境学習の時間にあてています。
「教育」という観点で環境問題を考えることは今後非常に重要なこととなっていくでしょう。
世界の取組事例に関心を寄せ、日本国内でも環境教育を授業内に取り入れることが増えていくように活動していくことが大切です。
(ライター:山田浩平)
<参考記事>
・「SDGs」「気候変動」、各国の義務教育で必須に(alterna)
・世界初。イタリアで「気候変動」を学校の必修科目へ(ideas for good)
・CO2削減 アクション月間(東京都教育委員会)