コラム働き方改革

フレックスタイム制度の導入へ|海外の柔軟な働き方と日本の事例紹介

2020.03.25

フレックスタイム制度

各企業で働き方改革への取組みが求められるなか、新型コロナウィルス対策を機にフレックスタイム制やテレワークを導入する企業も見られます。

フレックスタイム制度は従業員にメリットをもたらすだけでなく、環境面にもメリットがあります。この記事では、フレックスタイム制度について、海外の事例や実際の導入例を紹介していきます。

節電でエコにもつながるフレックスタイム制度

フレックスタイム制度では、出勤義務のあるコアタイムはあるものの、出社時間を選べます。それにより、満員の通勤電車を避けて朝から仕事をする人が増えれば、電気の使用量のピークである9~20時の電気使用量を減らすことができます。

また、出勤時間が定時で決まっている場合は、仕事が早く終わっていても退社時間まで帰れませんが、フレックスタイム制度なら、仕事が終了しコアタイムが過ぎれば退社することができます。残業時間の削減ができれば、これも電気使用量を減らすことができます。

日本の電力は約8割がCO2を多く排出する火力発電なので、電気使用量を減らすことはエコにもなり、経費面にも環境面にも優しくなります。

それでは次に、国内外でフレックスタイム制度の導入事例や、さらに進んだ海外の短時間労働の事例をご紹介していきます。

日本企業のフレックスタイム制度導入事例|ソフトバンクの取り組み

ソフトバンクでは日本企業では早い段階からフレックス制度を導入していますが、最近ではフレックス制度よりも働き方が柔軟なスーパーフレックス制度の導入を開始しています。

スーパーフレックス制度とは、従来のフレックス制度のコアタイムをなくした制度のことで、フルフレックス制度とも言われ、コアタイムがなくなる分、働き方がかなり自由になります。

ソフトバンクでは、このスーパーフレックスタイム制を1万人規模で導入しています。業務状況などに応じて始業時刻・終業時刻を日単位で変更可能となるスーパーフレックス制は、仕事の効率かとエネルギー消費の効率化を同時に行うのが特徴です。

スーパーフレックス制度の導入で、「子どもと朝ごはんをゆっくり食べてから出社する」「金曜日には早く帰って週末にかけて旅行にいく」「研修や講座などキャリアアップのためのスクールに通う」など社員が時間を有効活用でき、ワークライフバランスの向上に役立っているようです。

時間と場所に縛られないノルウェーの働き方

フレックスタイム制度

厚生労働省の「平成31年就労条件総合調査」によると、日本では「フレックスタイム制」の導入割合は、わずか5%。1000人以上の大企業でも26.6%ですが、フレックスタイム制の導入が進んでいる国もあります。

それが、世界第3位の高い労働生産性を誇るノルウェーです。株式会社ワークスアプリケーションズの調査によれば、ノルウェーでは、仕事より家族と一緒に過ごすことを大切とするため、その時間を確保するために87.5%の企業(うち12.5%はコアタイムのないフルフレックス)でフレックスタイム制度が導入されています。

ノルウェーでは、多くの場合働く人にノートパソコンが支給されているので、朝7~8時から働き、3~5時には退社。仕事が残っていたら夕食後に自宅で…ということも可能なようです。

ノルウェーでは早く帰って夕食を家族とゆっくり過ごすという文化もあり、子どものお迎えや夕食の準備のために早く帰ることができるフレックスタイム制はワークライフバランスや生産性の向上に大きな役割を果たしていると言えるでしょう。

フレックスタイム制からさらに進んだ取り組みも

さらにスウェーデンでは、業務効率化と健康の観点から6時間労働の制度を取り入れている企業が増えてきました。

1日6時間労働のスウェーデン

フレックスタイム制度

1日6時間労働の効果を検証したスウェーデンの老人ホームでの実験では、1日6時間勤務にした看護師の健康状態が改善され、「温厚になって注力も増している」と言う人が増え、病欠が減ったという結果が出ているほどです。

1日6時間労働は、スウェーデンでもすべての企業に導入されているわけではありませんが、2002年にスウェーデンで初めて6時間勤務を導入したトヨタのサービスセンターでは、従業員の健康が改善し、業務効率が向上。顧客からのクレームは大幅に減少し、会社の業績も向上して利益率は25%も上昇し、従業員の離職率が減少したそうです。

また、スウェーデンでは、2014年の労働時間法によって、従業員は午前7時から9時の間に始業し、午後3時から5時の間に退社できる権利を有しており、早朝勤務者も多いそうです。

こうしたことが日本でも実現できれば、ワークライフバランスも節電効果も、生産性の向上も期待できるのではないでしょうか。

日本でもスタートトゥデイが1日6時間で業務効率化

日本でも、日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイが1日6時間勤務を導入しています。

同社の制度は2012年5月からスタートし、「昼休みをとらずに9時から15時まで働き、そこで仕事を切り上げて帰っていい」というものです。

就業規則上は8時間労働ですが、6時間で上がってもいいという制度ですが、6時間制度の導入によってスタッフ1人当たりの労働生産性(1日当たりの売上÷1日当たりのスタッフの総労働時間)が前年比25%上昇。また、1人当たりの1日の労働時間も9時間台から7時間台に減りました。

働き方の見直しで効率化とエコに

フレックス制度は、日本では現状まだまだ普及には至っていません。しかし、「定時に出社して定時までは会社で仕事をする」という概念にとらわれない働き方を導入することにより、業務効率化だけでなくエコやワークライフバランスの充実などの実現が期待できます。

この機会にぜひ、働き方について見直してみるのはいかがでしょうか。

(ライター:山田浩平)

<参考資料・記事>

・「SoftBank流 働き方改革」(ソフトバンクグループ)

・「【調査報告】生産性第2位のノルウェーと日本における「働き方」に関する意識調査を実施」(株式会社ワークスアプリケーションズ)

・「知ってた?これがホントのノルウェー人大使館一等書記官がお教えします!」(YOMIURI BRAND STUDIO)

・「スウェーデンの「フレキシブル・ワーク」」(リクルートワークス研究所)

・「1日6時間勤務、健康も生産性も向上か スウェーデンで実践」(CNN)

・「平成31年就労条件総合調査」(厚生労働省)

・「労働生産性の国際比較2018」(公益財団法人 日本生産性本部)

・「「当たり前を疑う。」1日6時間労働導入の狙い。スタートトゥデイが、型破りな人事制度に込めた想いとは?」(荒濱 一 東洋経済オンライン)

・「北欧スウェーデンの、6時間労働制とワークライフバランス」( 田中靖子 「Gosal」株式会社BEC)


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