みなさんは”BULK STORE”という言葉を聞いたことはありますか?バルクストアとは、欧米を中心に普及している「量り売り」ができるお店のことを指します。
大量ロットの商品からお客が必要な量だけを購入できるので、
・容器を持参するのでプラスチックごみが出ない
・必要な分だけ買えるので無駄がでない
などのメリットから環境負荷を軽減できると、日本でも拡がりを見せつつある販売形態です。
今回は日本のバルクストアの先駆けである「ecostore papalagi」の取り組みをご紹介します!
神奈川県藤沢市にある「ecostore papalagi」は環境にやさしいノンプラスチックの商品200種類以上が揃い、レジ袋もない量り売り形式がコンセプトのエコストアです。
オーナーの武本さんは40年以上の経験を持つプロダイバー。
国内外の海と向き合う中で、以前は色とりどりのサンゴで綺麗だった海が汚染されて劇的に変容していく様子を目の当たりにしてきました。
「太平洋のさらに真ん中はどうなっているのだろうか?」
その想いとともに武本さんは自ら操船するヨットで太平洋を航海する「太平洋帆船航海プロジェクト」を始め、自らの目でその現状を確かめることにしました。5年間での航海距離は2万3000kmを超え、太平洋のあちこちに生分解されることのない漁具やプラスチックのゴミが捨てられている状況に言葉を失います。
「この状況では確実に海と地球を壊し続け、人々の健康をも侵してしまう」と考え、「陸での生活スタイルを変えることが、海や人々の元気を取り戻せるかもしれない」という想いでこのお店の立ち上げを決めたのです。それでは、お店の特徴や取り組みをみていきましょう。
「ecostore papalagi」の店内には無農薬、有機栽培の食品やプラスチックフリーの製品、生分解する洗剤など武本さんが家族で試用して選んだ商品を中心に200種類以上の商品が取り揃えられています。
オーガニックのハーブティーやナッツ類、ボトル不使用のシャンプーバーや自然由来の原料で作られた歯ブラシなど、環境にも人にもやさしい商品ばかりです。
容器を持参して必要な分だけを量り売りで購入し、過剰包装の商品は販売しないので、無駄・ごみ・浪費をなくす”ゼロウェイスト”の生活を、消費者が無理なく始めることができます。
航空便などの長距離の運輸には大量のCO₂が排出されます。どうしても国内では生産できないものなどもありますが、地元や近郊で作られている生産物があるのに遠方から仕入れることは本当に必要なのでしょうか。
お店では藤沢市内を始め神奈川県内のお店や企業との連携を積極的に図ることで、輸送にかかるCO₂削減の取り組みを行なっています。
地元で人気のコーヒーショップと連携して、オーガニックの豆を使ったオリジナルブレンドのコーヒーを販売するなど「顔の見えるお付き合い」をすることは対等な関係での商品研究・開発にも繋がっています。
日本の自動販売機の設置数の多さは世界でも有数で、缶・ペットボトルなどの清涼飲料自販機だけでも212万台(※注1)が設置されており、年間227億本(※注2)のペットボトル飲料が生産されています。
こうした状況を受け、「水Do!ネットワーク」は無料で水をくめる場所を普及させる「Refill Japan」を推進、外出先でもマイボトルに気軽に水を補給でき環境にもお財布にもやさしいと拡がりをみせています。
「ecostore papalagi」はこの取り組みに協力し、無料給水スポットとして環境ホルモンやダイオキシンなどの有害物質を除去する浄水器を使用した安全な水を利用者へ提供しています。
※注1 2018年統計 (一般社団法人日本自動販売機工業会の調査による)
※注2 2017年統計(ペットボトルリサイクル推進協議会2018年度報告書)
化学物質の悪影響は海や自然だけに限らず人の健康にも及んでいます。科学物質過敏症やシックハウス症候群等に悩む方々への力になりたいという思いから、店内の環境にもこだわりがります。
店内の工作物すべてに化学接合剤を使用せず、椅子や机、棚類も化学薬品類の残留が少ない最低20~50年前の木材や中古品を再利用しています。壁や天井には、吸湿・放湿性・抗菌性などに優れ室内の空気を浄化する接合剤の入っていない漆喰を使用しています。
換気扇も規格以上に大型のものを取り付けることで可能な限り「香害」で苦しむ人にも配慮するなど、様々な人たちが安心して訪れることのできるお店づくりを行なっているのです。
武本さんは、自身の目で見て体験した気候変動の様子や、撮影した海中映像を用いて気候危機や海洋プラスチック問題についての講演活動を行う環境活動家でもあります。
お店で行われるネイチャーセミナーでは、意見交換形式で気候変動の実情や私たちが実践できることを基礎からじっくりと学ぶことがき、様々な参加者で賑わいを見せています。
気候変動の「目撃者」という視点から伝えてくれる貴重な機会を、企業研修の場として活用することも良い機会となるのではないでしょうか。
海と人の健康を守りたいという強い意志のもと多様なチャレンジを続けている「ecostore papalagi」の取り組みは、環境問題をブームで終わらせず消費者の意識を変容させる大きな力となっています。
自社内でも、環境に負荷の少ない商品を取り入れたり、地元企業との結びつきを見直してみたりとすぐにでも始められる気候変動対策へのアクションが多くあります。そのアクションを推進させるためにも研修を通して社員ひとりひとりに地球が直面している問題を把握する場を設けることが大切です。
社内での環境への共通意識を浸透させて、CO₂削減に取り組んでいきましょう!
(ライター 上崎有紀)
<参考記事>