コラム節水・雨水利用

雨水利用と企業の導入事例|環境にも優しい雨水を見直そう!

2020.03.14

雨水活用

日本は国の周りすべてを海で囲まれた島国です。自然が豊富で水源も多いといわれています。水道水が飲める国は世界でも日本を含め5カ国ほどしかないといわれるほどなので、日本がいかに水に恵まれた国であるかがわかるでしょう。

しかし世界に目を向ければ、水資源をめぐる紛争が発生し、気候変動の影響によって干ばつが発生。人口増加も影響して、2050年には、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は、39 億人(世界人口の40%以上)となる可能性もあると予想されています(国土交通省)。

そこで、飲料水とは違う生活用水は雨水で賄おうという動きが日本を含め、世界でも起こっています。日本の水は飲料水になるほど綺麗ですが、飲料水になるレベルの水を生活用水としても使っているのが現状です。この記事では雨水の利用について解説しますので、ぜひこれを機に水の利用方法を考えてみてください!

雨水利用とは

雨水利用とは、建物などに降った雨をタンクに貯め、貯めた雨水を利用することです。環境に優しいだけでなく、大規模な震災などによる災害時には、水道が使えなくなるというケースは多々ありますので、雨水利用は災害のための準備にもなります。

雨水利用と降水量の関係

幸い日本は水が豊富なだけでなく、降水量も比較的多いため雨水利用に適しています。日本の年間降水量は1,718mm(国土交通省)と、世界平均の約2倍の降水量になります。全体の降水量自体多いですが、日本、特に東京は人口過密なので一人あたりにすると、一人あたりの降水量は世界平均の約1/4です。

ですので、一見水が豊富に見える日本でも、しっかりと水の使いみちを考える必要は十分にあります。

雨水の主な利用方法3選

雨水利用

以下では簡単に雨水の主な利用方法について紹介します。用途に合わせた雨水タンクの設置が必要となりますが、ガーデニングや洗車など外で使う雑用水などは家庭用であれば1万円強から購入することもできます。

自治体によっては雨水タンクの購入に助成金もありますので(「雨水タンク関連の補助金」環境ビジネスオンライン)、自治体のホームページを確認してみましょう。

①ガーデニングや家庭菜園などの外の雑用水に

配管の必要もなく、雨水タンクの設置だけで利用できるのが、ガーデニングや家庭菜園などの水やりです。塩素の入った水道水よりも、雨水のほうが適しているそう。

他にも玄関の掃除やアウトドアグッズの洗浄など、外で使う雑用水への活用が最も気軽に始められる活用法です。

②車の洗浄

車両の洗浄のときなどにも雨水は利用できます。

ただし、雨水タンクにホースをつないだだけでは水は出てこないので電動ポンプなどの設備も必要となります。

③トイレを流す

雨水槽や必要な設備が必要ですが、雨水はトイレにも活用できます。一般的にトイレの1回の洗浄水は大6L、小5Lくらいになり、この水に雨水を使うだけでも節水に繋がります。

雨水利用を推進するLIONの取り組み

ライオン株式会社は、水循環型社会に向けた解決策の1つとして、雨水利用の普及に取り組んでいます。

雨水利用の先進地域は東京都墨田区で、ライオン株式会社の本社も墨田区になります。同社では東京都墨田区の本社のビルをはじめ、平井事業所(東京都江戸川区)で雨水を散水やトイレの洗浄水に利用しています。

他にもマレーシアにあるグローバル・エコケミカルズ・マレーシア(旧LECO)で、工場の冷却水などに雨水を利用しています。

また、本社で雨水の利用に取り組むだけでなく、雨水利用の推進にも力を入れています。LIONは、雨水利用の普及を支援するために、ゆかりある地域での普及啓発活動として雨水タンクの寄贈を行いました。

2011年から2018年にかけては、全国の小中学生を対象に雨水の有効活用についてのアイデアをポスターや作文で表現する「雨活アイデアコンテスト」も開催しています。雨水の利用に取り組むだけでなく、教育の観点からも取り組んでいるのです。

また、2011年の東日本大震災の際には、被害にあった宮城県石巻市に復興支援活動として、石巻市立湊こども園に「雨水タンク」を寄贈しています。

雨水利用は気軽に始められる!

雨水利用

雨水利用は、昔から生活のなかに取り入れられてきた知恵で、「会社の敷地内や家庭に雨水タンクを設置して、外掃除や花壇の水やりに活用する」などは、簡単に始められる取り組みです。

日本に住んでいれば、水不足に悩まされる機会はありません。しかし日本は、食料や工業製品の輸入を通じて、本来国内で生産したら必要であった分の水資源を輸入元の国に出してもらっている、「仮想水輸入国」。その量は年間60兆リットル以上にのぼり、世界一と考えられています。

水不足に悩まされることが少ない、水資源豊かな国・日本ではそのような現実も抱えています。だからこそ水資源の大切さを改めて見つめ直し、雨水活用も含めて一人一人の心がけで地球の環境を良くしていきましょう!

(ライター:山田浩平)

<参考記事>

・「水資源問題の原因」(国土交通省)

・「タンクに貯めた雨水の活用法」(TOKILABO~節水村~ 株式会社日盛興産)

・「雨を活用したエコな暮らし – 雨水タンクとは?」(JUICY GARDEN 株式会社そとや工房)

・「雨水タンク関連の補助金」(環境ビジネスオンライン)

・「雨水槽」(ダイワ化成株式会社)

・「【環境】世界で広がる水不足 〜日本の水は本当に安泰なのか?」(Sustainable Japan 株式会社ニューラル)

・「雨水利用普及への支援」(ライオン株式会社)

・「日本は意外な「水輸入大国」――仮想水貿易でわかる水問題のグローバル化」(沖大幹 朝日新聞GLOBE)


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