エコな社会を学ぶ上で”お金”について考えることは必要なのか?と疑問に思われた方はいませんか?エコスクールでは節約や環境問題について焦点があたりがちですが、実はお金の面から考えられることも実は少なくありません。
お金の正しい知識を身につけておかなければ大人になって社会に出たときに、適切な家計管理が疎かになることで環境や経済と安定した関わりが持てず、結果的に値段の安さだけを優先して環境や社会によくない消費行動をとっていくことになる可能性が大いにあるためです。
そう言われても「どうしていくべきなのかわからない」と思う方もいらっしゃると思いますので、どういった懸念があるのか、これからどうしていけば良いのかを具体例を交えてご紹介していきます。
”金融リテラシー”という言葉をご存知でしょうか?
金融リテラシーとは金融に関する知識や情報を正しく理解し、主体的に判断することができる能力を指し、お金について個人が詳しく理解する必要が増えた現代に必要な力です。
金融庁は「最低限身に付けるべき金融リテラシー」として、以下の4つに分類しました。
①家計管理
生活するのに必要なお金を管理する
②生活設計
将来こうなりたいという目標を描きそのような生活はどのような条件・状況のもとで実現可能かを考え、目的達成のため、具体的計画を立てる
③金融知識及び金融経済事情についての理解と適切な金融商品の利用選択
金融取引の基本知識、ローン・クレジットのデメリットの理解、資産形成商品の効果とリスクについての理解など
④外部の知見の適切な活用
金融商品を利用する際、外部のアドバイスを元に自分で理解、判断できる
このように、最低でも上記の4つを理解しておくことで、お金との付き合い方を適切に知ることができると言われています。
しかしながら、『お金の勉強なんて大人になってから勉強するのでも十分間に合う』とお思いがあり、生徒には今まで通りの一般教育だけで良いと考えている人がまだまだ多いのが現状です。けれど、高校生になればバイトをして大金を得る生徒も増加し家計管理ができずに浪費する可能性も高まりますし、金融知識をつけることで将来的にこのように生きるにはどれくらい必要か、などの算段をつけて進路を決めることも可能になるかもしれません。それに2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられ、18歳から早くも様々なサービスを保護者の同意なく契約できるようになりました。
あらかじめ金融知識を高めておくことで、お金との付き合い方を学び、失敗のない家計管理を行うことが可能となります。
〈参考資料・記事〉
・知らないと損をする? 最低限身に付けておきたい「金融リテラシー(知識・判断力)」 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
・金融リテラシー│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
お金の授業がほとんどない日本ですが、海外ではマネー教育は一般的です。しかし、金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査2019年」の日米調査比較(米国は2015年の数値)では、日本のお金の知識は世界と比べて低いという結果が出ています。
金融教育を学校で受けた人の割合はアメリカで21%、日本で7%。また、金融知識に自信がある人の割合はアメリカで76%、日本で12%と非常に低いことがわかります。
では具体的に海外ではどのようなマネー教育が実施されているのか見ていきましょう。
アメリカでは基本的に”子どもに金融教育を学ばせるのは当然”という考えが根強い国です。しかしそれは強制ではなく各州に委ねられているため、統一されたカリキュラムはなく、金融教育についても必須としている州、選択制にしている州と対応はさまざまなようです。
教材は基本的に個人のお金の扱い方の知識を中心に作成され、稼ぎ方・使い方・貯め方・借り方・投資の仕方などを学びます。その中でも、特徴的なのは学生がオンラインで参加できる「株式学習ゲーム」や「起業体験ゲーム」などが充実していることです。このように身近に経済について知る機会が多いことが、アメリカが経済大国になれる所以なのかもしれません。
イギリスは”金融教育の発祥国”と言われているだけあって、国と民間団体や企業が連携する形で、金融教育を実施する教師を地域のNPOがサポートされているようです。政府も保護者と子どもが貯蓄や投資を身につけられるよう、子ども名義の貯蓄・投資制度(ジュニアISA)といった税制優遇を受けられる制度が設けられています。
学校では小学校〜高校生まで、すべての学年ごとに体系的に学べるカリキュラムがあり、時間をかけて「お金」と向きあうことができます。例えば、小学校〜中学生には現金・クレジット払い・借金などの違いを、品物を買うときに何が最善か、その品物を買うために必要なお金をどのように貯めるか考える授業、中学生・高校生では限られた予算内で学校行事を企画するなどの”収支の概念”を学びます。高校生になると、職業選択の違いが将来的な金銭的利益に影響すること、金銭では計れない報酬や充足感などもあることも学び、進路選択の参考にもしていくようです。
ドイツでは国家やNPOなどが中心に、高齢者から若者に直接伝えていく「退職準備学校」のほか、「教師と生徒のための銀行・経済の学校」「貯蓄銀行学校サービス」などのさまざまな制度があります。具体的な内容は「投資と貯蓄と退職」「保証とリスク」「銀行口座とお金の基本」「信用と負債」などです。幅広い知識を得ることで、無知による金銭のやり取りの失敗などもなくなり安定した生活を送れるようになるでしょう。
3つの国のマネー教育についてお話ししましたが、このように海外ではお金を身近に感じられる教育・政策が当然のように存在しているため、国民の個人個人がお金に対して正しい知識を持つことができるようです。日本でも自発的に金融知識を高める方も多くいるので国民全体のお金の知識が低いとは一概には言えませんが、お金に興味のない人にも必要最低限の知識を持ってもらうようにするには、海外でも実施されているような学生からのマネー教育が必要なのではないでしょうか。
〈参考資料・記事〉
・世界の金融教育|なぜ子どもに「お金の教育」が必要?日本の現状は? | コエテコ
・日本と外国のお金教育の違い – 【公式】創業17年|キッズマネーステーション|≪講座実績NO.1≫
2022年4月より高校の家庭科の授業で”資産形成”について学ぶカリキュラムが追加されたことは教育関係者の方々も驚かれたのではないでしょうか?
新学習指導要領の高校・家庭編で「投資信託等の金融商品」や「資産形成」という文言が明記されており、学ぶのは『 持続可能な消費生活・環境』の中にある”家計管理”の解説部分です。具体的な要項は以下の部分です。
家計管理については , 収支バランスの重要性とともに,リスク管理も踏まえた家計管理の基本について理解できるようにする。その際,生涯を見通した経済計画を立てるには,教育資金,住宅取得,老後の備えの他にも,事故や病気,失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ,預貯金,民間保険,株式,債券,投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット,デメリット),資産形成の視点にも触れるようにする。
(引用:高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編より)
そう言われてもこれからどのように進めていけば良いかわからないと不安を感じている方もいるでしょう。そのような先生方のために、教師を対象とした金融に特化した研修・勉強会などが行われていることと思います。しかし、その家庭科の授業はお金に興味を持つとっかかりとしてはふさわしいですが、その授業だけでは金融教育としては不十分ではないか、という声が水面下ではあるようです。
基本的な『家計管理』を家庭科の授業で学んだのち、「具体的に今後どのようにお金を使っていくか?」ということをじっくりと考える機会を作ることが必要です。
をあらかじめ学生時代にシュミレーションしておくことで、学生時代から将来設計がしやすくなっていくはずです。
また、可能であれば環境問題と絡めてお話しするのもおすすめです。現在日本では海外製品に頼り切った市場です。海外製品は安いため手に取りやすいため、中学生・高校生はすぐに飛び付いてしまっていることでしょう。しかし、輸入品を仕入れる際のコストや国債、今後の世界的な食糧難などを想定することで自分のことだけではなく、日本経済のことも一緒に学ぶことも可能です。そうすることで、国産商品の大切さを学ぶのと同時に、自分のお金の使い道を今一度考え直すこともできるはずです。これらのお金を学ぶことは自分のためだけではなく、結果的に日本の経済のためにも役に立っていくでしょう。
〈参考資料・記事〉
・知ってた? 2022年4月から高校の家庭科で資産形成の授業がスタート! どんなことを学ぶの? | ファイナンシャルフィールド
・学校における金融教育の年齢層別目標/金融広報中央委員会
『お金を得たら何をしますか?』という質問に生徒たちはどういった回答をするでしょうか?「ブランドもののバッグを買う」「タワーマンションに住む」「好きなものを好きなだけ食べる」など、妄想は広がり贅沢な夢を見ますよね。しかし、贅沢ばかりの消費生活は時として家計を苦しめることになったり、自然環境に悪循環をもたらしたりすることもあります。
2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられることになり、18歳から様々なサービスを保護者の同意なく契約できるようになりました。ということは金融知識がなく家計管理を意識しないまま、簡単に契約をおこなえるため非常に危険だということです。また、贅沢によって海外輸入品が増えると、時に環境を破壊に繋がってしまいます。このような心配があるため、学生の頃から金融知識はしっかりと持っておかなければならないのです。
そこで、日本にあるいくつかの企業は中学生や高校生・大学生に向けたマネー教育を行うため、無料教材や出張講義、体験型イベントの実施・提供を始めました。
フリマアプリ・メルカリは、『これからの社会を担う子どもたちが、教科書だけでは学べない「モノとお金の価値」について考えるきっかけをつくりたい』という想いから、教育関係者に向けてキャッシュレス社会・家計管理などの分野の教材(高校生・大学生を対象)を開発・無償提供しています。
という3つの特徴を持った当プログラムを受けた生徒からは、「自分には関係ないと思っていたけれども、授業を受けて自分ごととして考えられた」「いろいろな支払い方法があるのでちゃんと考えないといけないなと思いました」とお金について正しく学んべたことが感想からわかりました。
クレジットカード会社である『クレディセゾン』では、次世代を担う子どもたちが正しい金融知識を身に付け、自立した消費者となるために全国の学校にて、出張授業を行っています。
キャッシュレス化が進み、多種多様な決済手段があふれている現在。子どもたちが将来、適切な選択の判断ができるように幅広い金融知識やノウハウを持つ当社社員が講師となり、「金融教育プログラム」を提供いたします。
クレジットカードの仕組みや注意点を聞き、「契約」に伴う責任や計画的にお金を使うことの大切さを学びます。授業はクイズ形式やグループワークを多く取り入れ、楽しみながら思考力・判断力を養うことができます。また、クレジットカードだけでなく、キャッシュレス、キャリア教育、SDGsへの取り組みなど学校ごとの要望に合わせて授業も受けられます。
コモンズ投信株式会社では、小学生・中学生を対象にした『こどもトラストセミナー おかねの教室』を開催しています。こちらの教室では、消費・貯蓄・投資・寄付というお金の4つの使い方を勉強しながら、お金と社会とのつながりについて学ぶことができます。
特に、貯蓄や投資をしてもまだ余裕がある場合には『寄付』という選択もあるということを子供たちの意識に加え、社会貢献について学ぶ機会もあります。余裕のあるお金の管理が誰かを救うことになるということを同時に知ることができます。
『次世代育成』という位置づけの重要な取り組みとしてこども向けセミナーも実施することで、「自分の中にお金だけではない自分なりの価値観を育むこと」を目的としています。お金を使うとお財布の中身は減っていきますが、使ったお金は消えてなくなるのではなく姿をかえながら、自分の明るい幸せにつながっていきます。
〈参考資料・記事〉
・高校向け 金融経済教育指導教材の公表について:金融庁
・キャッシュフローから考える消費者信用と家計管理 | 教材ダウンロード | Mercari Education
・出張授業 SAISON TEACHER(金融教育)|社会への貢献 | クレディセゾン 企業・IR情報
・コモンズ投信株式会社
いくらお金をたくさん得ることができるようになっても正しい接し方がわからないと、無駄になってしまうことや、思い返したときに後悔するような使い方になってしまうことも増えてしまいます。環境問題と向き合うことや、正しい経済との向き合い方を知ることで、生徒たちが大人になったときに生活していきやすい社会人となれるはずです。
また、正しいお金の使い方を学ぶ重要性はご紹介してきた以外にもたくさんあります。先生方もお金との付き合い方をあたらめて見直し、生徒さんたちと今後のお金との付き合い方を一緒に学んでいっていただければ幸いです。
(ライター:堀内 香菜)