コラムCO2削減廃棄物

学校で脱プラスチック! マイボトル・給食のストローレス

2024.01.15



はじめに

自分自身の身の回りを見渡してみてください。今、あなたの周りにはどのくらいのプラスチック製品が存在しているでしょうか?

プラスチックは樹脂材料とも呼ばれ、安価で加工性に優れていることから、自動車や、家電、包装材、食器、雑貨など、様々な用途に使用される素材であり、私たちの暮らしに欠かせない存在です。

ですが、その一方で、地球環境に様々な悪影響を及ぼしていることも事実です。

本コラムでは、学校現場で使用されるプラスチック製品に焦点をあて、学校での様々な脱プラスチックにおける事例から、プラスチックがもたらす環境問題に向き合いたいと思います。

プラスチックがもたらす環境問題とは?

プラスチックの多くは石油から作られており、自然界で完全に分解されることはないとされています。そのため、私たち人間がプラスチックを焼却処分しない限り、長い間、自然環境中に残り続けてしまいます。このような適切に処理されなかったプラスチックごみや、プラスチックの製造過程、焼却過程で発生する温室効果ガスがもたらす環境問題として、主に海洋汚染や、大気汚染などが挙げられます。

海洋汚染

日本コカ・コーラ株式会社と公益財団法人日本財団による「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」によると、海や海岸に漂流・漂着するプラスチックごみの7〜8割は、街で排出されたものが水路や川を伝わって流出したものと報告されています。

このような海洋プラスチックゴミは、海の生物たちの命を脅かすだけでなく、その豊かな海の恩恵を受けている漁業や養殖業、観光業にも大きな打撃を与えています。

以前、Operation Greenのコラムでは「海洋プラスチック」をテーマに、プラスチックが海洋に与える影響や、学校での取り組み事例を紹介しました。是非こちらもお読みください。
海洋プラスチックごみ削減のための学校での取り組み!生徒がすぐに実践できる方法は? | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

〈参考資料・記事〉
海洋ごみ対策と資源循環を目的とした河川流域調査の報告会 | 日本財団 (nippon-foundation.or.jp)

大気汚染

地球温暖化による異常気象、気候変動、海面上昇が世界中で問題となり、食料供給や私たちのくらし、生態系を脅かしています。その要因として、大気中の温室効果ガスの増加が考えられます。

石油から製造されるプラスチックは、その過程やごみとして焼却される過程で、温室効果ガスと呼ばれる二酸化炭素を大量に発生させることから、地球温暖化を加速しかねないと言われています。

経済産業省資源エネルギー庁によると、プラスチック製造で二酸化炭素が排出されるのは「ナフサ(粗製ガソリン)」を高温で分解する時に有効利用される「メタン」の燃焼時と報告されています。2019年のデータより行った調査によると、基礎化学品の製造により、年間約3100万トンのCO2が排出されているといいます。

〈参考資料・記事〉
カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

日本がプラスチック削減に取り組む必要性とは?

環境省の「プラスチックを取り巻く国内外の状況〈参考資料集〉」によると、人口1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量は年間約32キログラムであり、世界の国別で比較した場合、日本はアメリカに次いで2番目に多いと報告されています。

そのような状況を受け、日本においても加速する環境問題に歯止めをかけるために「脱プラスチック」への動きが多くみられます。

〈参考資料・記事〉
参考資料1_プラスチックを取り巻く国内外の状況(第5回資料集) (env.go.jp)

広がる「脱プラスチック」の動き

「脱プラスチック」として、プラスチックを削減することや、リサイクルに繋げようとする考えが広がり始めています。

「脱プラ」と略される取り組みは、私たち消費者にとても身近であり、馴染みがある言葉だという方も多いでしょう。というのも、昨今、民間企業や政府などで脱プラスチックの取り組みが進められているからです。

例えば、カフェやレストランなどの飲食店では、紙製のストローやコップ、紙や木製のカラトリーが採用され、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店では、レジ袋の有料化や紙袋の提供がされています。

さらに、日本では令和3年6月にプラスチック使用製品の設計からプラスチック使用製品廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる主体におけるプラスチックの資源循環の取り組みを促進するための措置を盛り込んだ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立されました。

「プラスチック資源循環促進法」のウェブサイトでは、私たち消費者に向けて「プラスチックは、えらんで、減らして、リサイクル」と呼びかけています。

〈参考資料・記事〉
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

(画像出典元:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

 

学校現場では、どのような脱プラスチックへの取り組みが進められているのでしょうか。実際に、日本の学校現場での脱プラスチック事例を紹介します。

学校現場での脱プラスチック事例

マイボトル持参、ウォータースタンド設置

プラスチック製品の中でも特に身近なものとして、ペットボトルが挙げられます。繰り返し使うことができるマイボトルを持参することで、プラスチックの削減に繋げる動きが見られます。

魔法びんのグローバル企業として、人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案するサーモス株式会社が行った小・中・高生におけるマイボトルに関するアンケート調査によると、80.7%が学校や部活へマイボトルを持参しており、69.0%が毎日持参していることが分かりました。

実践学園中学・高等学校の事例
東京都の実践学園中学・高等学校では、新型コロナウイルスの感染防止対策に加え、マイボトルの使用を推奨し、プラスチックやごみを減らすSDGs達成に貢献する取り組みとして、2021年に校内の冷水機を廃止し、マイボトルで給水ができるウォータースタンドが新たに設置されました。

実践学園中学・高等学校はSDGsの活動に取り組んでおり、環境問題に関心がある生徒の有志団体「環境プロジェクト」の活動も盛んであるといいます。また、校内にはウォータースタンド設置場所と共に「マイボトルを準備し、水分補給をしましょう。ペットボトル削減にご協力ください」と書かれた地図が掲示されました。

浜松開誠館中学校・高等学校の事例
浜松開誠館中学校・高等学校は、SDGsの取り組みに賛同し、グローバル教育を通してSDGsの推進に取り組んでいます。中でも、プラスチックの廃棄問題に対する取り組みや、マイボトル活用を推進することを目的として、浜松開誠館オリジナルマイボトルが作成されました。マイボトルのデザインは、全校生徒の公募と投票により決定したといいます。
生徒だけではなく、保護者や教職員、地域の方々に利用されており、プラスチック削減に学校をあげて取り組んでいるそうです。さらに、校内の各階にはウォーターサーバーが設置され、マイボトルを持っている生徒がいつでも清潔な水を飲むことができる環境があるといいます。

以前、Operation Greenのコラムで「マイボトル運動」を紹介しました。是非こちらもお読み下さい。
マイボトル運動を広めよう!日本初、無料の給水場所を探せるアプリ登場! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

〈参考資料・記事〉
お子さまのマイボトル使用がスタンダードなライフスタイルに『コロナ禍以降の小・中・高生におけるマイボトル利用動向調査』 (thermos.jp)
実践学園中学・高等学校での使い捨てプラスチック削減の取組をサポート|ウォータースタンド株式会社 (waterstand.co.jp)
SDGsの取り組み – 学校法人誠心学園 浜松開誠館中学校・高等学校 (kaiseikan.ed.jp)

学校給食のストローレス

学校給食にも、馴染みのあるプラスチック製品が使用されています。それは、牛乳を飲む際に使用するストローです。

日本製紙株式会社によると、日本で一年間で提供されている紙容器学校給食用牛乳は、約14億パックとされています。ストロー1本あたり、重量が0.5gとすると、一年で約700tの樹脂が使用されていることになります。

例えば、1000万本の学校給食用のストローを削減するということは、同時に約5tの樹脂を削減することができることだそうです。

このような背景から、日本製紙株式会社は、ストローレス対応学校給食用紙パック「NP-PAK-mini School POP」を開発しました。パックにあけやすい工夫を施したところ、児童や生徒は紙容器を簡単に開封することに繋がり、また、ストローを使用することなく容易に飲料を飲むことを可能としています。

古河市立古河第一小学校の事例
茨城県の古河市立古河第一小学校の給食では、6年生の児童を対象にストローレス容器の牛乳が提供されました。学校では、まずストローレス容器について説明がありました。給食ではストローも用意されていることから、児童たちはストローの使用の有無を自分で考えて決めることができます。そして、給食の時間では、児童たちが牛乳パックの口を手で開けて、そのまま自分の口をつけて飲んでいる姿があったそうです。ストローレスを体験した児童からは、「ゴミを減らすのに自分も参加できているので、地球の環境をよくするボランティア活動みたい」という声が挙がったといいます。

このように、学校現場においても脱プラスチックの動きが進んでいます。プラスチック削減や環境問題は、ひとりだけの力では解決や達成することが難しく、多くの人々や複数の国々で協力して取り組むことが必要不可欠です。政府、事業者、自治体、そして、私たち一人一人が一体となって取り組むことが求められているのではないでしょうか。

〈参考資料・記事〉
給食の牛乳で目指せ!”脱プラ” 【追記】ストローレス容器、その後… | アナウンサー | NHK水戸 | NHK
ストローレス対応学校給食用紙パックの開発・発売|ニュースリリース|日本製紙グループ (nipponpapergroup.com)

(ライター:樋口 佳純)


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