コラムCO2削減再生エネルギー

小水力発電とは?次世代が必要とする再生可能エネルギーの成功事例を紹介!

2023.03.06

近年話題になっている”小水力発電”をご存知ですか?

小水力発電とは、水路や小さな川が流れるエネルギーを活用して水車を回すことで発電させる方法です。もし水路や小さな川を活用した発電方法が使える環境に適した場所があるなら、身近な水源を利用した発電ができるかもしれないのです。

稼働当時はあまり注目されてこなかった小さな発電装置ですが、近い将来、大きな市場へ成長することが期待されています。石油などの化石燃料高騰の影響もありエネルギー不足問題がより謙虚になっていますから、使えるエネルギーは余すところなく使っていきたいもの。「微力でも電力を生み出すことができるなら利用していきたい」と感じている自治体や団体の方には、基礎情報や導入方法などを知っていただきたいのです。

そこで今回は再生可能エネルギーである水力発電のうち、身近な河川などを利用する小水力発電についてお話していきます。

1.小水力発電とは

小水力発電とは、水路や小さな川が流れるエネルギーを活用して水車を回すことで発電させる方法です。「流れ込み式」「水路式」とも呼ばれていて、ここ15年ほどの間に日本全国で少しずつ増えてきている環境配慮型の発電システムです。一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道など、今まで見向きもされなかった小さな水源から発電システムを構築し、電力を作り出すことが可能です。

水力発電としてメジャーな河川に流れる水をダムに貯めて使用する方法ではなく、直接取水して利用する「流れ込み式」の発電方式のため、環境を破壊することなくエネルギーを得ることができます

2.小水力発電が生み出す電力の出力

厳密な定義はありませんが、出力10,000kW~30,000kW以下を「中小水力発電」、出力1,000kW以下の比較的小規模な発電設備を総称して「小水力発電」と呼ぶこともあります。大きなダムで有名な黒部ダムで最大出力が335,000kWなので、それに比べて小水力発電は10分の1以下の低出力であることがわかります。

できることなら新規の大規模ダム(貯水池式)や中規模ダム(調整池式)を作ってエネルギーを得れば手っ取り早く発電力を上げることができるのですが、皆様ご存知の通り

  • ①ダムを新たに建設できる場所が少ないこと
  • ②大規模開発が必要で費用も時間もかかってしまうこと
  • ③ダムは雨量によって発電量が変動すること

といった点から新規のダムを設立することはできないのです。

3.小水力発電所を設置できる場所

(画像引用元:関西電力:小水力発電とは何ですか

水を使った「流れ込み式」「水路式」の発電システムを設置できる場所は、基本的に落差と流量のあるところであれば場所を問わずに設置できます。

例えば、

  • 一般河川の流れを利用
  • ②貯水池から浄水場の落差を利用した上水道の利用
  • ③降雨によって溜まった水や河川、地下水などを貯めた農業用水が下流へ流れる水の勢いを利用
  • 砂防ダム(川底が削られるのを防ぐために設置された人工的なコンクリート上の防壁)から落下する水圧を利用
  • 下水道下水処理場で綺麗に濾過された水を河川に流す水管に設置

ただし、一定の発電が見込めるかしっかり調査を行なった上で採算が取れることが確認する必要があります。フィルター交換など維持するのにも費用がかかりますので、本当にここが設置場所としてふさわしいのかを、長年にわたって小水力電力に携わってきた専門家に助言をいただいた方が良いでしょう。

4.小水力発電の長所・短所

①長所

  • ・昼夜問わず、年間を通じて安定した発電が可能
  • ・設備利用率(発電設備の実際の発電量が、100%運転を続けた場合に得られる電力量を表す数値)が50~90%と高く、太陽光発電と比較して5~8倍の電力量を発電できる
  • ・出力変動が少なく、系統安定・電力品質に影響を与えにくい
  • ・水量や落差が大きい場所では経済性が高い
  • ・包蔵量(再生エネルギーとして使用できる未開発の水源)が2021年3月の時点で2,660地点も存在する

②短所

  • ・落差と流量がある場所にしか設置できない
  • ・河川法などの法的手続きに時間と費用を要する可能性が高い
  • ・落差と流量という2つの要素を兼ね揃えた専門的な機器開発が求められる
  • ・小水力に関する一般市民の認知度が低いため、理解が得られにくい

〈参考〉

5.地方自治体で小水力発電を導入する方法

小電力発電を利用する目的を明確にする

小水力の事業主体は①地方自治体②土地改良区③NPO④民間⑤個人など、小さな規模レベルから依頼することが可能です。ダム開発など、これまでの開発は電力会社主体でしたが、小水力発電は小規模計画なので各々がコンサルタント業者を通じて進めていく必要があります。

まず0地点として、小電力発電所の導入を検討する前にどのような目的で発電所を作りたいのかを明確にする必要があります。

例えば、

  • ・売電による収入を増やしたい
  • ・自家消費による電気代の削減をしたい
  • ・電気の無い場所への電力供給したい
  • ・地域振興がしたい
  • ・環境貢献をしたい

なぜ明確な目的が必要なのか。それは。環境PR教育目的といった、収入・維持を考えなければ、発電所を構えることができたとしてもすぐに行き詰まってしまうからです。

例えば、少ない発電力しかない場所にPRだけのために発電所を作ったとします。すると、ポテンシャルの乏しい場所に設置したがために、電力収入よりも発電装置の維持管理費の方が高くついてしまった、となるわけです。

つまり、売電収入や電気料金削減費用により、維持管理できることが重要なのです。無理に小水力開発を行う必要はありませんので、しっかりと調査して採算がとれることを確認したのち、設置の検討段階に入っていかなければなりません。

②小水力発電に有望地点の発掘・現地調査

小水力発電に有望地点を抽出するためは、現地調査が必要です。

一般河川、農業用水路、砂防ダム、上下水道など希望の場所で、水の落差はどれくらいかを目視で確認しながら現地調査を行い、経済性・実行性のある地点をピックアップします。写真や動画に記録しておくのも良いでしょう。

この段階でプロの意見を仰ぎたいということでしたら、

・地方整備局・事務所の小水力発電プロジェクト形成支援窓口

・国土交通省の水管理・国土保全 発電水利相談窓口

一般社団法人小水力開発支援協会(有償)

などを利用するのもおすすめです。

地図(2万5千分の1地形図など)上でどこに位置するか伝えれば、電話やメールで開発の可能性について助言してもらうことができます。また、一般社団法人小水力開発支援協会に関しては講演会をセットすれば小水力開発の方法についてのお話や、一緒に現場を見て助言をもらうことも可能です。

また、支援制度や補助金制度をうまく活用して発電所を設立することもできます。

・支援制度:経産省、環境省、農水省、各自治体により調査補助、事業化支援制度など
・補助金制度:経産省、環境省、農水省などの建設費補助

③基本設計を依頼する

希望する場所が定ったら、やお近くの小水力発電のコンサルティング業者に問い合わせて相談や調査を行なっていきます。コンサルタント業者に調査や見積もりを依頼し、測量・流量測定・概略図面の作成・工事費の算出など、基本設計を実施していきます。

その際に業者より河川法許可手続きの事前説明があるはずです。というのも、河川法の許認可手続きには、多大な費用や時間・労力がかかることがあるので、初期に必ず確認しておかなければならない事項です。

その他に、効率的な開発推進や維持管理には、地元の理解と協力が不可欠です。そのため、地元住民への説明を念入りに行い、小電力発電所の開発に理解持ってもらえるよう尽力することが必要です。

④発電装置の設計から設置工事へ

コンサルタント業者によって発電装置の設計・製作が行われれば、いよいよ設置工事が始まります。施工業者によって設置工事の開始され、土木工事・機器据付け工事・試験調整が終われば完成となります。

〈参考〉

小水力発電とは|全国小水力利用推進協議会(導入ステップ)

一般財団法人 新エネルギー財団 水力関連補助事業

6.小水力発電の導入事例を紹介

①河川を使用した小水力発電

  • ・2005年:京都県・嵐山保勝会水力発電所

京都を代表する観光地である、嵐山・渡月橋の夜を飾っている照明の電力は、桂川を流れる水の力で生み出されています。発電所がなかった頃は真っ暗でしたが、街灯による灯りがつくようになってからは事故の多発がなくなりました。

  • ・2006年:山梨県・元気くん1号〜3号(発電出力 1号:20kW 2号:19kW 3号:7.3kW)

山々に囲まれ、水に恵まれた地形による電力発電を行なっていた背景から、「水の力で、地域を盛り上げたい」という水への強い想いを持つ市民によるマイクロ水力発電による地域活性化に取り組んでいました。

このような市民の動きを受けて、都留市は「都留市地域新エネルギービジョン」を策定する中で、水のまち都留のシンボルとして、環境学習や地域活性化のきっかけとなるようにと「元気くん1号」を建設しました。

②農業用水路

持続可能な社会の構築および環境保全に寄与することを目的に、地域の水資源(村山六ヶ村堰)を活かしたクリーンでんでん(北杜市村山六ヶ村堰水力発電所)を平成19年4月から運転しています。

発電した電力は農業用施設で使用し、光熱費を節約するとともに、余剰電力を電力会社に販売して水路維持費の一部として使用

 

農林水産省でも農業水理施設を利用した水力発電に力を入れています。

令和3年3月23日に閣議決定された土地改良長期計画では、「土地改良施設の使用電力に対する農業水利施設を活用した小水力発電等再生可能エネルギーによる発電電力量の割合(目標:約4割以上)」を重要業績指標の1つとして掲げています。

〈参考〉小水力等再生可能エネルギー導入の推進:農林水産省

③砂防堰堤

  • ・2005年:熊本県・清和村発電所所(最大出力:190kW)

青葉の瀬にある既存の砂防ダムを利用し、約300m下流で発電します。発電した電力は清和文楽劇場や道の駅などの公共施設で使用されています。

④水道用水

  • 2011年:青森県・根城配水池小水力発電所(最大出力:75kW)

八戸圏域水道事業団が東北最大のステンレス配水池である根城配水池への流入管路上に設置した小水力発電です。有効落差25mを活用して、年間40万kWhを発電しています

⑤下水処理水

下水処理場の未利用エネルギーの活用になり、地球温暖化防止の取り組み につながることから、地域グリーンニューディール基金事業を活用し導入しました

⑥工場・ビル内

環境経営に基づいて、省エネ型の機器の開発を進めている。その一環として、放送センター内のスタジオや事務室等を冷暖房する空調設備の配管に小水力発電設備(マイクロ水力発電システム)を導入し、2008年5月7日から運転を開始しています

ビル内の空調機を冷却するために使われる循環水を利用し発電

〈参考〉

小水力発電とは|全国小水力利用推進協議会

7.活用できそうな水流を電力に変えましょう!

今、使えるエネルギー資源を見つけなければと躍起になっていた人たちが、こぞって小電力開発に注目しています。

小電力発電を利用するメリットは、ご紹介したもの以外にも、地元のコンサルタントや地元の施工業者、地元業者による保守管理などによって地域の活性化・地域の雇用促進にも有効だといわれています。

水の資源が豊富な地域、発電に使用できそうな河川などがお近くにあるなら、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

(ライター:堀内 香菜)


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