コラム廃棄物

学校でできるアップサイクル教育 企業とのコラボ事例も!

2024.10.15

アップサイクルは「クリエイティブ・リユース(創造的再利用)」とも言われる手法であり、素材や形の特徴を活かして新たな価値を創造しながらゴミや消費エネルギーを削減できるとして注目を集めています。サステイナブルなものづくり手法として話題になることも多く、近年ではアップサイクルに取り組む学校も増えました。

今回は、アップサイクルとは何か解説しながら、学校でできるアップサイクル教育を紹介します。生徒が手軽にできるアップサイクルもあれば、学校と民間企業がコラボレーションして実施するアップサイクルもあるので、参考にしてみましょう。

アップサイクルとは

アップサイクルとは、本来廃棄される予定であった品に新たな価値をつけて再生を図る手法のことです。

似ているキーワードに「リサイクル」がありますが、リサイクルは廃棄される予定であった品を一度原料に戻して再利用するのが特徴です。一方、アップサイクルはもともとの製品をそのまま転用するのが特徴で、素材や質感もそのまま維持できます。製品を分解・溶解する必要がないためエネルギー消費を抑えやすく、原料に戻す工場も要らないので小規模なアップサイクルであれば学生主導でもできるのがポイントです。

また、アップサイクルと「リメイク」も似ていますが、アップサイクルでは特に新たな価値の創造にこだわります。例えば、「穴の開いたズボンにワッペンをつけて使い続ける」などの事例はリメイクに該当します。リメイク後の製品はあくまでも元製品と同じズボンとしての用途に限定されるため、物を捨てない環境問題対策としては有効ですが、新たな価値の創造にはつながりません。

一方、アップサイクルは元製品とは異なる製品に作り変えることが多く、全く別の価値を持つアイテムとして生まれ変わらせることが可能です。使い続ける(ゴミを削減する)ことと、新たな価値を創造して楽しむこと、どちらも追求できるのがアップサイクルと言えるのです。

学校でできるアップサイクルのアイディア

ここでは、学校でできるアップサイクルのアイディアを紹介します。「自校でもできるアップサイクル手法を検討したい」「SDGsや環境対策を意識した教育がしたい」とお考えの方は、以下を参考にしてみましょう。

アップサイクル教育をする

学校授業の一環として枠を取り、生徒たちに対してアップサイクル教育をする方法があります。「アップサイクル」という単語は、「3R (リデュース・リユース・リサイクル)」と比べてまだまだ浸透していないのが現状です。まずはアップサイクルとは何か、リサイクルやリメイクとの違いは何かを学び、身の回りでアップサイクルできそうなものを探してみるとよいでしょう。

また、グループワークの一環としてアップサイクルの取り組みについて調べ学習をしたり、アップサイクルのアイディアをプレゼンテーション形式で発表させたりすることも可能です。座学だけでなく、手足を使った実践的な学びにすることで、生徒の記憶に残る学習にできます。

手軽にできるアップサイクルに取り組む

特別な機材・重機がなくてもアップサイクルに取り組み、実際に製品化することも可能です。例えば、ペットボトルキャップを使ったキーホルダーやマグネットであれば、比較的短時間で作成できます。古いデザインの制服・体操着・ゼッケンを使ってポーチやコースターを作るなど、裁縫技術を使ってできるアップサイクルも多いです。

生徒の手によって生まれたアップサイクル製品は、生徒個々人が持ち帰って自宅で使うことも、学校で使うこともできます。また、文化祭で保護者や地域の人向けに販売したり、地域の子どもたち向けのワークショップを開催したり、多彩な活用法が考えられます。楽しみながらアップサイクルできる手法でもあるので、ぜひ取り入れてみましょう。

不用品をアップサイクル事業に活用する

学校で出た不用品を、アップサイクル事業に活用するのも効果的です。学校では、机・椅子・体育用品など大型の什器から、スリッパ・カラーコーン・バスケットボールなど小型の備品まで、さまざまな不用品が出てきます。なるべく長く使おうと思っていても、修理できずにやむを得ず廃棄するものも出てきます。自校内でアップサイクルするのが難しくとも、アップサイクルに取り組んでいる事業者・サービスに引き渡すことで、無駄な廃棄を避けられます。

学校とのコラボレーションができれば、事業者にとってもアップサイクルの元となる製品の仕入れにかかる手間を減らせるので十分なメリットがあります。場合によってはアップサイクル後の製品を学校がまた買い取るなど、長く使うための工夫もできるでしょう。

学校現場で実施されているアップサイクルの事例4選

最後に、学校現場で実施されているアップサイクルの事例を紹介します。学校単位での取り組みだけでなく、地域の企業・自治体・大学など研究機関とコラボレーションしたアップサイクルの事例も多いのでご参考ください。

日産わくわくエコスクール×長野県伊那市の事例

日産ではもともと地球環境問題と自動車産業の環境技術に関する取り組みを子ども向けに紹介する「日産わくわくスクール」を実施していますが、長野県伊那市とのコラボレーションにより、使用済みエコキャップを使ったモデルカーづくりを始めています。

実際に長野県伊那市の小学校で「日産わくわくスクール アップサイクルプロジェクト」として外部授業が開催され、事前に小学校内で回収しておいたペットボトルキャップを使ったモデルカーづくりが実施されています。同時に地域からの回収や電気自動車の仕組み学習なども叶えていて、学校・企業・地域の結びつき強化や環境学習のきっかけとしても役立っています。

【参考資料】
「日産わくわくエコスクール」アップサイクルプロジェクト
「NISSANエコキャップ アップサイクル プロジェクトin伊那」

大阪・関西万博×制服を使ったエコフラワーづくりの事例

菅公学生服株式会社では、全国の小中高100校を超える学校とのコラボレーションにより、制服の端切れを使ったエコフラワーづくりに着手しています。制服の余り生地とエコフラワーの作り方説明書がセットになっているSDGs教材を教育関係者へ無償提供しており、学校側の負担を軽減しながらアップサイクルができるようになっているのがポイントです。

2023年11月の開始から9ヶ月で参加校数が100校を突破し、現在は大阪・関西万博「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創チャレンジにも登録されました。大阪だけでなく愛知・岡山・愛媛など全国の小中高校から参加の申し込みがあるので、エリアに関係なく申し込めるのも特徴です。

なお、大阪・関西万博 「TEAM EXPOパビリオン」会場のカンコーブースでは、参加学校の写真展示が行われます。作成したエコフラワーを持参して会場を見学するなど、より発展させていくことによって生徒の記憶にも残るアップサイクル教育となりそうです。

【参考資料】
「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創チャレンジ 制服の余り生地をアップサイクル!学校にエコフラワーを咲かせるプロジェクト
TEAM EXPO 2025 | 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

ファッション小売店ライトオン×麗澤中学・高等学校の事例

麗澤中学・高等学校のSDGs研究会では、ファッション小売店ライトオンとのコラボレーションにより、不要になったジーンズを使ったエプロン製作に取り組んでいます。ライトオンでは日頃から不要になったジーンズを回収する「つなごう藍(あお)い糸プロジェクト」を実施しており、回収品の再利用先として麗澤中学・高等学校とのコラボレーションが決定しました。

製作されたエプロンは、地域で実施されるワークショップ参加者や生徒の着用品として利用される他、生徒たちによるフェアトレードコーヒー販売時の制服としても活用されています。ライトオンがテナントとして入っているららぽーと柏の葉とも共同で環境対策イベントを実施するなどコラボレーションの輪も広がっており、今後はエプロンだけでなくトートバッグ製作など品目数も増やしていく予定です。

【参考資料】
麗澤中学・高等学校|SDGs研究会がライトオンとららぽーと柏の葉とコラボしてエプロン制作を実施
国内外で高評価を受ける「麗澤中学・高等学校」のSDGs活動と特色ある教育|中高一貫校

学校廃材×インテリア用品生産の事例

画像引用元:TOKOSIE|学校やオフィスの廃棄物から家具を作るアイディア

学校廃材を使ってインテリア用品を生産する民間企も多数存在しています。例えば跳び箱をオフィス用のデスクと椅子に、校庭に白線を引くラインカーを植木鉢に、ハンドベルをデスクライトにアップサイクルするなど、オリジナリティあふれる企画が誕生しています。家具デザインや加工に強い民間業者ならではの取り組みであり、自校エリアにこのような業者があれば学校とのコラボレーションが期待できます。

学校備品の提供だけに留めることもできれば、提供した学校備品を使ってアップサイクルした製品を再度購入・利用することも可能です。「ただ捨てるだけでは勿体ない」「普段使う備品から子どもたちに環境問題対策を考えてほしい」というときにおすすめです。

【参考資料】
TOKOSIE|学校やオフィスの廃棄物から家具を作るアイディア
tumuguアップサイクル|人-モノ-記憶~家具で紡ぐ~

まとめ

アップサイクルとの関わり方はさまざまで、アップサイクルを学ぶこと、実際にアップサイクル製品を作ってみること、地元企業や自治体とコラボレーションすること、不用品の回収に協力すること、など多岐に渡ります。無理のない範囲でのアクションにすることもできるため、自校でできることを模索してみましょう。

本記事で紹介した内容・事例を参考にしながら、できそうなことや楽しそうなことを探してみてはいかがでしょうか。

(ライター:わたなべ)

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