コラム廃棄物水質保全

学校での正しい手洗いで感染症を防ごう!石けんの環境×衛生教育事例

2023.08.31

今季、熱やせきなどかぜのような症状が出る「RSウイルス感染症」や発熱や口の中に水ぶくれができる「ヘルパンギーナ」などの感染症の流行が主に保育所や小学校で続いています。国立感染症研究所によると、ヘルパンギーナの1医療機関あたりの患者数が過去10年間で最多を記録したと報告されました。

厚生労働省や内閣府では、両感染症が飛まつや接触で感染することから、感染症予防として石けんによる手洗いを呼びかけており、学校現場で感染症予防のため手洗いの重要性が高まっています。
このように、石けんを使った正しい手洗いが奨励されている一方で、正しい手洗い方法の認識率の低さや、石けんが環境に与える問題も懸念されています。

そこで本コラムでは、石けんや正しい手洗い方法に焦点を当て、環境に向き合いながらも、手洗いの意義や意味を学ぶ、衛生教育について考えてみたいと思います。

〈参考資料・記事〉
子どもの夏風邪「ヘルパンギーナ」が全国的流行の傾向 東京や大阪で警報レベル超える | Science Portal – 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 (jst.go.jp)
ヘルパンギーナとは (niid.go.jp)
ヘルパンギーナ|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

「手洗いの方法」を学んだことがある人は、全体の約半数

消費者庁の消費者の手洗い等に関する実態調査(平成27年度)によると「手洗いの方法について学んだことはありますか」という問いに

「学んだことがあるし、覚えている 」と回答した人は全体の 26.2%に対して、
「学んだことはあるが、覚えていない」と回答した人は、 28.7%
「学んだことはない」と回答した人は、 45.2%という結果が報告されています。

このことから、学校現場での衛生授業で正しい手洗い方法を学ぶことで、幼い頃から正しい手洗いを習慣化することの必要性が高まっているといえます。

〈参考資料・記事〉
Microsoft PowerPoint – 資料4【消費者庁】消費者の手洗い等に関する.pptx (mhlw.go.jp)

感染症予防に効果的な“正しい手洗い”とは?

厚生労働省が啓発を行っている、感染症予防のための正しい手洗い方法を紹介します。

①流水でよく手をぬらした後、石けんをつけ、手のひらをよくこすります。
②手の甲をのばすようにこすります。
③指先・爪の間を念入りにこすります。
④指の間を洗います。
⑤親指と手のひらをねじり洗いします。
⑥手首も忘れずに洗います。

最低で15秒以上時間をかけて手を洗うことが推奨されています。そして、石けんで洗い終わったら、十分に水で流し、清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かします。

〈参考資料・記事〉
国民の皆さまへ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

手洗いをするタイミングはいつ?

・料理や食事をする前後
・咳やくしゃみ、鼻をかんだ時
・トイレの後
・病気の人をケアした時
・公共の場所から帰宅した時
・外にあるものに触れた時

これらのタイミング以外にも、正しい手洗いをこまめに実施することが大切とされています。

〈参考資料・記事〉
感染症予防に、正しい手洗いを ~新型コロナウイルスへのユニセフの対応 (unicef.or.jp)
国民の皆さまへ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
いつ手を洗うの?:農林水産省 (maff.go.jp)

石けんが環境にやさしいのは本当?

排水として流れた石けんは、水と二酸化炭素に短い時間で分解されます。

そして、水の中に含まれているカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分と結びついた石けんのカスは、海や川に生息する微生物の餌となります。このことから、生態系は循環し、環境に優しいとされています。

ところが、石油を原料としている合成洗剤は、分解性が悪いため、およそ1ヶ月近く分解されず、水を綺麗にすることができるバクテリアやイトミミズなどの微生物を弱らせることに繋がってしまいます。その結果、本来自然が持っている水を綺麗にする力が弱まり、海や川の汚染が進行してしまいます。

環境を守るため、実際に福岡県の学校給食の現場では、昔から石けんを使っている事例も見られます。また、以前、OperationGreen内のコラムでは環境への良い効果が期待されている「無添加せっけん」の事例を紹介しました。

本コラムでは、無添加せっけんや、廃材を活用したせっけんとして注目されている「米ぬか石けん」の紹介をします。

〈参考資料・記事〉
さまざまな効果が期待される学校への「無添加せっけん」導入 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
石けんが環境にやさしいのは本当ですか? | シャボン玉石けん (shabon.com)

米ぬか石けんとは?

米ぬか石けんは、玄米を精米する際に、排出される糠層(ぬかそう)と胚(はい)の粉「米ぬか」を原料とした石けんです。

それでは、「米ぬか」とは何でしょうか?日本人の主食である米は、収穫された際の米は4層構造になっています。籾殻(もみがら)を取り除くと玄米となり、その玄米を精米したものを除いたものが白米です。

米ぬかは玄米の約8%〜10%程度、発生するとされています。例えば、10kgの玄米を精米すると、採れる米ぬかは約800g〜1000gとなります。米は小麦やとうもろこしとともに世界三大作物の一つで、世界の米の収穫量は約7億トンにも上り、世界では毎年約5000万トンを超える米ぬかが発生しているといわれています。

農林水産省によると、日本国内で15〜21%の米ぬかが国産植物油脂原料として利用されており、その他に肥料、漬物、きのこ培養、石けんや洗剤などの用途へ利活用されていると報告されています。

〈参考資料・記事〉
米ぬかは何に使(つか)われているのかおしえてください。:農林水産省 (maff.go.jp)
みんなでチャレンジ|JAこうか (shinobi.or.jp)
こんなにすごい!米ぬかのチカラ|お米マイスター 全国ネットワーク (okome-maistar.net)
米ぬかって何?栄養やチカラを解説 – 築野食品工業株式会社 | 商品情報サイト (tsuno.jp)

米ぬか石けんのメリットとデメリット

米ぬか石けんのメリットとして、米ぬかに含まれる「オリザブラン」には、皮膚のたるみや肌荒れをふせぐ効果があることや、捨ててしまう米ぬかを再利用することができることなどがあります。

一方のデメリットとして、固形石けんのため、直接手を触れて使いまわすことや、洗面台に置いておくことが可能であり、菌や汚れが石けんや手に付着してしまうことや、無添加の場合、細菌や汚れを完全に除去することは難しい点が挙げられます。

これらのデメリットとメリットにより、衛生上の観点から、感染症予防のための手洗い用具として米ぬか石けんを用いることは難しいですが、米ぬかを用いた石けんを用いた衛生学習を実施することで、環境に向き合いながらも、手洗いの意義や意味を学ぶことにつながるのではないでしょうか。

〈参考資料・記事〉
米ぬかが美容(びよう)に良いとききましたがほんとうですか。:農林水産省 (maff.go.jp)

石けんづくりから環境について学ぶ授業事例

そして、学校現場で生徒が環境に優しい材料を用いた石けん作りを通して学ぶ、環境学習の事例が見られます。

大阪府池田市の小学校では、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の環境学習の一環として、使い終わった油を再利用して、石けん作りを行いました。

使い終わった天ぷら油という身近なものを使うことで、自分でもできるリサイクルを体験することを目的とし、3Rの意味や、なぜ3Rを実践することが大切なのかを質問やクイズを通して考えました。

実際に、天ぷらの廃油を用いた石けん作り体験をした生徒からは「今までは燃えるゴミとして油を捨てていたが、リサイクルできるということを初めて知った」などの感想がありました。

また、神奈川県横浜市の小学校では、地元の海で育ったコンブや汚れを吸着する炭、給食で食べたみかんの廃棄する予定だった皮を使用し、石けん作りを行いました。さらに、環境に優しい地元の素材を使った石けんで、地元を盛り上げることも目的としています。

生徒からは、石けんを作ってみて「作るにも使うにも責任を感じることが必要だと分かった」といった声が上がりました。

〈参考資料・記事〉
天ぷら廃油から石けんを作ろう | 池田市地域まるごと環境学習 (ikeda-ecomuseum.org)
みんなで手を洗おう!(手洗い体験):学校と地域でつくる学びの未来 (mext.go.jp)
瀬ケ崎小学校の生徒が作った「黒船石けん」販売会、3月23・24日に八景で開催 | Circular Yokohama – 横浜のサーキュラーエコノミーを加速する

実際に筆者が作ってみた!米ぬか石けん作り体験記

米ぬか石けんを作っているところ

材料

・米ぬか 100g
・水 300㏄
・重曹 10g

用意するもの

・鍋
・混ぜるためのヘラ

作り方

・沸騰させた水に重曹を加えます。
・米ぬかを少しずつ加えながら混ぜます。
・さらに弱火で約10分間程、混ぜたらできあがり。

注意点

・吹きこぼれやすいので、大きくて底が深い鍋を使い、やけどに注意する

作ってみての感想

祖母に米ぬか石けんの作り方を教えてもらいました。昔はこうして家にあるもので石けんを作っていたと言います。

以前は、お米を精米した際に採れる米ぬかを廃棄していたため、とても勿体無いと感じていました。しかし、家にある身近な重曹で、簡単に石けんに生まれ変わらせることができました。祖母の知恵や、無駄にしない意識を見習いたいと思いました。

そして、実際に作った米ぬか石けんで手洗いを行ってみました。泡はたたず、洗えているか不安でしたが、洗い終わった後は手がスベスベになった気がしました。

(ライター:樋口 佳純)


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