コラムCO2削減再生エネルギー省エネ

再生可能エネルギーと蓄電池で余剰電力を活用! 企業の事例

2024.11.15

世界の平均気温は産業革命以降年々上昇を続け、化石燃料の利用などで出る温室効果ガスの削減が求められています。対策の一つのアイテムとして太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が各国、各企業で拡大してきています。

一方で太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した再生可能エネルギーは、天候や気象状況によって発電量が不安定となり火力発電への置き換えには課題があります。その対策として近年は蓄電池を利用したシステムの実証試験に取り組む事例が増加しています。

再生可能エネルギーと蓄電池のシステムとは

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーとは自然エネルギーを利用して発電するエネルギーで、将来的に枯渇する心配がないメリットがあります。
主な種類は以下の通りです。

太陽光発電:太陽光をソーラーパネルで電気に変換するシステム
風力発電:風を利用して風車を回してそのエネルギーを電気に変換するシステム
水力発電:川などで高低差を利用して水の流れを電気に変換するシステム
地熱発電:火山などの熱源を利用した発電方法
バイオマス発電:動植物の有機物を燃焼したエネルギーを利用する発電

蓄電池とは

蓄電池とは二次電池とも呼ばれ、電気エネルギーを繰り返し充放電できる装置のことです。日常的に使われている乾電池は充電機能が無いため一次電池と呼ばれます。
蓄電池はスマートフォンや電気自動車など私たちの生活に身近に使われていて、電気容量の改善により小型化への技術開発が進んでいます。家庭用や産業用でも用途が広がっていて、住宅用蓄電池や商業施設、事務所などで活用されています。

再生可能エネルギーと蓄電池のシステム利用

再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせるシステムは、太陽光発電のように天候で発電量が左右される電気でも蓄電池に充電することで安定した送電が可能です。その他にもオフィスや工場では休日や夜間の電気使用量が少なく、平日昼間は使用量が多いという使用側のバラつきを吸収するメリットがあります。

火力発電に代わって再生可能エネルギーがこれから拡大すると、電力供給が不安定になる問題が発生します。蓄電池と組み合わせるシステムを導入することで送電の安定化が可能になるため、これからの技術開発が重要な技術と考えられています。

【参考資料】
知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~「蓄電池」は次世代エネルギーシステムの鍵|経済産業省

再生可能エネルギーに蓄電池を組み合わせるメリット

CO2排出量削減に繋がる

再生可能エネルギーに蓄電池を組み合わせることで、これまで使い切れずに捨てていた再エネ電力を有効利用できるようになります。
それにより化石燃料由来の発電量が減ってCO2排出削減に繋がります。一つ一つの蓄電池による削減効果は少ないかもしれませんが、再生可能エネルギーの普及が拡大すれば大きな効果を発揮します。

不安定な自然エネルギーを安定運用できる

再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電は、天候や季節間で変動があるため発電量が安定しない問題があります。
不安定な電気供給では突然の停電がおきてしまい、使用側の一般家庭や商業施設、工場に大きな影響が発生します。蓄電池システムの多くは常用電力からの充電もできるようになっていて、さらに安定した運用が可能になっています。

廃棄蓄電池の再利用ができる

蓄電池システムの中には、再利用した蓄電池を活用している事例があります。
蓄電池は使用し続けると蓄電量が減るため、一定以上劣化した蓄電池は廃棄する必要があります。蓄電池システムではそうした劣化電池でも、複数組み合わせることで有効利用して使用期間を延ばして廃棄蓄電池を減らすことが可能です。

自然災害時の非常電源になる

近年増加する大雨による被害や突然の震災などで、電源の復旧がすぐには対応できない場合があります。蓄電池はそうした非常時に一時的に使える蓄電池となり、さらに太陽光発電などで充電が可能なので復旧までの間は発電した電力である程度しのぐことができます。最低限の生活インフラを保つために利用すれば、震災被害者の生活の助けとなります。

【参考資料】
太陽光発電と蓄電池の両方を設置するメリット・デメリットとは?仕組みや特徴と合わせて解説|京セラ

再生可能エネルギーに蓄電池を組み合わせる注意点

導入コストが高い

蓄電池の本体価格は非常に高価であり一番安いニッケル水素電池でも約10万円/kW、リチウムイオン電池では倍近くコストがかかるといわれています。そのため導入コストの投資回収は難しいのが現状です。今後の技術開発などで導入コストが減少することや、補助金などのシステムが構築されると導入へのハードルが下がることに繋がります。

発電量が少ないと効果が下がる

蓄電池システムの導入は再生可能エネルギーの安定運用に貢献はしますが、天候不要などで発電量自体が少ない状態が続くと効果を発揮できなくなります。なぜなら発電した電気は充電しなくてもすべて使い切ってしまうことができるからです。特に梅雨や冬場のような日照時間が短い期間は、ある程度導入効果は下がってしまいますが年間通した運用で効果を評価する必要があります。

設置スペースが必要になる

再生可能エネルギーと蓄電池のシステムを導入する場合、ソーラーパネルなどの再エネ発電装置と蓄電池を設置するスペースが必要となります。ソーラーパネルは屋根上に設置すれば新規に設置場所を確保する必要はありませんが、蓄電池は新たな設置スペースが必要です。充電容量にもよりますが大きなサイズではコンテナほどの設置スペースが必要となる場合があります。

蓄電池の性能が低下して蓄電量が減る

蓄電池は充放電を繰り返し使用していくうちに、最大蓄電容量が徐々に低下していく問題があります。そうなると太陽光発電の電力をすべて蓄電ができなくなり、せっかくシステムを導入しているのに効果が低下していきます。対策としては最大蓄電容量を監視して、一定以上の容量に低下した場合は新しい蓄電池と交換するなどメンテナンスが必要となります。

ソーラーパネルの寿命で交換が必要になる

ソーラーパネルの寿命は一般的に20年程度といわれており、パネルは劣化が進む奴強度低下による破損が起こるリスクが増加します。また発電した電気を直流から交流に変換するパワーコンディショナーの寿命は10年程度といわれています。

パネルの汚れでも発電量に影響があり適切なメンテナンスで寿命を延ばすことや、日常的なメンテナンスで性能を維持する管理が必要となります。

再生可能エネルギーに蓄電池の導入事例

デンソーの電気自動車蓄電池によるエネルギーマネジメントシステム

自動車部品メーカーのデンソーは2024年6月から愛知県本社でBEV(Battery Electric Vehicle、ガソリンを使わず電気のみを使って走る電気自動車)を活用したエネルギーマネジメントシステムの実証を開始しました。デンソーのエネルギーマネジメントシステムは蓄電池、太陽光発電、社用車のBEVを繋いで本社オフィスのカーボンニュートラルを目指す取り組みです。

デンソーが持つ制御技術を用いてシステム内の充放電を最適化して、昼間は太陽光発電の余剰電力を蓄電池やBEVに充電して夜間利用することで再生可能エネルギー利用率を高めます。また発電量や本社オフィスの電気使用量を予測する機能が特徴的で、余剰が発生する場合は充電し不足する場合に放電する仕組みになっています。

【参考資料】
デンソー、本社にてBEVを活用したエネルギーマネジメントシステムの実証を開始|デンソー

日立製作所の蓄電システム実証試験

家電メーカーの日立製作所は2021年10月から同社の研究開発拠点「協創の森」で太陽光発電、蓄電池、ガスコジェネレーション、EV充電器を使ったエネルギーマネジメントシステムの実証に取り組んでいます。

日立のエネルギーマネジメントシステムには3つの特徴があります。

1.太陽光発電や蓄電池の状態を診断する機能により、故障の予測や機器の長寿命化を達成した
2.使用電力量と発電量を短い時間単位で監視して、両者のずれを細かく調整する制御を実現
3.AIを活用してエネルギー価格が安いタイミングで売買して調達コストを削減

導入による効果はCO2排出量20%減、エネルギーコスト30%減であったと公表しています。

【参考資料】
日立、新エネルギーマネジメントシステムを構築 脱炭素化めざす企業に提供へ|日立製作所

レドックスフロー電池による北海道電力の実証試験

北海道電力の蓄電池システムはレドックスフロー電池という蓄電池を使用している特徴があります。レドックスフロー電池は、充放電による劣化が少なく長寿命が特徴の蓄電池です。

道内では太陽光発電や風力発電設備が増加しており、その発電量が安定しない課題に対して蓄電池システムの導入実験が行われました。実験では蓄電池の効率化や寿命延長のための最適運転制御や、再生可能エネルギーの発電量が落ち込んでも送電量を平滑化する運転方法などを確認できました。

【参考資料】
大型蓄電システム実証事業|北海道電力

蓄電池への補助金制度

蓄電池システムはCO2削減などの目標に必要なシステムとして各地で実証が進められていますが、導入には蓄電池のコストが高いというハードルがあります。そこで経済産業省管轄の環境共創イニシアチブ(SII)では、2024年度に80億円の規模で支援事業の公募を開始しています。支援事業の正式名は「令和6年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金(系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業)」と呼びます。

蓄電システムの支援条件として以下の3点が掲げられています。
1.蓄電池の最大受電電力が1MW以上
2.蓄電池を電力系統に直接接続する
3.再生可能エネルギーの有効利用や普及拡大に寄与する

補助金の金額は事業性により異なり新規開発要素がある蓄電システムでは2/3以内、リユース蓄電システムでは1/2以内などとなっています。

【参考資料】
再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補
助金|経済産業省

まとめ

蓄電システムは再生可能エネルギー普及に必要な技術と考えられていて、各社で実証試験やシステム開発が進められています。現在は導入コストが高額であり投資回収が難しい状況ですが、政府の補助金事業が開始されるなど導入への環境が作られ始めています。地球温暖化対策に向けて再生可能エネルギーと蓄電システムの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

(ライター:とうま)

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