コラム廃棄物

日本のごみの現状と世界の3R 取組み事例

2020.03.12

3R取組み事例

リサイクルやリユース、リデュースなどの概念が生まれたのは20世紀の話で、人類史上で見るとつい最近のことといえます。そのため国や地域によって3Rや環境改善に対する考え方や対策法が異なります。

そんな中、2040年には国内の埋立地がゴミで満杯になるといわれている国が日本です(環境省)。日本は埋立地がゴミで満杯にならないように、リサイクル可能なゴミまでもを中国に輸出していましたが、2018年に中国への輸出は禁止され、行き場のないゴミが溢れています。

「日本は先進国だから」という安易な理由で、環境問題を軽視してはいませんか?最終的に大変な目にあうのは私達です。そしてもっと環境問題によって困るのは、私達の子供や孫の世代といわれています。

自分自身が困らないためにも、何より私達の次の世代が危機的状況に直面しないためにも、ごみ問題について今一度少しだけ考えてみませんか?

この記事では、日本の3R(リユース・リデュース・リサイクル)の状況と、海外の3Rの状況を比べつつ、日本がどうしていくのが良いのかを考えていきます。

日本の3R(リユース・リデュース・リサイクル)の状況

日本の資源物の分別方法は、国民が分別し業者がそのまま回収する「発生源分別」という方法です。地域ごとに、ゴミの種類ごとに回収日を設けて効率的にゴミを回収しています。

ゴミを分別することは国民の中でも定着しており、うまく機能しているといえるでしょう。世界的に見ると「発生源分別」は少数派ではありますが、現状うまく機能しているものといって間違いないでしょう。

ゴミの回収まではうまくいっているといえる日本ですが、日本のゴミ処理の状況は良い状況とはいえません。2018年に中国や東南アジア諸国がゴミを輸入を中止するまで、日本は海外にゴミを輸出している国でした。

ゴミは上手く分別され、ペットボトルに限定すればリサイクル率は84.6%と高いですが、全体のゴミのサイクル率はわずか20.2%ほどしかありません(環境省)。全体のゴミの約80%がリサイクルされずに、焼却処分か埋め立て処分されているか、海に流れでるか、です。

海に流れたプラスチックは、海洋生物を殺し、海中の環境を著しく悪くします。結果として損をするのは私達です。海中の環境が悪くなれば、単純に漁獲高などに影響を及ぼし、物価の高騰を引き起こします。

経済的に豊かになり、暮らしが便利になるのに比例して増えていくごみ。世界の他の国ではどのように対応しているのか、2つの国の事例をご紹介します。

世界の3Rの状況|アメリカとスウエーデン

世界の3Rの状況といっても、国によって対策は異なります。

以下では、経済大国で日本にも大きな影響を及ぼしているアメリカと、環境先進国として有名なスウエーデンの3Rの状況を見ていきます。

アメリカの3Rの状況

3R取組み事例

州内のほとんどの市のゴミが「資源物」「家庭ごみ」「草木類」の3つに分別可能です。新聞紙、缶、ペットボトルなどのゴミは、民間業者が買い取りを行っています。

アメリカは日本と同様にゴミを他国に輸出していました。国連環境計画(UNEP)の報告書(2018)によれば、年間の輸出量はアメリカが1位で日本が2位でした。ですが、2018年に中国がゴミの輸入をやめたことがきっかけで、東南アジア諸国もゴミの輸入をやめるようになり、アメリカも日本もゴミの処理に困ることになります。

現在のアメリカでは一部を除いて、リユース・リデュース・リサイクルの3Rがあまりうまく機能していないのが現状で、プラスチックごみなども埋め立てするしかないという状況が進んでいます。

そんな流れを止めようというのが、全米で最も徹底したリサイクルを進めている環境先進都市・サンフランシスコです。同市では、「2020年までにごみをゼロにする」という目標を掲げ、ごみの80%をリサイクルや堆肥化、リユースするようになりました。

リサイクル不可能なごみもあることから、2020年までにごみゼロが実現できないことは同市も認めていますが、仕分けと堆肥化のためのハイテク施設をつくるなど、ごみゼロに向けた取り組みは進んでいます。

スウエーデンの3Rの状況

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家庭から出るごみの99%が何らかのかたちでリサイクル、またはエネルギー源として使われている、「リサイクル革命」が起きているともいわれているのがスウエーデンです。

ごみを収集してもらうには、自治体によって異なりますが日本円で年間約3万円(2012年度平均)の料金がかかりますが、生ごみを自分の家で肥料にする(コンポスト)と、この収集料金が減額されます。

アルミ缶、ペットボトル、ガラス瓶などはデポジット制になっていて、スーパーに持っていけば預り金が戻ってきます。

紙容器も約8割が、8回ほどリサイクルされ、その後は焼却してエネルギーに。

古着は発展途上国などに寄付され、スウエーデンを拠点とするH&Mでは布製品すべてを店頭で回収するなど積極的なリサイクルに取り組んでいます(詳しくはOperation Green記事「アパレル企業が取り組む衣類のリユース活動事例」参照)

日本はどのような対策をしていけばいいのか

日本はゴミの回収までは上手く機能しているので、環境先進国スウエーデンのように、リサイクルの過程までを仕組み化していけば、環境問題を解決していけるはずです。

日本で初めて「ゼロ・ウエイスト(ごみゼロ)宣言」をし、リサイクル率約80%を実現した徳島県上勝町の成功事例もあります。

一人一人が目の前の問題について熟考し、意見を述べていくことが、環境問題の改善につながっていくはずです。私達の未来をつくるのは私達です。良い環境をつくる少しの努力をみんなで行いましょう!

(ライター:山田浩平)

<参考記事>

・「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度)について」(環境省)

・「行き場失うプラスチックごみ 揺れるアメリカ」(NHK BS1 ワールドウォッチング)

・「サンフランシスコ市は、こうして「ごみゼロ」の夢を捨て去った」(ELLEN AIRHART、WIRED)

・「スウエーデンのリサイクルのようす」(一般社団法人産業環境管理協会  資源・リサイクル促進センター)

・「【徳島特集 #3】「もう限界だった」なぜ上勝町はゼロ・ウェイストの町になれたのか」(富山恵梨香、IDEAS FOR GOOD)

 


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