コラム廃棄物

生ごみを未利用有機資源として活用する自治体と市民協働の取り組み事例

2023.01.30

日本トレンドリサーチ(運営:株式会社NEXER 豊島区池袋)が2021年2月に行った調査によると、コロナ禍以降家庭から出されるごみの量が「とても増えた」と回答した人が10.8%、「やや増えた」と感じる人が39.5%で、合わせて50.3%の回答者が、ごみの量が増加したと答えていることがわかりました。

理由としては「食料の買いだめ」「テイクアウトやデリバリー利用の増加」「ストレスによる飲酒・飲食の量的増加」「使用済みマスクや消毒薬剤のパッケージ廃棄」等があげられています。一方で、時代を反映してかごみの削減も意識されており、できるだけ過剰包装を断る、ごみを圧縮して出す、生ごみの水切りをする、などの対策を実行していると答えた回答者も少なくありませんでした。

ごみの排出量を減らす、というのは持続可能な社会の実現に向けた大きなテーマです。そして近年ではこれと合わせて、ごみの削減だけではなく「資源として有効活用する」という側面に、社会的関心が高まっています。この記事では、自治体を中心とするコンポストを用いた生ごみのたい肥リサイクルや、バイオガス等によるエネルギー化の試みを紹介していきます。

未利用有機資源としての視点

地理学評論81刊7号(2008年)に掲載された論文「地方自治体による家庭系生ごみ堆肥化事業の展開と課題」(大橋由美氏:名古屋大学大学院)によれば、家庭ごみは「少量分散型の排出で成分面においても複雑性を有する」ために処理が難しい側面を持ちながらも、「未利用有機資源」としての潜在価値を持つもの、と位置づけられています。

わが国では近年の循環型社会が意識されるより以前から、戦後何度か資源リサイクルを志向した自治体による生ごみたい肥化の運動がありました。しかし施設の老朽化と共に事業そのものが終了するケースが多く、同論文では事業継続のためにはランニングコストの適性化と合わせて、利用者側からみた「生成たい肥の質」の向上・安定化と、需要の掘り起こしが重要である、と結論付けています。

日本のリサイクル率は、OECD加盟国など国際社会と比較しても低めに推移していることがしばしば問題視されますが、その原因のひとつは、水分を多量に含むため重量が加算される生ごみの焼却量です。自治体の取り組みと合わせて、そこに暮らす市民みんなが生ごみを未利用有機資源と捉えることで、生ごみの焼却処分を減らし、花壇や菜園で用いるたい肥の需要喚起と、小規模コンポストによる質的安定化が図れるのではないでしょうか。

 

生ごみの減量化を進める神奈川県横浜市の事例

横浜市では2011(平成23)年、ごみと資源の総排出量を削減し、環境負荷のさらなる低減を図る目的で「ヨコハマ3R夢プラン(スリムプラン・一般廃棄物処理計画)」を策定しました。本プランでは、増加傾向にある生ごみの減量化について、リデュースを中心に取組みを進めています。

ごみ排出量の削減にむけて

市民向けのパンフレットによれば、横浜市では年間で192,000tの生ごみを排出しており、その回収に必要とされる収集車はのべ96,000台に上るとされています。これは並べると横浜から大阪までつながる距離に相当します。このごみの焼却と収集で発生するCO2を削減することが、まず大きな目標となりました。

目前に迫る最終処分場のキャパシティ問題

加えて、横浜市には焼却処分した灰を埋める施設が一か所しかありません。その「南本牧第5ブロック廃棄物最終処分場」が、残りおよそ30年で満杯になってしまうのです。用地や建設費用などの問題で新たな施設を作るのが困難なため、ごみの量そのものを減らし、処分場への負荷を少しでも軽減する必要があるのです。

バイオガス化の実証実験と検証

そこで、可燃ごみを処分するのではなく、資源として活用できないかという発想が生まれました。

まず可燃ごみのおよそ3割を占める生ごみを発酵させてバイオガス化し、残る可燃ごみで焼却によるごみ発電を行おうというものです。市はバイオガス化の実証実験と費用対効果の検証を平成21年度から継続して実施しました。

しかし残念ながら創エネルギー効果と比べて、総事業費の増加によるコスト面でのデメリットが大きいことが分かり、現時点でのバイオガス化施設の導入は見送られています。

生ごみをコンポストに!「生ゴミブレン土プロジェクト」

もう一つ市が掲げたごみ削減の柱は、「市民全体の力で減量する」方向です。これは「生ごみブレン土プロジェクト」と名付けられ、生ごみを土に還元し花や農作物を育てる土壌にしよう、という計画です。

本プロジェクトでは「土壌混合法」「段ボールコンポスト」「ミミズコンポスト」「有機微生物分解」の4つの展開方法を紹介、事例の紹介や実演セミナーなどを通じて広く市民に推奨しています。地域や通学路などを緑化・花壇化し、土壌混合法によって堆肥化した土を活用するグループや団体に対しては毎年、活動に必要な物品を支給する助成制度も設けられました。

そもそも生ごみを出さないように…食べきり協力店制度

市内の飲食店や宿泊施設でできる「食品ロス削減」として、食べきり協力店を募集する取組も行われています。

食べ残し削減に向けて、「小盛りメニューの導入」「持ち帰り希望者への積極的な対応」「適量注文のよびかけ」などに協力する店舗を募集、専用WEBサイトで紹介しています。

<参考記事>
生ごみブレンドプロジェクト 横浜市 (yokohama.lg.jp)
横浜市 食べきり協力店 (yokohama.lg.jp)

 

コンポストを助成する神奈川県鎌倉市の事例

鎌倉市では、コンポスト型やバイオ型など生ごみのたい肥化に活用できる家庭用生ごみ処理機の導入を、1世帯につき電動型は1台、非電動型は2台まで助成しています。申請数の増加に伴い、予算の範囲でより多くの助成ができるよう、上限金額を引き下げ、代わりに認定する件数を増やす判断を示しました。

同時に減容・資源化施設を市内に建設することを検討、市民および事業者を対象に対話型の調査(サウンディング調査)を実施しています。これにより知見やアイデアを集約し、具体的な施策策定に反映していきます。

<参考記事>

鎌倉市/生ごみ処理機購入費助成制度 (city.kamakura.kanagawa.jp)
chousakekka.pdf (city.kamakura.kanagawa.jp)

 

市営のコンポストセンターで生ごみを減らした山形県長井市の事例

山形県長井市では、市営のコンポストセンターを設置しました。市内の各家庭から運ばれた生ごみを、このコンポストセンターでたい肥化しています。

これにより、同市のごみ焼却量は以前の1/3に減少しました。同市で策定したレインボープランに基づくもので、市としては農産物育成の有機土壌維持に貢献すること、焼却施設や処理場への負荷軽減をそのメリットとしています。

一方でコンポストの運営やごみ収集にかかわるコストに対し、たい肥の売上額が非常に少なく、採算性や費用対効果に対する疑問の声が聞かれ、2010年に企画調整課レインボープラン推進室による直営体制から、市民による運動は市民(民間)へ移管するという方針のもとレインボープラン推進協議会に移行する形となりました。

長井市では現在、本事業を「単なるごみ処理事業ではなく、3つの理念『循環』『ともに』『土はいのちのみなもと』を根幹とした循環型地域づくり事業」として、「台所と農業をつなぐ」ものと位置づけています。

<参考記事>
レインボープラン 『台所と農業をつなぐながい計画』/長井市ホームページ (city.nagai.yamagata.jp)
家庭の生ごみからたい肥をつくる(山形県長井市):東北農政局 (maff.go.jp) 
・「令和 2 年度第 1 回レインボープラン評価検討委員会 」(長井市役所)

バイオガスエネルギーとして活用する東京都町田市の事例

東京都町田市は、2022年に東日本初となる市民からの回収ごみを対象としたバイオガス化施設「町田市バイオエネルギーセンター」を稼働させました。ごみ焼却施設を併設し、行政と民間の協働により管理運営を行っています。

収集した生ごみから有機性のごみを選別、微生物を利用して20日間発酵させたのち、発生するメタンなど可燃性の気体を用いて電気をつくります。そのため、災害時にも外部からの電力供給を受けずに、自前で焼却炉や不燃・粗大ごみ処理施設が稼働できるようになりました。余剰電力の販売も行っており、熱エネルギーを活用した市立室内プールの温浴施設も整備されるそうです。

公式webサイトでは硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の排出値や煤塵についても日々公開しており、発電量と売電量についても明記するなど情報公開の面でも配慮されたものとなっています。

<参考記事>
町田市バイオエネルギーセンター/町田市ホームページ (city.machida.tokyo.jp)
町田市バイオエネルギーセンター【公式】  (machidashi-bioenergycenter.com)
新ごみ処理施設、本格稼働 バイオガスで持続可能な地域へ | 町田 | タウンニュース (townnews.co.jp)

 

最後に

上記「未利用有機資源としての視点」の章でも述べましたが、日本は世界の中でも特にごみ焼却設備の多い国です。その多くは1960~70年代の高度成長期に、拡大する消費経済を反映する形で整備されたものでした。2021年度の環境省発表によると、全国の焼却場の数は1,067か所で、OECDは全世界の焼却設備の半数が日本にある、と指摘しています。

日本におけるいわゆる「燃やせるごみ」の多くは生ごみで、一般に焼却ゴミの4割を占めるといわれています。そしてその80%は水分です。巷間「分ければ資源、混ぜればごみ」とよく言われるように、自治体や行政が大規模な処分場や処理施設を用意してそこに集約するというシステムを一歩超えて、私たち一人ひとりや地域のコミュニティの単位で、ボトムアップで生ごみを分別し資源化していくスタイルが、循環型社会の実現に一層の貢献を果たすのではないでしょうか。

(ライター 大石雅彦)

<参考記事>

【家庭ごみを減らすには?】コロナ禍以降、家庭ごみの量が「増えた」50.3% (trend-research.jp)
2030年までに日本の「生ごみ焼却」をゼロにするプラットフォーム | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を:【SDGs ACTION!】朝日新聞デジタル (asahi.com)
NPO生ごみリサイクル全国ネットワーク 新公式サイト (sakura.ne.jp)


TAGS: コンポスト,自治体,