コラム廃棄物

もったいない野菜に新たな価値を!食品ロス対策で未来の食文化を創る

2021.02.15

「食品ロス」という言葉が世間に定着してきています。食品ロス =まだ食べられるのに捨てられてしまっている食品のことです。一体、食品ロスは日本で年間どのくらいの量発生していると思いますか?

日本では、年間2,550万トン(※1)の食品廃棄物等が出されています。このうち、「食品ロス」は612万トン(※2)にものぼります。国民一人当たりに換算すると「お茶腕約1杯分(約132g)の食べもの」が毎日捨てられているようなものなのです。

「規格外野菜」と食品ロスの関係

上記の統計には出荷前に捨てられている「規格外野菜」は含まれていません。

規格外野菜とは、市場で決められた大きさや形、品質、色の「規格」に当てはまらない野菜のことです。ということは、食品ロスで捨てられた食品に加えて、規格を理由に捨てられた食べ物があるということなのです。

これは、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」中でもターゲットの一つに掲げられている「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、 収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」と深く関連しています。

形やサイズが規格に合わないだけで捨てられてしまう……。

この現状、もったいないと思いませんか?今回は、そんな「規格外野菜」を活用し、安全な食を届けている「FARM CANNING」(https://www.farmcanning.com/)さんの取り組みを紹介します!

規格外の野菜をレスキュー!食の安全と有機的な農業を守る

食品ロス対策1

神奈川県逗子市のFARM CANNINGは、無農薬や有機栽培の野菜で作った規格外の野菜などを農家から買い取り、瓶詰めの製造・販売、イベントなどを展開している会社です。

代表の西村千恵さんは子育てをきっかけに都内から葉山へ移住し、無農薬農家で1年間ボランティアをしていました。その際に、農薬を使わずに葉っぱについた虫を一つひとつ手で取ったりと手をかけて育てたにも関わらず、形が不揃いのために出荷できずに廃棄されてしまう現状を目の当たりにしたのです。

地球や社会のことを考えて持続可能な農業に取り組んでいる農家が取引と流通を効率化するためのルールによって苦しんでいる。この現状をどうにかしたい!

と、食の活動家アリス・ウォータースの”瓶詰め”の本からヒントを得て、”もったいない野菜”を使った誰でも簡単に使える無添加の調味料を開発しました。

ニンジンやビーツなど目にも鮮やかな野菜と塩麹を使ったソース、間引いた葉っぱを使ったジェノベーゼソースなど常時5種類以上の商品が揃い、「子どもから大人まで安心して食べられる」と評判に。現在は湘南エリアの農家を中心に提携して手作業で製造し、捨てられてしまう野菜たちの新たな価値を生み出しているのです。

生産者と生活者の橋渡しとして

食品ロス対策2

FARM CANNINGではこれらの野菜を使ったケータリングを行い、テーマに合わせて持続可能な食の提案をしています。

食器には使い捨てでないものやリユースできるものを使用するなど、環境に負荷のかからないサービスを提供。調理時に出た野菜くずは近隣の庭園設計の会社のコンポストへと運ばれ、そのコンポストからできた土を近隣の方々が自由に利用できるというサイクルを作り出しています。コロナ禍では、お惣菜パックを作り屋外で販売するなど、安全な農業で作られた安心して食べられる”もったいない野菜”を臨機応変に活用しています。

また、「食品ロスの現状や個々でできる行動の提案を広められたら」と、瓶詰めの実践講習会やまちの大学での講師活動も行っています。また、農家への6次産業に関するセミナーを開催するなど生活者や生産者の両方の立場に立った支援を幅広く行っています。

今こそ“Eat local, eat organic”

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無農薬農家のサポートをするためにFARM CANNINGを立ち上げ、加工で様々な農家をサポートしてきた代表の西村さん。

まずは自分が住んでいるエリアから、地元のものを、そしてオーガニックのものを食べる働きかけをしていきたい

と、「スローフード三浦半島」の運営にも携わっています。地元の料理人や生産者とともに様々なイベントを開催し、生産者と学校や行政、生活者をつなぐハブ的役割も担っているのです。

「何世代も先に影響を与える食の問題だからこそ、環境や人々の健康を守るための食文化を広めていきたい」という想いとともに、FARM CANNINGさんの活動は足元から確実に広がりをみせています。

無農薬や有機栽培の農家として新規就農する若い人たちの支えや、子供たちの豊かな食育文化の力にもなっているのです。

 

以上の取り組みから、みなさんの場所で取り入れられそうなヒントはありましたか?無駄なものを出さない姿勢や、未来を生きる子供達のことを考えたFARM CANNINGさんの経営理念は各会社に共通して求められることではないでしょうか。

SDGsの目標達成まで、残り10年という地点に私たちはいます。個人と組織の両輪の取り組みで、何世代にもわたって安心して暮らせる世界をつくっていきましょう!

(ライター・崎 有紀)

 

<参考サイト>

※1※2

・消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ


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