今世紀、「水」が人類の大きなテーマの1つになるといわれています。生活に必要な水をどのように確保し続けるのか、また洪水などの水害にどう向き合っていくのか。これらの問題を解決する方法の1つとして注目されているのが「雨水利用」です。とはいえ、「雨水利用」という言葉のイメージに、
・ 汚いのではないか?
・導入コストに見合ったメリットがあるのか?
と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では雨水利用の導入について、墨田区の取り組みをもとに紹介します。
具体的には、
1) 雨水利用とは?
2)雨水利用のメリット3つ
3) 雨水を先駆ける墨田区の取り組み
の順番で、重要なポイントをご紹介していきます。3分くらいで、雨水の利用について具体的な活用を知れるので、まずはぜひご一読を!
雨水利用とは、屋根や地面などに降った雨をタンクなどに貯め、貯めた雨水を生活に利用することです。これによって水道水の使う量が減って、節水になります。
例えば、トイレの洗浄水や打ち水などある程度の清潔感があればよい場面では、雨水をそのまま水道水の代わりに利用できます。
また、雨水に対して汚いイメージがあると思いますが、実際に汚れをふくんでいるのは降り始め初期の雨で、それを捨てれば水道水とほぼ同等の水質の水を得られるともいわれています。そのため近年では、「雨水利用」に注目が集まっています。
雨水利用においては、主に下記の3つのメリットがあげられます。
雨水を利用したメリットとして、1つ目にあげられるのが「節水」です。雨水タンクに貯まった雨水を水道水の代わりとして、打ち水、トイレの洗浄水などに使用することで節水になります。
災害時には、雨水タンクに貯まった水を非常用水として使うことができます。雨水を飲料水として使うのは難しいですが、身体を洗ったり、食器の下洗いに使ったりできるので飲料水のムダ使いを減らせます。
近年、ゲリラ豪雨や台風の頻発により河川の氾濫や下水の逆流により、全国各地で洪水などの被害が起こっています。雨水をタンクに貯留したり地下に浸透させることで、下水などへの雨水の流入を緩やかにし都市型の洪水を減らせます。
全国に先駆けて雨水利用に取り組んでいる事例として、東京都墨田区の取組みを
・家の屋根から集めた雨水をためる「路地尊」
・銭湯の地下に5tの雨水タンク
・雨水利用に助成金
の3点にフォーカスして紹介します。
東京都墨田区では、近所の家の屋根から集めた雨水を、3tの地下タンクに貯めています。これは、災害による断水や火災から地域を守るためにつくられました。手押しポンプで水を汲み出して、誰でも自由に使用可能です。
また、墨田区では「路地尊」のほかにも20箇所ほど共同の雨水タンクが設置されており、普段は、野菜や花に水をやるのに使われています。普段から雨水を貯めるだけでなく使うことで水に対しての意識が高まると言えます。
戦後間もない昭和時代から愛されてきた銭湯。東京都墨田区にある銭湯「御谷湯」では、2015年建て替えして雨水活用できるようになりました。それにより、約90坪の屋上に降った雨水が地下の5tもあるタンクに貯まり、貯まった雨水はトイレの洗浄水や水鉢などに利用されています。
店主の方によると、銭湯ではトイレの利用が多く、5tの雨水が約1週間しかもたないそうですが、それだけ節水ができているともいえます。
台東区にあった蔵前国技館が墨田区へ移ったのを機に、洪水防止と水資源の有効活用のために国技館への雨水利用が導入され、トイレの流し水や冷却塔の補給水等に、貯めた雨水を活用しています。
また、昭和58年に完成した外手児童館を機に、雨水利用が推進され、この児童館を始めとし、これ以降の墨田区の新設の施設には原則として雨水利用が導入されることになりました。
墨田区役所庁舎には、約1,000立方メートルの雨水貯留槽があり、トイレの洗浄水に利用しています。
墨田区には、「墨田区雨水利用促進助成制度」があり、雨水タンクの設置に対し、最大100万円の助成金が支払われます。助成金の支給によって雨水の活用を推進し、
・まちに小さなダムをつくり、水源を確保する
・雨水を貯めるので、都市の洪水防止につながる
・災害のとき初期消火の水や生活用水に使える
・ヒートアイランド対策として打ち水に使える
ことを目指しています。
全国の自治体でも雨水タンクの設置に対して助成金が出るところは多く、東京都23区でも墨田区以外にも約3分の1の区で導入されています。助成金の支給額や条件は各自治体によって違うので、自治体に確認してみましょう。目安として、助成金の相場は2分の1〜3分の2の額で、上限1〜5万円を助成する自治体が多いようです。
ここまで、
・雨水利用についての概要
・雨水利用のメリット
・墨田区での導入事例
について紹介してきました。雨水の活用にはここで紹介した以外にも、多くのメリットがあります(国土交通省パンフレット「あなたの暮らしに雨水を」参照)
また、雨水の活用では、敷地面積によって効率のいい貯水の設備があったり、家の密集度や地形など様々な条件が影響するため、墨田区の導入事例にみられるように、施設の特性や地域に合わせた貯水方法を取り入れることが大切です。このような施設特性に合わせた雨水利用導入の事例として、スタジアムなどであれば芝に降った雨水をそのまま地下に浸透させ散水に使うなどもあります。
自分たちの状況に最適な雨水利用設備を導入して、積極的に雨水を活用していきましょう。
(ライター:はたのゆうた)
<参考記事>
「雨水利用の歴史」(墨田区)
「雨水銭湯、御谷湯オープン」(特定非営利活動法人 雨水市民の会)
「雨水活用で災害に備える」(NHKオンライン MIRAIMAGE)
「雨水タンク関連の補助金」(日本ビジネス出版 環境ビジネスオンライン)