2019年12月、スペインのマドリードで開催されたCOP25(第25回国連気候変動枠組条約締約国会議)の会期中、日本は国際的環境NGOの「気候行動ネットワーク」から地球温暖化対策に非協力的な国に贈られる賞として2度目の「化石賞」を受賞しました。
その理由が、石炭火力など化石燃料発電への高い依存度にあります。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所の発表によると、2018年度の化石燃料による発電は78%と依然として高い割合になっています。
しかし、この火力発電の元となる資源がいつ枯渇するかはご存知でしょうか?私達が現代のペースで使用し続ければ 、
・51年後の2070年には石油は枯渇
・その2年後には天然ガスが枯渇
・ それから100年後の2170年には石炭が枯渇
することが統計でわかっています。
このまま環境に配慮する施策を行わなければ、私たちの将来は危ぶまれます。そんな中で、従来の発電方法とは異なる再生エネルギーというものがここ数年でシェア率を少しずつ伸ばしています。再生可能エネルギーとは何か、また再生エネルギー導入の取り組み事例を紹介していきます。
再生可能エネルギー(Renewable Energy)とは、太陽光や風力などを元に発電される、資源が枯渇しない自然エネルギーのことです。特徴は、「二酸化炭素を排出しない」クリーンなエネルギーだということで、主に6つの種類があります。
1. 太陽光:ソーラーパネルを利用し電力を発電
2. 風力:風車を用いて、海沿いや丘の上など風の力を利用して発電
3. 水力:ダムなど、水が動くことによって発する力をエネルギーに変えて発電
4. 地熱:火山近くや温泉地など、地中の熱を用いて発電
5. 太陽熱:太陽光を集めて生まれた熱によりタービンを回して発電
6. バイオマス:ごみを燃やした熱や、燃やした時に発せられるガスを用いて発電
気候変動対策や低炭素社会の実現として、再生可能エネルギーは世界的にも普及・促進が進んでいます。各企業も積極的な取り組みが推奨されているなか、国内外の企業の再生可能エネルギー導入事例をご紹介しましょう。
キリンホールディングスは、2009年8月に「低炭素企業グループ・アクションプラン」を策定し、「グローバルでのキリングループのバリューチェーン全体のCO2排出量を、2050年までに1990年比で半減する」という目標を設定して
さらに2017年3月には、「温室効果ガス中期削減目標」を掲げ、企業活動などで直接排出するCO2などの温室効果ガスおよびバリューチェーンで排出される温室効果ガスを、2030年までにそれぞれ2015年比30%削減する新たな中期削減目標を設定しました。
そしてこの削減目標は、国際機関やNGOによるイニシアチブ「Science Based Targets」より、産業革命前からの気温上昇2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出量削減目標として、日本の食品・飲料業界として初めて承認されています。
この目標の実現のため、2017年4月1日より、「キリンビール取手工場」「キリンビバレッジ湘南工場」の2工場で消費する電力を100%水力による電力に転換。また、飲料製造排水よりバイオガスを回収し、ボイラで燃焼させて発生した蒸気を製造工程で利用。「バイオガスの熱利用によるCO2排出量2%減」と目標を設定して取り組んでいます。
グローバルPVQは太陽光発電を主とする、ドイツに拠点を置く企業です。
ドイツは、再生可能エネルギーの利用率が2018年には37.2%と過去最大になりました(独研究機関フラウンホーファー研究機構)。エコな発電が非常に進んでいる国ですが、なかでもグローバルPVQは主に製造とシステムの2つの過程を行なっています。
製造では太陽光パネルを高い技術で作り、単結晶や多結晶シリコンから、光エネルギーを電力に変換する電力機器である太陽電池を作成しています。また、システムでは、中規模から大規模まで取り扱っています。
拠点はドイツですが、中国、カナダ、オーストラリア、メキシコ、米国など多数の子会社を通じて事業を展開しています。
世界的企業であるGoogleは、温室効果ガスの排出削減を重要な目標として掲げ、2012年に「事業運営に必要なすべての電力を再生可能エネルギーで調達する」という目標を設定。
そして、2017年に風力や太陽光などの再生可能エネルギーの総購入量が、世界中の Google の施設で使用した総電力量を上回り、この目標を達成しました。
今日、Googleは世界最大の再生可能エネルギー購入企業となっています。
さらに、再生可能資源から新しいエネルギーを作り出す取り組みにも注力し、再生可能エネルギープロジェクトは20を超え、米国国内だけでなく世界各国のコミュニティをサポートしています。
再生可能エネルギーは初期投資が必要ですが、その後は地球の自然そのもののエネルギーを使うことで発電を行うことができます。
企業や個人としては、従来の電力会社から再生可能エネルギーで発電する電力会社へ契約を見直すことで、再生可能エネルギーへのシフトに貢献することができます。現状の日本では、再生可能エネルギーの発電コストが高いという課題がありますが、次世代によりよい環境を残していくために、企業・個人ともにできることから始めていきましょう。
(ライター:山田浩平)
<参考記事>
「【ドイツ】2018年の再エネ発電割合が約40%と過去最大。石炭、天然ガス、原子力ともに減少」(Sustainable Japan)
「キリングループ環境ビジョン」(キリンホールディングス株式会社)
「再生可能エネルギー 100% の実現に向けて」(Google)
「台湾で企業による再生可能エネルギーの購入を可能にする」(Google)