コラム再生エネルギー

コンサートなどイベントを再生可能エネルギーで!世界的バンドの実例をご紹介

2023.02.23

コンサート中

近年、地球温暖化はわたしたちの生活にも影響を及ぼしています。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を削減するために、再生可能エネルギーへのシフトが世界的に進んでいます。そんな中、コンサートでも再生可能エネルギーを利用した事例が出てきました。

世界的ロックバンド「コールドプレイ(Coldplay)」が、あらゆる面で環境に配慮したワールドツアーを行い、世界中で大きな話題になったのです。

今回は、再生可能エネルギーの必要性・再生可能エネルギーを利用するメリット、コールドプレイが行った取り組みをお伝えします。音楽以外のイベントでも導入できるアイディアもご紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。

再生可能エネルギーとは?

自然エネルギー

そもそも再生可能エネルギーとは何を指すのでしょうか。「エネルギー供給構造高度化法」においては、下記の7つが再生可能エネルギーとして挙げられています。

・太陽光
・風力
・水力
・地熱
・太陽熱
・大気中の熱、その他の自然界に存する熱
・バイオマス

7つのうち、日本で主に普及しているのは、太陽光発電と水力発電です。太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを電気に直接変換する発電方法です。屋根・壁などの限られたスペースにも設置できるメリットがあります。

水力発電は設置場所の調査に時間を要しますが、一度発電所を作れば長期利用が可能です。安定的な電力供給ができるのもメリットです。

再生可能エネルギーを導入するメリット

風力発電

再生可能エネルギーの導入で得られるメリットとは何でしょうか。環境問題への対応としてはもちろん、日本にとってはエネルギー自給率の向上や、経済的なメリットもあります。

地球温暖化など環境問題への効果

再生可能エネルギーは、発電時、基本的に温室効果ガスを発生させません。発電設備の建設や廃棄などを含めても、化石燃料を使った発電に比べて温室効果ガス排出量を大幅に削減できます。

さらに、再生可能エネルギーへの代替によってNOx(大気汚染の原因となる物質)の排出量が減少したり、バイオマスの活用で廃棄物が削減できたりと、温室効果ガス削減以外にも環境問題に対しての効果があります。

エネルギー自給率の向上

2019年度の日本の一次エネルギー(石油・石炭など自然界に存在し加工していないもの)の自給率は、12.1%と他のOECD諸国と比べて著しく低い数値です。大きな要因は、石油・石炭・天然ガスといったエネルギー資源が乏しいにもかかわらず、化石燃料による発電に依存していることです。

エネルギー自給率が低いと、国際情勢などによりエネルギーの輸入が難しくなった際、電気を十分供給できなくなる可能性があります。特に資源が乏しい日本では、エネルギー自給率の向上には再生可能エネルギーの利用がカギになるでしょう。

日本に限らず、各国が再生可能エネルギーで発電するようになれば、石油・石炭などの化石燃料を運搬する際に排出される温室効果ガス削減も期待できます。

その他にも高騰する燃料調達費用の削減や、再生可能エネルギー技術の発展といったメリットがあります。

あらゆる問題に対処するため再生可能エネルギーへの移行が急がれる中、エンターテイメント業界でも、地球環境に配慮した取り組みが行われていました。

世界的ロックバンド「コールドプレイ」が再生可能エネルギーを使用したワールドツアーを開催

コンサート中-2

イギリスのロックバンド「コールドプレイ」は2019年、環境に負荷がかかるためコンサートツアーを当面行わないと発表しました。

その3年後の2022年、環境保護に関するさまざまな施策を用意した上で、温室効果ガスの排出を前回のツアーの50%にする新たなワールドツアーを開催しました。具体的にどのような施策を行ったのか見ていきましょう。

再生可能エネルギーの使用

ツアー中はさまざまな再生可能エネルギーを利用して発電を行いました。その一部を下記のとおりご紹介します。

・会場周辺に太陽光パネルを設定して太陽光発電
・廃棄物などからできた持続可能なバイオ燃料の使用
・発電床を設置して観客のダンスをエネルギーに変換
・発電できるバイクを設置

さらにできるだけ化石燃料を使わないために、ほぼすべての電力を再生可能エネルギーでまかないました

移動で出る温室効果ガスの削減

ツアー中の移動では、飛行機の利用が最小限になるように計画されていますが、飛行機以外でアクセスができない場所もあります。そこで、ツアーで使用するすべてのフライトについて、持続可能な航空燃料(SAF)を供給するための追加料金を支払いました。

SAFは、使用済みの食用油などの廃棄物を原料とした燃料です。化石燃料と比較して、ライフサイクル全体で温室効果ガスを最大80%削減できます。

ステージ設備を再利用可能に

ツアー後に再利用、またはリサイクルできる素材をステージ設備に使用しました。軽量・低炭素・再利用可能の条件で材料を集め、組み合わせました。

コンサート中の演出でも環境に配慮

演出として使用される紙吹雪は、100%生分解性のものを使用しました。照明やスクリーンも消費電力が低いものを使用しています。

チケット枚数分の植林

上記のとおり取り組みを行っても、ツアーでは温室効果ガスを排出します。そこで、チケット1枚につき1本の木を植え、温室効果ガスの回収にも取り組みました。

この他にも、下記のとおりさまざまな取り組みを行いました。

・会場への移動による自身の温室効果ガス排出量を観客が確認できるアプリを配信
・マイボトルに補給できる水を提供
・スタッフの食事による環境負荷軽減(プラントベースフードの導入・食品廃棄物の堆肥化・余った食材を地元に寄付・地元食材の使用など)

さらに、コールドプレイはツアー全体の収益の10%を環境保護活動を行う慈善団体などに寄付することを約束しました。

コールドプレイのワールドツアーに対しては批判も

さまざまな施策を行ったワールドツアーでしたが、批判の声もありました。「グリーンウォッシュ」と言われる「環境にやさしくない商品を環境にやさしいように見せるビジネス戦略」に加担していると指摘されたのです。

イギリスではグリーンウォッシュ防止のためにガイドラインが制定されており、フランスでは企業のグリーンウォッシュが判明した場合、罰金が課せられるほど重大な問題です。コールドプレイが受けた批判について、詳しく見ていきましょう。

燃料を提供した「ネステ」による環境破壊

コールドプレイのツアーにバイオ燃料を提供したのが、「ネステ」というエネルギー会社だったことで批判を集めました。ネステのパーム油サプライヤーは大規模な森林伐採を行っていることが知られています。2019年から2020年の間に、インドネシアやマレーシアなどで少なくとも10,000ヘクタールの森林を伐採していたのです。

ネステは、「コールドプレイのツアーではパーム油を原料とした燃料は使用していない」と述べています。ですが、大規模な森林伐採を行っている企業と提携したことで、批判を受けました。

バッテリーを提供した「BMW」は2035年のガソリン車の新車販売禁止に反対

自動車メーカー「BMW」がコンサートの電力供給のためにバッテリーを提供したことにも、批判の声が寄せられました。BMWは、EU内で2035年までに販売する車両をゼロエミッション車のみにする決定に、反対するロビー活動を行っていました。

コールドプレイは「BMWの企業方針に影響されない」としていますが、環境保護対策に反対しているBMWと提携したことで批判を受けたのです。

このような企業との提携は、「批判を受けても仕方ない」と感じる方が多いと思います。ですが、コールドプレイの2022年のツアーが以前のツアーより環境に配慮されているのは間違いありません。

この批判を受け止め、コールドプレイがより環境に配慮したツアーを開催すること、他のアーティストによって環境に配慮したコンサートやイベントが行われることを期待しましょう。

あらゆるイベントで脱炭素を目指そう

コールドプレイは、環境に配慮するために数多くの取り組みを行いました。

再生可能エネルギーの使用、飛行機移動の削減、環境に配慮した飛行機燃料の使用、リサイクルできる素材での設備構築など、コンサート以外のイベントでも取り入れられるアイディアがあったのではないでしょうか。

コールドプレイは批判も受けましたが、今後イベントで環境に配慮した施策を行う主催者への教訓になるでしょう。

多くの人を集めるイベントで脱炭素の取り組みを行えば、環境問題に対する観客の意識も高められる可能性があります。環境に配慮したイベントが増え続けることを期待します。

(ライター:小森 さほ

【参考資料】

再生可能エネルギー導入加速化の必要性|環境省
太陽光発電|経済産業省 資源エネルギー庁
水力発電|経済産業省 自然エネルギー庁
一次エネルギー – 大気環境の情報館|独立行政法人 環境再生保全機構
安定供給 | 日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」|経済産業省 資源エネルギー庁
「環境に配慮」でコンサートツアー中止 コールドプレイ|BBCニュース
Music of the Spheres World Tour: Sustainability
DHL、環境に配慮したコールドプレイ(Coldplay)のワールド・ツアーの輸送を全面協力|PR TIMES
グリーンウォッシュとは?問題点や事例、規制、すぐできる対策を解説|朝日新聞デジタル
Coldplay labelled ‘useful idiots for greenwashing’ after deal with oil company | Environment | The Guardian
EU、ガソリン車の新車販売禁止 35年までに|日本経済新聞
コールドプレイ、環境に配慮した最新ツアーに寄せられた批判についてコメント | NME Japan




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