コラムエコスクール

エコスクールとはどんなもの?国際的動向と先進事例を紹介!

2021.12.13

地球温暖化など様々な課題が深刻化する中、環境を考慮した 学校施設の整備が一層求められています。環境の保全に関する理解と関心を深めるための環境教育の重要性がますます高まっています。

「エコスクールってよく聞くけどどのようなものだろう?」
「実際にどのようなエコスクールがあるのだろう?」

と感じている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は

・エコスクールとは?
・学校施設におけるエネルギー消費の実態
・エコスクールを考える視点3つ
・エコスクールの国際的動向
・エコスクールの先進事例の紹介

についてご紹介していきます。エコスクールのことを知り、学校や教育施設に活かしたいと考えている方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。

エコスクールとは?

文部科学省では、環境を考慮した学校施設を「エコスクール」と称しています。エコスクールは環境負荷の低減に貢献するだけではなく、それを教材として活用し、児童や生徒の環境教育に活かし、地域の環境教育の発信拠点としての役割も果たす学校のことです。

学校が児童生徒だけでなく地域にとっての環境・エネルギー教育の発信拠点になるとともに、地域における地球温暖化対策の推進・啓発の先導的な役割を果たすことが期待されています。

学校施設におけるエネルギー消費について

今、なぜエコスクールが求められているのか、学校施設のエネルギー消費の実情と併せて説明します。

国立教育政策研究所文教施設研究センター研究会の報告によると、2050年における学校施設からのCO2排出量は、現在の標準的な省エネ対策などを実施するだけでは基準年(1990年)比で約10%増になると推計されています。

温室効果ガスの約9割がCO2の排出量である日本において、この予測が現実のものになれば大変な痛手です。

一方で、最新の環境対策、将来の技術革新による中長期の環境対策、電力分野の努力を併せれば、学校施設のCO2排出量は、大幅減が可能(今後、コストなども含めて幅広い観点からの議論が必要)とも推計されています。

照明や冷暖房のエネルギー消費の効率化や、再生可能エネルギーの利用など、学校の立地や実情に併せた工夫によって、CO2排出量の削減は可能ということです。

エコスクールを考える視点3つ

エコスクールは温室効果ガス削減や、子どもたちや地域の環境教育に有意義なものだということがわかりました。ここでは、エコスクールを考えるに当たって大事にしたい視点、3つをご紹介します。

文部科学省の「環境を考慮した学校施設(エコスクール) の整備について」では、エコスクールは、施設面・運営面・教育面の3つの視点から捉えるものとしています。それぞれの詳しい内容は以下の通りです。

施設面 :子供たちなどの使用者・地域・地球に対し「やさしく造る」

◉ 学習空間、生活空間として健康で快適である。
◉ 周辺環境と調和している。
◉環境への負荷を低減させる設計・建設とする。

運営面 :建物、資源、エネルギーを「賢く・永く使う」

◉ 耐久性やフレキシビリティに配慮する。
◉ 自然エネルギーを有効活用する。
◉ 無駄なく、効率よく使う。

教育面 :施設、原理、仕組みを「学習に資する」

◉環境教育にも活用する。

<参考記事>
・文部科学省「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の 今後の推進方策 について」「既存学校施設のエコスクール化のための事例集の内容・参考資料

エコスクールの国際的動向

海外でのエコスクールへの取り組みはどのようになっているのか、疑問に思っている人もいると思います。

OECD/CELE(経済協力開発機構)、 効果的な教育環境に関する委員会議長であり、建築家でもあるトニーシェパード氏によると、OECD加盟国においても、持続可能性や環境に配慮した学校づくりは活発に行われているそうです。OECD/CELEの取り組みをもとにエコスクールの国際的動向を紹介します。

OECD/CELEは、教育施設を効率的に計画・運営して、最大限の教育的効果を引き出すための調査研究や情報交換を行うことなどを目的とした、OECDにある一組織です。日本からは、国立教育政策研究所と東京工業大学が準会員として参加しています。

OECD/CELEが発表する「効果的学習施設好事例集」では、

・画期的なデザイン
・ニーズへの対応性
・持続可能性
・安全性

以上、4つのカテゴリーを基準に世界28カ国から60のプロジェクトが選ばれます。各プロジェクトは多種多様な内容となっています。例えば、

・地元の素材を使って建物を作っている学校
・盲学生のために「感覚の庭」と呼ばれる場所を設計したメキシコの施設
・地域で直面する、雨や暑さに対応したブルキナファソの学校

など、地域の特性や学校に通う子どもたちのニーズを取り入れたものになっています。

アイルランドでは、児童生徒数の増加に応じて増築することができる校舎や、自然採光を十分採れる窓などの施設設計により、年間を通じて使用時間の80パーセントにおいて、人工照明を使わずに運用している学校もあります。

また、気密性の低さは建物内へ冷気が侵入しエネルギーのロスになるという視点から、教育技能省では気密の性能要件が定められています。熱回収換気システムを導入することで、暖房エネルギーの利用の改善にも繋がっているそうです。

詳細は「ニアリー・ゼロエネルギーの学校建築」をご覧ください。

太陽光発電や発電機で、電気エネルギーの14%をまかなうなど多くの有意義な取り組みを行う「コロースチャ チョリム」についての事例も紹介されていますよ。

<参考記事>
・平成24年度 国立教育政策研究所文教施設研究講演会「ニアリー・ゼロエネルギーの学校建築

エコスクールの先進事例の紹介

エコスクールを実際に取り入れている学校を紹介していきます。

デンマーク「The New School」

2022年夏の終わりに開校する予定の「The New School」は、自国初の「北欧エコラベル」を取得した小学校です。「北欧エコラベル」とは地域の公式な持続可能性証明書で、プロジェクトのエネルギー消費量、室内環境、化学物質や持続可能な材料使用などが考慮されているものです。

二階建ての学校のデザインは、周囲の景観に溶け込むようなハの字型の構造。屋根は地面に接するように地形に溶け込み、学校の内部空間は必要に応じて再編成ができます。

(画像:dezeenより)

建物内で行われる学習に捉われず、通学路や地域社会とのつながりを大事にした学習とランドスケープの間で機能する学校になっています。

<見出し内参考>
・「デンマークで持続可能な小学校の建設はじまる 同国初の「北欧エコラベル」も取得」ELEMINIST
・「Henning Larsen begins construction on sustainable school with walkable roof」dezeen

日本 ふじ幼稚園

東京都の立川市にある「ふじようちえん」は、OECD/CELE 学校施設好事例集の最優秀賞を受賞した教育施設です。手塚建築研究所の建築家夫妻が手掛けたドーナッツ型の幼稚園で、建物としての従来の機能を超える効果を生み出していると称されています。

特徴

・中庭を取り囲んだ外周約183メートルのドーナツ型の園舎
・柱と窓枠構造で全面ガラスの引き戸
・各部屋を仕切る固定の壁はなく、園舎全体が一つの大きな空間
・屋根全体にはウッドデッキが張られ、園庭を兼ねている。

屋根の上 (遊び場)

 

 

ツリーハウス (英語のおへや)

(画像:ふじようちえんより)

「園舎は巨大な遊具」というコンセプトの園舎で、園児たちは屋根のデッキに上がると自然に走り回り、デッキには固定の遊具がないので、子供たちは自分で遊びを発見する手掛かりがたくさんあるようです。

園児たちや先生の声、ピアノの音色など、様々な音が入り混じって園舎を抜ける環境は、園児が自分に必要な情報を聞き分けようとする集中力を養います。また、陸上競技のトラックのように走れる屋上は、園児たちの体力向上にも大きく貢献し、設計上先生の目も行き届き、園児が孤立することもないそうです。

<参考記事>
・The official website of the Government of Japan「人のための建築

最後に

今回は、エコスクールの概要や国際的な動向、国内外の先進事例について紹介しました。エコスクールは学校が排出する温室効果ガスの削減や、学校が地域での環境教育の発信拠点になるためにも重要です。

また、エコスクールの取り組みは海外でも活発で、その土地や子供たちのニーズに合わせて展開されています。

みなさんも、それぞれの現場の特性に合わせて施設面・運営面・教育面からエコスクールについて考えてみませんか?

(ライター:上崎 有紀)


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