コラムエコスクール

社会や将来へつながる学校の環境活動! 4つの取り組み事例

2022.02.15

「学生が主体的に活動する環境活動はあるかな?」
「調べ学習だけでない環境活動は、どのようなものがあるのだろう」

と考えていませんか。持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みの世界的な普及、学習指導要領における環境教育の充実によって、学校でも環境に関する取り組みが積極的に行われています。

持続可能な社会の構築に向けて、環境教育で学習したことで完結せずに、実生活や将来へ活かすことが重要です。自ら責任ある働き掛けをすることができる実践力を培うことが、子どもたちが将来、よりよい環境を創造するために求められています。

本記事では、

・環境教育のねらい
・学生主体の社会に開かれた環境活動
・将来のキャリアへと繋がる環境教育

について紹介します。より実践的な環境教育について興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください!

学校での環境教育のねらいとは?

まずはどのような点に気をつけて環境教育を行うことが望ましいのか、具体的なねらいを確認していきましょう。

国立教育政策研究所では、環境教育のねらいを以下のように定めています。

1.環境に対する豊かな感受性の育成

自分自身を取り巻く全ての環境に関する事物・現象に対して、興味・関心をもち、意欲的に関わり、環境に対する豊かな感受性をもつことができる。

 

 2. 環境に関する見方や考え方の育成

身近な環境や様々な自然、社会の事物・現象の中から自ら問題を見付けて解決していく問題解決の能力と、その過程を通して獲得することができる知識や技能を身に付けることによって、 環境に関する見方や考え方を育むようにする。

 

 3. 環境に働き掛ける実践力の育成

持続可能な社会の構築に向けて、自ら責任ある行動を取り、協力して問題を解決していく実践力を培うようにする。

(国立教育政策研究所「環境教育指導資料」より)

以上のことから、環境教育では、学生一人一人が身近な環境と関わりを持ち、環境に対しての豊かな感受性を育むことが求められています。

環境教育における対象は、環境や自然と人間との関り、環境問題と社会経済システムの在り方や生活様式との関わりなど問題が複雑に絡み合っています。単眼的な視点では限界があるため、複眼的な見方、考え方を働かせる能力を育成することがポイントです。

さらに、学習したことを、持続可能な社会の構築に向けて実践する力を育むことが、環境教育には重要だということがわかります。

<参考記事>
・埼玉県 研究報告書 第416号「児童生徒が主体的に取り組む環境教育

社会に開かれた環境活動の事例

ここでは、学生が環境に対しての理解を深め、実社会と繋がった活動事例を2つ紹介していきます。

エコ〜るど京大

エコ~るど京大は京都大学の学生と教職員で構成されている団体です。

全員参加型で環境負荷を低減する「持続可能なキャンパス」(サステナブルキャンパス)の実現を目指して、多様な視点から環境問題について考えると同時に、地域を巻き込みながら行動を起こすことを目指して活動をしています。

「京都大学SDGsリーダー育成プログラム 」では中高生を対象に、オンラインや現地研修を開催しています。「プラごみ問題解決」という研究テーマのもと、サスティナブルバッグの作成・販売に取り組む高校と連携した活動や、中学生の修学旅行の事前学習として、にオンラインによるSDGs授業も行っています。

中高生が、社会問題の背景にある課題を整理する「思考力」、課題を分析し統合的な解決へ向かうための方策を導き出す「発想力」など、「システム思考」で考えることのできる人材へ導くため、学校種の枠を超えて、社会に働きかける活動をしています。

長野県中野西高等学校 ESD珈琲倶楽部

長野県の中野西高等学校は、ユネスコスクールに加盟をしています。

ユネスコスクールとは、ESD(持続可能な開発のための教育)の実践を通して、生徒の人間性やコミュニケーション能力を磨き、

・「自ら問題意識を持ち、行動できる」生徒を育てること
・地域社会や国際社会に目を向け、学校の中にとどまらない幅広い視点で活動をすること

によって、生徒の社会性・国際性を養うことを教育目標としている学校です。

中野西高等学校では、授業でカカオ豆生産の児童労働について学んだ生徒が、フェアトレードの取り組みに賛同し「ESD珈琲倶楽部」を発足しました。この倶楽部では、(株)丸山珈琲の協力を得て、独自のブレンドコーヒーを2種類販売するほか、駅や地域イベントでコーヒーの販売を行っています。

・フェアトレードについて世界の現状を学ぶ
・地元の珈琲会社の協力を得た商品開発や販売
・地元の醤油店のお味噌と甘酒を使ったスイーツの製作

など、世界や地域と繋がった活動をしている点も特徴です。

売上金の使い道を、「アンフェアな取引きが行われるコーヒー農家を元気付けるために出来ることはないか」と、生徒主体で考えるなど地域や世界に目を向けて、グローバルに活動しています。

<参考記事>
・ASPnetユネスコスクール「長野県中野西高等学校
・長野県中野西高等学校ユネスコ委員会「NakaNishi ESD通信 つながりをもたらす一杯の珈琲
・長野県中野西高等学校ユネスコ委員会「中西珈琲を通して学ぶ

将来のキャリアへ繋がる環境教育

次は、学生の将来のキャリアに繋がる環境教育の取り組みを2つ紹介します。

佐久穂町立佐久穂小学校・佐久穂町立佐久穂中学校のキャリア教育

長野県、佐久穂町内の林業事業者は町の8割を占める森林の役割について、林業等を通じたキャリア教育事業を提供したいと考えました。

将来一人でも多くの子どもたちに町に残ってもらい、ふるさとの森林林業を担う後継者を育成することを目的に「さくほ森の子育成クラブ」を設立。キャリア教育事業のカリキュラムを創りました。現在は、佐久穂小学校、佐久穂中学校の4年生から8年生(中学2年生)までの児童生徒を対象に、「森林林業体験学習事業」 としてカリキュラムを進めています。

各学年の主な活動内容は、以下の通りです。

4年生:きのこ駒打ち体験、「水」について「森林の働きと水」の観点からも学習。
5年生:チェーンソー玉切り体験など、機械化された林業の側面を体験。
6年生:白樺の植栽体験や地拵(ごしら)え体験。学校林(11.12ha)を利用した学習。
7年生:日本一の白樺林や製材所の見学・説明。木が育ち、伐採され木材として製品になって使われるところを学習。
8年生:4年生から学習してきた総まとめとして、生徒のインターンシップを実施。

5年間という長期スパンで行う林業のキャリア教育は、森林や生態系についての理解はもちろん、自分の住む町の良さを知ることに繋がります。故郷を愛する気持ちを育むと同時に、自分の生き方や働くことの意義を考える機会になる取り組みです。

<参考記事>
佐久穂町立佐久穂小学校と佐久穂町立佐久穂中学校のキャリア教育「森林林業体験学習事業」のカリキュラム

広島市立広島工業高等学校 広島市工サイエンス工房

広島県にある広島市立広島工業高等学校本校は、ものづくりのスペシャリストを目指して専門分野の学習を行う工業高校です。

この学校では、生徒が習得した技能・技術を活用して教育や社会に貢献するものづくりプロジェクト「広島市工 サイエンス工房」を発足。校外からのものづくりの依頼について担当する工業科やクラブを決め、科目「課題研究」や部活動として取り組んでいます。

特別支援学校にヒアリングを行い、スイッチ補助装置などの教材を開発するほか、「広島市工グリーン・プロジェクト」の取り組みを平成19年よりスタート。地球温暖化の主たる要因の1つである二酸化炭素の「見える化」の普及のために「CO2センサーポータブル」を開発しました。

これは二酸化炭素濃度や温度、湿度の計測ができるほか、データをマイクロSDに記録できる携帯型のもので、植物の光合成を実感できるため、小中学校の授業にも活用されています。他にも省エネ技術や環境センサーネットワークに関する技術研究など、5つのプロジェクトを通じ、エコ社会の構築に貢献するエンジニアを育成しています。

<参考記事>
・広島市工グリーン・プロジェクト サイエンス工房 広島市立広島工業高等学校「工業高校による持続可能なものづくり
・広島市立広島工業高等学校「広島市工サイエンス工房」のご案内

 

いかがでしたか?

学生が主体となり、将来のキャリアに繋がる環境教育はさまざまな形で展開されています。事例の多くは学生自身が、

・課題に気付く
・ 解決方法を考える
・実践を繰り返す

ことが意識され、長期的な活動をしている取り組みが多いです。まずは、各学校の特色や地域の特性を活かして、学生の環境に対する興味・関心を引き出すことができるプログラムを考えてみましょう!

(ライター:上崎 有紀)

 


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