コラムエコスクール

エコな文化祭事例4選 リユース食器・ICTを活用! 

2024.02.19

はじめに

ある調査によると、1000人規模のイベントにおける廃棄物は2285.6kgであり、二酸化炭素排出量は100.71トンであると報告されています。

学校の最大のイベントである文化祭には、全校生徒が参加するだけではなく、地域の住民や保護者など多くの人が来場し、ゴミや移動に伴う二酸化炭素が多く排出される日でもあります。

ですが、昨今の技術革新や仕組みを活用することによって、環境に配慮したエコな文化祭を開催する動きがみられます。

一体、どのようなエコ文化祭が開催されているのでしょうか。本コラムでは、学校の文化祭・学園祭に焦点をあて、文化祭でリユース食器やICTを活用した事例をご紹介したいと思います。

〈参考資料・記事〉
ごみゼロのビジネスイベント目指す:サステナブルイベントネットワークの取り組み | 事例紹介 | ビジネスイベント東京 (businesseventstokyo.org)

以前、Operation Greenのコラムでは、「ごみゼロ文化祭」をテーマに、新渡戸文化学園の「超文化祭」事例を紹介しました。是非こちらもお読みください。
【超文化祭事例】サスティナブルなごみゼロ文化祭を1ヶ月で企画・実行! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
Think the Earth | SDGs for School | 第1回「みらいをつくる超・文化祭」

リユース食器を活用したエコ文化祭

文化祭の模擬店では、たくさんの飲食物が提供されています。その際に欠かせないのは、お皿やカップ、トレーなどの食器類やナイフやフォークのカトラリーです。

紙製のお皿やコップ、プラスチック製のカトラリーでの提供がされており、一度使われたら廃棄処分をすることが一般的ではないでしょうか。

ですが、それらは大量のゴミとなることで環境に負荷を与えかねません。
以前、Operation Greenのコラムでは、ゴミが引き起こす環境問題をテーマに、学校でゴミに対する取り組み事例を紹介しました。是非こちらもお読みください。
学校でのゴミ分別の取り組みで、ゴミ問題解決の第一歩へ!

このような危機感の高まりから、模擬店で使用される使い捨て食器類のエコな代替品として、繰り返して使うことができる食器「リユース食器」に注目が集まっています。

リユース食器とは?

リユース(reuse)食器とは、主にイベントで使用されるもので、使い捨てではなく洗うことにより繰り返し何度も利用可能な食器のことです。リユース食器には、カップや平皿、お椀型のものなどがあります。

ご存じの方も多い「3R」の中に含まれている「リユース(reuse)」。「re」には「再び」、「use」には「利用」という意味があり、「reuse」は「再利用」という意味合いとなります。

〈参考資料・記事〉
リユース食器を使ったエコイベント実践マニュアル (env.go.jp)
学園祭でリユース! | リユース食器ネットワーク (reuse-network.jp)

リユース食器のメリット

リユース食器は、複数回利用することで環境負荷を低下させるメリットがあります。

環境負荷とは、製品の製作の際に投じられるエネルギーや天然資源だけではなく、環境に排出される汚染物質や廃棄物をも含めたことをいいます。

リユース食器を使った場合、環境に対してどの程度の効果があるのでしょうか。大分のサッカースタジアムで用いられたリユースカップの環境負荷を調べた調査によると、リユースカップを一定回数利用することで、紙コップよりも環境負荷が低くなることが分かっています。 

具体的な二酸化炭素の削減効果として、環境省の行った調査によると、1回で使い捨てる紙コップを使用する代わりに、リユースカップを繰り返し使用した際の二酸化炭素排出量削減効果は、0.099kg(リユースカップは 20 回再使用すると仮定し、1 回使用あたりの二酸化炭素排出量を基に試算)だといいます。

〈参考資料・記事〉
3Rエコポイントシステム促進のためのガイドライン (env.go.jp)

リユース食器のデメリット

複数回使うことができるリユース食器は、使い方には十分注意が必要です。特に、不特定多数の人がリユース皿を利用する際は、洗浄の徹底が求められています。洗浄や確認が不十分な場合、衛生面やコンタミネーションが懸念されています。

環境省は、「リユース食器を使ったエコイベント実践マニュアル」をインターネット上で公開し、安全な使用方法を発信しています。

特に、衛生上の事故を起こさないことが一番大切とし、使用前には、リユース食器を確認することを呼びかけています。

〈参考資料・記事〉
リユース食器を使ったエコイベント実践マニュアル (env.go.jp)

リユースカップの場合、保管中に黒カビが発生することがあります(黒カビ対策については適切な温度管理で解決しています。また、口紅痕等の洗いのこりがあったりします。リユース食器の信頼性を損なわないためにも、イベントで使用する前に一度洗浄したり(洗浄済みのレンタル食器の場合は不要)、目視による状態チェックが行われたりしています。
(引用元:リユース食器を使ったエコイベント実践マニュアル (env.go.jp)

模擬店でリユース皿による提供事例

このように、模擬店の食器類に注目をし、繰り返して使うことができる食器「リユース皿」を実際に文化祭で取り入れ、環境に配慮したエコな文化祭に取り組んでいる事例を紹介します。

東洋大学
東洋大学では、2006年から環境系サークル「アカシアの木」により、学園祭「白山祭」においてリユース食器の導入を行っています。2008年には、飲食を扱う25団体へのリユース食器導入が行われ、2009年には、小皿や大皿、おわん、カップなどのリユース食器を新たに購入し31団体に使用が拡大されたといいます。

そして、学園祭当日は、ごみ箱の横にリユース食器の回収ボックスが設置され、運営スタッフがリユース皿の回収を呼びかける姿があったそうです。

さらに、リユース皿の円滑な運営を行うために、運営スタッフ用のリユース食器運営マニュアルの作成や、飲食物を取り扱う団体に向けての説明会を実施したそうです。

使用済みのリユース食器は学内にある食堂で、学生により洗浄が行われたそうで、学園祭期間中の3日間で合計約1万5,000個、重量にして約150kgの使い捨て食器ごみの削減に繋がったといいます。

このように、学生サークルの中には独自のリユース食器を保有することで、毎年の学園祭で活用し、環境に優しい学園祭の開催に繋げている動きも見られます。

〈参考資料・記事〉
学園祭でリユース! | リユース食器ネットワーク (reuse-network.jp)

ICTを活用したエコ文化祭

次に紹介するのは、ICTを活用することでエコ文化祭に取り組む事例です。

オンライン・バーチャル文化祭

芝浦工業大学附属中学高等学校
芝浦工業大学附属中学高等学校では、整備されたICT環境を生かし、動画配信をはじめ、CGやゲームなどICT技術を駆使したバーチャル文化祭を開催したといいます。

生徒自身が校舎や教室を360°カメラで撮影、オリジナルパノラマビューを制作し、Web上で校舎のほぼすべてを再現するなど、オンライン上で校内を散策しながら文化祭に参加できるように準備をしたそうです。

筑波大学付属高校
さらに、筑波大学付属高校では、文化祭実行委員を中心に生徒の発案のもと、仮想空間(メタバース)上に校舎を作り、仮想世界での文化祭に挑戦したといいます。

同校では本番さながらのプレイベントが開かれ、自分の分身であるアバターが校内を歩くと、曲や映像が流れ始めたり、曲にあわせて拍手などの動作をすることができたりと、現実と同様の体験をすることが可能だそうです。

これらの文化祭のオンライン・バーチャル化は、人々の移動を減らし、二酸化炭素の排出量を削減することに繋がることはもちろんですが、学校に来ることができない遠方に住む家族の参加や、移動が困難なお年寄りの参加、ハンディキャップを抱えた生徒など、多様なニーズを抱えた人々の参加を促すなど、仮想世界だからこその魅力を活かした取り組みであると期待されています。

〈参考資料・記事〉
芝浦工業大学附属中高、ICT技術を駆使したバーチャル文化祭 11月開催 | ICT教育ニュース (ict-enews.net)
デジタル世代の文化祭 仮想世界で他校とも交流 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

キャッシュレス化

文化祭では様々な販売活動も盛んに行われています。お会計の際にやり取りをする硬貨をバーコード決済などのキャッシュレス化に移行する事で環境に優しい文化祭を実現する事につながります。

キャッシュレス決済のメリットとして、環境コストを減らすことができることが挙げられます。

現金を鋳造する過程では、大量の紙や金属、薬品などが使用されています。また、鋳造された現金は警備車両とトラックによって配送されています。その過程においては、二酸化炭素が排出されています。

さらに日頃から、私たちは現金を入手するために、銀行やコンビニのATMを利用しています。ATMを稼働するためには、電気エネルギーが消費され、同時に冷暖房などの電気エネルギーも使われることになります。

キャッシュレス決済利用には、現金同様に電気などのエネルギーは必要となりますが、環境への負荷の観点から考えると、現金よりも減らせることが期待されています。

千葉県船橋市立船橋高校
船橋市立船橋高校の商業科では、2019年9月に開催された文化祭の模擬店で初めてキャッシュレス決済を導入したといいます。

会計を担当した商業科の生徒からは、「お金を数える手間が省けるので、スムーズに会計が進んだ」という感想が挙がり、販売する側の立場から、キャッシュレス決済の手軽さと将来性の高さを感じたといいます。

キャッシュレス化によって、環境コストを削減し、サステナブルな社会づくりに貢献することができるのではないでしょうか。

このように、昨今急速に発達する技術や制度を活用することによって、環境コストを削減し、地球に優しい文化祭を実現するだけではなく、全校生徒をはじめ、地域や保護者方々の方々、文化祭に参加する全ての人にとって優しく、思い出に残る文化祭を実現できることができるのではないでしょうか。

〈参考資料・記事〉
中学・高校編プログラム 学校祭のごみを減らそう (city.sapporo.jp)
キャッシュレスでサステナブル?!その意外な結びつき | ECCCA WEB MAGAZINE
公立高校で初のキャッシュレス文化祭 若者を導く「お金の教育」:日経クロストレンド (nikkei.com)

(ライター:樋口 佳純)


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