地域からも保護者からも愛される教育を、他の学校よりも先に始めませんか?
「そんなこといっても、何から始めたらいいか分からない…」
そう足踏みしてしまうかもしれません。でも、ご安心ください。生徒主体としても活動できる「プラスチックリサイクル計画」なら、お金・手間をほとんどかけずに、ゴミの分別徹底を推進していくことが可能です。
「プラスチック資源循環戦略」という新たな国の政策が打ち出された今、学校教育としてリサイクル意識を向上させ、高校卒業後しっかりと環境問題と向き合える大人になることを目指していくことが重要視されます。
今からでも遅くはありません。地域からも評判の良い、環境活動を教育に取り組みませんか?
学校で今すぐに取り組める環境への取り組みとして、プラスチックのリサイクルを推奨しています。もちろんゴミ分別の大切さを知識として教えることは有意義なのですが、学ぶだけでは簡単に忘れ去ってしまいます。勉学に勤しむ学生なら尚更でしょう。
そのために、高校生が意識的にゴミ分別をしけるようリサイクル計画を実施し、「コンタクトレンズのケースの再生プロジェクトへ参加」や「エコキャップ運動」など、高校生に身近な物を通して、リサイクルした経験を身に付けさせることが大切です。実際に継続的に行ったことは、きっと生徒たちの頭の中に残り続けることになるでしょう。
コンタクトレンズのケースのリサイクル率は、コンタクトレンズ消費量のわずか1%であることをご存知でしょうか?おそらくほとんどの人がリサイクルできることを知らずに、「可燃ごみ」として処理しているでしょう。何度もリサイクルできる貴重な資源を「不要なゴミ」として扱っていることは実にもったいないですよね。
具体的に、リサイクルとして集められたコンタクトレンズの空のケースは以下のように社会に還元されます。
・リサイクル業者が引き取る際に出た収益が全額『日本アイバンク協会』へ寄付
・空ケースに取り残したアルミの除去などをやってもらい、障がい者の自立・就労支援を支援
・リサイクル工場を経てシャツやペンなどの様々な新しい製品に再生産
具体的にリサイクルされた後の動向も追いやすく、実際に集めた量が分かりやすいので、学校教育としては非常に適しています。これらの点に着目して、実際に全国の学校で続々と開始されているのが「コンタクトケース回収ボックスの設置」です。
高校生からコンタクトレンズの使用を始める人は、高校生全体の20%以上と利用率が高くなるため、高校生には特に導入しやすいでしょう。
使ったあとの不要なケースを自らの意思でリサイクルするためボックスに入れ、自分がどのように社会貢献できるのか実際に経験することで、“リサイクルを身近なもの”と感じてもらうことが狙いです。
1.文化祭有志にて企画
関西大倉学園では文化祭有志企画にてコンタクトレンズの空ケースの回収を行い、約4㎏(4000個)短期間で見事に集めることに成功しました。
文化祭や学園祭など限定された期間に回収することを告知することで、生徒たちの意識を集め愛やすくなりました。年間を通して設置し、いつでも回収できるようにしておくことも大切ですが、一斉に認知を広げられるこのようなイベントで実施できたことが上手くいった理由なのでしょう。
2.生徒会のボランティア活動
大阪成蹊女子高校では生徒会が中心となって、コンタクトレンズケースの回収について周知・回収まで行われています。その成果は2019年10月~2022年4月までに34.2kg(空ケース34,200個分)です。
生徒会新聞への記載や委員会での各クラスへの拡散により、プロジェクトの情報拡散を生徒中心となって成功させています。
3.部活動・同好会での活動
千葉女子高等学校では2018年11月~2022年4月までの間に34.94kg(空ケース34,940個分)の回収を行いました。
JRC(青少年赤十字)同好会により啓蒙ポスターの掲示、生徒への呼びかけを行ったところ、多くの生徒や教師がその活動に共感し学校全体の活動へと発展していったようです。
このように生徒が中心になり取り組みを成功させている学校が多く見られました。環境のために何かしたいという生徒たちの気持ちが、はっきりと目に見える形や数字で現れるため、この活動は環境のためだけではなくエコスクール計画としても最適です。一人一人の環境への意識を変えていくにはこのような“成功体験”が非常に重要です。
2022年3月に発表されたアイシティのecoプロジェクト通信によると、2013年から始まった「アイシティecoプロジェクト」に参加している学校が1940校、自治体が29ヶ所、企業が835社であることが発表されています。
そしてその結果は、コンタクトの空ケース4億6000万個(累計460.47トン)、1,275.51t – CO2の削減(東京ドーム76.4個分)、日本アイバンク協会へ寄付された累計金額は10,420,479円にのぼります。
これらの結果から教育機関だけでなく社会全体でもこの取り組みに賛同されている方が多いことがわかり、少しずつながらもゴミ分別への意識が定着しています。
〈参考記事〉
・アイシティ eco プロジェクト
・BLUE SEED PROJECT
エコキャップ運動を行うことでボトルキャップのリサイクル率が高まり、それと同時に可燃ゴミの原料によるCO2の削減が期待できます。また、ペットボトルのキャップ2kg(1000個)で1人分のポリオワクチン支援ができます。ボトルキャップは以下のような工程を経て、世界の子どもたちのワクチンとなります。
集められたペットボトルキャップは、回収業者によって回収されます。回収されたボトルキャップは工場でポリエチレンとポリプロピレンに分けられ、粉砕・洗浄・高熱加工され「再生原料ペレット」に生成されます。そのペレットを利用しクリアケースや洗濯バサミへと生まれ変わります。
そのリサイクル資源である「再生原料ペレット」を売って得られた利益の一部が、JCV(認定NPO法人-世界の子どもにワクチンを-日本委員会)へ寄付されます。その後、国連児童基金(UNICEF:United Nations Children’s Fund)と連携して世界のワクチン工場へ発注され、子どもたちへ届くというシステムです。
要約するとエコキャップ運動の目的は以下の3つです。
・ボトルキャップのリサイクルの促進
・可燃ごみの減少によるCO2の削減
・再生原料で得た利益で世界の子どもたちへポリオワクチンを届ける
2006年から行われているこの活動の発端は、ボトルキャップが燃えるゴミとして廃棄されていることを知った神奈川県の女子高生が「もったいない!キャップはリサイクルできないのか?」という小さな声から始まった活動です。その活動に共感した全国の子どもたちによって広められ、国を巻き込むまでに大きな団体に発展しました。
また、環境問題に積極的に取り組む中学・高校では、エコキャップ運動が長い間続けられています。継続するための経費や手間もなく、導入しやすいため全国の学校で続々とこの取り組みを開始する学校が増えています。
〈参考記事〉
・ペットボトルキャップ回収 – 世界の子どもにワクチンを 日本委員会
・国際連合広報センター
おそらく、プラスチックリサイクルのための回収ボックスを校内に設置するだけでは、なかなか集まらないのではないかと思います。そのため、美化委員や生徒会などの委員会活動・部活動・有志のグループ・クラス単位など、生徒を中心とする「できるだけ大きなリサイクル推進グループ」を発足させることが、学校内でリサイクル活動を成功させる方法として推奨されます。
なぜなら、集団で行うことで「バンドワゴン効果」が働き、誰かがやるならやってみようかな?という心理効果が得られるからです。もし、ごく限られた人数でプロジェクトをスタートしてしまうと、そのグループは少数派となり、攻撃の対象となってしまう可能性があります。だからこそ、共感能力や集団行動を重視する日本人には、なるべく大きなグループでの活動を強く勧めます。
もしグループが出来上がったら、学生新聞や学校集会、学校のブログなどを通して、活動報告やリサイクルの必要性などを訴えていく機会を設けましょう。
そうすれば、「自分達で集めた資源がこのように社会に還元された」ですとか、「この活動にはこのような意味があったのか」と再確認し、ごみ分別や環境問題に対する生徒の意識は向上していくことでしょう。
令和3年6月、プラスチック製品の設計や使用を減らすと共に、プラスチック製品の再生利用を促す「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立しました。この法律により、流通の主体となっていたプラスチック製品が紙製品や、植物資源から生成されるバイオプラスチックに続々と代替利用されています。
その1年後となる2022年5月に政府は「プラスチック資源循環戦略」を策定し、3R+Renewable(再生可能な資源に変える)の基本原則と、6つの野心的なマイルストーンを目指すべき方向性として掲げました。
その背景には、プラスチックごみ問題、気候変動問題、外国への廃棄物輸入規制の強化などが関わっています。これらの理由からプラスチック資源循環をさらに促進させることが急がれるようになりました。
〈参考記事〉
・プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ(環境省)
・容器包装廃棄物の排出の抑制並びにその分別収集及び分別基準適合物の再商品化の促進等に関する基本方針
なぜ高校生がゴミの分別について必死に学ばなければいけないのか、環境問題に対する意識を上げることも重要ですが、それ以外に「リサイクルを実施しない大人が問題になっている」ためです。たとえば、大量のプラスチックゴミを「燃えるゴミ」として出してしまい、ゴミの分別を徹底しているマンションの管理者が頭を抱えてしまうというケースがあるといいます。
そのことが顕著に現れているのが、2009年に環境省により高校生や大学生、一般市民を対象に実施された『学生の 3R 意識や行動に関するアンケート調査』です。
この結果によると、「リサイクルという言葉に聞き馴染みはあるが実際に行動に移しているか」という質問には「リサイクルを実施している」としっかり答えられる人の割合は50~65%に留まっています。
学生のうちから知識だけではなく、リサイクルを自ら実施し集めたものが今度どのように社会に還元されていくのか、行動を通して身につけていくことが必要です。その行動こそがこれから大人になる生徒たちへの自主的な環境問題へ取り組む力となります。
日本では2000年(平成12年)に循環型社会形成推進基本法において3R(Reduce、Reuse、Recycle)が導入されました。この政策により、ゴミの排出量は年を追うごとに明らかな減少を見せています。
(出典:環境省ホームページ『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について 』)
しかしながら、便利さを過剰に追求してきた昨今、使い捨て商品はまだまだ世の中に溢れています。そのため、収集された膨大すぎるゴミの量や資源の枯渇が今もなお、深刻な問題として根強く存在しています。そのため、今すぐできる簡単なことからリサイクルの輪を広げていく必要があります。
まずは小さなこと、今すぐ始められることから始めていきましょう。
〈参考記事〉
・学生の 3R 意識や行動に関するアンケート調査
・一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和元年度)について
(ライター:堀内 香菜)