コラムエコスクール省エネ

省エネしながら快適に過ごすには?学校全体で夏の暑さに立ち向かう方法

2022.07.22

年々ひどくなる夏の暑さに頭を抱えていませんか?

生徒を暑さから守るためにエアコンを入れるけれど、国からは節電をするよう勧告されており、一体どうすればよいのか途方に暮れている先生方も多いのではと思います。

また、熱中症予防や暑さで倒れる生徒への対応や、異常気象による行事などの変更など、先生方はご対応に追われていることでしょう。

そんな暑さから生徒を守りながらも、節電ができる対策を実施していきませんか?

この記事では生徒と一緒に猛暑に立ち向かい、「節電をしながら暑い夏を乗り切る方法」と「国が推奨する再生可能エネルギー」についてご紹介していきます。

 

1.生徒に最適な環境とは?

令和4年3月31日に施行された文部科学省の学校環境衛生基準では、教室等の環境について

『18℃以上、28℃以下であることが望ましく、二酸化炭素濃度は基準濃度 1500ppmを越えないように換気回数を定める』と国から定められました。

そのため、最適な温度を保ちつつ、こまめな窓やドアの開閉が必要不可欠です。二酸化炭素濃度が基準濃度を上回ってはいけない理由は、「学校環境衛生基準マニュアル」から抜粋したように、室内の二酸化炭素濃度が上がると同時に風邪の菌や流行りのウイルスなどの空気感染が起こりやすくなってしまうためです。

【換気が必要な理由】

換気の基準は、二酸化炭素の人体に対する直接的な健康影響から定めたものではない。

教室内の空気は、外気との入れ換えがなければ、在室する児童生徒等の呼吸等によって、 教室の二酸化炭素の量が増加するとともに、同時に他の汚染物質も増加することが考え られる。このため教室等における換気の基準として、二酸化炭素濃度は 1,500 ppm 以下 であることが望ましいとしている。

〈引用:学校環境衛生基準マニュアルによる各検査の意義と事後措置

二酸化炭素の排出量は体格によって変わるので、1時間あたり中学校なら3〜4回、高校なら4〜6回の換気が必要と言われています。可能であれば実際にどのくらいの時間で締め切った教室が規定の濃度に達するのか、CO2測定器で測定してみるのもおすすめです。

このように、適切な温度設定と教室の換気をすることで、健康を損なわずに学びの環境を整えることができるとされているため、エアコンの使用と定期的な窓・ドアの開閉を行うよう指導しなければなりません。

〈参考〉

学校環境衛生基準

学校における環境衛生(感染症対策)

 

2.学校で節電するためにできること

室温を適切に保つためにはエアコンを使用すれば解決しますが、省エネを推奨されている昨今、なるべく電力を抑えるよう心がけておくことが必要です。

そのため、エコ活動が活発な学校では以下のような取り組みで「節電」を行なっています。

①熱が最も侵入する窓に対策をする

冷房をより効果的に効かせるなら、太陽の光や外気の熱が入ってきやすい窓への対策が有効です!グリーンカーテンやすだれ、日除け、フラクタル日除けの設置で窓の外側への対策し、窓自体の温度上昇を防ぐことで、室内の温度上昇を抑えることができるからです。

もし外側から対策ができない場合は、内側からオールシーズン用の断熱シートを貼ったり遮光カーテンでしっかり日光を遮ったりして暑さ対策をすることも可能です。

また、エコ活動が活発な山口県の学校では、グリーンカーテンの設置を行なっている学校が多いようです。植物の栽培方法を学ぶとともに、日射熱から教室を守る役割を持つグリーンカーテンの恩恵をしっかり受けながら、日々の学校生活を送られています。

このように、窓周辺の熱射対策をすることで、エアコンの冷房の効きを良くすることができます

〈参考〉・COOL CHOICE(環境省)

②オンラインで全校集会を行う

そもそも体育館は設計上の問題から風通りが悪く熱がこもりやすくなっています。具体的に暑さ指数で見ると、午後1時ごろから高まっていき、午後5時~6時がピークを迎えます。そのため、夏場に体育館に生徒を集めるなら午前中が適しています。

しかし、どの時間を取っても体育館内の温度は非常に高いので、窓を開放しつつ大型のスポット扇風機で空気を循環させ、室内温度をできるだけ下げることが大切です。

また、一部の学校ではモニター越しにオンライン集会を行なっている学校もあるようです。体育館ではなく教室から全校集会を行うことで、移動時に冷房をOFFにしないため省エネにもなるだけでなく、快適な空間で集中して先生方のお話に耳を傾けることもできるでしょう。

全校集会で体育館や校庭に集まる学校もまだまだ多いですが、今後このようなオンラインツールを使うことで、体育館など暑い場所での指導を減らしていくことも可能です。

③運動中や後に熱中症予防グッズを利用する

体育の授業のあと、ほてる体を冷やすためにエアコンをガンガンに冷やしたがる生徒も多いのではないでしょうか?

しかし、アメリカのスタンフォード大学の研究「手のひら冷却」を元に開発されたアイスバッテリーやネッククーラーなどの熱中症予防グッズを使用すれば、体温を効率よく下げることが可能です!だから、余計な電気を使って教室の室温を下げる必要がありません。

その他にも冷却スプレーや水に濡らすだけで冷えるタオルなど、夏バテを防止するグッズはたくさんあります。電気を使わずに適正体温を保つことができるグッズを利用して、省エネを心掛けながら夏を乗り切りましょう!

 

3.太陽光発電を実施!再生可能エネルギーを使用する

〈引用:再生可能エネルギー設備等の設置状況に関する調査結果(令和3年5月)

エアコンや照明の電気代節約とともに、太陽光発電ができる太陽光パネルを屋上に設置する学校が増えてきています。学校の使用電力の一部を補うという本来の目的はもちろんですが、停電時にも利用できるため防災的な観点からも必要とされています。

具体的な取り組みとして、2022年1月から翌年にかけて、神奈川県横浜市で再生エネルギーの普及に向け、65校の大規模で太陽光発電の準備が行われています。私立の小中学校の屋上に太陽光パネルを設置し、自家発電・消費を行っていくことで「脱炭素化」の実現を目指しています。

この実施校である中川西小学校では、2022年1月より稼働を開始し、81枚の太陽光パネルを設置しました。これにより年間2万9千キロワット時の発電、同校が使う電力の約15%がまかなえるだけでなく、年間12・8トン分の二酸化炭素を削減できるといいます。

このように、発電効果や脱炭素など確実な結果をもたらすことから、学校は地域にとって環境・エネルギー教育の発信拠点になることが期待されています。今後も多くの学校で太陽光発電の実施が増えていけば、日本の発電量も少しずつではありますが、確実に減っていくことでしょう。

〈参考〉

学校施設への太陽光発電導入の推進(文部科学省)

朝日新聞デジタル

4.年々暑くなる原因は温室効果ガス

2022年7月、イギリスやフランスなどのヨーロッパ諸国にて最高気温45度を記録しました。300人以上の熱中症患者を出し、一部地域では「国家非常事態」を宣言するほどの猛暑です。また、熱波により山火事を起こしたり干ばつで水不足になったりと、生活を脅かすまでに温室効果ガスによる大気の停滞が深刻になっています。

この異常気象は日本も例外ではなく、2022年の夏の暑さは過去150年で最も暑く、東京では5日連続で35度以上の猛暑日が続き、群馬県伊勢崎市では最高気温40度を記録しました。

これらの原因は地球をぐるりと覆い尽くす、二酸化炭素などの温室効果ガスです。大量の電力を発生させるため、人為的に石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やし、二酸化炭素を空気中に放出し続けてきた結果、分厚い温室効果ガスを作りあげてしまいました。

その結果、気温の上昇、海面の水位の上昇、海の性質の変性を起こしてしまっています。

世界の気温は1906~2005年の間に約1℃上昇し、海水の膨張や氷山の崩壊により海面の水位も約17cm上昇しました。また、二酸化炭素の増加により、海の水のpHが0.1酸性化しています。

気温上昇を抑制させる役割のある海もキャパを超えてしまい、残念なことに水温の上昇を始めてしまいました。その海水温の上昇のせいで海流の変化、水面の上昇による地形の変化などを起こし、人々の生活を脅かしています。

〈参考〉

脱炭素ポータル(環境省)

気象庁 Japan Meteorological Agency

 

5.夏の暑さを助長させないために節電する

夏の暑さや異常気象など、環境破壊の影響は今後さらに猛スピードで加速していくとみられています。そのため、一刻も早く「カーボン・ニュートラル」を実施するため、脱炭素化しなければなりません。

では、いますぐに問題になっている化石燃料の使用をやめられれば良いのですが、実際それは厳しいとされています。なぜなら、化石燃料以外の発電装置である風力・地熱・太陽光などだけでは、現在必要な電力をまかなうことができないからです。それだけ私たちの生活は、地球の資源である「化石燃料」の発電力に頼って生きているのです。

もし私たちが自給自足で生活し、電力をほとんど必要としない生き方をしていたなら、きっと化石燃料を毎日ゴーゴーと燃やす必要はありません。とはいえ、その便利な生活を続けてきた私たち現代人に、今の生活を全て捨てることはほぼ不可能でしょう。しかしながら、このまま私たちが何も改善する気持ちがないのであれば何も変わっていきません。

2015年に国際的な取り組みとして「パリ協定」が結ばれ、日本でも2020年10月に『カーボンニュートラル』(2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)の実現のための目標が作成されました。

この目標を達成するためにも、まずは電気代の節約から、1人1人が少しずつ地球を思いやった行動や生活に変えていくとともに、再生可能エネルギーを得るため、もっとあらゆる場所で発電装置の設置をしていき、化石燃料の使用を減らすように尽力していかなければなりません。

〈参考〉

平成23年版 環境・循環型社会・生物多様性白書

(ライター:堀内 香菜)

 

 


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