コラム節水・雨水利用

学校での節水活動や雨水活用を通じて水への関心を高めよう

2022.12.02

「水の惑星」と呼ばれる地球。私たち人類だけでなく、動植物や昆虫、微生物に至るまで、この星に生きるものは水がなければ生命を維持することはできません。その大切な水を”資源”として捉え、さらに”循環”の観点から保全に努めようという考え方に基づいて、これまでも企業や学校ではさまざまな取り組みがなされてきました。

当OperationGreenのwebサイトでも、これまで「雨水利用と企業の導入事例|環境にも優しい雨水を見直そう!」「節水はなぜ必要?その理由と学校での過ごし方を学ぼう 」などのコラムで、解説しています。

学校で積極的に節水活動を行ったり、雨水循環を活用したりすることで得られるメリットは、単に上水道から送られてくる水資源の節約というだけではありません。水道水を使わないことで、その水質浄化に必要な電力に伴うCO2の発生量を結果的に削減させ、利用法によっては学校緑化や非常時の備蓄に用いる水としても活用できます。

また水は食やエネルギーの問題とも深く関連することから、水について関心を高め、知識を深めることで、グローバルな視野で物事を考える態度や習慣を身につけることができます。

37年の歴史を持つ副読本「みなおそう埼玉の水」

埼玉県では、主に小学4年生を対象とする社会科副読本「みなおそう埼玉の水」を、1985(昭和60)年から毎年、年度ごとに改定を加えたバージョンで発行しています。私たちの暮らしを支える水がどこからきて、どこへ行くのか。農業・工業とのかかわりや治水の歴史、渇水や地盤沈下、雨水の活用など埼玉県が抱える水の問題を幅広くとらえ、子供が自ら調べ、考えられる教材として37年の間親しまれています。

例えば2006年に埼玉大学教育学部附属小学校で実施された3単元11時間の授業では、まず児童が学校内にある水道の蛇口を調べ、一日に消費される水の量を量ることからスタートします。そこから水道管をたどり、市の水道部や浄水場、水源をめぐっていき、地域の中で水がどのように循環し、どんな人々がそこに関わっているのかを、身をもって体験するカリキュラムが組まれました。

この学習を体験することで、「蛇口をひねれば当たり前のように水が出る」のは、実は当たり前のことではない、という実感形成が期待されるのです。

学校における雨水活用の事例

宇都宮市立豊郷中央小学校では、貯留した雨水を使った野菜作りが行われています。きっかけは、なんと子供たち自らの発案だそうです。

もともとは2019(令和1)年の台風19号が市域へもたらした浸水被害から、万一の際の滞積汚泥対策として校内に設置された雨水タンク。同じような設備が植物の育成に使えることを図鑑で知った児童が、「野菜作りや校庭の水まきに利用したい」と申し出て始まりました。生活科の授業と連動し、ミニトマトやナス、きゅうりなどの苗の育成に役立てています。

新潟県長岡市立川崎小学校では、さらに大規模な雨水利用システムを導入しています。校舎棟屋上に設置された集水設備から、雨水が屋外の機械室地下貯水槽に送られます。貯留した雨水は濾過してポンプ圧送し、散水やトイレ洗浄、園芸用水、防火用水として利用されるという仕組みです。

学校における節水、水量調節の教育・普及啓発

水の大切さ、循環の仕組みといった基礎的な学習をベースに持っておけば、前章のような雨水活用についても、その意義が自然と理解できるようになります。単に「水の無駄遣いをやめましょう」「大切に使いましょう」と指導するよりも、その背景を理解することが、生活の中での節水や水量調整につながっていきます。

行政・企業・市民と専門家協働での「水に関するリテラシー」向上を提唱する「アクアスフィア・水教育研究所」は、学校への出前授業を行っています。

静岡県沼津市の中学校で実施された特別授業および全校生徒対象の講演会では、生徒から「なぜ海水97.5%、淡水2.5%という比率なの」「水の再利用はどうやってやるの?」「なんで水道インフラが老朽化しているのに修善しようとしないの?」という身近な疑問から、「世界の水不足はこれからどうなっていくのか」「世界の水不足が解消された時には、どういう社会になっているのか」といったグローバルな視点での質問が出るなど、活発な意見交換がなされました。

同研究所代表でメディア編集長の橋本淳司氏は、インド西部のマハラシュトラ州ガンジャード村で雨水を貯めて食料生産に活用するプロジェクトを運営、また中国でも教育活動を行っています。氏は、グローバルな水不足を解決する重要な視点として「技術的な解決策」「ルール・制度の整備」「教育・普及啓発活動」を挙げています。

東京都墨田区に事務局を置く「NPO法人雨水市民の会」も、雨水活用の観点から教育・普及に力を入れている組織のひとつです。活動の一環として、小学校〜高校への雨水活用・水循環に関する出前授業を実施しています。2022年の9月には、教師の要請を受けて調布市立第七中学校の生徒を「すみだ生涯学習センター・ユートリヤ」に招き、雨水活用に関する校外学習を行いました。

愛媛県の河原デザイン・アート専門学校は、水の大切さや利用法を学ぶ立場からさらに一歩進んで、社会に提案していける人材を育てる試みを行っています。インテリア・建築デザイン科の学生がチームを組み、建築の視点で雨水活用システムを設計するワークショップを開催しました。

鹿島建設やTOTOなど、ハードやシステムを開発する企業の側から学校へアプローチする事例やノウハウも充実化が期待されます。

鹿島建設では、建築物の運用時エネルギー消費量を限りなくゼロに近づける思想「ゼロエネルギービル(Zero Energy Building/ZEB ゼブ)」を学校に応用した、「ゼロエネルギースクール(Zero Energy School/ZES ゼス)を推進しています。学校を対象とすることで、省エネルギー化によるコスト低減効果だけでなく、環境教育の生きた教材として活用されることを目指すものです。

同社のwebサイトでは、京都市の立命館大学長岡京中学・高校新キャンパスの導入事例が紹介されており、「地域性を活かした計画」「自然エネルギー利用」「ピークカットに寄与する電力デマンド低減」「災害時の地域貢献と省エネの両立」「学校活動と連携した環境への取組み」という5つの目的が掲げられました。

水は古来から、人々の生活に多大な影響を与えてきました。自然の循環の中で、河川の氾濫や風雨被害、渇水・水不足による電力や農作物への影響、水質汚染や海洋汚染など、冒頭に記したようにエネルギーや食糧、生命に大きくかかわる問題に関連します。教育と環境整備を通じて、学校で自ら「水」について考えることのできる仕組みをつくることが、ますます必要とされる時代になっているのです。

(ライター:大石雅彦)

<参考資料・記事>

・OperationGreenコラム記事
雨水利用と企業の導入事例|環境にも優しい雨水を見直そう!
節水はなぜ必要?その理由と学校での過ごし方を学ぼう

・埼玉大学教育学部附属小学校の教育事例
みなおそう埼玉の水 – 埼玉県 (saitama.lg.jp)
小学生は、水をどのように学んでいるのか│18号 排水は廃水か:機関誌『水の文化』│ミツカン 水の文化センター (mizu.gr.jp)

・宇都宮市立豊郷中央小学校の雨水活用事例
雨水で野菜育てる(宇都宮市立豊郷中央小学校) : 2030 SDGsチャレンジ : 読売新聞教育ネットワーク (yomiuri.co.jp)

・新潟県長岡市立川崎小学校の雨水活用事例
エコスクール-環境を考慮した学校施設の整備推進-(平成20年度版) (mext.go.jp)

・沼津市の教育事例
アクアスフィア・水教育研究所

・静岡県沼津市の中学校で授業 | aqua-sphere

・インドの雨水活用
水不足のインドで雨水を貯めて食料をつくるプロジェクト(橋本淳司) – 個人 – Yahoo!ニュース

・中国の学校での授業
教育は水問題を解決できるか 橋本淳司 | aqua-sphere

・雨水市民の会 調布の中学の事例
雨水市民の会 » SDGsを学ぶ中学生、雨水活用を体験学習 (skywater.jp)
【SDGs】雨水を有効活用して水の循環を取り戻す (tv-asahi.co.jp)

・愛媛県 河原デザイン・アート専門学校 インテリア・建築デザイン科で行われている「雨水活用建築ワークショップ」!
(138) 特別授業●雨水活用建築ワークショップ!【夢・仕事・愛顔(えがお)】〈2019.3.8放送〉 – YouTube

・総合的なシステム(ハード)構築
エコスクールで省エネ | 学校・教育施設 | 技術とサービス | 鹿島建設株式会社 (kajima.co.jp)
学校トイレに求められていること:エコロジー | 学校・幼児施設 | パブリック向け商品 | 商品を選ぶ | TOTO

・世界の水道普及率
水道普及率ランキング – 世界事典 (theworldict.com)

 


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