コラムエコスクール廃棄物

給食による生ゴミを減らそう!コンポストを使って学校で堆肥を作る

2022.08.25

給食の食品廃棄物の問題は学校関係者を大きく悩ませる問題となっています。

「残さず食べよう!」と長年に渡り指導されている成果により、食べ残しによる廃棄量が少しずつ減ってきています。

しかしながら、食べ残しや調理中に出るヘタなどのごみは、まだまだ多いのが現状です。

その事態を緩和すべく、今回は”廃棄せざるを得ない生ごみをどう処理すべきか”に焦点を当てながら、コンポストを使って生ごみを減らす方法や実例についてご紹介していきます。

1.学校給食によって廃棄されるゴミ

学校給食から生まれる生ごみは、年間どれくらい廃棄されているのかご存じでしょうか?

環境省の調査によると生徒1人あたり年間7.1kg。調理時に発生するヘタや皮などの食品ロスを含めて、1校につき約5トンもの生ごみを廃棄しています。

食品ロスの問題に真摯に取り組まれている学校では「残さず食べよう」「好き嫌いをなくそう」という教育が行われ、生ごみの廃棄量が減少しつつありますが、廃棄量を減らし切ることはできていないのが現状です。

多感で自己主張の強い時期にある生徒たちにとって、嫌いなものを無理して食べようという気持ちが起こらないことや、体型維持のためのダイエットによって食べる量が少なくなっていることが考えられます。

学校サイドが、自分が食べられる分だけ各自で配膳するスタイルを取ったり、なるべく学生が好む献立を考えたりして試行錯誤していても、学生の”もったいない”の意識が低ければ、どれだけ良い対策を打ち出しても食品廃棄物の量がなくなることはないでしょう。

そのような「仕方なく出てしまった生ごみ」を、そのままゴミとして捨てるのではなく、せっかくならコンポストを活用して環境問題に取り組んでいければ良いと思いませんか?

コンポストを行う過程で、実際に捨てるはずのゴミを目の当たりにすることで、学生はきっと「こんなに捨ててたの?」と衝撃を受けることでしょう。

〈参考資料・記事〉

・平成30年度 食品循環資源の再生利用等の促進に関する実施状況調査
・令和元年度 学校給食から発生する食品廃棄物の削減などに関する取組の支援業務1 報告書
・コンポストとは?やり方、方法、作り方、メリット、デメリット、種類、堆肥、特徴など – LFCコンポスト

2.生ごみを減らすためにコンポストを採用

生ごみを減らすための対策として全国の学校でも実施されているのが「コンポスト」です。

コンポストとは生ごみを土に含まれる微生物の力で分解し、堆肥として生まれ変わらせることで、近年さらに注目を集めている生ごみ廃棄量を減らす技術です。

〜コンポストを行うメリット・デメリット〜

●メリット

  • ・ゴミを減らすことができる
  • ・堆肥を作り、野菜や花に栄養を与えることができる
  • ・環境保全につながる
  • ・学生に給食の食品ロスについて身近に感じてもらうことができる

●デメリット

  • ・悪臭や害虫が発生する可能性がある
  • ・堆肥ができあがるまでの熟成がかかる
  • ・定期的に土をかき混ぜる手間がかかる
  • ・土いじりが苦手な一部の学生から嫌がられるかもしれない

〜コンポストの種類〜

コンポストにはいくつか種類があります。

  • ・設置型コンポスト:庭に掘った穴に生ごみを埋め大きなコンポスターを被せる
  • ・回転式コンポスト:回転させることで手を汚すことなく撹拌できる機械を使用する
  • ・密閉型コンポスト:密閉容器で発酵させる。強い匂いを放つ
  • 段ボールコンポスト:段ボールに資源を入れ生ごみを投入する
  • LFCコンポスト(バック型):コンパクトなのでベランダでも使用可能
  • ・電動生ごみ処理機:電気の力で生ごみを堆肥化させる
  • ・ミミズコンポスト:ミミズを入れた容器に生ごみを投入して分解させる

それぞれにメリットがありますが、学校など近隣に民家があるような場所や、限られた土地や予算で行うなら、必要な物品を揃えればすぐに開始できる”段ポールコンポスト”や”LFCコンポスト”がおすすめです。

その中でも最も低予算で始めやすいのは段ボールコンポストです。

〜段ボールコンポストの使用方法〜

1. 段ボールに専用の土を入れます

2. 水分をよく切った生ごみを加えます

3. 虫が入らないようビニールかコンポストキャップを被せます

4. 雨がかからず風通しのよいところに気温が15°くらいの場所に設置します

5. 1日に500〜1000g程度の生ごみを追加して攪拌していきます

6. 3ヶ月くらい経ったら生ごみの投入をストップし、1ヶ月の熟成期間に入ります。その間、1週間に1度はしっかりと土を撹拌させます(この1ヶ月で微生物の活動が活発になることで土の温度も上昇し、生ごみの分解も進んでいきます)

7. 堆肥が完成したら花壇や畑の土に混ぜます

 

※配膳後に食べ残した食材に着手するのは衛生的な問題があるため、調理時に出た可食部分以外のヘタや皮、配膳前の料理などの食品廃棄物を使用がおすすめです。調理員さんに、野菜のヘタなどの生ごみをまとめてタッパーなどに入れておいてもらうと良いでしょう。

コンポストは食べ残しの根本的な解決にはなりませんので、食べ残しを減らすための食育教育は継続していくべきです。

しかし、調理過程でどうしても出てしまうゴミは無くすことができないもの、やむをえず食べきれなかったものなどを、”SDGs教育”としてこのように利用することを学ばせるのも大切です。

〈参考資料・記事〉

・ダンボールコンポスト始めませんか? – 江津市ホームページ

3.段ボールコンポストを行った高校の実例

兵庫県のある高校にて”SDGs教育”の一環として、『段ボールコンポストによる堆肥化』が実験的に行われました。実験に使用した生ごみは、職員室で出た生ごみである、コーヒー豆、茶葉、バナナの皮などです。毎日クラスの学生がローテーションでコンポストの手入れを行い、生ごみを毎日追加した結果、合計約24kgの生ごみを回収・堆肥化し、見事成功させることができました。

以下のコメントは、この実験を通して得られた学生の感想です。

  • ・生ゴミはほっとくと臭くなって虫が湧くと思っていましたが、コンポストにすると生ゴミが野菜の肥料になったり、微生物がいるほどコンポストの温度が高くなったりすることを学びました。
  • コンポスト実験は大変そうだなと思っていたけど、思った以上に簡単にできて面白かった。生ごみをたくさん入れたのに、コンポストの中の土が酷い臭いじゃなかったことに驚いた。
  • ・生ごみを有効活用していて環境にもいいし、ここでできた堆肥を使って家庭菜園をするとより安全で美味しい野菜とかが作れると思うので、ぜひやってみて欲しいと思った

上記の感想にもある通り、男女ともに段ボールコンポストに対して肯定的な意見が多くみられました。生ごみの削減もできるため各家庭で行えば良いのに、という前向きな気持ちもありました。

環境に良いことが簡単にでき、クラスのみんなで協力して行える”段ボールコンポスト”は、生ごみを減らす糸口になるでしょう。

〈参考資料・記事〉

・神戸市:段ボールコンポスト観察記録(令和3年度)

4.女子学生にも抵抗なく始められるオシャレなバッグデザイン「LFCコンポスト』

「土や植物は汚いし汚れる」と敬遠されてしまうことがほとんどで、特にオシャレに気遣う女子学生からの評価はあまり良くないのではないでしょうか。そういった綺麗好き・可愛いもの好きの女性にも好評な”LFCコンポスト”が人気を集めています。

〜土いじりやガーデニングに苦手意識を表す理由と打開策〜

  • ・虫が嫌い
  • ・メンテナンスがめんどくさい
  • ・汚れるのが嫌

土いじりやガーデニングなどを苦手に感じる人が多く存在しています。上記に挙げたように、虫が嫌い・メンテナンスが億劫・土で汚れたくないという理由で土に触ったり畑仕事を嫌がってしまうようです。

これらの苦手意識を無くすために推奨されるのが「LFCコンポスト」です。

まるでインテリアの一部にもなるバッグ状のコンポストは、チャックを閉じてしまえば土が入っているなんて思えないほどスタイリッシュです。また、虫が入りにくいチャック付きで衛生面にもこだわっているので、虫嫌いの方でも使いやすい構造です。さらに、取手があるので持ち運びも楽々で手をほとんど汚さなくて済みます。

1セット4,994円(税込)とやや価格が高いですが、開閉もチャックを開け閉めするだけ、生ごみを加えて混ぜるだけなので、家庭菜園や土いじりを敬遠する学生にとって気軽に始めやすい方法です。

学業に追われる学生たちも、これを使えば最小限の手間で環境のSDGs教育を行うことができます。

土や植物にあまり触れ合う機会のない学生だからこそ、まずは写真映えしそうな目を引く方法で興味をひかせてみるのはいかがでしょうか?

〈参考資料・記事〉

・【公式】LFCコンポスト

5.コンポストで生ごみを土に還そう!

可燃ごみとして廃棄されるだけだったはずの生ごみが、土に含まれる微生物の働きによって堆肥になることができます。そのため、花壇や畑がある学校では少しずつではありますがコンポストが導入されています。

ゴミを捨てるのは簡単です。

ですが、手間をかけさえすれば自分の手で土に還すこともできます。捨てるしかない生ゴミを学生たちの手で自然に還していくことで、実際の廃棄量を数字ではなく”学生たちの目”で確認させるのも良いのではないでしょうか

廃棄する生ごみを見れば、給食の料理員さんが可食部を余すところなく使ってくれていること、自分達がどれくらい食べ残しているのかを目視できます。ひょっとしたら学生たちの心の中に「こんなに丁寧に作ってくれているのに申し訳ない、まだ食べれるのにもったいない」という気持ちが出てきてくれるかもしれません。そうやって直に見聞きして感じたものは記憶に残りやすいものです。

そのため、エコ活動やSDGs教育、緑化委員・美化委員・ガーデニング部などの活動としてふさわしいため、学校に花壇や畑がある学校では活用を推奨します。給食のある学校はぜひコンポストの導入を検討してみましょう。

(ライター:堀内香菜)

※オペレーション・グリーンでは、コンポストに関するオンライン講座も開催しました!内容はこちらに詳しくレポートしてあります。ぜひご覧ください。
→「LFCコンポストのたいらさんに食の循環を学ぶ!オンライン講座『Stay at home, Eco at home』開催レポート


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