コラムCO2削減廃棄物

ごみを出さない学園祭・遠足にするには? 学校での取組事例

2024.11.11


「SDGs17の目標」が世間に浸透してきた現在、環境教育・ESD教育(持続可能な開発のための教育)にますます力を入れる学校が増えてきました。夏の異常な暑さや台風・集中豪雨などの自然災害を、児童生徒も目の当たりにしています。現在の子どもたちは、従来と比べてより環境問題を切実に感じているのではないでしょうか。

ここでおすすめしたいのが、「ごみを出さない」をテーマにした学園祭・遠足です。コロナ禍がある程度落ち着き、従来のように学園祭や遠足を実施できる学校も増えています。特に、児童生徒が主体となって準備する学園祭は、体験的な学びを得られる貴重なチャンスです。

この記事では、ごみを出さない学園祭・遠足に取り組んでいる学校の事例をご紹介します。どの学校でも取り組みやすい事例を選んだので、ぜひ参考にしてみてください。

学園祭のごみは分別しづらい?

学園祭で排出されるごみには、「分別しづらい」という特徴があります。
多くの学校では、次のようなごみが発生するのではないでしょうか。

・模擬店で使う紙皿・紙コップ、割り箸、ラップ、プラスチックパックなど
・販売した商品を包むビニール袋や包装用品
・教室や校舎の装飾に使用する段ボールや模造紙・画用紙、スズランテープなど
・ペンキやスプレーなどの塗料
・演劇やお化け屋敷など、パフォーマンスに使用する衣装や大道具・小道具などの材料

特に校内装飾や衣装製作では、各クラスが工夫を凝らしてさまざまな素材を組み合わせます。細かく見ればプラスチックや金属として分けられるものも、再利用可能なものもあるでしょう。しかし、片付けにかかる手間や時間を考えた結果、やむなくすべてを可燃ごみとして廃棄しているケースもあるようです。

【参考資料】
学校祭のごみを減らそう|札幌市
やってみよう!エコロジー学園祭|沖縄県

ごみを出さない学園祭のアイデア


国内の学校では、例えば次のような方法で学園祭の廃棄物削減に取り組んでいます。

・リユース食器、生分解性プラスチック製食器の活用
・次年度も使える素材・道具を選択
・回収・再利用などで地元企業と連携
・オンラインやバーチャルを活用した学園祭の開催

学園祭そのものだけでなく、学校生活や地域全体の廃棄物削減を目指した取組も見られます。古着・古本回収や各家庭から集めた不要品によるフリーマーケット開催など、校内にとどまらない取組を実施している学校も多いです。コロナ禍を一段落した現在、学園祭時に一般開放をする学校も増えているため、範囲を拡大しやすくなっているのではないでしょうか。

また、完全に「ゼロ・ウェイストな学園祭」は難しくても、紙ごみ・使い捨て食器など「○○ごみを出さない学園祭」であれば取り組みやすくなります。ごみを出さない学園祭をより楽しむため、これからご紹介する事例も参考にしてみてください。

【参考資料】
【超文化祭事例】サスティナブルなごみゼロ文化祭を1ヶ月で企画・実行! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
エコな文化祭事例4選 リユース食器・ICTを活用! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

「ごみを出さない学園祭」の取組事例

横浜市立東高校はカーボンニュートラルな食器を利用

横浜市立東高校の学園祭「東高祭」では、屋台での飲食物販売にカーボンニュートラルな「バガス素材」の食器を利用しています。

バガスは、サトウキビを搾った後に残る繊維状の搾りかすです。バガス製の食器は製造過程で発生するCO2量も少ないうえ、生分解性があるため土に埋めれば2~6カ月で分解されます。焼却処分した場合も、サトウキビが成長過程で吸収したCO2が大気中に放出されただけだと考えられるため、カーボンニュートラルな素材といえます。

東高校では学園祭でバガス食器を利用して回収、その後土に埋める「チームバガス」プロジェクトを立ち上げました。当初は生徒会活動の一環でしたが、現在は2018年のユネスコスクール加盟をきっかけに創部した「サスティナブル研究部(サス研)」が引き継いでいます。

サスティナブル研究部では、日本リユースシステム株式会社の「古着deワクチン」や株式会社ファンケルの「神奈川SDGs講座」など企業と連携したSDGs活動にも取り組んでいます。身の回りの地域だけでなく、世界全体にも目を向けた環境活動に取り組む高校です。

【参考資料】
「チームバガスの取組」|横浜市立東高等学校
サスティナブル研究部|横浜市立東高等学校
古着deワクチン
長期講座|ファンケル 神奈川SDGs講座 〜未来を希望に〜

東海大学付属静岡翔洋高校の「紙ごみゼロ」学園祭

静岡市の東海大学付属静岡翔洋高校では「紙ごみゼロの学園祭」を実施しています。学園祭「建学祭」では校舎装飾などにあえて紙類を使用し、終了後に細かく分別してリサイクルできる状態で処理しました。

分別された紙類は富士市の「コアレックス信栄株式会社」が回収し、トイレットペーパーにリサイクルしています。建学祭では再生トイレットペーパーの包装紙に自由にイラストを描くワークショップも開催、来場した子どもたちと楽しみながら資源の循環について理解を深めました。

模擬店ではリサイクル可能なトレイを利用したり、容器などはフィルムを剥がして回収したりと、プラスチックごみの削減にも取り組みました。同時に不要な服の回収活動も実施し、家庭や地域まで範囲を広げた環境に優しい学園祭を実現しています。

建学祭の一般公開日には、静岡市のスーパーマーケットチェーン「Uマート」協賛のもとチャリティマルシェも開催しました。新鮮な野菜・果物を特別価格で販売し、売り上げの一部を2024年の台風10号で大きな被害を受けた鉄舟寺への義援金として活用しています。

【参考資料】
第26回建学祭を開催しました|東海大学付属静岡翔洋高等学校・中等部
東海大学付属静岡翔洋高等学校・中等部|Facebook
鉄舟寺を救おう~義援金プロジェクト~ – 東海大学付属静岡翔洋高等学校・中等部

光明学園相模原高校は企業と連携してごみゼロへ

神奈川県相模原市の光明学園相模原高校では、校舎装飾のごみを出さない学園祭を実施しています。厚木市に工場がある包装用品メーカー「株式会社トーモク」から提供された段ボールを使って装飾し、使用後も廃棄せず再利用できる仕組みを整えました。

トーモクから提供されるのは、市場に卸せない段ボールです。学園祭「光明祭」では、その段ボールで校内を装飾し、利用後に返却しています。返却後はトーモクで再利用される仕組みです。

相模原高校の生徒会がかねて取り組んできたごみ拾い活動を通じて、トーモクからイベントの企画運営に声がかかったことから光明祭での段ボール提供に発展しました。取組が始まる2023年以前、光明祭後に廃棄される段ボールごみは教室の半分を埋めるほどあったといいます。

2024年の光明祭では、古着回収ボックスも設置しました。集めた古着は厚木市の「ベストトレーディング株式会社」に回収してもらい、認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会」へ寄付しています。

【参考資料】
光明学園相模原高等学校 生徒会(@Komyoseitokai)|X
世界の子どもにワクチンを 日本委員会

ごみを出さない遠足のアイデア

遠足時に生まれるごみといえば、おやつのパッケージやお弁当に使うカップ・串、小袋などでしょうか。これらのごみを出さないようにするには、例えば次のような工夫がおすすめです。

・おやつはあらかじめ個包装から出し、チャック付きポリ袋や食品保存容器に入れて持参
・「この容器に入るだけ」と決めておく
・お弁当カップや串などを入れないように保護者に求める

上記の方法で「ごみを出さない遠足」を実現するためには、保護者の理解と協力を得る必要があります。ご家庭によっては対応しきれない場合もあるかもしれません。

遠足そのもののごみゼロ活動ではないものの、地域のごみ拾いを兼ねた遠足の事例もあります。「ごみを出さない」の範囲を地域に広げることで、環境に優しい遠足を実現しやすくなるでしょう。

丸亀市立本島中学校のクリーン活動を兼ねた遠足

香川県の丸亀市立本島小学校・本島中学校の遠足では、対岸の牛島でごみ拾いなどのクリーン活動に取り組んでいます。

本島は、瀬戸内海の塩飽諸島にある人口330人ほどの島です。本島中学校では、1987年から「島内クリーン活動」を開始しました。年4回の活動では、泊海水浴場・屋窯海水浴場で海岸清掃を行っています。遠足で牛島を訪れるのは2年に1回ですが、人口7人で高齢者が多い牛島では頼もしい活動として住民に喜ばれています。

本島中学校では、学校前の花壇に花を植えたり、植林ボランティアに参加したりと環境美化活動にも力を入れています。このような活動が認められ、2006年には香川県から「緑化功労者感謝状」を、翌年には瀬戸内海放送環境美化振興財団から「環境美化奨励賞」を受けました。2020年に本島小学校と併合した本島中学校では、島内の保育所・幼稚園とも一体となって環境活動を展開しています。

【参考資料】
表彰校紹介・最優秀校(香川県 丸亀市立本島中学校 )|公益社団法人 食品容器環境美化協会
塩飽諸島:本島|丸亀市
塩飽諸島:牛島|丸亀市

まとめ

学園祭や遠足で、ごみを出さないように工夫している学校事例をご紹介しました。

学園祭の事例では、紙ごみ・プラごみなど特定の種類のごみをゼロにしている学校を取り上げました。完全なゼロウェイストをすぐに実現するのは難しいかもしれませんが、部分的なごみゼロ活動であればハードルも低く感じるはずです。クラスや部活ごとに廃棄物削減量やアイデアのユニークさなどを審査し、コンテストのようにイベント化するのも面白いでしょう。

遠足については、地域の清掃活動を通して環境美化を目指すという観点から事例をご紹介しました。ごみ拾いや清掃活動は「ごみゼロ」ではないかもしれませんが、ごみの分別や廃棄・リサイクルの流れ、資源の循環を体感できる機会を作れます。ぜひ今後の計画の参考にしてみてください。

(ライター:佐藤 和代)


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