コラム省エネ

オフィスの照明調節で省エネ!企業事例・効果的な工夫を紹介

2023.12.08

近年、夏と冬に電力不足のニュースをよく耳にするようになりました。電力の逼迫状態を防ぐために節電の必要性が叫ばれていますが、暑さ寒さは年々厳しさを増しています。「従業員の命・健康には代えられない」と、節電に苦労している企業も多いのではないでしょうか。

この記事で取り上げているのは、職場の照明・ライトの調節による省エネ対策です。実は、照明設備の電力使用量は空調の次に多いといわれています。空調設備に省エネ対策を施すのももちろん大切ですが、照明調節も節電に効果的です。

ここでは、照明を工夫することで省エネ対策に取り組んでいる企業事例をご紹介します。近年一般的になってきたLEDの省エネ効果についても解説しますので、合わせてご覧ください。

オフィス・店舗のエネルギー消費割合

先ほど、照明の消費電力量は空調設備に次いで2番目に多いとお伝えしました。資源エネルギー庁の調査によると、一般的なオフィスビル・店舗の消費エネルギーの割合は次のようになっています。

・オフィスビル…夏季:24%、冬季:33%
・店舗…夏季:26%、冬季36%

また別の調査では、業種別に見ると最も照明の割合が高いのが医療・介護施設、次いでホテル・旅館業という結果もありました。

一般的に「エアコンは消費エネルギーが多い」というイメージがありますが、この数値を見ると照明設備で使用するエネルギーも意外と多いものだと分かります。

空調設備を省エネ仕様に替えるのももちろん大切ですが、大がかりな工事が必要なため二の足を踏んでしまう企業も少なくありません。照明調節やエコな製品への買い替えは、比較的取り組みやすい省エネ対策です。

【参考資料】
建物のエコ照明化|あかり未来計画

「LED照明」の節電効果・メリット

白熱電球・蛍光灯と比較すると、LEDは格段に消費電力が少ないです。白熱灯の8分の1、蛍光灯の3分の1の電力しかかかりません。また、熱を発しにくいので真夏の冷房も効きやすくなり、空調面の省エネにもつながります。

紫外線・赤外線をほとんど発しないため、家具・オフィス用品も色褪せにくいです。食品類も傷みにくいので、商品の陳列棚などにも使いやすいでしょう。

近年は形・色味のバリエーションも増えてきました。さらに調光機能つきLEDであれば、明るさを落とせばそのぶん消費電力も節約できます。企業のニーズに合った使い方ができるのもメリットです。

蛍光灯と比べると少し値段が張りますが、10年ほど使えるため取り替える手間・費用も少なくなります。LEDには省エネ効果以外のメリットも多いのです。

【参考資料】
エコ照明で環境にも事業も好影響!スーパーしまむらの電力削減戦略とは?|Operation Green
いまさら聞けない!LEDって何?|あかり未来計画
照明制御について教えてください。|中小企業基盤整備機構

照明調節で省エネに取り組む企業事例5つ

新本社ビルで63%の省エネを実現した「YKKグループ」

東京都千代田区に本社を置く「YKKグループ」は、2015年に全館LEDで各種センサー・入退室管理システムを導入した新本社ビルを竣工しました。この「YKK80ビル」は一般的なオフィスビルと比べておよそ63%もの省エネを実現していて、その環境に配慮した設計が高い評価を得ています。

YKKグループは以前から「照明のこまめな消灯」などの省エネ活動に取り組んでいましたが、社員による手間がかかる割に大きな効果が出ていませんでした。新本社ビルでは全館LEDのほか人感センサー・明るさセンサーを使った自動消灯システムを導入、社員の手間を減らしたうえで大幅な省エネに成功しています。

照明環境について従業員にヒアリングしたり、オーナーである「YKK不動産」とビル管理会社による「性能検証会議」を定期的に開いたりするなど、働きやすいオフィスづくりとさらなる省エネ推進に取り組み続けています。

【参考資料】
環境との共生|YKK AP株式会社

総合スーパーチェーン「ユニー」は全店舗にLEDを導入

アピタ、ピアゴなどショッピングセンターを多数運営している「ユニー株式会社」は、191あるすべての店舗にLED照明を導入しました。LEDに替えたことで空調も効きやすくなり、店舗全体で20~30%もの省エネを実現しています。

バックヤードでもこまめに照明を消灯し、「必要な時だけ点灯」する節電意識を従業員に徹底しています。愛知県にある本社では定期的に「ISO推進環境会議」を開き、省エネ活動の報告・分析を続けるなど地道な取り組みも怠りません。このような活動が評価され、ユニー株式会社は環境省の「エコ・ファースト企業」に認定されています。

【参考資料】
CSR|ユニー株式会社

「マクドナルド」は電力使用量を徹底管理

大手ハンバーガーチェーン「マクドナルド」では、国内全店で消費電力の効率化に取り組んでいます。照明器具をはじめ、使用する機械のこまめなON/OFFを周知し、さらに各店舗の営業時間・内容に応じて取り組むことで「最も効率的」な省エネを目指しています。

無駄な電力使用を防ぐため、各種機器の清掃・メンテナンス方法を従業員と共有し、誰もが取り組めるように工夫しました。また「デマンド監視装置」を設置し、電力使用量をリアルタイムで計測することで使いすぎを防いでいます。店舗改装などのタイミングでLEDを導入するなど、各店舗・従業員にもやさしい省エネ対策を進めています。

【参考資料】
店舗の消費電力効率化で省エネ|マクドナルド
地球にやさしい電力の使用|マクドナルド

「雪印メグミルク」の工場内の安全にも配慮した省エネ

「雪印メグミルク」の工場では、センサー機能つきのLEDを利用して安全性にも配慮した省エネに取り組んでいます。工場内の冷蔵庫に、通常は20%ほどの明るさを保ちながらフォークリフトを検知すると照明が明るくなるシステムを導入しました。

製造工場という場所の特性上、使っていないエリアでも照明を完全にオフにすると思わぬ事故が起こる恐れがあります。通常時は「ほんのり明るい」程度の明るさをキープし、使用するときのみ明るさを上げることで従業員・製品の安全性にも配慮した省エネを実現しました。

【参考資料】
環境への取組み|雪印メグミルク

2026年度末までの完全LED化を目指す「JR貨物」

「JR貨物」は、2026年度末までにすべての貨物駅の構内照明をLED化することを目指しています。昼夜を問わず作業が行われている貨物駅では1万4000個以上もの照明が使われていますが、2018年時点ではその多くが水銀灯でした。すべてをLED化できれば大きな省エネ効果が生まれると見込まれています。

また、2022年には環境長期目標「JR貨物グル―プ カーボンニュートラル2050」を策定し、2050年までにCO2発生量をゼロにするためのロードマップを発表しました。「2024年問題」がささやかれる近年、モーダルシフトの観点からもJR貨物の環境対策に注目が集まっています。

【参考資料】
環境長期目標「JR貨物グループ カーボンニュートラル2050」について |JR貨物
物流の「2024年問題」とは – 国土交通省  東北運輸局

最新鋭の省エネ設備を導入する企業も

省エネ・創エネ・蓄エネを目指す「セブン‐イレブン」の実証実験

コンビニチェーン「セブン-イレブン」は、2023年6月に「環境負荷低減店舗」の実証実験を本格始動しました。埼玉県三郷市の「セブン-イレブン三郷彦成2丁目店」には、日立製作所、リコー、サンデン・リテールシステムの3社がもつ先進技術が集まっています。

この店舗では省エネのほか、エネルギーを創出する「創エネ」、蓄える「畜エネ」に取り組んでいます。日立製作所のエネルギーマネジメントシステムやバッテリーキューブ、リコーの太陽光発電システム、サンデン・リテールシステムの新型冷蔵庫や除霜制御技術など、現代のテクノロジーを集結した新世代のコンビニエンスストアです。

セブン-イレブンはこの実証実験で、CO2排出量を「2013年の排出量から約70%削減する」ことを目標としています。今後の展開が期待されている取り組みです。

【参考資料】
CO2排出量の削減|セブン‐イレブン
先進的な省エネ・創エネ・蓄エネ設備を備えたセブン‐イレブンの新たな環境負荷低減店舗実証実験を本格スタート|株式会社リコー

「UNIQLO」は環境配慮型の新店舗をオープン

ファストファッションブランド「UNIQLO」は2023年4月、群馬県前橋市に「環境配慮型」の店舗をオープンしました。「前橋南インター店」は、カフェやフラワーショップ、憩いの芝生エリアなどを設けた新形態のユニクロです。

この店舗では採光窓を設置し、窓から日光を取り入れることで照明の電力使用量を抑えました。照明器具・空調設備も省エネ仕様の製品を採用するなど工夫したことで、推計では従来の店舗より消費電力をおよそ4割削減できるとされています。

また、設置した太陽光発電システムによって、消費電力のうち15%を発電できるようにしました。そのほかにも廃棄予定の衣類で作られた断熱材を利用、洋服のリペア・リメイクなどカスタマイズサービスを開始するなど、さまざまな方法で環境に配慮しています。

【参考資料】
UNIQLO LOGO STORE 前橋南インター店|UNIQLO

今すぐできる照明調節の工夫

照明の消費電力を抑えるために、まず「最も効率よく照明を使えているか」をチェックしましょう。たとえば、このような観点からオフィスの照明を点検してみてください。

・照明器具・電球が汚れていないか
・定期的なメンテナンスを行っているか
・照明器具が棚などの陰に隠れていないか
・照明が不要な場所・時間帯はないか
・使用していないときに主電源を切ることはできないか

LEDや省エネ仕様の照明器具の導入ももちろんおすすめです。けれどもこれらのポイントはすぐにチェックできるものばかりなので、ぜひ1度取り組んでみてください。

「タスク・アンビエント照明」の導入もおすすめ

省エネ対策として、ヨーロッパで主流となっている「タスク・アンビエント照明」の導入もおすすめです。室内全体を明るく照らすのではなく「作業するエリアのみ」を必要な明るさにする調光法で、消費電力を抑える効果があります。

作業する周辺のみ明るくすると、室内に明暗のメリハリがつきます。集中力を高める効果があるうえ、それぞれの従業員に適した明るさで作業することも可能です。近くが見づらい年配の方でも見やすい明るさを調節するなど、従業員にも優しい職場環境が整えられます。

【参考資料】
タスク・アンビエント照明|あかり未来計画

まとめ

照明調節によって省エネ対策に取り組んでいる企業事例をご紹介してきました。LEDや最新の省エネ技術を備えた照明器具の導入、また従業員による照明管理の徹底など、さまざまな企業がそれぞれに合った方法で節電に取り組んでいます。

企業・事業所の照明は、業種や職場の規模、業務の種類などによって最適な明るさが異なります。だからこそ、その職場に合った照明調節ができると「無理のない省エネ対策」が可能です。

また、照明による省エネ対策は環境だけでなく、従業員や顧客・利用者にも優しい場所を作ることにもつながります。「環境に配慮しながら人間も過ごしやすいオフィス」を目指すため、照明設備による省エネ対策をぜひ検討してみてください。

(ライター:佐藤 和代)


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