CO2削減再生エネルギー

学校での再生可能エネルギー導入事例 地球温暖化防止の取組

2024.12.13


気温が下がり冷え込む12月は、暖房器具などの使用量が増え、地球温暖化を引き起こすCO2排出量が増加します。こうした時期こそ、大切なのは一人ひとりが地球温暖化防止に意識を向け、できる行動を始めることです。

12月は「地球温暖化防止月間」。地球温暖化防止の普及啓発に向けて、行政や事業者、消費者が一体となって取り組む月間として定められています。

地球温暖化防止月間ができたきっかけは、1997年12月に京都で開催されたCOP3(気候変動枠組条約第3回締結国会議)で、CO2など6種類の温室効果ガスを先進国が削減することを約束した「京都議定書」が採択されたことです。その翌年の1998年度、環境省は毎年12月を「地球温暖化防止月間」と定めました。

地球温暖化、そして気候変動対策への取り組みを進めるうえで外せないのが「COP」です。今回は、気候変動に関して私たちの日々の暮らしに関係する重要な議論や意思決定が行われる場「COP」を取り上げ、地球温暖化防止に取り組む学校事例をご紹介します。

COPとは?

COPとは、締約国会議(Conference of the Parties)を指します。1992年、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標とする「国連気候変動枠組条約」が採択され、世界が地球温暖化対策に取り組んでいくことに合意しました。それに基づき、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催されています。

1997年に開催されたCOP3では、京都議定書が採択されました。それにより先進国は2012年までに排出量を削減する目標を設定することが求められ、気候変動に対する国際的な取り組みの歴史的な転換点になりました。

さらに、京都議定書に代わり、2015年のCOP21ではパリ協定が採択されました。パリ協定とは、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際的な枠組みです。気候変動に関して初めての法的拘束力のある国際的な条約であり、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2Cより十分低く保つとともに、1.5Cに抑える努力を追求すること」が決められました。

これに向けて各国は、2030年までに自国の温室効果ガス排出量を削減する目標を設定し、それに基づいた具体的な取り組みが求められています。さらに、開発途上国への資金支援や技術移転などの支援についても盛り込まれるなど、気候変動に対する国際的な取り組みの新たな基盤になっているといえます。

【参考資料】
パリ協定|JCCCA
COP(コップ)ってなに? 気候変動に関するCOPを紹介|環境省

再生可能エネルギーを増やすことも温暖化対策

地球温暖化への対策は、政府や企業だけでなく一人ひとりにも求められています。家庭部門から排出されるCO2量は全体の約15%を占めているためです。

効果的な取り組みの一つに電気の消費を減らす「省エネ」が挙げられます。家庭の場合、主に冷蔵庫・照明器具・テレビ・エアコンの使用による電力消費が多く、多くのCO2排出量を排出しています。

また、電気をはじめとする普段使っているエネルギーの中に、CO2を排出しない再生可能なエネルギー源を増やしていくことも必要です。

電気や熱、燃料などのエネルギーの供給源には、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が多くを占めている一方、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーはCO2を排出しないため、さらなる普及が期待されています。

一般的な方法として太陽光パネルの設置や、電気と熱を効率的に活用できるコージェネレーション設備の導入があります。

それだけでなく、2016年4月からの小売電力自由化によって、誰もが電力会社を選べるようになりました。再生可能エネルギーを重視した電力会社を選ぶことも、再生可能エネルギーの普及を推し進める取り組みです。

【参考資料】
日本の部門別二酸化炭素排出量(2022年度)|JCCCA

再生可能エネルギー導入に取り組む学校事例

ここでは再生可能エネルギーを導入し、地球温暖化対策に取り組む学校の事例を紹介します。

浜松開誠館中学校・高等学校

浜松開誠館中学校・高等学校は、静岡県浜松市にある中高一貫教育校です。国内の中学校・高等学校として初めて「再エネ100宣言 RE Action」へ参加しました。

「再エネ100宣言 RE Action」とは、企業、自治体、教育・医療機関などの団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再生可能エネルギーの利用100%を促進する枠組みです。

大きな特徴は、生徒が主体で始まった取り組みだという点です。浜松開誠館中学校・高等学校では、もともとSDGsを通した学びを柱とした探究的な学習を進めてきました。そのなかで、気候危機やエネルギー問題をはじめとした社会課題に生徒たちが主体的に取り組んでいます。

2019年、外部の講師を招いて開催した気候変動の講演会がきっかけとなり、自然エネルギー100%大学を目指す千葉商科大学の事例に関心を持った生徒が、「私たちの学校も電力を再生可能エネルギーに変えることはできないか」と学校の理事長に提案。学内が一体となって検討を始め、「再エネ100宣言 RE Action」参加へ至りました。

2022年10月には、体育館の屋上に太陽光発電設備を設置して運転を開始しています。設置したのは太陽光パネル44枚で、年間約1万8000キロワット時を発電でき、施設の使用電力の約18%を再エネに置き換えることができました。

2024年までに学校の校舎全館における照明設備をLED化し、空調設備を高効率機器へ更新することで省エネを進め、再生可能エネルギーの使用比率を高める計画が立てられています。

【参考資料】
浜松開誠館中高で太陽光発電スタート 生徒発の再エネ取り組み|中日新聞
生徒の発案による再生可能エネルギー導入!RE100の学校を目指す浜松開誠館中学校・高等学校の取組み。|環境省

山形県長井市の小中学校

長井市では、8校(小学校6校と中学校2校)で使用する電気について、すべて太陽光や水力で発電された再生可能エネルギーによる電力を導入。電気の「地産地消」を実現するとともに、電力の「見える化」にも取り組んでいます。

8校の年間の再生可能エネルギーの導入見込み量は、合計で132万キロワット時。CO2削減量は年間658トンとなり、市管理施設で電気を使うことに伴う年間排出量18%の削減を実現します。

また、電力の消費量などを数値やグラフで表示し電力の「見える化」に取り組みます。例えば、長井小学校では、体育館の入り口にモニターが設置され、電力の消費量のほか、使用されている再生可能エネルギーの種類、CO2削減量などが表示されています。

この取り組みを通して、地球温暖化や再生可能エネルギーについて興味を持ち、一人ひとりが環境にやさしい行動を考えるきっかけにつなげいこうとしています。

長井市の小中学校 再生可能エネルギー使用で「電力見える化」|NHK
長井市の小中学校で電気の「地産地消」 再エネ導入で身近な気づき|朝日新聞デジタル

再生可能エネルギーの導入では、太陽光パネルによる校内発電を実施している学校が多く見られますが、再生可能エネルギーは風力発電や小水力発電、バイオマスなどさまざまなものがあり、地域の特性により効果的に活用できるエネルギーも違います。

再生可能エネルギーは長期的には電力などの使用量にかかる費用を削減できる一方で、導入にはコストも時間もかかるケースが多いかもしれません。そんなときには、校内電力の見える化や、地域で発電可能なエネルギーの探究など、環境学習に役立ててみてはどうでしょうか。

(ライター:藤野あずさ)

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