コラムエシカル消費社会・環境基盤

企業がサステナブルな取組みをするメリットとは?採用成功などの事例を紹介!

2023.03.14

2050年のカーボンニュートラル実現まで残すところ27年となり、多くの企業がCO2削減やサステナブルな経済活動に向け、一丸となって環境への配慮をしながら経済活動を行っています。

一般的だった「リニアエコノミー(線型経済:原材料の入手から使用後の廃棄まで一方通行)」から、「サーキュラー・エコノミー(循環経済:企業が経済活動の中で廃棄物を出さずに資源を循環させていく経済システム)」に次第に変化させ、廃棄物そのものを発生させないサステナブルな取り組みを多くの企業が目標に掲げ始めました。

しかしこれらのサステナブルやサーキュラーな企業の取り組みは、ただ「環境に優しい」だけではなく企業の採用や消費者の環境問題への参加に良い影響を与えています

具体的にどのようなことが企業のベネフィット(商品やサービスを通して得られる便益や価値)に繋がったのか、いくつかの企業の事例をまとめましたのでご覧ください。

1.食品会社『カゴメ食品 株式会社』

カゴメ食品 株式会社はトマトジュースなどで有名な食品会社ですが、CO2削減に向けたサステナブルな活動に早急に取り掛かった大企業の1つです。

カゴメ環境マネジメント計画」という環境への取組みへの軸に、事業活動内でできる最大限の環境汚染の防止に努め、CO₂排出削減目標の達成に向けてグループ全体で積極的な省エネ活動を推進しています。

カゴメは人材育成や従業員のモチベーション維持・向上に力を入れる新社会人にも人気の企業でした。しかし、企業理念に基づいて環境問題に真摯に取り組む姿勢や、スピーディーで具体的な環境対策などを行うことでより一層、好感度や求人倍率も上昇し、採用状況にも影響を与えることになりました。

①環境に優しいパッケージ変更や太陽光発電システムの導入

2020年1月には「カゴメプラスチック方針」が策定され、「2030年までに飲料ペットボトルは樹脂使用量全体の50%以上をリサイクル素材又は植物由来素材に、紙容器飲料は石油由来素材のストローの使用”ゼロ”を目指して、資源循環可能な素材(植物由来素材や紙素材)への置き換えを進める」方針になりました。

飲料のペットボトル容器を100%リサイクル素材に切り替えたり、紙容器飲料のキャップを植物由来素材(サトウキビ由来)に切り替えたり、一部商品に植物由来ストローを採用するなど、消費者にもわかる商品やパッケージ変更がされています。

また、アメリカ工場への太陽光発電パネルの設置・導入(2017年)を皮切りに、日本国内でも2021年には3工場(小坂井工場・茨城工場・富士見工場)に太陽光発電パネルの設置を拡大しました。

(画像出典元:カゴメ公式HPより)

そのうち、小坂井工場(愛知県豊川市)では、2022年1月1日から100%再生可能エネルギー由来に切り替えると発表し、4月からオンサイト型PPA(電力購入契約)スキームによる太陽光発電設備を導入しました。パネル出力は約200kW、年間発電量は約200MWhの見込みで、同工場で使用する電力の5%程度をまかなうことができるといいます。

さらに富士見工場では太陽光発電パネルの設置により年間600トンのCO2削減が可能であるのと同時に、年間使用電力の23%をまかなっています。また、工場から排出される温水を菜園内の暖房に、CO₂の一部を隣接する畑「八ヶ岳みらい菜園」に送ってトマトの光合成に活用する試みも行われています。

②農業振興・地方創生に向けた取り組み

カゴメは農業振興・地方創生にも取り組んでおり、超高齢化や労働人口の減少による農業生産基盤の脆弱化が顕著な地域の成長産業化に貢献しています。

全国の自治体などと協定を結び、その地域の農産物を使用した商品の展開やレシピの共同開発、食育やトマトの栽培指導など、地域の農業振興や健康づくりに積極的に取り組んでおり、2022年10月時点では連携協定は17府県8市1町と29協定締結されています。

カゴメの地方創生への取り組みが増えるほど提携する自治体が栄えるだけではなく、「カゴメ」というブランドに惹かれて農業活動をしたいという若年層を取り込むことも可能になるでしょう。

大企業のネームバリューは農業振興に多くの可能性を秘めていますので、ぜひ取り組みの輪を広げてほしいものです。

2.金融サービス『オリックスグループ』

オリックスは先進的な商品・サービスを提供する金融サービスグループで、1964年にリース事業の開始以降、隣接分野に進出。現在では投融資事業・生命保険・銀行・資産運用・不動産事業・環境エネルギー関連事業・自動車・船舶・航空機などのアセットファイナンス事業(資産・資金調達)など多角的に事業を展開しています。

常に新しいビジネスを追求し続け、2021年9月末時点には、世界約31カ国・地域に拠点を設けるグローバルな企業に成長しました。

近年では環境エネルギーに注力しており、スペイン拠点のグローバル再生可能エネルギー事業者 Elawan Energyや、インドの大手再生可能エネルギー事業者 Greenko Energyへ約2,000億円もの投資を行ったことを2022年度の成長戦略の中で報告されました。

また、再生可能エネルギーの推進や環境性能の高い不動産の開発、廃棄物の再資源化 ・中古の機器や自動車の販売などのサーキュラーエコノミーの推進、太陽光発電所の運営・管理・保守を担うサービスも展開しており、CO2排出量削減に大きく関与しながら脱炭素化に向けたプロジェクトを次々と進めています。

(画像出典元:オリックスグループの強みと今後の成長戦略-2022年3月)

このようにサステナブルな活動の幅が広いオリックスにESG投資することで、他企業への投資 、中堅・中小企業の支援などの企業の活性化、オフィス・商業施設・ホテルなどで構成される複合型まちづくりなどの地域の活性化に繋がります。

(ESG投資:環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のこと)

そうすることで、さまざまな社会問題の解決に一般の消費者や関連企業が”間接的に”貢献したことになり、サステナブルな活動をより推進することが可能になります。

3.DNP(大日本印刷 株式会社)

DNP(大日本印刷)は国内大手の印刷会社で、情報コミュニケーション部門、生活・産業部門、エレクトロニクス部門からなる「印刷事業」と、北海道コカ・コーラボトリング株式会社の「飲料事業」を行う企業です。

また、省エネ活動や省エネ設備の導入など、温室効果ガス排出量の削減にも力を注いでいる企業としても有名で、1993年にはすでにDNPグループ独自の“環境マネジメントシステム(EMS:環境保全、環境配慮製品・サービスの開発、化学物質管理、土壌汚染対策などのサステナブルな活動のガイドライン)”を構築しており、それに従って現在まで活動を行ってきました。

①サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減の取り組み

(画像出典元:DNP重点テーマ別報告 環境)

DNPでは2020年度に、”2030年度までの温室効果ガス排出量の削減目標”を定め、海外拠点を含むグループ全体で空調設備や動力の省エネ、製造ラインの運用改善、熱源機器の高効率化、製品やサービスを通じた環境負荷の低減などの具体的な取り組みを開始しました。

その結果、基準値である2005年度の排出量1,110千トンに対して2017年度には892千トン(-19.6%)まで削減に成功し、2020年目標を3年も早く達成したのです。

その実績を得たDNPはさらに高度な温室効果ガスの削減に取り組むため、国際的な枠組みに沿った”温室効果ガス排出量削減目標”を設定したのですが、この目標がパリ協定の「2°C目標」を達成する上で科学的な根拠がある水準であると認められました。

そして、2018年7月には国際的な環境団体「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の認定を取得することができ、社内の環境PRにも繋がっていくことにもなりました。

②これからの課題”原材料の調達”

DNPでは次の課題として排出量が最も多い”原材料の調達”に注目し、主要サプライヤーに対し2025年までにSBT取得を促すことで削減を推進していくことを検討しています。

事業を行う上で必要不可欠な「紙」の調達については、「DNPグループ印刷・加工用紙調達ガイドライン」を定めており、森林資源の維持に配慮し、原材料を有効活用するため、間伐材の利用や森林認証紙の使用など積極的に行っています。

※森林認証紙:「森林の管理や伐採が環境や地域社会に配慮して行なわれているかどうか」を評価・認証し、そうした森林に由来する製品(適正管理された森林木材による製品)であることが証明された紙

また、原材料として調達する紙の全品目について、「DNPグループ印刷・加工用紙調達ガイドライン」適合品の調達比率100%を目指し、製紙メーカーや販売会社などのサプライヤーとの連携の強化、トレーサビリティの確保を進めています。

こうすることで、製品を生み出す過程で関わるサプライヤーにもCO2削減に対する意識がより一層芽生え、環境を破壊するような事業を行う中小企業の事業が淘汰されていくことでしょう。

〈参考〉

4.環境に優しいサーキュラーな企業へ

気候変動への対応は世界的に最も重要な課題のひとつですが、2020年のパリ協定の時点ではCO2排出量ゼロに向けた取り組みは正直厳しいと言われていました。数十年も同じ方法で経済活動を行ってきた企業にとって、従来のやり方を変えるというのは事業の新規開拓と同等の負担がかかるためです。

しかしながら、資本の多い企業や環境問題を真摯に受け止める中小企業によって、環境に優しい原材料を使用した商品の使用・開発、CO2削減を目標とした効率の良い運搬、工場で使用する電力を太陽光パネルで自家発電させるなど、一歩ずつではありますがカーボン・オフセットに向けて前進しています。

消費者サイドは”生産をせず、既成製品を利用する”という選択を取らざるを得ない人が多数ですから、大手や人気のある大企業がCO2を削減するサービスや環境に優しい製品を利用させてくれることが何よりのサステナブルな取り組みに繋がります。

環境問題への取り組みをアピールすることは御社のPRとなるだけでなく、多くの消費者の行動を変えるということを大前提にこれからもご尽力いただければ幸いです。

〈参考〉

環境省_令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書

(ライター:堀内 香菜)


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