コラムCO2削減

食べ物の地産地消の問題を解決する地域の取り組み

2022.12.21

地域で生産された農林水産物を地元で消費する取り組み『地産地消』。

この取組は地域で自発的に増えてきた活動であり、産地直売所や農産物加工など規模や販売方法は多種多様です。

しかし、農林水産物の生産者の減少や、地産地消の商品購入者の伸び悩み、地場農産物の品目数・生産数のばらつき、産地直売所・関連施設の整備不足などが原因で、地域内での食べ物の循環するのは難しいとされてきました。

そんな中、令和3年4月に地産地消関係法令が強化され、『地産地消の推進』をさらに意識しながら、地域内の食べ物の循環を活発化させる取り組みを実施するよう呼びかけられました。

1.地産地消の取り組みや効果

地産地消とは農林水産物を生産地にて消費する地域の取り組みをいいますが、これらの取り組みを行うことで、

  • ・とれたて新鮮な農林水産物を早く消費できる
  • 流通経費の節減などにより安価に購入できる
  • ・生産者と交流や顔の認識によって農業を身近に感じ、食育の機会が得られる
  • ・生産者と販売者などの関連事業者との連携によって消費が拡大、それに伴う収益の増加
  • 生産者が直接販売することにより、少量な産品、加工・調理品も、さらに場合 によっては不揃い品や規格外品も販売可能となる
  • ・流通コストの削減や、輸送距離の短縮による環境への負荷の低減

などのように生産者や消費者へのメリット、地域の活性化、さらには地球環境にまで良い効果をもたらします。

しかしながら、地産地消は良い面ばかりがピックアップされがちですが、デメリットも当然あります。

例えば、生産者の出荷・販売活動といった労働力の負担増加、食材の搬入・搬出の人員不足、売れる食材の偏りにより売れ残りの発生、それに伴う食材廃棄のような深刻な問題が発生する場合が多いのです。

そのため、生産者が生産に集中できるような施策や、何をどれだけ必要とされているか市民の要求を調査すると共に、農家や関連施設との話し合いによって需要と供給の量を調整しなければなりません。

そのため、多くの自治体では食材の流通をスムーズに行うため、主に以下のような取り組みをおこなっています。

  • ①普及・啓発活動
  • ②地場流通支援
  • ③地場産品の表示・認証制度
  • ④直売所や量販店での地場農産物の販売
  • ⑤学校給食、福祉施設、外食・中食、加工関係での地場産農林水産物の利用
  • ⑥地元出荷への奨励制度

このように地産地消を実践するためには、新しい流通経路や収穫量の管理方法の見直し、農家や関連事業と意見交換ができるネットワークの構築などが必要なため、自治体や特定の団体のサポートが重要な鍵を握っています。

2.国が掲げる令和7年までの目標

地産地消を推進するため地産地消関係法令の内容が強化がされ、令和7年までの目標が定められました。

『農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針(令和3年4月)』によると、

①「通年営業の直売所について、年間販売額が1億円以上のものの割合を、令和7年度までに50%以上(令和元年度:26%)とすることを目指す

②「学校給食における地場産物を使用する割合及び国産の食材を使用する割合について、食育推進基本計画に定める目標(現状値(令和元年度)よりも維持・向上した都道府県の割合(金額ベース):令和7年度までに90%以上)を達成することを目指す

として、地域内での農林水産物の生産力・消費量をさらに向上させるために具体的な数値で示しました。

国や地方公共団体が施策と目標を明確に掲げることで、地域の農林水産物の利用を促進、地域の需要等に対応した農林水産物の安定的な供給の確保、体験活動等を通じた食育の推進だけでなく、環境への負荷軽減を行うための積極的な行動を多くの人が起こすことも狙いです。

3.地産地消の取り組みと実例

(1)直売所を利用した農林水産物の直接販売

(画像出典元:農林水産省統計部「6次産業化総合調査」

地域の農産物を購入できる農産物直売所は、農業経営体(農業生産や農作業受託の事業を営む者)で行われるものや農業共同組合(JA:農業者が相互扶助を目的として設立する協同組合)、そのほかには農産物以外を取り扱う場所があります。農林水産省の調査によると、農産物直売所は令和2年度には全国で23,600ヶ所も存在しており、その年間総販売額は約1.1兆円。そのうち、13,550ヶ所ある農業経営体の総売上額は1,902億円、半数にも満たない2,170ヶ所の農業共同組合は3,730億円という売上差があることがわかりました。

さらに、上記のグラフを見てもわかるように、1直売所あたりの年間販売金額に換算すると農業経営体は1,404万円、一方の農業共同組合は1億7,198万円とその差は歴然です。

どれだけより農産物を取り扱っていたとしても、農業経営体そのもののブランディングや集客が上手くいかなければ販売額は伸びていきません。

その点、農協共同組合の直売所は『JA』というブランドの信頼性を根っこに持ちながら、多くの生産者による多彩な種類の農産物を1ヶ所で手に入れられる手軽さを消費者に感じてもらうことができます。それだけではなく、生産者サイドも安心して販売を任せられることができるため、生産だけに集中することも可能となります。

【優良な実例】紀の里農業協同組合による直売所「めっけもん広場」(和歌山県)【HP

(画像出典元:めっけもん広場 | JA紀の里 紀の里農業協同組合 )

1,600 名を超える生産者をまとめ、 直売拠点として作られたのが紀の里農業協同組合による「めっけもん広場」で、既存の5つの直売所や道の駅と合わせて生産・直接販売の地域拠点として営業しています。

地場産農産物の生産・販路拡大、生産者の所得向上を目的に2000年度に設立され、地域の収穫物を「紀の里」と1つにくくることで、地域外へのアピールするためのブランディングにも見事成功しています。

めっけもん広場がオープンする前の”紀の里農協”の販売高は100億円まで減少していましたが、2018年度には130億円に回復。また、2018年度のめっけもん広場の来店人数は67.3万人、売上高は27.8億円、出荷者数は1,558人となっていることから、多くの市民に認知される直売所を設立する意義が売上額を通して証明されました。

現在、地域内では高齢化や担い手不足が問題となっているため、紀の里農協が生産や観光農園にも取り組んでいくことで地域の生産者と一緒になって生産拡大に取り組んでいきたいとしています。

(2)学校給食での地場農林水産物の活用

地産地消を進める上で学校給食での農産物の活用も欠かせません。

令和3年3月施行の第4次食育推進基本計画において、行政・教育関係者・農林漁業者・食品関連事業者を対象にさらなる連携・協働を求めました。さらに、『令和7年度までに学校給食における地場産物を使用する都道府県の割合を90%まで引き上げる』と具体的な目標と期限を設けることで、「持続可能な食を支える食育の推進」に邁進することを掲げ、取り組みを後押ししました。

地場産物を給食に利用するためには、「栄養の偏りがないよう配慮しつつ少ない食材費で抑えなければならない」費用の問題点や、「一定の規格を満たした量を確実に不足なく納入する」材料手配などについて課題が多いといいますが、これらの問題を円滑に解決するために導入されたのが「地産地消コーディネーター」です。

給食センターは「地場産物の種類・生産量・価格」、生産者は「給食で使う地場産物の規格・ 数量」をそれぞれ把握していないことに目をつけ、学校給食の現場と生産現場の双方のニーズや課題を調整しながら取り組むことが不可欠だと結論づけました。

そして、農林水産省では”地産地消コーディネーター”の派遣や育成等の事業を積極的に実施した結果、令和2年度までに派遣した39地区では、天候不順を除いて地場産物の利用割合を上昇させることに成功しました。

【大分県別府市による地産地消コーディネーター派遣事業の開始】

(画像出典元:大分県別府市の取り組み/地産地消コーディネーター 派遣事業)

令和2年10月に大分県別府市にて、学校給食における地産地消の推進を目的とした『地産地消コーディネーター派遣事業』が開催されました。

研修内容である”農林水産課との研修会”では、「別府市の農家の実態認知」と「学校給食に活用できる食材の検討」を、”栄養教諭等との研修会”では、「必要な食材が全量が揃わないと学校給食へは使えない」という固執した考えの払拭を狙う討論が行われました。

その他に研修では、農産物を取り扱う農家・市場・八百屋を対象に聞き取りをおこない、以下のような問題点を聞き出すことができました。

  • 〜農家〜
  • ・学校での食材使用量が把握できないため月別収穫量を設定できない
  • ・市場に出すほどの量はないので今まで通りJAに卸したい
  • 〜市場〜
  • ・農家の方が市場に持ってきてくれないと競りにかけられない
  • 〜八百屋〜
  • ・別府市産品を納品するには、農家が市場に出品しなければ学校に納品できない

これらの情報から、地産地消をスムーズに行うには、『学校に農産物を卸すための新しい納入体制の構築』や『市場と農家との関係づくり』が必要であるという明確にな課題が浮き彫りとなりました。

また、野菜の種類別にどの農家からどれくらい納品可能か管理している”JAべっぷ日出”の協力の元、実際の学校給食に地場農産物が使用されるようになりました。その結果、令和2年度の別府市産活用率が 43.2%となり、当初掲げていた『活用率3%上昇の目標』を大きく上回ることができました。

これから課題を克服し、地産地消コーディネーターを通したさらなる改善によって地産地消を推進すれば、国が目標としている”地産地消90%”に近づくことは可能でしょう。

4.地域での地産地消の実現に向けて

現在の日本は食べ物の6割を海外から輸入しているにも関わらず、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は522万トン(令和2年度)もあると消費者庁の調査でわかっています。

スーパーやショッピングモール、コンビニ、通販で気軽になんでも買える時代になり、”在庫を切らさないことが当たり前”になりました。それゆえに過剰在庫をする企業が増え、それに伴って期限切れ・シーズンオフの食品が多く捨てられています。

世界には飢餓で苦しむ人々がまだまだ大勢いるのに、この方法を続けていくのが正解ではないことは理解できるはずです。

しかし、便利さを当然のように感じる人にとっては、好きなものを好きなときに食べられなくなる不便さは耐え難い苦痛にも感じてしまうでしょう。「そう思うことはしょうがない」と納得してしまうほど、日本は食べ物を飽和させすぎてしまいました。

地産地消を導入して間もない頃は反発の声も多いでしょうし、地域内の食べ物の需要量の把握や、農作物の栽培管理、地域内流通の方法の改善などやるべきことは山積みです。しかし、地域内の食べ物の循環システムこそ完成してしまえば、今よりももっと生活が豊かになる地域も増えてくるはずです。

少しずつでもいいので、「地域の食べ物を消費しよう」というふうな地域住民の意識改革ができるような対策を行い、今後は、無駄な食品廃棄は限りなく抑えることが”当たり前”に思える『地産地消』の考え方が広まっていくことを願います。

〈参考〉

(ライター:堀内 香菜)


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