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アップサイクル製品の購入で廃棄物削減!企業での活用事例

2023.11.16


社内で使用するオフィス用品や家具・備品、お茶菓子や飲み物などを選ぶとき、みなさんはどのような点を重視していますか?せっかくなら、自社の環境活動の一環としてアピールできるような製品を購入するのはいかがでしょうか。

選択肢の1つとしておすすめなのが「アップサイクル製品」です。SDGsの「目標12:つくる責任、つかう責任」に関わる事業として、近年さまざまな方面の企業・ブランドが開発に取り組んでいます。

社会全体を俯瞰する視点で見ると、アップサイクル製品の購入は確実に廃棄物削減に繋がっている行動です。この記事では、オフィスで利用しやすいアップサイクル製品を開発している企業や海外発のユニークな製品をご紹介します。

「アップサイクル製品」とは

「アップサイクル」とは、廃棄予定だった製品を加工し、アイデアやデザイン性・機能性など「新たな価値」を与えて生まれ変わらせることです。「クリエイティブ・リユース(創造的再利用)ともいわれます。

SDGs17の目標のうち「12:つくる責任、つかう責任」と大きく関わっています。目標12では、地球環境と人々の健康を守るために生産者・消費者が一体となって責任ある行動をとることが提唱されています。社内で使うためにアップサイクル製品を購入するという意思決定は「責任ある行動」の1つです。

具体的なアップサイクル製品とは、例えば下記のようなものです。

・古着→ぬいぐるみ・ポーチに
・形が不揃いな野菜・果物→ジャムやチップスに
・コーヒーかす→脱臭剤に
・建設工事で余った木材→木製のフォトフレームやボックスに

このように見てみると、ご家庭でいつの間にか取り組んでいることに気づく方もいらっしゃるのではないでしょうか。何気ない行動も、実は「アップサイクル」と呼べることがあります。企業として取り組むならば、廃棄物削減へのさらに大きな一歩になるでしょう。

【参考資料】
12. つくる責任、つかう責任|日本ユニセフ協会

アップサイクル製品を購入するメリット


アップサイクル製品の購入には、大きく分けて2つのメリットがあります。

1つは「資源の有効活用ができる」ことです。現在は以前と比べて経済的に豊かな国が増え、世界の人口も増加し続けています。『世界人口白書2023』によると2022年の世界人口は80億人を超えていて、このペースだと2050年には97億人を突破するという試算もあります。

経済活動が活発になり人口が増えたぶん、資源はどんどん減ってきています。このまま人間が地球で暮らしていくためには、限りある資源の有効活用、またその方法のさらなる開発が必要です。アップサイクル製品の購入は、元の製品を無駄なく使い切ることで資源の有効活用につながっています。

もう1つは「エシカル消費につながる」ことです。自分にとっての社会問題を解決する製品や、その課題に取り組んでいる企業の商品を購入・利用することを「エシカル消費」と言います。
「廃棄物削減」という社会全体の課題を解決するアップサイクル製品を購入するのは、エシカル消費につながります。また、アップサイクルに取り組んでいる企業を支援することもでき、企業同士の新たなつながりも生まれるでしょう。自社の環境活動の実績にもなるので、企業の新たな魅力の創出としてもおすすめです。

【参考資料】
世界人口白書2023|UNFPA Tokyo
エシカル消費とは|消費者庁

リサイクル・リメイクとの違い

日頃よく耳にする「リサイクル」は、廃棄予定の製品を1度資源に戻したうえで新しい製品にすることです。これに対してアップサイクルでは、1度資源に戻すことはありません

例えば、牛乳パックを1度溶かしてトイレットペーパーなどを作るのは「リサイクル」、そのまま切ったり組み合わせたりしてペン立てなどにするのは「アップサイクル」です。

また、アップサイクルとよく似た意味の言葉に「リメイク」があります。廃棄する製品に手を加えて別のアイテムを作るという部分は共通していますが、リメイクの場合は付加価値が与えられずに元の製品よりも価値が下がる可能性もあります。

着なくなったシャツを切って、ウエスとして掃除に使うのは「リメイク」です。この場合、ウエスは元のシャツよりも価値が低いものと考えます。

シャツを加工して、新しいデザインの服に仕立てるのが「アップサイクル」です。対義語として、リメイクの例のように元の製品より価値が低いものに作り変えることを「ダウンサイクル」といいます。

社内で使える!おすすめのアップサイクル製品例

「株式会社ペーパル」のアップサイクル紙製品

奈良市の製紙会社「株式会社ペーパル」では、廃棄予定だった米・もみ殻を使った紙製品「kome-kami」「momi-kami」の製造を始めました。名刺・カード・封筒のほか、紙袋やパッケージなどオフィスでも使いやすい商品を販売しています。

実は、もみ殻の焼却処分は悪臭・煙が発生しやすく、以前から処理方法が問題となっていました。また、昔から米を和紙に漉き込む手法はあったのですが、硬いもみ殻はなかなか活用されてきませんでした。ペーパルではもみ殻に特殊加工を施すことで、パッケージにも使える丈夫な紙にアップサイクルしています。

クラフトビールの製造工程で発生する「モルト粕」を使った「クラフトビールペーパー」も開発しています。今後は工場・店舗などで廃棄される野菜・果物を使った「vegi-kami」にも取り組んでいく計画です。

【参考資料】
オリジナル品の販売|株式会社ペーパル

「凸版印刷」の廃棄化粧品から作った印刷用インキ


最大手の総合印刷会社「凸版印刷」は、廃棄化粧品を使って印刷用インキ「ecosme ink(エコスメインキ)」を開発しました。クローズドでのアップサイクル事業のため販売されていないのですが、印刷物製作を凸版印刷に依頼することで利用可能です。

化粧品メーカーでは、開発中の試作品や製造から時間が経った商品の中身(化粧品バルク)が廃棄物として処理されています。凸版印刷は、化粧品バルクを管理している「株式会社モーンガータ」から供給を受け、「東洋インキ」にエコスメインキの製造を委託しています。エコスメインキは現在「シルクスクリーン印刷」に対応していて、化粧品由来のラメ感・パール感が人気です。

【参考資料】
ecosme ink(エコスメインキ)|凸版印刷
事業内容|株式会社モーンガータ

「オイシックス」の食品ロスを使ったおやつ・スナック

ネットスーパー「オイシックス」を運営する「オイシックス・ラ・大地株式会社」は、フードロスを使ったお菓子・惣菜「Upcycle by Oisix」を製造しています。この取り組みによって、2021年から2年間で約89トンものフードロス削減が達成できました。

「Upcycle by Oisix」では、形が不揃い・基準を満たしていないなどの理由で廃棄された食材を使って身体にもやさしいスナック・チップスなどを製造・販売しています。また、飲食チェーン「PRONTO」のコーヒーかすや「チョーヤ梅酒」の梅など他企業で発生するフードロスも活用することで、業界全体のフードロス削減にもつながっています。

【参考資料】
Upcycle by Oisix|オイシックス・ラ・大地株式会社
Upcycle by Oisixとチョーヤ梅酒が初の共同開発商品を販売開始|オイシックス・ラ・大地株式会社

「株式会社第一精工舎」の地産廃材で作ったペン

大阪市都島区の製造業「株式会社第一精工舎」では「地産廃材」を使ったペン・ペン立てを販売しています。同社では「47都道府県・47の地産廃材を使った商品を開発する」というプロジェクトを立ち上げ、開発に取り組んでいます。

第一精工舎は2001年の創業以来、プラスチック樹脂製品に特化した事業を行ってきました。20年で培った高い技術力を生かし、極限までプラスチック素材を減らしたうえで全国各地の地産廃材を混ぜこんだペン・ペン立てを製造しています。卵殻・牡蠣殻・紙くずなど、多様な廃材を使用した製品は「大阪製ブランド」にも認定されました。

【参考資料】
地産廃材が価値を生んだ文具シリーズ|第一精工舎
廃材に新しい価値を。「つくる責任」「つかう責任」新常識への第一歩。|大阪製ブランド

洋食器メーカー「NIKKO」の廃棄タイルを使った角皿


東京都と石川県に2つの本社を置く老舗洋食器メーカー「NIKKO」は、自社事業で発生する廃棄タイルを食器として再生した「uptile dish(アップタイルディッシュ)」を製作しています。NIKKOのオーダーメイドバスルームブランド「BAINCOUTURE(バンクチュール)」の製造過程で発生するタイルをアップサイクルした角皿は、ミニマルなデザインと独特な質感が好評です。

NIKKOは1908年の創業時から100年以上陶磁器事業を続けてきた企業です。また、バンクチュール事業では、オーダーメイドでバスルームを作り上げるための高い専門技術が磨かれてきました。2つの事業を掛け合わせた「アップタイルディッシュ」の製造は、廃材管理〜販売まですべて自社で行えるため、温室効果ガス・エネルギーの削減にもつながっています。

【参考資料】
廃棄タイルを食器としてアップサイクル uptile dish|ニッコー公式オンラインショップ

海外発・ユニークなアップサイクル製品

海外でも続々とユニークなアップサイクル製品が誕生しています。オーストリアでは、「マクドナルド」が廃棄のプラスチックストローから水着を開発しました。

マクドナルド・オーストリアでは現在、希望があった場合にのみプラスチックストローを使用しています。そのため必要数が少なくなり、残ったストローを国内のサステナブルファッションブランド「Poleit」が水着にアップサイクルしたのです。ユニセックスなデザインの水着は、マクドナルド・オーストリアのホームページで抽選販売されています。

イギリスのメンズアパレルブランド「VOLLEBAK(ボレバック)」は、物理・科学の技術を駆使したアウトドアウェアで人気です。2020年には、電子ごみを使った腕時計「Garbage Watch」を発表しました。

廃棄された電化製品・電子機器である「電子ごみ」は年々増え続けていて、2030年までには7,400万トン以上になるという試算も出ています。ボレバックのGarbage Watchはパソコンのマザーボードやテレビの配線などで作られていて、カラフルなデザインから電子ごみの利用価値が伝わる製品です。

タイでは、トウモロコシの皮や落ち葉を使った使い捨て容器も生まれています。2020年創業の「In the garden」は、おしゃれなデザインの使い捨て容器で若い女性に人気のブランドです。そのデザイン性の高さから、最近ではジュエリートレイやインテリアとしても使われるようになっています。

【参考資料】
Sustainability: Our plastic straws go for a swim|YouTube
Garbage Range|VOLLEBAK
増え続ける電子ごみ|国民生活センター
In the garden|facebook

廃棄物をアップサイクルしてくれる企業も

廃棄予定の製品をアップサイクルしてくれる企業もあります。東京に本社を置く「株式会社文祥堂」は、移動棚販売事業の一環として移動棚のアップサイクルも行っている企業です。

現在オフィスで使っている電動式移動棚の電気部品を交換し、最新機能を備えたものにアップデートしてくれます。安全性や機能性が高まるうえ、同じスペックの移動棚を新しく購入した場合と比べると費用が3分の1に抑えられるのも魅力です。

また、小規模の工房・ブランドやハンドメイド作家の中には、依頼主の持ちこんだ品をアップサイクルして新たな品物に生まれ変わらせる活動をしている方々もいます。社内の不用品を廃棄する前に、周辺地域でそのような取り組みをしている企業・個人がないかチェックしてみるのも廃棄物削減につながる行動です。

【参考資料】
アップサイクル|文祥堂

まとめ

アップサイクル製品の購入は、人口増加傾向にある世界で「資源の有効活用」につながる大事なアクションです。企業で購入・利用すると話題にもなりやすく、自社の環境活動としてもアピールになるうえ、アップサイクルに取り組んでいる企業への支援もできます。

「アップサイクル製品を購入しても、社内の廃棄物削減にはつながらないしな」と考えている方もいるかもしれません。確かに、自社の廃棄物を直接削減することにはならない場合もあります。
けれども社会全体を俯瞰で見た場合、確実に廃棄物が削減できています。ぜひアップサイクル製品の購入・利用を検討してみてください。

(ライター:佐藤 和代)

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