コラムエシカル消費廃棄物

使い捨て商品購入削減を推進! 企業の取り組み7選

2024.03.14

2020年から始まった「コロナ禍」は、ようやく落ち着きつつあります。飛沫・接触による感染を防ぐため、ソーシャルディスタンスを保ってアルコール除菌を習慣としたこの数年は、今までになく「使い捨て」が奨励されました。

不織布マスクを筆頭に、一時的に使用してすぐに廃棄する使い捨て商品は感染防止に大きく貢献したでしょう。使い捨て商品は、確かに衛生的ではあります。けれども、大量生産や使用後の処理が環境に大きく影響していることも事実です。

コロナ禍が収束しつつある現在、使い捨て商品の利用を減らすために購入削減に踏み切る企業が増えています。この記事では、購入削減で環境対策に取り組む企業事例をご紹介します。「使い捨て」と地球環境の関係も解説していますので、合わせてご覧ください。

「使い捨て商品」と環境問題

地球温暖化を加速している「使い捨て」

ペットボトルやビニール袋などの「使い捨てプラスチック」は、製造・処理において温室効果ガスを排出しています。

廃プラ処理については「資源としてリサイクルされているのでは?」と感じる方も多いでしょう。確かに、2021年度に国内で廃棄されたプラスチックのうち、有効利用率は87%とされています。この「有効利用率」は、政府が2019年5月に策定した「プラスチック資源循環戦略」で規定されている「リサイクルと熱回収を合わせた数値」です。

「熱回収(サーマルリサイクル)」とは、廃棄物を燃料として利用したり、焼却処分で生まれた熱エネルギーを利用したりする処理方法を指します。日本ではリサイクルの一種とされることが多いのですが、廃プラスチックが資源として循環するわけではありません

焼却によって生まれる熱エネルギーを一部でも活用できるという点では、熱回収は単純焼却よりもメリットがあります。けれども資源として再生利用できるわけではありませんし、温室効果ガスも発生します。これから先も続けていける処理方法ではないでしょう。

よりサステナブルな環境対策として再生利用の技術向上を図りつつ、何よりも使い捨てプラスチックそのものの削減が求められているのです。

【参考資料】
2021年廃プラスチック総排出量は824万t、有効利用率は87%|一般社団法人 プラスチック循環利用協会
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律|環境省
日本のリサイクル率と廃プラスチック処理の現状と課題|公益財団法人 日本野鳥の会

国際問題としての「使い捨てプラスチック」

先ほど述べた2021年度の廃プラスチック有効利用率のうち、再生利用される「マテリアルリサイクル」は21%です。このうち約4分の3は、再生資源として東南アジア諸国に輸出されています。

日本・欧米諸国のマテリアルリサイクル品は、2017年まで主に中国に輸出されていました。急速に工業大国となった中国では、輸入した廃プラを再生原料として多くの製品を生み出す必要があったのです。けれどもダイオキシンの発生や水質汚染、労働環境の悪化などの問題が起こり、中国は2017年に廃プラの輸入禁止措置をとりました。

廃プラの輸出先である東南アジア諸国でも同じような状況が発生し、中国同様に規制が始まっています。このような事態を受けて、2021年施行の「改定バーゼル条約」では「廃プラの輸出には相手国の同意を得ること」と定められました。

これまでの廃棄物処理が難しくなったため、日本や欧米諸国では廃プラスチックの行き場がなくなっています。単純焼却や熱回収、埋立処理が増えていけば環境問題はさらに悪化していくでしょう。従来の「使い捨て」を真剣に見直すときが来ているのです。

【参考資料】
廃プラスチックのリサイクル等に関する国内及び国外の状況について|環境省
日本のごみはどこへ行くの?|国民生活センター

使い捨て商品の購入削減に取り組む企業事例

国内外で使い捨てプラスチック削減に取り組む「TOYOTA」

大手自動車メーカー「TOYOTA」は、国内外の拠点で使い捨てプラスチックの購入削減に取り組んでいます。

タイの「トヨタ ダイハツ エンジニアリング&マニュファクチャリング」では、2022年までにすべての管轄地域のオフィスで「使い捨てプラスチック排出量をゼロ」を目指して活動を積み重ねてきました。またニュージーランドの拠点では、オフィス・社内売店のプラスチック製品を紙製品に置き換えたり、廃プラ削減を推進するために51の方法を考案・共有するなど、環境対策が従業員にとって身近なものとなるような取組がされています。

日本の「トヨタ自動車」では、社内啓発活動に力を入れています。イントラネットに使い捨てプラスチックについての特設サイトを作成し、E-ラーニングなども実施するなど社員の環境意識を高める活動が盛んです。また社内の環境部では、廃車のエアバッグを再生したエコバッグをシェアしています。

【参考資料】
オフィスでの使い捨てプラスチック削減取り組み|TOYOTA

「株式会社アクセルファクター」はマイボトル利用を推進

「ネクステージグループ」のファイナンシャル部門「株式会社アクセルファクター」では、ペットボトルの購入削減のためにマイボトルの持参を推奨しています。オフィスにウォーターサーバーを設置して、社員がいつでもマイボトルに水を補充できるようにしました。

企業の環境活動というと、プロジェクトチームを立ち上げたり社員のボランティアを募ったりと「現在の業務にプラス」する形式を想像しがちです。アクセルファクターのこの事例は、社員が自然に使い捨てプラスチックの購入削減に取り組めるようなオフィス環境を整えるというものでした。エコ活動に取り組みやすい基盤を作るというのも、企業だからこそ可能な環境活動です。

【参考資料】
SDGs・CSRへの取り組みについて|株式会社アクセルファクター
ウォーターサーバーとマイボトルを活用し、ペットボトルの削減|環境省「プラスチック・スマート」

社員に「マイカトラリーセット」を配布した「ライク株式会社」

東京都渋谷区に本社を置く「ライク株式会社」は、2023年に創業30周年を迎えた子育て・福祉支援サービス会社です。6月に開催された全社会議では、30周年記念ノベルティとして社員に「マイカトラリーセット」を配布しました。

使い捨て商品削減のため、スーパー・コンビニなどでもプラスチック製カトラリーの有料化・提供中止が進んでいます。ライク株式会社が配布したカトラリーセットは、環境に優しい竹繊維を使用したものです。軽くて口当たりが柔らかいうえ、耐久性もあると近年注目が集まっています。

ライク株式会社は、環境に配慮された保育・福祉施設の選定や間伐材の利用、保育施設へのプラスチック回収ボックスの設置など、以前から環境対策を継続しています。この取組が評価され、2022年には保育・介護事業者で初めて「エコ・ファースト企業」に認定されました。

【参考資料】
「エコ・ファースト制度」認定企業のライクグループ、全社会議で創業30周年記念ノベルティとしてマイカトラリーセットを配布|ライク株式会社
ライクグループのESG活動|ライク株式会社

施設内の使い捨て商品削減に取り組む「東京ディズニーリゾート」

「東京ディズニーリゾート」では、2030年に廃棄物全体を「10%減(2016年度比)」、使い捨てプラスチック「25%減(2018年度比)」にするという目標を定めています。目標達成に向けて、現在ディズニーリゾート全体で提供サービス・製品の切り替えが行われています。

テーマパーク内の飲食施設で使用するカトラリー類は「プラスチック資源循環促進法」に準拠した製品に切り替え、個包装の袋もなくしました。買い物袋は有料化し、代わりにディズニーリゾートオリジナルのエコバッグを販売しています。また梱包用の緩衝材を紙製に変更したことで、1年で約10トンもの使い捨てプラスチックを削減できました。

ディズニーホテルでは、小さなボトルで提供していたシャンプー類をディスペンサータイプに変更しました。使い捨てのかみそり・シャワーキャップ、ペーパーバッグなどの常設も廃止した結果、かみそりは約80%、シャワーキャップは90%以上の削減を達成しています。

【参考資料】
使い捨てプラスチック削減|株式会社オリエンタルランド
廃棄物|株式会社オリエンタルランド

企業が「使い捨て商品の購入」を削減する方法

企業が「使い捨て商品の購入削減」に取り組む場合、主に次の2つの方法が考えられます。

・環境に優しい商品への切り替え
・使い捨て商品の利用そのものを削減

使い捨て商品を繰り返し使えるものに切り替える場合は、生産時の環境負荷がより少ない製品を選択するのがおすすめです。FSCマークやエコマークなどの「環境認証マーク」がついた商品や、自然由来の材料から作られた製品をチェックしてみてください。

次のような方法も、巡り巡って使い捨て商品の購入削減につながります。

・希釈タイプのドリンクを用意して自動販売機の利用を削減
・再利用・詰め替えができる商品を選ぶ
・書籍・新聞は電子書籍サービスを法人利用

このほか、今すぐ実行できる方法もたくさんあるはずです。ぜひ気軽に試してみてください。

【参考資料】
企業や自治体で広がっている!ワンウェイプラスチック削減の動き|Operation Green
令和2年版消費者白書「プラスチックごみを減らすために」|消費者庁

ゼロ・ウェイストやアップサイクルを推進する企業も

日本初のゼロ・ウェイストスーパー「斗々屋」

2021年に京都市上京区にオープンした「斗々屋」は、日本初の「ゼロ・ウェイストスーパー」です。すべての食品・日用品を包装紙・ビニール袋を使用しない「量り売り」で販売しています。

斗々屋が目標に掲げるのは「地球1個分の暮らしの実現」です。現在、人類は「地球1.7個分の暮らし」をしているといわれています。地球環境が生み出す1年分の資源を人類が使い切ってしまう日を「アースオーバーシュートデー」といいますが、2022年はこれまでで最も早い「7月28日」でした。100年後も人間が地球で生きていくために、今を生きる私たちがライフスタイルを大きく変える必要があるのです。

斗々屋では生産現場や仕入れ、卸売という流通過程においても「ゼロ・ウェイスト」であることを目指しています。2023年には東京・代官山に新形態の店舗「CIRTY BIOSK by Totoya」をオープンしました。今後の展開に注目が集まっています。

【参考資料】
株式会社斗々屋
2022年のアースオーバーシュートデーは7月28日|WWFジャパン

デザインでアップサイクルをうながす「BRUNO」

ライフスタイルブランド「BRUNO」の調理器具「コンパクトスチームクッカー」は、パッケージデザインでも人気があります。通常商品を使うときには捨てられてしまう外箱が、小物入れとしてアップサイクルしやすいおしゃれでスタイリッシュなデザインになっているのです。

引き出しの取っ手代わりに黒いリボンをつけることで、小物入れとしての機能性もプラスしています。購入者が思わずアップサイクルしたくなるパッケージデザインにすることで「使い捨て」を防ぐユニークなアイデアです。

【参考資料】
ブルーノ(BRUNO)

まとめ

企業の環境活動としての「使い捨て商品の購入削減」についてご紹介しました。

企業の業種・業態によっては、どうしても使い捨て製品に頼らなければならないこともあるでしょう。けれども、今まで何となく使い捨ての商品を購入・利用していたけれど「繰り返し使える商品・詰め替えができる製品の方がメリットが多かった!」というものも見つかるはずです。

まずは、現在オフィスで使っているものを見直すことから始めてみるのはいかがでしょうか。特に「何年も同じ商品を購入し続けている」というものがあれば、より環境に優しい製品に変更できないか検討してみましょう。
小さな変化を起こすことから環境活動は始まります。ぜひ試してみてください。

(ライター:佐藤 和代)


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