雨水利用と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?ガーデニングなどの事例は当サイトの記事「 」で紹介されていますが、実は新しい家や銭湯といった場所にまで活用されているのです。
この記事では、
・雨水利用の必要性
・雨水利用を普及させているNPO法人「雨水市民の会」
・実際の取り組み事例
について紹介しています。3分ほどで読めますので、ぜひご一読ください。
現在、私たちの世界では常に水の問題が取り巻いています。人口増加や気候変動による世界的な水不足・安全な水へのアクセス・日本国内では甚大な自然災害による水不足懸念といった多くの水に対する課題があります。
例えば、安全な水について。2000年以降、多くの人々が確かに安全な水へアクセスできるようになりましたが、未だに大きな格差があるのが現状です。ユニセフによると、
・世界の22億人が安全な水を飲めていない
・世界の30億人が手洗い施設がない環境で暮らしている
・世界の40億人が安全なトイレを使用できていない
と発表しています。(2019年6月)
日本においても2011年の東日本大地震、2016年熊本地震、例年の台風や真夏日の連続など、自然災害が重なっています。その際に必要なのが水の確保。
私たちは、今一度「水」の大切さを見直す必要があります。そんな中で、河川・地下水に次ぐ「第3の水源」として、大規模に利用することができる雨水利用が求められているのです。
今回紹介するのは、特定非営利活動法人「雨水市民の会」です。
先ほど挙げたような「水」の問題に対して、雨を活かすことによって解決したいという想いから、2005年にNPO法人化しました。母体となる組織は1995年にできており、実は非常に前から活動しているのです。
雨水市民の会では、多岐にわたる活動をしており、大きく分けると次の6つの分野の取り組みをしています。
活動内容を見るだけでも、様々なことに取り組んでいることがわかります。
例えば、雨水活用コンサルティング。
雨水の身近な利用方法として、「手作り雨水タンク」の作り方を紹介しています。ポリバケツで作ることができ、非常時にも役立つ、とても有益な普及活動です。こちら(手作り雨水タンクの作り方)で見れるので、ぜひ挑戦してみてください。
さらに地域活動「雨の絵本ひろば」では、子ども達への読み聞かせを通して、雨など「自然」や「科学」をテーマに学びの機会も提供しています。環境だけでなく大人から子どもにまで優しい、そんな印象を抱きますね。
雨水市民の会ホームページ内のコラム「Webあまみず」では、実に多くの記事から学ぶことができます。今回はその中でも、興味深い2つの事例について紹介していきます。
興味深い取り組みとは、「新築雨水ハウス」と「雨水銭湯」の2つの事例です。
新築雨水ハウスという名の通り、雨水を利用したシステムが一軒家の家庭に付帯されています。このシステムをかんたんに説明すると
・屋根から集水した雨水が、ごみを排除するフィルターを通り、
・地下に埋め込んだ雨水タンクへと貯まる
・その後「井戸用ポンプ」からトイレや散水のために使われる
・非常時に使える「手動ポンプ」も備わっている
という仕組みになっています。
実際にこのシステムを導入したことで、トイレの洗浄水量1回当たり「大5ℓ・小3.8ℓ」を全て雨水で賄われるようになりました。また洗車の水としてもかんたんに利用でき、雨水ハウスの有効性が実感できます。
画期的なのは、手動ポンプを備え付けたことで、災害時にも役に立つこと。いざという時に使える資源なのが雨水のメリットです。
デメリットは、費用の面について。
この雨水ハウスの完成には、雨水タンク・フィルター・ポンプ・工事の費用として総額83万円がかかりました。金額面だけでなく、こういったシステムはまだ一般的でないため、「技術面」でも難しかったようです。決して安価で容易にできるわけではないのが雨水利用の現状かもしません。
とはいえ、このように実用的に雨水が利用されているのを知ることは大きな前進です。一般家庭でもこういった雨水利用の取り組みをどんどん増やしていければいいですね。
続いて紹介する事例は、東京都墨田区にある「御谷湯(みこくゆ)」。
経営者の伊藤さまのお父さまが、戦後まもなく創業され、なんと70年を迎える銭湯です。2015年には5階建のビル型の温泉にリニューアルしました。そして、雨水利用は25年も前から始めているとのことで、驚きの連続です。
地下にあるタンクには、約5トンの雨水が蓄積されているのですが、銭湯の水自体は都内では珍しく源泉掛け流しの湯なのです。
では、雨水利用はどこで使われいてるのか。雨水利用の流れとしては、
・屋上に降った雨が、1階床下のタンクへと流れ、
・ポンプで各階のトイレ洗浄に利用される
・庭園に使う水としても利用される
・さらには、4階ベランダにある別のタンクからは、
・重力差で噴水としても楽しませてくれる
そんなシステムとなっています。雨水がトイレ、庭、噴水で利用されるエコな建物となっています。銭湯でこのように使われている事例がないため、「雨水銭湯」と名付けているのですね。
雨水とは直接関係ありませんが、経営者の伊藤さまは「地域と福祉と雨水」への想いが強く、御谷湯はそんな想いが具現化された施設となっています。
4・5階は一般的な銭湯ですが、1階は福祉型家族風呂。他の銭湯ではあまり見ない興味深い取り組みです。ぜひ足を運んでみてください!
今回の記事をかんたんにまとめます。
・世界的な水不足や安全な水へのアクセスが重要課題となっている
・雨水利用の必要性が十分にある
・NPO法人「雨水市民の会」は雨水利用の価値を広げている
・新築雨水ハウスや雨水銭湯など取り組み事例もある
私たちの未来について、自然災害などのリスクについて考えると、やはり「水問題」は解決しなければならない課題です。
今すぐに大きく変えることは難しいですが、実際に取り組んでいる方や活動を見ると、小さな発見や気づきがあるのでないでしょうか。「雨水市民の会」からヒントをもらい、雨水利用についても、できることから取り組んで行きましょう。
(ライター:サイトウケイ)
<参照資料>
・「Webあまみず・新築雨水ハウスを拝見」(雨水市民の会)
・「Webあまみず・雨水銭湯 御谷湯オープン」(雨水市民の会)