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【導入事例】サステナブルな学校へ!生徒が取り組んだ成果|聖学院/女子聖学院

2024.06.04
学校菜園チーム主催のワークショップで小学生が制作した、ペットボトルのプランター

学校のサーキュラー化を目指して

聖学院中学校・高等学校と女子聖学院中学校・高等学校では、Earth Companyが提供する、学校のサーキュラー化を支援・伴走するプロジェクトベースドラーニングの実践型プログラム「オペレーション・グリーン(Operation Green)」を2022年に導入しました。

生徒たちは、まず世界の環境問題・社会課題を学んだ上で、聖学院でどのくらいサステナブルアクションが実施されているかや、CO2排出量などの現状チェックを行いました。そして廃棄物・CO2・水の3つのカテゴリーで、生徒主体のアクションプランを作成しました。

2022年9月までの活動の記事はこちらです。
生徒主体のサステナブルな学校作りが聖学院中高・女子聖学院中高で始動中!

今回は、2022年10月~2023年3月まで、試行錯誤しながらアクションを続け、見事に成果につなげた各チームの活動内容を紹介します。

これらの活動を通して、女子聖学院中高、聖学院中高、聖学院小学校はユネスコスクール(キャンディデート校)に認定されました。

プロジェクトベースドラーニングで、SDGsやサステナビリティが自分事に

2022年6月~2023年3月の活動の全体像


2023年3月23日「聖学院SDGsデー」では、学校菜園、再生可能エネルギー、ペットボトル削減、フードロスの各チームが、聖学院小学校と、聖学院・女子聖学院の各中学高校を対象としたワークショップを行いました。

そして、2023年3月24日に、60人ほどの生徒が活動の結果を発表する最終発表会が学校内で行われました。各チームの活動の成果を紹介します。

コンポストチーム

Techパートナーとして連携するLFCの「コンポストバッグ」を使用

 

コンポストチームは、活動の背景について、生ごみの焼却によって環境にとても負担がかかっているため、生ごみを減らすことで、廃棄物削減だけでなくCO2削減、地球温暖化の抑制にもつなげることができる、と説明しました。

男子と女子に分かれて活動し、男子チームは、食堂で生ごみを回収し、コンポスト活動を行いました。

女子チームは、コンポストに購買から出る生ごみを利用しました。生ごみをもらう際の入れ物を、途中からビニール袋からバケツに変更して、ごみをなくす工夫もしたそうです。さらに、コンポストの土を利用した菜園での野菜づくりも始まりました。

フードロスチーム

フードロスチームでは、食品が寄付される「フードパントリー」に見学に行った後、フードロス削減を広めるためには、まず「楽しみながらフードロス問題にかかわってほしい」という想いから「クッキングバトル」を実施しました。

クッキングバトルでは、チームに分かれ、「カレールーを使った料理」という制限のもと、味・完成度・フードロスをなくすための工夫を競いました。

フードロスをなくすための工夫として、調理では、食材を皮まで食べる、薄くむく、缶詰の汁も活用する、洗い物では、湯せんに使用したお湯を使う、鍋についたカレーを全部使い切って洗う、などを実践しました。

参加者へのアンケートによると、フードロス削減への関心が、実施前と実施後で大きく変化しました。

クッキングバトル前後に実施した参加者へのアンケート結果

ペットボトル削減チーム

ペットボトル削減チームが制作したマイボトル

 

ペットボトル削減チームでは、まず高校1、2年生が1週間に廃棄するペットボトルの量を調べたところ、500本ほどでした。この状況改善のために、高校1、2年生で給水機を導入しました。

導入前後の各1週間のペットボトル本数を比較すると、高校2年生では72本削減されました。この結果から、仮に3学年で給水機を導入した場合、1週間で216本、1カ月で648本削減が見込まれるそうです。

また、ペットボトル削減の啓蒙活動、ワークショップ、マイボトルの制作も行いました。

ワークショップでは「給水機モノポリー(人生ゲーム)」というゲームを開催し、優勝者には、マイボトルを贈呈しました。高校1年生では、マイボトルを持参している人は6割だそうで、生徒たちは今後もマイボトルの普及を進めたいと意気込んでいます。

無添加石けんチーム

校内に設置した廃油リサイクル石けん

 

生徒たちは、自分たちにとって身近な化粧品、洗剤、歯磨き粉にパーム油が使われていることを知ったことがきっかけで、SDGsの「12. つくる責任 つかう責任」「15. 陸の豊かさも守ろう」に貢献する、以下の活動を行うことを決めたそうです。

・啓蒙活動:RSPO認証(持続可能なパーム油の認証制度)の石けんや、廃油リサイクル石けんを使うことで、SDGsに貢献できることを示した資料を生徒全員に配布、ポスター掲示

・廃油リサイクル石けんの導入:泡で出るタイプの石けんをトイレに設置

活動前後の生徒へのアンケートの結果、パーム油が地球に及ぼす影響の認知度は、24%から52%へ増えました。

生徒たちが学んだこととして挙げた「調べることの大切さ」「人を動かす大変さ」にはとても、とても実感がこもっていました。

電力削減チーム

生徒たちは、CO2削減の手段を考えた結果、電力削減をすることに決めました。なぜなら、日本の電力の7割以上が化石燃料を使って発電する火力発電から生み出されているからです。

男子・女子ともに、「エアコンの温度調節」「教室の消灯」の2つに取り組みました。その結果、男子聖学院では、節電すれば一年あたり全学年で44万円もの電気代が削減できることがわかりました。

学んだこととして、

「積極的にやってくれる人が一人でもいると活動がやりやすい」
「直接的なメリットがないとやってもらえない」
「なぜ節電をする必要があるか、理解してもらうのが難しい」

と、他人にアクションしてもらう有難さと難しさを実感する声や、

「エアコンの温度調節、電気を消すという、誰でもできることを続ければ、地球の環境を少しでもよくすることにつながる」と、自己効力感がうかがえる感想が印象的でした。

再生可能エネルギーチーム

太陽光パネルに集光板を設置すると、普通に発電する1.8倍の発電量に

 

世界の人口ランキングでは11位の日本は、電気消費のランキングでは世界3位、1人当たりの電力消費ランキングでも世界4位。しかし日本のエネルギー自給率はわずか12%です。

そこで、チームでは自分たちにできる2つのテーマを掲げました。

1)ZES:Zero Emision Schoolの略で、学校から出るCO2をなくす
2)オフグリッド:電力会社に頼らずに電気を自分たちで作る

そして、以下の活動を行い、すばらしい成果を収めました。

①太陽光発電
②集光版の実験
③ペットボトル削減チームとのコラボレーション
④中高生・小学生対象にLEGOを使ったワークショップを開催

①では、小規模な太陽光発電機を生徒のみで作成して校内の充電を賄うことに成功、③では、再生可能エネルギーを貯蔵したバッテリーの電力で、給水機の電気代を実質0円を実現しました。

学校菜園チーム

屋上で栽培されたローズマリー

 

学校菜園チームでは、雨水タンクにためた雨水を使用して、学校の屋上の屋上のプランターで小カブ、ローズマリーの栽培を行いました。

また、聖学院小学校の生徒に向けて、ワークショップ「チャレンジ!菜園体験 Myプランターを作ろう!」を開催。ペットボトルを半分に切り、種を入れてコンポストの土と市販の土を入れた、オリジナルのプランターを作りました。

コンポストの土を見た小学生からは、「生ごみから作ったなんて、すごい!」という驚きの声があがりました。

これらの活動を通して「環境問題について考えるだけでなく、どう伝えればよいのか、どう興味をもってもらうかなど、相手について考えることが大事だと今までのワークショップや活動でわかった」と、実践型プロジェクトならではの学びがあったそうです。

生徒の感想

9カ月にわたるプロジェクトをやり遂げた生徒たちの感想を紹介します。

今回一番学んだこととして、諦めないことを学んだ。
正直、最初の太陽光パネル導入がダメでここからどうしようと迷った時、もうやめてもいいかなと感じていた。しかし、周りに一緒にいる仲間がいてくれて、なんとか続け、最後は啓蒙活動や小さい太陽光パネルなどで実験して、小学生の笑顔を見たり、仲間との作業を続けたりと本当に続けてよかったと思えた。あの時諦めなくてよかったと思えた。
環境問題は少しやったらすぐ良くなるものではなくて、長期戦だ。これはやっていて一番感じたことだ。長期戦だからこそ、挫折をしても諦めず、少しずつ前へ進むことが大切であると学ぶことができた。」

様々な学年の生徒らと一つの目標を通して活動していくのは新鮮だった。海洋プロジェクトでは達成することのなかったことや新たな発見にも出会うことができた。」

取り組んでいる私たちが1番楽しかったのと、啓蒙活動をして行く中で自分たちが広めたかったものが伝わって嬉しいという感覚を体験した。」

「見ている世界が変わったと思います。自分とその自分が知っている中でしかなかったものを学校全体さらに、周りの企業との協力など先生方をはじめ、アースカンパニーの方々に自分の世界を広げてもらった気がします。」

プロジェクトベースドラーニングで自分たちの学校を変えたという体験は、深い学び、充実感、喜びをともなう唯一無二の経験となったことがうかがえます。うまくいかないことがあってもあきらめずに奮闘し、プロジェクトを成功させた生徒たちに、心からの拍手を送りたいと思います。

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