「その資料、本当に必要ですか?」多くの方は、この答えにもうすでに気づいているのではないでしょうか?とはいえ、
・デジタル機器やセキュリティの導入にコストがかかる
・ITリテラシーに自信がない
・データでの管理に不安がある
・昔からの慣習を変えられない
など、なかなかペーパーレス化に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。しかし、ペーパーレス化は働き方改革や業務効率化につながるだけでなく、環境面でもメリットがあります。そこでこの記事では、ペーパーレス化導入にあたって、3つの疑問に回答し、ペーパーレスの有用性について解説します。
持続可能な社会の実現に向けて、この機会にペーパーレス化を改めて検討してみませんか?2分くらいで読めますし、すぐに取り入れられるものも多いので、まずはご一読を!
普段何気なく、印刷している紙。今日も大量の資料をコピーした…という方も多いかと思います。その紙を作る際に、どれだけのCO2が発生するか意識したことがありますか。「コピー用紙は再生紙を使っているから、エコだし!」と安心してしまっていませんか?
例えば、日本製紙連合会・LCA 小委員会の資料によると、コピー用紙の製造過程で発生するCO2は、1t当たり約1,520kgと試算されています。再生紙を使えば新たに木を切らずには澄みますが、「CO2排出量」という点でみると、実はバージンパルプで作るよりもCO2排出量はやや多いのです。
さて、A4のコピー用紙は1枚あたり約4.6gなので、A4のコピー用紙の製造過程において1枚あたり約7gものCO2が発生していることになります。
とはいえ、これを聞いたところでなかなかイメージしにくいと思うので、日本全体で国民1人ずつが紙を1枚節約したとして考えてみましょう。日本の人口が約1.2億人(=1.2億枚)なので、CO2削減量は840tです(計算式:7g × 1.2億 = 8.4億g = 840,000kg =840t (CO2量))
840tのCO2 は、25メートルプール840個分。杉の木5万9640本が1年間に吸収するCO2の量に匹敵します。
CO2排出量だけを見てもこれだけ大きな効果が期待でき、木材を切り出す際の森林縮小も考えると、ペーパーレス化はCO2削減においてとても重要です。企業や団体、学校単位でペーパーレス化に取り組めばCO2削減において大きな効果が見込めます。ペーパーレス化の大切さが分かったところで、実際の導入について見ていきましょう。
ここではペーパーレス化の導入について具体的に紹介します。
紙の代わりにノートパソコンやタブレットで資料共有を行うことで、ペーパーレス化を図れます。会議資料などを社員それぞれがデジタル管理するので、印刷の必要がなくなり、紙を使う量が削減されるのです。
さらに、印刷をしたあとで内容の不備に気づいたとき、刷り直しの必要が無くなるので紙の無駄遣いもなくせます。スマートデバイスの導入にコストがかかるから踏み切れないと思う方もいるかもしれません。
しかし、前述のCO2削減のメリットに加え、
・年間の紙にかかるコスト
・資料を印刷するのに必要な人件費
・印刷や製本にかかる手間
を減らせるので、長い目で見ればメリットが期待できます。
前述のように日本人1人ずつが1枚のコピー用紙を節約すれば、840tものCO2削減につながります。それを考えれば、「たかが一枚、されど一枚」です。いきなりペーパーレスにするのが難しい場合は、ぜひ使わなくなった資料や印刷ミスしたプリントなど、まだ使える紙がないか見直してみましょう。
ちっぽけなように思えますが、塵も積もれば山となります。回収ボックスを設けるなどしてすぐにでも取り入れてみましょう!
その一枚が、大きな一歩となるはずです。
ペーパーレスを「資料の枚数を減らす」という点で実現した企業もあります。それがトヨタ自動車株式会社です。トヨタ自動車は、企画書も報告書も議事録も、どんな案件の書類であっても、紙1枚にまとめるそうです。
紙1枚にまとめることで、資料に使う紙の枚数を減らせるだけでなく、資料が1枚にまとめられているのでコンパクトで分かりやすく、資料を確認する時間も短縮できます。
資料を1枚にまとめるために、社員も思考を整理しなければならず、能力も鍛えられます。
まったく紙の資料がなくなるペーパーレスに抵抗がある場合は、この「減らす作戦」から取り組むというのも一案です。
ITを活用すればペーパーレス化は実現できますが、
・データが壊れたりなくなってしまったら?
・データ流出の危険性は?
など、有効性やコスト面以外にも不安要素があると思います。そこで次にITでのデータ管理・共有について知って、不安を解消していきましょう。
クラウド上にバックアップしておくことで、仮にデータが破損したり、誤って消してしまっても復元できます。クラウドとはインターネット上に存在するデータ保管庫のようなもので、ここにデータを保存したり取り出したりでき、インターネットが繋がれば、どこからでもアクセス可能です。
例えば、iPhoneのデータをバックアップするときもicloudというクラウドを利用しています。企業向けのサービスなどもあり、月額利用料もそれほど高額ではないサービスもあるので、ぜひ検討してみましょう。
データの流出の不安は、人間が関わる以上、「これで万全」という策は難しいですが、パスワード設定と運用ルールを決めることである程度解消できます。ファイルの送受信を圧縮ファイルにしたり、パスワード設定をかける、パスワードとファイルは別メールでおくる等のルールで、データの流出対策を講じることはできます。
ペーパーレス化を推進し、使う紙の量を減らすことは、働き方改革や業務効率化の面だけでなくCO2削減にも大きなメリットがあります。すべての資料をペーパーレスにすることに抵抗があれば、ぜひトヨタ自動車株式会社のように、「資料を1枚にまとめる」という使う紙を減らす活動から始めてみてはいかがでしょうか。
ですが、最後にもう一度だけ問わせてください。
「本当にその資料、紙でないとだめですか?」
(ライター:はたのゆうた)
<参考資料・記事>
・「紙・板紙のライフサイクルにおける CO2排出量 」(日本製紙連合会・LCA 小委員会)
・「紙の生産によって発生するCO2排出量と紙の種類別の排出量」(伸和印刷株式会社)
・「CO2 1トンはどれくらい?」(株式会社ウェイストボックス)
・「元トヨタ社員直伝!「すべてを紙1枚」にまとめる技術とは?」(大嶋祥誉、ダイヤモンド・オンライン)