2020年7月から始まったレジ袋有料化。
有料化の目的の一つに、ズバリ、脱プラスチック化が挙げられます。プラスチックの削減と言えば、そのうちの一つに商品の包装や梱包を少なくする取り組みがあります。これは、地球に住み日々消費をする私たちにとって、切り離せない問題です。
そこで、今回の記事では、
・脱プラスチックの必要性・
・包装資源削減のデメリット
・企業の具体的な取り組み事例
について紹介していきます。3分ほどで読めますので、ぜひご一読ください。
まずは、脱プラスチックの必要性を改めて確認しておきましょう。
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として、国連は2015年にSDGsを採択しました。発展途上国や先進国の枠組みに関係なく、普遍的な取り組みとして、日本も力を入れています。そんなSDGsを5分野に大別したとき、その内の1つとして「地球環境を守り育てる」ことが挙げられます。
特に、気候変動への対策、海と陸の生物多様性を守るため、脱プラスチックは必ず取り組まなければならない課題なのです。
梱包や包装資源を削減する動きについて、盲目的に活動を肯定し支援するのではなく、デメリットとなる事項についても考えてみたいと思います。
まず1点目は、「削減後の梱包や包装だけでは不十分な場合があり、商品に影響してしまう」ということです。特に、衣服などでは輸送する際に、プラスチックを削減した梱包のせいで、衣服が汚れる事態になってしまえば、本末転倒ですし、顧客の満足度も下がってしまいます。
パタゴニアでは、こうしたマイナス面を自社で調査しています(「パタゴニアのプラスチック梱包:衣類配送の課題に関する調査報告書」)全てのプラスチックを削減できれば当然良いですが、必要な場所に必要な分だけのプラスチックを使用すること。その上で、最大限のリサイクルに努めることが重要ですね。
2点目は、「コストがかかる」こと。
環境に良いとは分かっていても、コストがかかるようでは、会社として動き出すのも躊躇してしまいます。一時的にコストが上がったとしても、それに見合う価値があるのか、こうしたメリットを探っていく必要があるでしょう。
3つ目は、「ポイ捨てなど個人の無責任な行動を変えないと、意味がない」という点です。梱包や包装を変えたところで、私たちが海や川にポイ捨てしたり、リサイクルなどのルールを守らなければ、企業の取り組みも無駄になってしまいます。
関わる人全てが、意識を持って取り組まなければなりませんね。
実際に3つの企業を例に出して、取り組み事例を紹介していきます。
楽天では、資源管理について次の内容を基本方針として定めています。
『楽天グループは、地球を守るため、商品やサービスの生産、包装資材の利用、商品の配送など、事業のバリューチェーン全体において、(中略)私たちの事業活動がもたらす環境への負荷を削減します」という方針です。
楽天市場を展開する楽天では、事業全体が上流から下流まで幅広く携わっているからこそ、こうした方針を達成する取り組みが非常に重要だと言えます。楽天の物流や梱包については、
・商品のサイズに合う最小限の資材を使用
・一部のダンボールでは、90~95%が古紙である素材を使用
・緩衝材の一部には、より環境にやさしいシールドエア製品を使用
こうした取り組みを行なっています。
株式会社ファーストリテイリングのグループ方針では、2020年までに店頭での使い捨てプラスチック包装85%に当たる7,800トンの削減を目指しています。
具体的な内容としては、
・ショッピングバッグの環境配慮型紙袋への切り替え
・オリジナルエコバッグの販売
・商品パッケージの脱プラ、代替素材への切り替え検証
といった内容です。紙袋への切り替えは見たことある方も多いかもしれませんが、それだけでなく、人気商品であるインナー類などのパッケージも、以前と変わっています。ぜひ店頭でチェックしてみてくださいね。
3つ目に挙げるのは、ネスレ日本の取り組み事例。
ネスレ日本では、「2025 年までに包装の 100%をリサイクル可能または再使用可能」という目標を掲げています。人気商品である「キットカット」の包装が紙パッケージになったのですが、今回注目したい点は、単純に脱プラスチックの動きを汲んだだけではありません。
紙パッケージにしたことで、
・コストはかかるものの全世界にも影響を与えていること
・アートの分野にも繋げていること
これらのメリットがある点です。実は、キットカットの売り上げの10~15%は、海外の方が購入した分です。全世界から注目されるという価値や、グローバル企業としての責任や自覚から、この包装紙の切り替えに着手したそうです。コストもかかったようですが、短期的な利益だけを考えなかった決断でしょう。
そして、香取慎吾さんが出演されたキットカットのCMをご存知でしょうか。
本来は、紙パッケージへの切り替えを打ち出すCMでしたが、紙パッケージをつなぎ合わせて作ったキャンバスには、大輪の花の絵とともに「いっしょにがんばりましょう」というメッセージが書かれました。新型コロナウイルスが流行する中、多くの人が元気付けられ、SNS等でも話題を呼びました。
これはあくまで「CM」ですし、「香取慎吾さん」の芸術性かもしれませんが、ネスレでは紙パッケージを利用して、折り鶴を据えたりしています。
紙パッケージを手に取った時、その触り心地や雰囲気から、創作意欲を掻き立てられた方もいるのではないでしょうか。こうしたアートのような分野は、数値や論理では、なかなか示せるものではありません。
ただ単に、脱プラスチックに取り組むのではなく、そこに価値や豊かさを盛り込むネスレ日本の取り組み事例は、非常に目を見張るものがありますよね。
かんたんに重要なポイントをまとめましょう。
・SDGs達成のためにも脱プラスチックが必要
・機能面やコストにデメリットがあるものの、それを越す価値を見出すことが重要
・楽天やユニクロ、ネスレの取り組み事例を参考に脱プラの動きを理解する
梱包や包装資源の削減は、どの企業もまだまだ道半ばと言えるでしょう。
今の梱包や包装が本当に必要なのか、いろいろな企業で改善されてきています。消費者側も、そういった商品を意図的に購入することで、自の意志を表明することに繋がるのではないでしょうか。
必要な分は使用しつつも、無駄なプラスチックは削減していく、将来的には100%の無駄が省かれるような世の中になればいいですね。
(ライター:サイトウケイ)
<参考記事>
・ユニクロプレスリリース「2020年までに店頭での使い捨てプラスチック包装を85%削減 9月から全世界のグループブランド3,500店舗でショッピングバッグを環境配慮型紙製に順次切り替え」
・ネスレプレスリリース「ネスレ、プラスチック廃棄物への取り組みを加速」
・食品産業新聞社ニュース「「キットカット」外袋を紙に変更、プラスチックごみの課題解決目指す/ネスレ日本 」