コラムエコスクールエシカル消費

学校とエシカル商品購入!自治体や地域と共に取り組む事例を紹介

2022.02.17

1.エシカル消費ってなに?

我が国の「消費」を取り巻く状況は、時代と共に発展し、変化を続けてきました。

第二次大戦後の物資のない時代には、需要に対して十分な量を供給することが、まず最も重要な課題でした。やがて高度成長期に入ると、生活をより豊かにする電化製品や車、レジャーなど商品・サービスの質的向上と量的拡大が共に求められ、大量生産・大量消費社会が到来。平成バブル期には消費で経済を回すことがさらに肯定的に捉えられ、高価格なものも市場から受け入れられるようになりました。

その後景気低迷期に突入すると、一転して「安さこそが善」という風潮が市場で支配的になります。

SPA(Speciality store retailer of private label apparel、製造小売業)やGMS(general merchandise store、大規模総合小売店)各社は製造・流通コストを極限まで圧縮し、こぞって価格競争にしのぎを削ったのです。そして経済グローバル化の波はその動きを全世界的規模で拡大させ、経済効率の追求に勝利することが市場で覇権を得る条件となりました。

しかしその一方で、物を購入する消費者の側も、成長を続けています。

地球温暖化や経済格差、土地や海洋の汚染に資源枯渇の問題など、人類の経済活動がもたらす様々な弊害を人々が知るにつれ「私たちは従来のままの消費を謳歌していて良いのか」という疑問・反省がなされるようになったのです。

その疑問から生まれたもののひとつが「エシカル消費」です。

エシカル(ethical)とは、倫理的、道徳的という意味です。商品やサービスを購入する際に、判断の基準として品質機能や価格などの要素だけでなく、背後に倫理的な問題が隠れていないか、を重視する消費行動のことを指しています。その背景には誰もが能動的に情報へアクセスできるようになり、大量生産や低価格化の裏側に潜むひずみに気付きはじめたこと、温室効果ガスの抑制やSDGsが国際的な課題として推進されていること、などがあります。

<参考資料・記事>
SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省 (mofa.go.jp)

 

2.学校における具体事例

2-1.-政府と徳島県の取り組み

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づき、17のゴールと169のターゲットからなるSDGs(Sustainable Development Goals)がわが国でも推進されています。その一環として、消費者庁がエシカル消費に関する啓発活動を行っています。

<参考資料・記事>
エシカル消費とは|エシカル消費特設サイト[消費者庁] (caa.go.jp)

消費者庁では、自治体や教育機関などにおける取り組みに対し「人・社会への配慮」「地域への配慮」「環境への配慮」という三つを柱に、具体的な活動事例を紹介しています。

<参考資料・記事>
「倫理的消費(エシカル消費)」普及・啓発活動 | 消費者庁 (caa.go.jp)

中でも目につくのが、徳島県における事例の多さです。徳島県では2017(平成29)年7月、教育委員会と各教育機関、消費者、事業者らで構成される「とくしまエシカル消費推進会議」を設立しました。推進にあたり地域ぐるみで活動の普及・促進に注力できる枠組みを設けたのです。

そして県内の公立高校を対象に「『エシカル消費』リーディングスクール事業」「高校における『エシカルクラブ』推進事業」を実施、児童や生徒が積極的に取り組める環境を整えました。

<参考資料・記事>
project_004_180712_0001.pdf (caa.go.jp)

2-2.徳島県立城西高校の活動

これに基づき、県立城西高等学校では「エシカル消費宣言」を掲げました。アグリビジネス科が中心となって直営のエシカル売店「そよかぜ販売所」を運営するほか、学園祭「耕心祭」でのエシカル消費展の開催、地域幼稚園との学習交流など、多彩な活動を進めています。

「そよかぜ販売所」で取り扱う商品カテゴリー(下記参考リンク先の同校HPより)

フェアトレード商品・オリジナルエシカルカレー・規格外野菜(食品ロス削減)・県産野菜(地産地消)・障がい者授産施設製造品の委託販売 ほか資料展示など

<参考資料・記事>
エシカル消費 – 徳島県立城西高等学校 (tokushima-ec.ed.jp)

2-3.静岡県立駿河総合高校の活動

静岡県立駿河総合高等学校では「MSIPP(未来の・静岡を・アイディアで・プロデュースする・プロジェクト)」と題し、持続可能な社会の実現に向けて「高校生ができること」をテーマとした活動が継続中。自作した資料を手に市内のカフェを訪れて、フェアトレードコーヒー豆の取り扱いをお願いしたり、事業者と共同でフェアトレード・アップサイクル製品の開発を行うなど、授業を通じた学習が実践に結びつくような工夫を重ねています。

学校自身のエシカル商品購入という面では、卒業証書や教職員の名刺をフェアトレードのオーガニック・バナナペーパーで作成する取り組みが続けられています。

<参考資料・記事>
project_004_190204_0006.pdf (caa.go.jp)
バナナペーパー | 株式会社山櫻 (yamazakura.co.jp)

2-4.千葉県印西市立原山小学校の活動

千葉県の印西市立原山小学校では、情報教育の一環としてSDGsの意識啓発に力を入れています。同校ホームページでは5年生を対象とした「総合的な学習の時間×国語科×社会科×家庭科」という枠組みでのカリキュラムを公開。そこには、社会につながる文脈の中でSDGsに対する理解をより実践的に深めようとする意図があります。

2021年・2022年は学習の成果としてオリジナルのビデオや掲示物を作成、さらに保護者や地域の事業者・消費者の協力のもと、地域ぐるみでエシカル消費について考える場と機会を設けました。一連の流れはPDCAサイクルでしっかりと振り返りを行い、評価と改善に至るまで行われます。

<参考資料・記事>
SDGs取組例 – 印西市立原山小学校 (inzai.ed.jp)
エシカル消費コーナーを作った小学5年生 @イオン – フィリピンの女性支援フェアトレード「パクパクナティン」 (pakpaknatin.org)

 

2-5.長野県長野市立柳原小学校の活動

長野県の長野市立柳原小学校では、「生活協同組合コープながの」による出前授業が開催されています。2021年6月、6学年65名の児童を対象に行われた授業では紙芝居形式の問題提起に始まり、遠く沖縄におけるプロジェクトの事例を紹介しました。続いてエシカル消費の具体的な行動として

・様々な認証マークについて
・プラスチックごみの問題
・食品ロス減少への参加
・フェアトレードという考え方
・コープ「ハッピーミルクプロジェクト」について

などの学習を進め、消費者としての立場からなにができるのか、という意識を育てる「エシカルとの最初の出会い」を経験する内容となっています。

<参考資料・記事>
SDGsとエシカル消費 | NAGANO SDGs PROJECT

2-6.エシカル甲子園

(画像引用元:エシカル甲子園2021)

2-1で前述したとおり、徳島県における取り組みは全国でも突出しています。その徳島県で2022年3月18日、全国の高校生らによるエシカル消費への日頃の取り組みや、未来に向けた展望などを発表しあう「エシカル甲子園」が開催されます。

3回目の開催となる本年は、全国85校の中から選ばれた11校が会場に集い、本選の模様はライブでネット配信されることになっています。

参加の対象となるのは高等学校,中等教育学校後期課程,特別支援学校高等部,高等専門学校(3年次まで)、書類審査と投票で「エシカル甲子園特別賞」が選出される予定です。

<参考資料・記事>
【本選発表順決定】エシカル甲子園2021~「私たちが創る持続可能な社会」全国,そして世界へ~本選の開催について|徳島県ホームページ (tokushima.lg.jp)

 

3.学校にできるエシカル消費

学校は次世代を担う子供たちが、将来消費者・生産者・生活者などあらゆる立場に立ったときに総合的に社会をとらえ、自分の頭で考え、行動できる力を育むためのとても大切な場所です。

知識を学び、実際の行動を通して子供たち自身で体験することが重要ですが、同時に教職員や保護者にとっても、エシカル消費の実践の場になります。

学校もまた、企業と同じ組織体です。静岡県立駿河総合高校のように、学校で使う紙をエシカル商品に替えるのは、はじめの一歩として取り組みやすい事例でしょう。遠足や修学旅行ではCO2排出をゼロにする企画を提案する旅行会社も登場していますし、Operation Greenのコラムで既報しているペーパーレスへの取り組みも、また形を変えたエシカル購入と言えます。教育教材だけでなく給食の食材や部活動の備品、日用品など校内で使用するものをエシカル商品に転換することで、子供たちへの教育効果も高まると期待できます。

購入における視点の例としては

・フェアトレードの商品である
・障がい者雇用事業者の製品である
・生産・流通がトレースできる
・過剰な包装や無駄なパッケージがない
・地元の産品である
・自然環境に配慮がなされている

などに留意すると良いでしょう。

エシカル商品はSDGsの普及と共に、以前に比べて種類や幅が増加しています。物品購入の予算を決める際に、エシカル商品を選択肢のひとつとして考慮されてはいかがでしょうか。

(ライター:大石雅彦)

<参考資料・記事>
学校こそペーパーレス化!そのメリットと導入事例を紹介! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム


TAGS: エコスクール,エシカル消費,