コラムエコスクール省エネ節水・雨水利用

節水はなぜ必要?その理由と学校での過ごし方を学ぼう

2022.09.13

節水をするのは水不足の対策水道代を抑えるためだけだと思っていませんか?もしかしたら、お水の使用を減らすことが環境問題に直接関与していないだろうと思ったことはあるかもしれません。

しかし、世界的に減らすべきとされるCO2の排泄量にも、節水は深く関わっています。排水溝へ流れたお水を再び綺麗な状態へ生まれ変わらせるためには、環境へ負担をかけながら人が手を加える必要があります。

節水がなぜ環境問題と関連するのかをさらに詳しく述べるとともに、節水を積極的に行っている学校の事例や今後の対策についてご紹介していきますのでぜひご覧ください。

1. 節水が必要な理由

水道から流れてくるお水は、下水の清浄化したのち、河川のお水を何度も沈澱処理・濾過・消毒を繰り返して、やっと飲み水として利用できるレベルまで引き上げられています。

この綺麗な水道水の使用を最低限にとどめていこう、というのが”節水”という取り組みです。蛇口をひねれば誰でも簡単に使用することが可能なため、ついつい使い過ぎになりがちです。節水は経済的な問題から大切ですが、環境問題の観点からも必要です。

なぜお水の使用を減らすことが環境問題につながるかというと、お水を各家庭や学校などの施設で使う綺麗な水道水に精製するためには大量の時間と電力が必要だからです。排水溝へ流れたお水は下水処理場に行き着き、そこで汚れが取り除かれます。河川や海を汚さないために何度も濾過処理を繰り返し、綺麗になったお水を河川に放流します。

その後、浄水場で河川やダム・地下水からお水を組み上げ、飲み水として使えるように濾過・消毒をしてから、水道水として日本中に供給されます。さらに、ビルやマンションなどの高層階の建物では電動ポンプを使って水を汲み上げる必要があるので、さらに電力を必要とします。

このように、浄化作業の過程で途方もない時間と電力を消費するため、私たちがお水を使えば使うほど電力が必要となります。つまりは、お水を節約することが結果的に節電にもつながっていくというわけです。

お水と同様、電力も無限に使えるわけではありません。海外から石炭や石油を輸入し、その化石燃料を燃やすのが、日本の主要な発電方法となっています。悲しくもその環境に負担のかかる方法でしか、我々の使用する電気をまかなうことはできません。

だから、「節電」と同じくらい「節水」をしていくことも環境にとって必要であることをお分かりいただけたのではないでしょうか。

生活とは切っても切り離せない重要なライフラインである「水道」。子供でも簡単に使えるからこそ、節水をしなければならないという意識が必要不可欠です。個人が節水を心がけるだけで、無駄なお金や電力を減らし、CO2の削減など環境を守る手助けとなっていくことは間違いありません。

 

〈参考資料・記事〉

節水って必要なの? – 福島県ホームページ
知っておきたい。節水のこと [水と環境] | TOTO
大久保浄水場 省エネへの取組 – 埼玉県
福岡市水道局総務課 水とわたしたち 令和4年度版

2. 中学校・高校で行われている節水対策

多くの学校で実施されている節水方法をご紹介していきます。

〜中学校・高校での節水対策〜

  • 1.花壇や畑の水やりには雨水を利用する

雨樋(あまどい)を流れてきた水をコック付きの解放性のドラム缶に貯留。コックをひねり、じょうろにお水を注いで使用

  • 2.トイレの水は使った後1回だけ流すことを徹底

トイレに張り紙をする、音姫の導入

  • 3.蛇口の水は「鉛筆1本の太さ」に心がけ、1回の使用量を減らす

洗面台・手洗い場に張り紙をする、ある一定の期間だけ節水を徹底する『節水週間』を実施する

  • 4.歯磨きのときはコップを使用し、水の流しっぱなしを防ぐ

歯磨きを行う人向けにコップの持参を呼びかける

  • 5.タオルや雑巾をすすぐときはなるべく流水を使わずに、バケツに注いだ水で洗う

クラス単位で共有し、掃除の時間に徹底する

  • 6.水量を調節するために節水グッズを使用する

〜節水グッズ例〜

・蛇口内部に節水コマを取り付ける

エコバルブを設置する

節水コマ エコバルブ
節水が図れるように、弁座パッキン固定用ナットを特殊な形状にしたもの 水道設備に取りつけることによって、使用感を変えずに水量をコントロールできる節水対策器具
特徴
  • 水道局が推奨する節水器具の一つ
  • 蛇口は13mmの単水栓のみ
  • 節水率の調整はできない
  • レバー栓には使用不可
  • 様々な箇所に取り付けが可能
  • 節水率の調整が可能
  • 多種多様なラインナップ
  • 脱着は容易
節水率 最大30% 最大75%

このように個人個人が、丁寧に節水を心がけていけば、水道水の使用量を最小限にとどめることが可能です。そうすることで下水処理場の稼働を極力減らすことにつながり、環境を守ることになります。

可燃ごみなどの量は目視できますが、使ったお水の量は把握することは困難です。そのため、『個人の善意』に頼るしかありません。「節水が大事」と伝える際には、なぜ節水が大事かを伝え、みんなが協力していく必要があるということをしっかり伝えることが大切です。

〈参考資料・記事〉

熊本市水保全課 H27 年度わくわく節水実践コンクール 参加校の「節水実践の事例」
徳島県つるぎ高等学校ホームページより『つるぎ高3人が節水こま取り付け』

3. 節水のためにも学校環境の整備改修を推奨

平成21年4月に日本政府はスクール・ニューディール構想を発表しました。これは”経済危機対策”のための構想で、学校環境を『21世紀の学校』にふさわしい教育環境の抜本的充実を図ることを目的に施行されました。

この構想により、①耐震化②ICT化、そして③エコ化の3つの柱を拡大させ始めました。耐震化は早々に行われ成功していきましたが、予算の確保が困難だったこともありICT化、エコ化は遅れを見せ、スクール・ニューディール構想は失敗したと言われています。

しかし、耐震化が推進された昨今、続々とICT化やエコ化が進んできました。その中でも、これから注目したいのはカーボンオフセットに基づく『エコ化』です。太陽光パネルの設置や、節水トイレへの改修といった、環境に優しい施設作りが全国の学校で行われはじめています。

特に、トイレを節水便器にすることで大幅な節約が可能です。1回あたりの排水量は以下の量です。

  • ・20年前の機種:約13L
  • ・10年前の機種:約8L
  • ・近年の節水トイレ:4〜6L

このように低電力で節水ができるように年々改良されています。そのため、10年以上前の古いものを使用しているなら、新しいトイレに変更することで学校そのものをエコ化することが可能です

全ての施設のトイレを変更するのには莫大なお金がかかりますが、節水便器に変更することで5〜10年程度で改修費を取り返すことができると言われています。文部科学省からも推奨されているこの構想をぜひ参考に、より良い学校作りを行っていきませんか?

〈参考資料・記事〉

文部科学省 学校施設における耐震・エコ・ICT化の推進「スクール・ニューディール構想」
スクール・ニューディール構想とトイレエコ改修

4. 水質悪化を抑えることも節水になる

節水と同じくらい気をつけていくべきことがあります。それは、汚れたお水を排水溝に流さないようにすることです。これは下水処理施設でたいへん問題になっています。汚れたお水を透明な水にするには、濾過・沈澱などの高度な処理が必要で、特に油は排水処理装置の大敵です。

油は悪臭の元になるだけでなく、ラードなどの固まった油脂が下水道管内を閉鎖することもあります。さらに、濾過機能のあるポンプ状や処理工場などの設備にも障害を引き起こしてしまう可能性も高いのです。

そうしないために、学校教育として節水と同時に、以下の3点の対策を行うことを推奨します。

  • ・絵の具など粘度のあるものはチラシで拭きとってから洗う
  • ・油分の含むものはキッチンペーパーなどでしっかり拭き取る
  • ・使用する洗剤は最小限にとどめる

染料や油などの液体を流してしまうと、自然に還せるレベルの純度に戻すまでに大幅な手間と電力、時間がかかってしまいます。「ペーパーで少し汚れを拭き取る」「お水を汚す成分を極力使わない」、そんな一手間を心がけるだけで浄化への負担を軽減することが可能です。

現在、”節水”に力を入れている学校様は、次のステップとして、「水質悪化をさせないためにどうすれば良いか」を学ぶ機会を新しく生徒に与えてみましょう。

※こちらの記事では、廃水を極力汚さないための「新聞紙ナプキン」の活用法を紹介しています。あわせてご覧ください!
水質保全について堀さんに学ぶ!オンライン講座「Stay at home, Eco at home」開催レポート

〈参考資料・記事〉

川崎市上下水道局下水道部下水道水質課 油と公共下水道
エンバイロ・ビジョン
エンザイム株式会社

5. 節水は1人では不可能!

日本の蛇口から出るお水の綺麗さは世界でも有数です。それは、日本が海に囲まれた降水量が多い国でお水が豊富、さらに水を浄化する技術が非常に高いからだと言われています。

一方、世界の多くの国では水道水の安全基準が低く、インフラの整備が完全ではないため、普通は蛇口のお水を飲むことができません。

それにも関わらず、世界のお水と日本の水道水はほとんどコストが変わりません。国の税金を利用しながら浄水を行なっているとはいえ、日本では国民のライフラインを充実させるために低コストで提供してくれています。そんな国からの与えられた限りある資源ですから、その事実を忘れず大切に使っていきたいものです。

節水は1人で実現できるものではありません。

お水は毎日使用するものだからこそ、機器だけに頼るのではなく、『環境のために節水をしよう』という確固たる個人の意識も必要です。

しかし、お水の使用を制限しようなどとは微塵も思わない大人が世の中に溢れているのも事実です。とはいえ、教育機関に在籍している生徒には、そのような”非エコ的な考え方の大人”への道を辿らせるのは好ましくありません。

ぜひとも、蛇口から綺麗な水が出てくることは当たり前ではなく、日本は恵まれているのだということを今一度、生徒さんたちに伝えていただけたらと思います。

(ライター:堀内香菜)


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