コラムCO2削減

地球温暖化に学校からSTOP! 省エネやエコ通学事例 

2024.01.09

はじめに

「最近、豪雨や台風などの自然災害が多い…」「年々、夏が暑くなっている?」
そのように感じたことはありませんか?

原因として、地球温暖化が挙げられます。地球温暖化は異常気象、気候変動、海面上昇を引き起こし、食料供給や私たちのくらし、生態系を脅かすとても深刻な問題です。

事実、世界の年間平均気温は、変動を繰り返しながらも上昇を続けています。日本においても、1990年代以降、高温となる年が多くあり、今後100年あたり1.3℃の割合で上昇すると言われています。

その要因として、大気中の温室効果ガスの増加が考えられます。二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に増え過ぎると、宇宙に放出されるはずの熱が放出されず、地表にたまりすぎてしまいます。また、森林破壊の影響により、樹木が吸収する二酸化炭素量が減少していることも、地球温暖化の一因とされています。

以前、Operation Greenのコラムでは、CO2削減について海外での環境教育事例に焦点を当てながら取り上げてきました。是非こちらもお読みください。
CO2削減の環境教育!海外の先進事例を紹介! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

将来、未来を担う子どもたちが、快適な生活を送るためにも、生徒一人一人が、さらには学校の一校一校が、環境配慮に取り組むことで、地球温暖化に歯止めをかける必要があると言えるでしょう。

本コラムでは、学校において子供たちが身近に取組むことができる環境に配慮をした取り組み事例を紹介し、地球温暖化問題に今一度、向き合いたいと思います。

〈参考資料・記事〉
気象庁 | 世界の年平均気温 (jma.go.jp)
地球温暖化とは?温暖化の原因と仕組みを解説 |WWFジャパン

地球温暖化は私たちの身近な問題

(グラフデータの出典:「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2023年版」をもとに筆者作成)

 

「地球温暖化はスケールが大きすぎる問題…」
「日本はアメリカや中国に比べて、人口も面積も小さい国だから関係ないのでは?」
と思われることがあるかもしれません。

二酸化炭素の排出割合で見てみると、一見、日本は3.2%と低いかと思われます。ですが、一人当たり排出量を見ると、他国と同様に数値が高いことが見て取れます。さらに、2020年の一年間に、世界約190カ国から排出された二酸化炭素の総量のうち、日本を含めた十数カ国からの排出が約70%近くを占めています。
また、一人当たりの二酸化炭素排出量を比較すると、先進国の二酸化炭素の排出量が、途上国の約3倍以上に相当していることが分かっています。

このことからも、わたしたちにも二酸化炭素の削減のための対策が求められていると言えるでしょう。

〈参考資料・記事〉
3-02 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2020年) | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

一体、二酸化炭素はどこから排出されるの? 

(グラフデータの出典:「日本の1990-2020年度の温室効果ガス排出量データ」をもとに筆者作成)

 

世界全体から排出される温室効果ガスのうち、約80%を占めているのは二酸化炭素です。

では一体、二酸化炭素は私たちの生活からどのように排出されているのでしょうか。

全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2021年の一人当たりの二酸化炭素排出量のうちの約半数が電力とされています。電力を発電する過程で石油・石炭といった化石燃料を燃焼させると、二酸化炭素などの温室効果ガスが発生します。

続いて2番目に排出量が大きいのは、ガソリンです。主に、ガソリンを主燃料としている自動車からの排出量が全体の約4分の1を占めています。

〈参考資料・記事〉
4-07 一人当たりの二酸化炭素排出量(2021年度) | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

学校での取り組み事例を紹介

省エネ

省エネとは、「省エネルギー」の略称のことで、エネルギーを効率よく使うことをいいます。

省エネを行うことで、地球温暖化防止に貢献することができるだけではなく、エネルギーの安定供給を確保することにも繋がります。

今、世界ではエネルギー需要が急増しています。これは、アジアを中心とした経済発展が要因とされ、国際エネルギー機関(IEA)によると、2040年の世界のエネルギー需要は2014年と比べ、約1.3倍に増加すると報告されています。
にもかかわらず、世界のエネルギー資源の可採年数は、石油は約50年、天然ガスは約51年とされているのです。

学校で省エネを進めるには、電気の使い方を見直すことと同時に、見直すことの意味や意義を学ぶことが効果的だといえます。

文部科学省は、学校でできる省エネルギー対策の取組事例集を取りまとめています。事例集では、照明の使用を工夫することや、空調を自動制御するなどの方法が紹介されています。このような教材を用いた省エネ教育が広がっています。
実際に、学校現場で行われている省エネ学習の事例を紹介します。

①岐阜県羽島市立正木小学校

岐阜県羽島市の正木小学校では、家庭や学校、地域で省エネ・エコに取り組む意欲を育て、省エネやエコについて子どもたちが自発的に取り組む力を育てようと、小学校5年生を対象に省エネについて学びを深める授業を行っています。

授業の前半では、生徒たちが夏休み期間に省エネ活動として、家庭で取り組んできた活動について発表をしました。

他の生徒が行った取り組みを共有し合ったことを踏まえて、授業の後半では「学校ではどんな省エネ・エコ活動ができるだろう?」というテーマで、視点を学校生活に移し、さらにどのようなことで節電をするかを考えていきました。

山梨県北杜市立泉小学校では、これまでの理科の学びを生かし、6年生のプログラミング教育授業として課題解決型の「学校省エネ化計画」という授業を実施しました。生徒たちは、校内で省エネ化できそうな場所をあらかじめ考え、その後、省エネ化したい場所へ行き、プログラミングを行ってアイデアを試します。

省エネ化したい場所に全員で行き、考案したプログラミングのアイデア発表会を行いました。聞き手の生徒たちは、アイデアに対するコメントや、「もっとこうしてみたら」という改善案を共有しました。

省エネ実践例として、電気を消し忘れを無くし教室の照明を自動化する仕組みや、教室から出る人を数えて、電気の消し忘れを知らせ、照明を消してくれる仕組みを考えました。

②大阪府大阪市立蒲生中学校

大阪市立蒲生中学校の科学部では、クラブ活動の一環として地域住民の協力のもと、自分の身近な電力について学ぶ講義が行われました。

まずは、学校中の蛍光灯や電灯で、普段どのくらいの電力が使われているのかを調べていきました。その他の電気器具についても調査を進めると「黒板消しクリーナーが300Wも消費するとは思わなかった」と学校生活に身近な電気器具の使用電力が大きいことに、生徒たちはとても驚いていたそうです。その後、電気とは何か、電力とは、LEDとは何かなどの講義に耳を傾けました。

生徒たちからは、「LEDにすれば、すごい省エネになるけれど、価格のこともあるから、工夫して節約すればいいと知った」「蛍光灯の数を減らすだけで節電できることが分かった」と感想が挙がりました。

③八戸工業大学第二高等学校附属中学校

八戸工業大学第二高等学校附属中学校では、総合的な探究の時間の一環として、2021年に開催された「第2回 省エネ政策提案型パブリック・ディベートコンテスト」の中学生の部に、中学2年の4名が参加しました。

経済産業省東北経済産業局が主催する本コンテストでは、「省エネルギー」をテーマに、社会の問題を解決するため、国や地方自治体が採用すべき新しい政策を学生の立場から考え提案し、 互いの政策の質を高め合うように議論を深めることを目的としています。

コロナ禍における在宅時間の増加による電力消費増加に着目し政策を提案した生徒からは「省エネは我慢することでなく、無理なく継続してできるものを考えることが大切であると学んだ」との感想が挙がりました。

〈参考資料・記事〉
東京ガス : 学校での省エネ教育が家庭のCO2排出量削減につながることを日本で初めて実証 (tokyo-gas.co.jp)
省エネって何? | 家庭向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト (meti.go.jp)
学校でできる省エネ:文部科学省 (mext.go.jp)
学校でできる省エネ・エコ活動について考えてみよう | 一般社団法人フューチャーエデュケーション (esd.ac)
実践例|小6 理科「発電と電気の利用~学校省エネ化計画~」山梨県北杜市立泉小学校 – MESH公式ブログ (meshprj.com)
活動レポート詳細|活動レポート|こどもエコクラブ (j-ecoclub.jp)
省エネ政策提案型パブリック・ディベートコンテスト | エネルギー政策・電源地域振興 | 東北経済産業局 (meti.go.jp)
第2回省エネ政策提案型パブリック・ディベートコンテストに出場しました。 | 八戸工業大学第二高等学校附属中学校 (kodai2-h.ed.jp)

エコ通学

「エコ通学」とは、 電車やバスといった公共交通機関、自転車、徒歩など環境にやさしい交通手段で通学することです。自動車での送迎から「エコ通学」へと転換することは、地球だけではなく、子ども自身にも様々なメリットをもたらします。 

(グラフデータの出典:国土交通省「輸送量あたりの二酸化炭素の排出量(旅客)」をもとに筆者作成)

 

メリット①二酸化炭素排出量を削減することができる

1人が1㎞移動する際に、自家用自動車が排出する二酸化炭素は、バスの約2.3倍、鉄道の約7.6倍とされています。徒歩や自転車で通学することが難しい場合、公共交通機関での通学に転換することで、何倍もの二酸化炭素排出を削減することに繋がります。

また、昨今、車には欠かせないレギュラーガソリンの価格が高騰し、家計にも負担をかけている状態です。石油情報センターによると、レギュラーガソリンの小売価格は2023年8月28日時点の全国平均で、1リットルあたり185.6円と報告されています。1990年の統計開始以降、2008年8月につけた185.1円の最高値を、15年ぶりに更新しました。

自家用車での通学の送り迎えを自転車や徒歩に転換することは、家計にも地球にも優しい取り組みと言えるでしょう。

メリット②交通渋滞を減らすことができる

通学の時間帯は、道がとても混雑します。渋滞に巻き込まれ、予想以上に時間がかかることもある自動車に比べて、公共交通機関で通学することで、到着時間が計算しやすく、予定がたてやすいというメリットがあります。

メリット➂健康に良い

自動車の過度な利用は、体を動かす機会を減らし、運動不足に繋がります朝の時間に身体を動かすことで、身体を目覚めさせてくれます。

メリット④地域との繋がりができる

神奈川県稲村ケ崎小学校では、徒歩での通学を地域と繋がる社会貢献の時間としています。

6年生のある生徒は、授業でSDGsについて学んだことをきっかけに「自分も何かできることをやってみよう」という思いをもち、ゴミ拾い登校を始めました。その姿を見たクラスメイトや、学年が異なる生徒もごみを拾いながら通学するようになり、ゴミ拾い登校の輪が広がりました。

一人では小さな力でも、一人一人の力が合わさることで大きな力となり、地球温暖化問題の解決に向かって前進することができます。

是非、二酸化炭素を削減し、地球温暖化防止に向けての取り組みを学校や家庭で取り入れてみてはいかがでしょうか。

〈参考資料・記事〉
保存版エコ通学のススメ.pdf – Google ドライブ
エコ通学のススメ – 群馬県ホームページ(交通イノベーション推進課) (pref.gunma.jp)
毎日の「移動」を「エコ」に! smart move(スマートムーブ)に取り組んでみませんか? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
ガソリン過去最高値を更新 首相 “補助金拡充で175円程度に” | NHK | ニュース深掘り
調査の結果|石油製品価格調査|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
稲村ケ崎小 学年超え通学中にごみ拾い 6年生児童の行動がきっかけ | 鎌倉 | タウンニュース (townnews.co.jp)

(ライター:樋口 佳純)


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