コラム廃棄物

サーキュラーエコノミーとは?企業の取組事例も紹介!

2025.01.24

「サーキュラーエコノミー」を知っていますか? 資源の大量採取、大量廃棄という従来の経済システムに代わる新たな考え方として、注目を集めています。今回は、企業がサーキュラーエコノミーに取り組むポイントや事例を紹介します。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(【出典】令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省)

 

サーキュラーエコノミーとは、「循環経済」と呼ばれる新しい経済システムのこと。これまでの3Rの取り組みに加え、資源の投入量と消費量を抑えて、既存の資源を有効活用しながら、付加価値を生み出す経済活動です。資源・製品の価値を最大化し、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指しています。

【参考資料】
令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省

サーキュラーエコノミーの推進団体であるイギリスの「エレン・マッカーサー財団」は、サーキュラーエコノミー3原則として以下を掲げています。

・廃棄物・汚染などを生み出さない
GHG排出、有害物質、水・大気の汚染や交通渋滞など経済活動による人の健康や自然環境への負荷を低減する

・製品や資源を流通・循環させ続ける
設計によって製品・部品・素材の耐久性、リユース、再製造やリサイクルを進め、経済の中で循環させる他、バイオ由来素材については経済システムと自然システム間を行き来させる

・自然を再生させる
再生可能エネルギーの活用や土壌への養分還元など、非再生資源の使用を避け、再生可能資源を活用する

【参考資料】
循環型の事業活動の類型について|経済産業省・環境省

では、これまで取り組みが推進されてきた3Rとはどう違うのでしょうか? リデュース(Reduce・減らす)、リユース(Reuse・繰り返し使う)、リサイクル(Recycle・再資源化する)からなる3Rは、廃棄物が出ないように減らし、発生した廃棄物を再利用するなどの取り組みが中心です。つまり廃棄物が出ることが前提になっています。

それに対し、サーキュラーエコノミーは「廃棄物を発生させない」という考え方がベースです。廃棄物が出ない製品やサービスを設計し、生産段階で資源の投入量を抑えるなどの取り組みを目指しています。

【参考資料】
循環経済ビジョン2020について|経済産業省
令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省
3Rまなびあいブック(大人向け)|環境省

サーキュラーエコノミーが必要とされる背景として、主に以下の点が挙げられます。

・資源の不足

世界人口の増加と新興国の経済成長に伴い、世界的に資源需要が増加しています。世界の資源採掘量は、2000年の530億トンから、2060年には1900億トンまでのぼり、約4倍になると言われているのです。

さらに将来的な資源価格の高騰も予測されています。例えば銅は、2030年までには需要量が供給量を上回る予想がされるなど、資源の安定的な確保が困難になる恐れがあります。

世界的に増える廃棄物量の影響

人口増加と経済発展により、新興国の廃棄物量が増え、世界の一般廃棄物量は、2016年の20億トンから2050年には34億トンへと増加が見込まれます。

また、アジア諸国の廃棄物輸入規制によりこれまで輸出していた古紙や廃プラスチックなどが行き場を失い、国内処理システムを逼迫しています。

地球温暖化や海洋プラスチック問題への対応

プラスチック製品の利用拡大により、2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加するとの推計があります。持続可能な形で資源を利用し、廃棄物を出さない循環経済へ移行させることで地球環境の負荷低減につなげることが必要です。

加えて、国が掲げる、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」への対応策としても期待されています。

【参考資料】
循環経済ビジョン2020について|経済産業省
サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について|経済産業省・環境省

企業が取り組むうえでのポイント

こうした背景から、既存の経済システムから脱却し、サーキュラーエコノミーへ移行しようと世界各国で取り組みが進められています。日本においても、国や自治体による後押しが増え、企業の取り組みが始まっています。では実際に、企業が取り組むうえでのポイントは何でしょうか。

まず、今の業務を、資源循環の視点から見直してみましょう。製品に使われている素材の再生可能な素材への代替、発生する廃棄物を減らすための解決策を検討するなど、現在の業務を資源循環の視点から見ることが大切です。

また、製品やサービスの企画・開発では、設計・生産・利用・廃棄の各段階において循環する取り組みを選ぶことが必要になります。無駄を省いた製品設計や、廃棄段階まで含めたライフサイクル全体で循環性の高いビジネスモデルの構築も求められています。

そして、一企業の枠を超えた、サプライチェーンや消費者と協働した取り組みも必要です。調達先や販売先、消費者を巻き込むことで、より大きく効果的な取り組みになるでしょう。

【参考資料】
サーキュラーエコノミーとは 3原則や3Rとの違い、取り組み例を紹介|朝日新聞SDGs ACTION!

サーキュラーエコノミーに向けた企業の取組事例

間伐材から作られたタオル「KINOF」(株式会社いろどり)

KINOFは、木から作られたタオルです。原料は、徳島県上勝町から出る杉の間伐材。これをチップにしてセルロース化し、和紙にしてから細く裁断し、糸にして布にします。

この工程には先端技術はなく、すべて古来から日本に伝わる和紙や、糸を撚る技術が活用されています。化学繊維は一切使用せず、商品タグを含めたすべてを木の布から仕上げている点が大きな特徴です。自然に還る素材なので、地中に埋めると微生物によって、1ヶ月程度で分解されます(環境により前後する)。

パッケージも簡素化され、プラスチック不使用の製品。多くの木々と山の水に恵まれた自然豊かな上勝町の資源が活かされた事例です。

【参考資料】
日本企業による循環経済への取組 注目事例集 2022Edition|環境省
KINOF|株式会社いろどり

ラベル台紙の廃棄をゼロに(日榮新化株式会社・東洋紡株式会社・シオノギファーマ株式会社・株式会社トッパンインフォメディア・三井物産ケミカル株式会社)

日用品など多くの製品に貼られているラベル。そのラベルを製造・使用するために欠かせない「剥離紙」と呼ばれるラベル台紙は、ほとんどが廃棄・焼却されていました。

今回紹介する「資源循環プロジェクト」は、ラベル台紙をこれまでの「剥離紙」から「リサイクル専用台紙」に置き換えることで、再びラベル台紙へ循環させる、ラベル台紙の廃棄をゼロにする取り組みです。静脈産業から動脈産業までサプライチェーン全体で取り組むプロジェクトになっています。

従来、産業廃棄物として処理されていた使用済み台紙が有価資源として買い取られ、廃棄物やCO2削減にもつながっています。

【参考資料】
日本企業による循環経済への取組 注目事例集 2022Edition|環境省
「資源循環プロジェクト」

リユース容器シェアリングサービス(株式会社カマン)

株式会社カマンが展開する、テイクアウト容器ごみを削減するリユース容器シェアリングサービス「Megloo(メグルー)」。現在は鎌倉などの神奈川県や東京都内をはじめ、静岡、北海道でも導入されています。地域共通のリユース容器をみんなでシェアすることで、テイクアウト時の使い捨て容器を削減。

スマホで簡単に借りられ、返却場所は対応店舗ならどこでもよいなど、利便性も向上させています。

【参考資料】
サーキュラーエコノミー スタートアップ事例集|経済産業省
Megloo(メグルー)|株式会社カマン

⾷品廃棄物や端材を活用(fabula株式会社)

ごみを新しい素材として⽣まれ変わらせたり、建材として空間を作ったり、⽣活に役⽴つさまざまな道具に形を変える取り組みを行っています。

規格外野菜や加工時に出る端材は、乾燥・粉末化・熱圧縮され、新しい素材へと生まれ変わります。例えば、白菜の廃棄物から作った素材はコンクリートの約4倍の曲げ強度を持ち、将来的には建材などへの使⽤も期待されています。

⾷品廃棄物が原材料なので、さまざまな⾊や⾹り、テクスチャーを楽しむことができ、一つとして同じものがありません。さらに、⾷品廃棄物の廃棄処理問題も解決できます。焼却の際のCO2排出や灰の埋⽴などの問題を抱える廃棄物処理に対する取り組みにも貢献しています。

【参考資料】
サーキュラーエコノミー スタートアップ事例集|経済産業省
fabula株式会社

サーキュラーエコノミーの市場規模は、経済産業省によると2030年で80兆円、2050年で120兆円へ拡大することが見込まれていることから、新たなビジネスチャンスでもあります。経済的な面だけではなくゼロカーボンをはじめ、さまざまな地球環境問題へ貢献するサーキュラーエコノミーは、既存の経済を持続可能な経済へと大きく変えていく取り組みです。サステナブルなビジネスチャンスをつかんでみませんか?

【参考資料】
成長志向型の資源自律経済戦略について|経済産業省

(ライター:藤野あずさ)

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