2030年までに持続可能な世界を目指す国際目標「SDGs」。現在、世界各国でSGDsの達成に向け、様々な取り組みが行われています。
SDGsが掲げる17の達成目標の中に、「ゴミ」という言葉が含まれている目標は存在しません。ですが、12番目の目標に「つくる責任 つかう責任」というものがあり、11個のターゲットが設定されています。そこには、廃棄物の管理や削減する内容が記載されていたり、また、その他の目標のターゲットにも、ゴミ、廃棄物、再利用、といった言葉が並んでいることから、SDGsを達成するためにはゴミ問題の解決が必要不可欠であるといえます。
本コラムでは、ゴミ問題に焦点をあて、学校でのゴミに関連する事例からゴミがもたらしている問題に向き合いたいと思います。
〈参考資料・記事〉
日本政府の取組 | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省 (mofa.go.jp)
以前、Operation Greenのコラムでは、「ゴミ」をテーマに、海外や日本の自治体の持続可能な取り組み事例を紹介しました。是非こちらもお読みください。
・日本のごみの現状と世界の3R 取組み事例 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
・ごみの分別徹底でゼロ・ウェイスト!上勝町に学ぶ自治体の事例 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
ゴミは、主に一般廃棄物と産業廃棄物に分けられています。
環境省が行った令和3年度における、全国の一般廃棄物の排出及び処理状況等の調査結果によると、日本のゴミ総排出量は4,095万トンで、東京ドーム115杯分になると報告されています。そして私たち一人当たりの、一日に排出するゴミの量は890グラムであると言われています。(注:一般廃棄物の ごみの比重を0.3t/㎥、東京ドーム地上部の容積を1,240,000m㎥として算出。)
〈参考資料・記事〉
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
現在、日本や世界ではゴミの処理をめぐって、様々な問題に直面しています。中でも、自然や環境、私たちの命をも脅かす深刻な問題が存在しています。
環境省によると、新規の最終処分場が整備されず、当該年度の最終処分量により埋立が行われた場合に、埋立処分が可能な期間のことを指す残余年数は、全国平均で23. 5年(令和3年度末現在)であると報告されています。すなわち、このまま対策が成されない場合、2047年頃には、最終処分場はゴミで溢れかえってしまい、埋立て処分をすることができなくなってしまうということになります。
残余年数を延ばすために新しいゴミ埋立地を設置する必要がありますが、山を切り開くことなどの自然環境を破壊することや環境を汚染することに繋がってしまいます。
海に流出したゴミ、特にプラスチックゴミは長い期間分解されることがありません。それらのゴミは、海洋プラスチックとして海に漂い、海洋生物に悪影響を及ぼすだけではなく、海の恩恵を受ける私たちにも健康被害や、漁業や観光業への経済的な被害を与えることになります。
以前、Operation Greenのコラムでは「海洋プラスチック」をテーマに、プラスチックが海洋に与える影響や、学校での取り組み事例を紹介しました。是非こちらもお読みください。
・海洋プラスチックごみ削減のための学校での取り組み!生徒がすぐに実践できる方法は? | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
かつて、日本の高度経済成長に伴う急速な工業化の過程で、工場などから排出される有機水銀、カドミウムなどの有害廃棄物が公害を引き起こし、周辺に住む人々に大きな健康被害をもたらしました。
このことからも分かるように、ゴミが適切に収集・処理されないことは、私たちの生活環境や公衆衛生を悪化させ、深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
環境省が行った調査によると、令和4年度末における不法投棄等の残存事案の残存件数は2,855件で、残存量は1013.5万トンと報告されています。すなわち、不法に投棄されているゴミが日本に約1,000万トン残っているということになります。
不法投棄された廃棄物には、重金属や有機塩素系化合物といった有害物質が含まれていることがあります。雨が降った場合、廃棄物に含まれる有害物質が土壌や地下水、河川などへ流出することによって、水質汚染や土壌汚染を引き起こす恐れがあります。
このような課題を解決していくために、廃棄物の排出を抑制し、その上で再生利用(リサイクル)を推進していく社会、すなわち循環型社会への転換を図っていくことが求められています。
〈参考資料・記事〉
一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
ごみ分別(ぶんべつ)・収集(しゅうしゅう)・処理(しょり)|プラスチックとリサイクルに関する学習支援サイト|プラスチックのはてな (pwmi.jp)
産業廃棄物の不法投棄の状況について | 環境再生・資源循環 | 環境省 (env.go.jp)
history.pdf (env.go.jp)
ゴミ問題を解決するために、私たちにできることは一体どのようなことなのでしょうか。私たち一人一人が身近にできる取り組みをご紹介します。
正しくゴミを分別することは、ゴミを正しく処理することに繋がります。
ゴミの処理方法は大きく3つに分けることができます。
①埋め立てる
②燃やす
③もう一度資源に戻す
中でも、もう一度資源に戻す(リサイクル)ことで、廃棄物の量を削減することになり、ゴミがもたらす問題の解決に近づくことができるでしょう。
ご存じの方も多い「3R」は、比較的、私たちの身近な暮らしの中で取り入れやすい取り組みだと言われています。ここでは、3Rの意味と取り組み例を紹介していきます。
「リデュース」とは、廃棄するもの自体を減らすことです。さらに、ものを長く使い続けることで、ものへの愛着や、ものをより大切に長く使い続けようという気持ちが芽生えるなど好循環が生まれるでしょう。
「リユース」とは、使用した製品やその部品などを廃棄せずに繰り返し使うことで、廃棄するものを減らすことです。
「リサイクル」とは、ごみなどの廃棄物や不用品を、原材料やエネルギー源として有効に利用することです。また、使用済みの製品を回収することや、リサイクル技術や装置を開発することも、リサイクルの一環であるとされています。
〈参考資料・記事〉
【特集】3R徹底宣言! | 特集 | ecojin(エコジン):環境省 (env.go.jp)
3Rの取り組み例としては、以下の行動が挙げられます。
リデュースアクション!
ごみになるものを買わない、もらわない。/長く使える製品を買い、手入れや修理をしながら長く大切に使う。/マイバッグを持って無駄な包装は断る。/詰め替え容器に入った製品や簡易包装の製品を選ぶ。/利用回数の少ないものは、レンタルやシェアリングシステムを利用する。/省資源化設計の製品を選ぶ。
リユースアクション!
リターナブル容器に入った製品を選ぶ。/リターナブル容器は、使い終わったらリユース回収に出す。/フリーマーケットやガレージセールなどを利用し、不用品の再活用に努める。
リサイクルアクション!
資源として分別する。/資源ごみの効率的な分別回収を広める。/リサイクル製品を積極的に利用する。
Operation Greenでは、3Rに関連するコラムを掲載し、学校での取り組み事例を紹介しております。是非こちらもお読みください。
・シュレッダーのゴミを土に還す方法!正しいリサイクル方法を学校で学ぼう! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
・プラゴミのリサイクルのために学校で何ができる?高校での取り組み事例を紹介! | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
・サステナブルファッションとは?学生の取り組み事例 | Operation Green 循環型○○の実践プログラム
それでは、学校現場において、どのようなゴミ問題への取り組みが進められているのでしょうか。実際に、日本の学校現場での取り組み事例をご紹介します。
①足立学園中学校
東京都の足立学園中学校では、全校生徒約420人で1年生と2年生、1年生と3年生が班になり、学校周辺の清掃活動を実施しました。活動中、上級生が下級生に「次はこっちに行こう」「きちんと挨拶をしよう」など、積極的に声をかけながら取り組む姿や日頃お世話になっている街をきれいにしようと奮闘する姿が見られたといいます。そして、集められたゴミは環境委員を中心に分別が行われたそうです。
②白金小学校
東京都の港区立白金小学校では、各学年や、委員会活動で環境について考え、様々なことに取り組んでいます。教室では、普段からミックスペーパー、もえるごみ、もえないごみの分別を行っています。また、週に一度アルミ缶回収を実施し、その活動で得たお金で、ミックスペーパー用のゴミ箱を購入するという好循環が生まれています。さらに、全校朝会でアルミ缶回収で得た資金でペーパー用のゴミ箱を購入したことを全校生徒に知らせることで、分別の継続を呼びかけたそうです。
③青森明の星中学・高等学校
青森県の青森明の星中学・高等学校では、SDGs12番の「つくる責任、つかう責任」や14・15番に示されている環境問題の解決に貢献することを目的として、チームSDGsの生徒たちは、校内でのリサイクルや節水の呼びかけに力を注いでいるそうです。校内各所には、生徒による手作りの分別啓発ポスターや分別用のボックスが設置されています。
④海洋高等学校
京都府にある京都府立海洋高等学校では、生徒の目線や生徒の言葉で、理想的な校内美化に向けた取り組みとして、海洋科学科3年の生徒たちが、ゴミ収集所に集められてくるごみの分別指導を行っています。清掃時間に各クラスからゴミ収集所へ持ち込まれるゴミが正しく分別できているかどうかを生徒がチェックしながら、クラス担当の生徒に指導しています。中には、未分別のごみもあるため、生徒たちは厳しく目を光らせながら分別指導を行う姿があったそうです。
一人一人が日々の生活の中で、出来る限りゴミの分別などに取り組むこと。
それは、ゴミ問題が解決に近づくための第一歩なのではないでしょうか。
〈参考資料・記事〉
春のごみゼロ地域清掃活動を実施(足立学園中学校)|足立区 (city.adachi.tokyo.jp)
学校版ISOの取組み | 港区立白金小学校 (minato-tky.ed.jp)
チームSDGs啓発グループ エコ班 活動の様子 | 青森明の星中学・高等学校 (aomoriakenohoshi.ed.jp)
ごみ分別指導をしてくれています。 | 京都府立海洋高等学校 (kyoto-be.ne.jp)
(ライター:樋口 佳純)