コラムエコスクール

緑のカーテンの学校事例 暑い日々をエコに乗り切ろう!

2023.10.04

はじめに

2023年、夏。全国的に真夏日が続きました。気象庁の異常気象分析検討会は「歴代と比較しても圧倒的な高温で異常気象だといえる」と発表しました。その要因として、赤道付近の東部太平洋地域の海水温が、例年より高くなるエルニーニョ現象や、地球温暖化が挙げられます。

また、気象庁の長期予報によると、9月から11月にかけて、太平洋高気圧の勢力が平年よりも強いことから、日本付近が暖かい空気に覆われやすく、平年より気温が高くなるとの予想がされています。9月は、猛烈な暑さとなる日もあり、厳しい残暑が続きました。さらに、10月にも真夏日となる日がある可能性が高いと発表しました。

このことから、学校でも厳しい暑さや熱中症への対策が求められています。暑い日々を、学校に緑を増やすことで環境に優しく乗り切り、地球温暖化対策にも繋げる取り組み事例を紹介します。

以前、Operation Greenのコラムでは、学校緑化について様々なテーマに焦点を当てながら取り上げました。是非こちらもお読みください。

・学校緑化に関する助成金やコンクールなどの施策
エコスクール事例!キャンパスに「緑」を取り入れた学びの場づくり | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

・学校緑化の現状と課題
行政・地域・専門家と協力して学校緑化を成功させよう | Operation Green 循環型○○の実践プログラム

〈参考資料・記事〉
気象庁3か月予報 9月以降も厳しい残暑 “夏バテ”に注意 | NHK | 気象
2023年夏は史上最も高温に 過去最高の2010年を上回る見通し – ウェザーニュース (weathernews.jp)
猛暑いつまで? 高温の秋に 秋雨前線や台風の影響は長引く可能性 冬の訪れ遅い(気象予報士 白石 圭子 2023年08月19日) – 日本気象協会 tenki.jp
気象庁 | エルニーニョ/ラニーニャ現象とは (jma.go.jp)

学校教室のエアコン設置率95.7%、特別教室は63.3%

公立小中学校等の空調(冷房)設置率の推移グラフ
(グラフデータの出典:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の数値表をもとに作成)

 

暑い日々を安全に過ごすには、エアコンやクーラーなどの冷房設備が必要不可欠です。

令和4年に文部科学省が行った公立小中学校等の空調(冷房)設備設置状況調査によると、全国の普通教室での空調(冷房)設備設置率は95.7%と高く、平成22年の設置率19.3%と比較すると、約5倍の増加となっています。

しかし、一方で、理科室や音楽室などの特別教室での設置率は63.3%と、普通教室の設置率には達していません。また、体育館等は15.3%と一番低い設置率を記録しています

その要因として、特別教室や体育館は、使用頻度が高い普通教室と比べ、空調設備の設置が遅れてしまうことが挙げられます。このことから、空調設備の設置率が低く、特別教室や体育館などで暑さ対策を行う必要があります。

また、寒冷地では空調設備設置率が低い傾向にあります。北海道内の公立小・中学校の教室の冷房設置率は16.5%と、47都道府県で一番低い設置率です。

〈参考資料・記事〉
公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況:文部科学省 (mext.go.jp)
冷房設置率、道内公立小中16% 全国は95% 費用の負担大きく:北海道新聞デジタル (hokkaido-np.co.jp)

学校現場での暑さ対策

「緑のカーテン」を知っていますか?

ゴーヤ、アサガオなどのツル性の植物を窓の外に植え、建物の壁や窓を覆う植物のカーテンのことです。植物が生い茂りカーテンのように太陽からの直射日光を防ぐため、別名として「グリーンカーテン」とも呼ばれています。

緑のカーテンの効果や、デメリットを紹介します。

緑のカーテンのメリット

効果①  日差しを遮る
育った葉っぱが、室内に届く日差しの熱エネルギーの約80%を遮ってくれます。

効果②  周辺の温度を下げ、体感温度を低くしてくれる
植物には、根から吸い上げた水を葉から蒸発させ、植物自身の温度が上がらないようにする蒸散という作用があります。このことから、蒸散作用が無い、簾(すだれ)などに比べて放射熱が格段に少なく、周辺の気温がわずかに下がります。また、蒸散によって気温が下がった葉の間を通り抜けて届く風や、鮮やかな緑や色とりどりの花々は私たちに冷涼感や安らぎの効果を与えてくれます。

効果③  新鮮な空気を生み出してくれる
植物は日中、日光を浴びて二酸化炭素を吸収します。その代わりに、酸素を排出する光合成を行います。 緑のカーテンを通り抜けた空気は、できたての酸素を豊富に含んだ新鮮な空気を届けてくれます。

効果④  省エネルギー、節電、地球温暖化防止に貢献
緑のカーテンで日差しを遮ると気温が下がり、さらに緑のカーテンの間を通って新鮮な風が届くと、実際の気温よりも涼しく感じることができます。そのため、エアコンの使用頻度を低くできることや、エアコンの設定温度を普段よりも高めに設定することにつながります。このことから、電気代や二酸化炭素の排出削減に繋がります。

効果⑤  野菜や果物を収穫できる
緑のカーテンに向いている植物や野菜として、マンデビラ、アサリナ、朝顔、ゴーヤ、ヘチマ、キュウリ、トマト、パッションフルーツなどがあります。暑さを遮りながら、野菜や果物の育つ過程や、夏の味覚を楽しむことができ、まるで一石二鳥なのではないでしょうか。

緑のカーテンのデメリット

デメリット①外部の様子が見えにくい
窓が覆われてしまうため来客に気づきにくく、防犯性が弱まってしまいます。

デメリット②室内が暗くなってしまう
光を遮ってしまうため、部屋の中が暗くなってしまいます。

デメリット➂虫が集まりやすい
肥料や植物に虫が集まりやすくなります。

デメリット④水やりや、肥料やりに手間がかかる
雨が降らない場合や、植物を大きく育てる場合には、適度な水やりや肥料が必要です。

デメリット⑤育つまでに時間がかかる
地表から、窓を覆う高さまで育つには時間がかかります。

デメリット⑥枯れたあとの片付けや掃除が大変
ツル性の植物は、地表から高く、支柱やネットに強く絡んで育つため、取り外す際に時間がかかる場合があります。

〈参考資料・記事〉
緑のカーテン(グリーンカーテン)の効果|みんなの趣味の園芸(NHK出版) (shuminoengei.jp)
緑のカーテン | 環境学習プラザ「アスエコ」 (kankyo.or.jp)
【ホームズ】グリーンカーテンの効果とメリット&デメリットを紹介 | 住まいのお役立ち情報 (homes.co.jp)
グリーンカーテンとは?効果や作り方、メリット・デメリットを徹底解説|【アットホーム】住まい・不動産のお役立ち情報&ツール (athome.co.jp)

学校での緑化事例

学校に緑を増やすことで、暑い夏をエコに、快適にする学校現場での取り組みを紹介します。

取り組み事例①

東京都の練馬区では、平成14年度から校庭の芝生化、屋上緑化、緑のカーテンの設置などの緑化への取り組みを進めています。特に、緑のカーテンは平成16年より、練馬区内の小中学校約62校で整備が進められています。

中でも、練馬区立高松小学校では、環境教育の一環として屋上緑化や緑のカーテン作りに力を入れています。

大学や NPO の協力を得て、緑化活動の効果を調査して発信することで、地域を巻き込んだ取り組み促進にも貢献したことから、平成16年の第7回地球温暖化防止活動環境大臣表彰の環境教育部門を受賞しています。

取り組み事例②

茨城県の水戸市立新荘小学校では、地球温暖化について学び、自分たちに身近にできる地球の環境を守る取り組みとして、緑のカーテンづくりを始めました。

稙苗後84日を迎えた8月のある日の14時頃、緑のカーテンの効果について調べました。野外の気温は31.0°C、緑のカーテンのない室内の温度29.4°Cに対し、緑のカーテンのある室内の温度27.4°Cと、2℃の温度差があったそうです。

取り組み事例➂

東京都の多摩中学校野外活動部では、再生可能エネルギーやその活用法について学ぶ取り組みの一環として太陽光と水耕栽培を用いた、エコなゴーヤのグリーンカーテン作りを行いました。

ソーラーパネルで発電した電力を、水耕栽培での水を循環させる動力に用います。そうすることで、土を使用せずに育てることを可能とし、雑草を抜く手間が省けます。さらに、植物に害虫や細菌も付着しにくいことから、植物を無農薬で栽培することに繋がります

取り組み事例④

富山県の南砺福野高校農業環境科では、「緑の学校づくり」の環境教育の一環として、緑のカーテン作りを行いました。校舎の壁面に緑を増やすことで夏の日差しを遮り、室内の暑さを和らげる緑のカーテンがもたらす節電の効果などの研究を行いました。

このように、学校現場で緑のカーテンの育成を理科や総合の授業、課外活動の一環として取り組むことが進んでいます。

児童や生徒と一緒に植物や生命、エネルギーについて考える時間としても、緑のカーテンを取り入れてみてはいかがでしょうか。

〈参考資料・記事〉
練馬区が進める学校緑化:練馬区公式ホームページ (city.nerima.tokyo.jp)
緑のカーテンレポート(水戸市立新荘小学校) – エコだね!いばらき|環境保全茨城県民会議ホームページ (ecodane.jp)
多摩中学校野外活動部のグリーンカーテン|多摩市公式ホームページ (tama.lg.jp)
富山県立南砺福野高校農業クラブ|エコノワとやま (tkz.or.jp)

(ライター:樋口 佳純)


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