エシカル消費社会・環境基盤

輸入品からローカルプロダクト購入へ!地産地消のために学校で実施できること

2022.11.14

みなさまの学校では“地産地消”を推進する活動をされているでしょうか?

『地域の食材や製品を使ってもっと豊かになろう』という意識が強くなり、日本全体が「地域をもっと活性化させよう」と活気づいていますよね。また、日本製品以外に海外輸入商品も溢れてる現在の日本市場ですが、ローカルプロダクト購入への動きが近年さらに加速しています。それは日本をもっと豊かにするためでもありますが、他にもさまざまメリットがあります。

今回はそんなローカルプロダクト購入が日本の経済にどういったことをもたらすのか、中学生や高校生にどんなことを伝え、どのように地産地消を促すことができるのかをまとめましたのでご覧ください。

1.ローカルプロダクト購入の広がり

ローカルプロダクト購入(地産地消)』を推進する動きが日本各地で起きています。そもそも、ローカルプロダクトの購入とは地域で生産された農林水産物を地域で消費する取り組みです。農産物をはじめ、地元地域で作られた製品を使用すること、さらには製品の原材料の仕入れを海外から国内に変えることや、オフィス家具や文房具を周辺地域で調達するという試みも該当します。

ローカルプロダクト購入には、

1. 品物の輸送に係る距離が短縮され、輸送に伴って発生するCO2の削減に繋がる
2. 輸送時間が短いため食材等の鮮度が保たれる
3. 地元企業や農家の支援に繋がるため、地元経済の活性化に貢献することができる

というメリットがあるので、可能な限り日本中で実施していきたい取り組みです。

また、地産地消を推進する企業では地域との交流が生まれており、取り組みを発信することによって企業価値が向上するなどCSR活動(収益を求めるだけなく、環境活動、ボランティア、寄付活動など、企業としての社会貢献の活動)としても非常に有効な取り組みになっています。

2.学校で実施されている地産地消の実例

中学校・高校ではローカルプロダクト購入について、具体的に活動されている学校が増えています。そこで地産地消に対するイベントや給食など、近年実際に行われている授業などを集めましたので参考にしてみてください。

①大分市ホームページにて地産地消レシピの公開

農協・漁協の生産者団体と楊志館高等学校・福徳学院高等学校がそれぞれ連携し、楊志館高等学校では調理科の1年生、福徳学院高等学校では健康調理科の2年生において地産地消についての授業を行っています。その授業の中で生まれた「地産地消レシピ」が大分市のホームページで公開されています。

大分市では整った気候風土を利用して多くの農林水産物が生産されているので、これらの地産地消レシピは地域の方々にとってたいへん役立っています。「地産地消」の取り組みを促進している大分市にとって『市と市民をつなぐ架け橋』に、また『食材を通して高校生と地域との良好な関係を築くきっかけ』になるはずです。

こちらの応用として、学校のホームページや専用のアカウントでのInstagram・Twitterでのレシピ投稿もおすすめです。なぜなら、どんな方が作った食材なのか、どこで採れたものなのかを知った上で調理を行うことで、生徒の地産地消への意識や理解が深まるからです。家庭科の授業の一環として、また料理研究会の発表の場として利用してみるとよいでしょう。

〈参考資料・記事〉

大分市/楊志館高等学校・福徳学院高等学校で作成した「地産地消レシピ」を紹介します

②宮城県の地産地消お弁当コンテスト

『地産地消お弁当コンテスト』とは、高校生が地産地消をテーマにしたお弁当を作って食材の活用方法やアイデアを競うイベントです。宮城県の高校の生徒たちが県産食材について学び合う機会を提供するとともに、地産地消に対する意識の高揚を図ることを目的に開催されています。令和4年度コンテストでは20校から183作品の応募があり、”宮城県知事賞”及び”優秀賞”を受賞した作品が、協賛企業・団体により商品化されてスーパーやコンビニエンスストア等にて期間限定で販売されました。お弁当にはそれぞれ名前が付けられ、どのお弁当も大切に作られたことがわかるこだわりが詰まっています。

せっかく彩りや味わいにこだわったレシピですから、その後もしっかり活用していきたいものです。生徒たちが一生懸命考えたレシピやお弁当は、学園祭など人が多く集まるイベントで振る舞うのも良いでしょう。多くの人数が来場するイベントなどで地域の食材を使用することで、地産地消の推進活動も同時に行うことが可能です。

〈参考資料・記事〉

③地産地消コーディネーターの役割

給食に地域の食材を使用するには農家との契約、もしくは農協の協力などが必要になることがあります。その交渉を行うのが『地産地消コーディネーター』と呼ばれる方々です。

別府市では2021度から地産地消コーディネーター派遣事業に取り組んでおり、そのコーディネーターを通じて学校給食に使う食材を地域から集めて調理をおこなっています。また、令和5年9月の供用開始を目指している別府市学校給食センターは、「地場産品の積極的な活用」を掲げており、子どもたちに地元産品について知り、より身近に感じてもらおうと授業を行いました。

その授業後のアンケートでは「外国や他県からの供給が止まっても大丈夫」「食品ロスが減る」「新鮮で安心できる」などの意見がある傍ら、自分達にできることについても考え、生徒からは「農家になる」と心強い回答もあったようです。

給食の材料を地域のものを多く使用するには給食調理員さんだけの力では実現しませんので、このようなコーディネーター派遣を利用するのも方法です。さらに、生徒たちに地域の食材を使用するために、どのような手続きや交渉、会議が行われたのかを伝え、給食作りへの熱意を伝えることで、給食を残さず食べようという気持ちも少しは上昇するはずです。

〈参考資料・記事〉

別府西中学校で地産地消授業と給食 – 今日新聞

④伊江村立伊江中学校で島立ちの生徒に向けた故郷料理

伊江村立伊江中学校では、高校進学のため15歳で「島立ち」する子供たちに向けた地産地消の取組を実施しました。島を出ても一人で生活していけるようにするため、村をあげて中学3年生を送り出す準備としてこの取組みが行われるようです。例えば、魚料理教室の開催、伊江島牛や地元の黒砂糖の給食提供、地産地消の弁当作りなどを生徒たちに振る舞います。

これらを提供することで、自立する力と故郷の食味、島への愛着を根付かせることも狙いとなっています。しかし、それだけではなく「島を出ても元気でいてほしい」という島の方々の熱い思いと、子どもを思いやる気持ちがたくさん詰まっています。この温かい熱意が、この文部科学大臣賞を受賞した理由なのでしょう。

〈参考資料・記事〉

地産地消(地域の農林水産物の利用)の推進:農林水産省

⑤『農業高校ならではの食の授業』田植えから販売まで一貫して実施

群馬県立勢多農林高等学校では、地元農家と連携し、田植え・収穫・販売などの農業体験をおこなっています。そのような一貫した授業を実施したことが高く評価され、令和3年度、地産地消等優良活動表彰・教育関係部門・大臣官房長賞を受賞しました。

生徒が主体的に田植え、草刈りなどの管理作業を実施し、収穫したお米は同市内の児童遊園地「るなぱあく」で販売するおむすびに使用するほか、高校の文化祭と農業まつりで販売するおにぎりやカレー ライスに使用されました。

こちらの高校では2018 年以降農業クラブ活動として、生徒が主体的に草刈りなどの管理作業をおこなっていましたが、その他にもさまざまな食材を収穫・製造・販売会を実施し、農業高校ならではの幅広い活動をしています。作物を栽培して収穫するだけにとどまらず、調理から販売まで多岐に渡って関わることが、生徒たちの農業や経済との関わり方への知見を広げるチャンスになるでしょう。

〈参考資料・記事〉

地産地消(地域の農林水産物の利用)の推進:農林水産省

3.地産地消だけでなく国産国消をも意識する

その地域で生産されたものを消費する『地産地消』の他に、『国産国消』という言葉が存在するのをご存知でしょうか?その言葉の通り、輸入製品に極力頼らず、国で生産されたものを使用していこうという意味の言葉です。

そもそも、輸入に頼らない生活を国が推奨しているのは、諸外国に比べ圧倒的に低い日本の自給率の低さが原因です。弱体化した生産力は輸入品に頼ってしまいがちになってしまいます。そして、その問題が露呈したのは記憶に新しい『マスク不足』です。

感染症の流行で大量のマスクが必要になった際、海外製に頼り切っていた日本はマスク不足に陥ってしまいました。海外で必要な枚数が確保された結果、日本に届く量は少なくなってしまい、早朝に並ばないと手に入らないまでに流通量が激減しました。もし日本で十分に生産できているなら、このような事態にはならなかったでしょう。今後、輸入に頼り切っている他の製品を日本中の人が買い求めてしまったら、きっとまた重度の品薄になり同じようなことが繰り返されることは目に見えています。

また、輸入品に頼ることは『その製品が手に入らなくなったときに生活が困難になってしまう』ということだけがダメなわけではありません。その他にも、

  • ・低賃金で外国人労働者を酷使してしまうこと
  • ・輸入に莫大な輸送費がかかってしまうこと
  • ・輸送燃料による環境破壊
  • ・途上国の食料を奪う可能性 など

環境にも人間の生活にも関わる問題点がさまざまあるのです。だから、国消国産の考え方やそれにもとづく取り組みはSDGsの達成にもつながっていると言えます。『地産地消』の考えを多くの国民が共有するべきですが、それと同時に『国産国消』の考え方も理解し、日々の商品購入に活かしていくことが必要になってきます。

〈参考資料・記事〉

乃木坂46、JAグループ特設ウェブサイト「国消国産」を考える | 朝日新聞デジタル
食の地産地消推進における今後の取組計画(令和4(2022)年度)

4.閣議決定された地産地消関連法案

①食料・農業・農村基本計画(令和2年3月31日閣議決定)

食料の安定供給の確保に関する施策として、消費者と食・農とのつながりの深化を目的とした『食料・農業・農村基本計画』が令和2年3月31日に閣議決定されました。消費者や食品関連事業者に積極的に国産農産物を選択してもらえるよう、農林漁業体験、農泊、都市農業、地産地消などの取組間の連携を強化。それにより消費者と農業者・食品関連事業者との交流を進め、消費者が日本の食や農を知り、触れる機会の拡大を図ることが狙いです。

この計画ですが、いち早く取り掛かったのが栃木県の宇都宮市です。認定農業者をはじめとする担い手の経営支援や新規就農者の確保などに取り組み、認定農業者が増加するなど一定の成果をあげてきました。何度も試作の見直しを重ね、力強い農業基盤の作成・育成が可能になっています。2022年10月には、農水省職員による高校生向けの説明会が行われました。

説明会では農業の動向や取り組みなどの紹介や質疑応答などを行いながら、農業の様々な話題に興味・関心を持つきっかけ作りとなる話をされました。説明会に参加した生徒は「林業に興味があり大学進学を考えていています。農業に関する様々なデータを詳しく知ることができ勉強になりました」と回答しました。説明会の開催に尽力した橋本智教頭は「これからの農業を支える人材育成のためにこのような機会を設けることは重要だと考えています」と話し、「今回の話で興味を持ったものや自分に関わりがあることを率先して調べ、理解を深めて自分たちの力にしてほしい」と期待しています。

〈参考資料・記事〉

宇都宮市食料・農業・農村基本計画|宇都宮市公式Webサイト

高校生に農水省職員が食料・農業・農村白書を解説

②第4次食育推進基本計画(令和3年3月策定)

『第4次食育推進基本計画』が令和3年3月に策定されました。食育の推進をするにあたり立てられた当計画の目標は大きく16項目に分けられていますが、その中に『学校給食における地場産物を活用した取組等を増やす』という目標が設定されています。

具体的には以下の2つの事柄について意識の確立を目指します。

  • ・地場産物に関わる食に関する指導の平均取組回数を、令和元年度の月 9.1 回か ら、令和7年度までに月 12 回以上とすること
  • ・学校給食において都道府県単位での地場産物を使用する割合について、現場の努力を適切に反映するとともに、地域への貢献等の観点から、算出方法を食材数ベースから金額ベースに見直し、その割合を現状値(令和元年度)から維持・向上した都道府県の割合を 90%以上とすること

上記に加えて、国内産の農林水産物を活用していくことは、我が国の自然や食文化、食料安全保障、自然の恩恵、さらに『農山漁村から都市で働く多くの人に支えられた食の循環』などへの関心を高めることができるため、学校給食に地場産物を使用することは多大なメリットがあります。

令和元年度では、すでに学校給食における国産食材を使用する割合は全国平均で 87%と高い数値となっていますが、 90%以上とすることを目指すことが目標となっています。そのため、政策目的の重要性について立ち帰り、引き続き高い数値を維持・向上する努力が必要です。

〈参考資料・記事〉

5.学校が地域と結びつくための架け橋になる

ローカルプルダクト購入への動きは近年活発になってきつつありますが、それでも実際はまだまだ輸入製品に頼ったり、地域でまかなえる物を遠方から取り寄せることもあります。なぜなら、人々の欲を叶えることを重視し、流行り物や安さを求めた結果、ネット通販や産地を意識しない購入方法が定着し蔓延しているからです。

環境問題や経済などの関連雑誌やネット検索を読めば、現在のそんな現状を簡単に学ぶことができます。しかしながら、自主的にそういったことを学んで行動に移すのは正直困難です。特に経済活動などに関わりのない10代の若者にはなおさら難しいでしょう。そこでぜひ実施したいのが学校教育での学びです。

現在の食料自給率はどのくらい低いのか、なぜ地産地消が推奨されているのか、どのようにして地域の食材を給食に利用しているのか、地域の食材を使うメリットや使い方を学ぶことで、ローカルプロダクト購入をきちんと意識できる人材育成が可能となります。

(ライター:堀内香菜)


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