コラムCO2削減廃棄物

サステナブルなイベントを企画するには?事例や支援企業

2023.09.07


世界規模の課題であるSDGsに取り組む企業は、開催するイベントにおいても環境へ配慮したサステナブルなプロジェクトをもって実施する必要があります。

まず、イベント実施には多くのステークホルダーが関与するため、開催地や関係者に直接的・間接的な好影響や経済効果が生まれます。その一方で、一時的に多くのエネルギーが消費され、CO2などのGHG排出(温室効果ガス)や廃棄物の発生などにより、環境に負荷を与える側面もあることが、イベント業界における長年の課題です。

では主催側として、環境へ配慮したイベント実施を大前提に、関係者や来場者の満足感も損なわないためにどのように計画すれば良いのでしょうか?

今回は、環境対策を主としたサステナブルなイベントを実現するための重要なポイントや課題、取り組み事例をご紹介します。

世界共通の目標、サステナブルでより良い社会へ​​

わたしたちが目指す持続可能な社会とは、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の3つの社会像を実現するような社会こそがゴールだと言えます。

脱炭素社会
地球温暖化の主な原因であるCO2削減かつ、カーボンニュートラルにする社会

循環型社会
利用された資源を、次の活用資源とするシステムが構築された社会

自然共生社会
自然からの恵みを受け続けることができ、地球に生きる全ての生物が共に暮らせる社会

今回取り上げるサステナブルなイベントに関しては、環境負荷を減らすことはもちろん、新しいものを使って捨てるだけの「消費型イベント」を見直し、モノやサービスが循環し続ける「循環型イベント」を作っていく方向性へシフトチェンジする必要があるのです。

視点で変わるサステナブルなイベント

昨今のイベントや文化的フェスティバルでは、「サステナビリティ」を主催者側が意識した開催が当たり前になっています。

しかし環境保全に関わるような事業をしている企業が全てとは限りません。さまざまな事業分野の企業が、環境に配慮したイベントを実現するために定めるべき視点が2つあります。

サステナビリティ視点のイベント

サステナビリティに視点をおいたイベントとは、SDGsやサステナブルなどと大きく銘打って開催するものを指します。環境啓蒙セミナーや専門家のトークステージ、リサイクルやリユースを前面に押し出した製品などの展示をするなど、サステナビリティをテーマに開催するイベントです。

サステナブル意識を前面にアピールし、主催企業の価値を高める反面、グリーンウォッシュならぬSDGsウォッシュのような矛盾が生じないように計画すべきという難点もあります。

イベント視点のサステナビリティ

こちらは、開催テーマやプログラム・コンテンツはそのままに、見えないところでサステナブルな要素を取り入れるイベントを示します。

例えば、会場設営の資材には廃材やリサイクル用品を積極的に活用したり、紙配布物は電子化し、飲食物を提供するイベントであれば、地産地消が可能なケータリング会社を利用するといった方法があります。
運営にサステナブルな取り組みを盛り込むだけなので、開催内容を問わずどんなイベント・企業でも適用することができます。

サステナブルをテーマにするのか、既存のイベントにサステナブル要素を盛り込むのかによって開催準備への取り組み方は大幅に変わるため、この点を意識しておくことは必須です。

環境に配慮したイベント企画のポイント

1.適切な会場とアクセス方法

例えば公共交通機関が近くに位置する会場を選ぶと、車での来場者を減らすことができます。その結果、CO2削減に繋がります。来場者数が4桁以上になるイベントの場合、車で来るのか環境負荷が少ない手段を利用して来るのかは大きな差です。

やむを得ず車での来場が多くなる場合​​、CO2排出最小化を目的として、カーボン・オフセットの協力金を募るなど、排出分をカバーする施策も検討しましょう。

2.ゴミ分別と減量化

環境に配慮したイベントを企画する際、真っ先に話題として挙がるのはゴミ問題です。

特にドリンクやフード出店を伴うイベントはどうしてもゴミが出やすい傾向があるため、どのような種類のゴミが出るか事前に把握し、徹底した分別区分を推進し、ゴミ箱は分かりやすく設置することが重要です。

特に生ゴミが出る場合、コンポスト導入を検討することで簡単にゴミ減量化と処理費用を抑えることが可能になります。

3.配布物を電子化する

大量の紙媒体の運用は、森林伐採・CO2排出、廃棄物の生産といった環境負荷につながります。今まで紙で配布していたパンフレットや資料は電子化し、参加者・来場者のスマホやタブレットで見てもらいます。

しかし、ペーパーレス化をしてもCO2の排出がゼロになるわけではありません。導入機器が多すぎても排出量が増える可能性があるので、CO2削減に向けて事前のシミュレーションが必要となります。

4.エネルギー消費を抑える

屋内イベントの場合は施設内の空調機を適正に温度管理すること、音響や照明などの過剰使用を見直すことが必要です。

イベント運営上でやむなく多く電力を使用しなければいけない際は、できる限り自然エネルギーを活用します(太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス 等、グリーン電力証書の購入など)。

5.リサイクル製品の推進

従来の使い捨てのカップ・食器・ストロー等の使用をできる限り控え、リユース製品の導入を検討しましょう。

また、毎年開催されるイベントの場合は、デザインに年号を入れないなど循環活用できる工夫で廃棄を回避できます。サステナブルを掲げたイベントであれば、会場装飾にリサイクル資源を使用することは、来場者や他企業にも印象づけることが可能になります。

​​イベントの主催者と参加者が協力し、3R活動(Reduceリデュース・Reuseリユース・Recycleリサイクル)に取り組み、ゴミを限りなく減らし、焼却や埋立処分による環境への悪い影響を極力減らすことで、地球の資源を有効に繰り返し活用する循環型社会の実現に近づくことができます。

サステナブルなイベントを支援する企業例

経験の少ない主催者だけでは、サステナブルなイベントが達成困難な場合もあります。そこで、取り組みを成功させるために、イベント業界や環境事業を行う他社のノウハウを積極的に活用しましょう。

株式会社テックシンカー:CO2排出量可視化ツール

株式会社テックシンカーが提供するこのツールでは、会議・イベント開催時のCO2排出量を可視化することが可能になります。開場前の受付開始時点から会議・イベントの閉会(開催終了)に至るまで、各段階において排出量を算出します。

企業に対して、透明性のあるCO2排出量算定/カーボンオフセット・プラットフォームを提供し、環境に配慮した取り組みヒントも紹介しているので、イベント開催時におけるCO2削減に向けてぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

株式会社TOW:サステなイベントガイドライン

株式会社テー・オー・ダブリューは、「新しい時代の体験を創る」実現に向け、環境に配慮された持続可能なイベント実施を支援する「サステなイベントガイドライン」の提供を開始しました。

画像元:サステなイベントガイドライン|TOW Co.Ltd

多くのモノや人が移動し、エネルギー資源が大量消費される企業・自治体・団体が主催するイベント。

実施過程における環境負荷を点検し、会場選定/移動・運搬/施工・装飾/運営・調達/ケータリング/廃棄・処理のフェーズ毎に、最適な環境負荷を低減できるアクションが起こせる「サステなイベントガイドライン」を策定しました。

イベント規模・目的・環境配慮要請とのバランスに重点をおきながら、このガイドラインを参考に取り組んでみましょう。

株式会社博展:ゼロ・エミッション型イベントの実現

展示会・イベントの企画を主に行う株式会社博展は、​​「ゼロ・エミッション型のイベントの実現」を目指す中、2022年10月に、モデルケースを示すためにカーボンニュートラル実現型の全社キックオフイベントを社内開催しました。

・環境に配慮したイベント会場選び
使い捨てカトラリーの削減として、陶器のお皿やシルバーのカトラリーを使用
・フードロス対策に、適正量を発注
・リサイクル向上のための徹底したゴミ分別と、種別ごとの排出量を計測
・イベント開催後のCO2排出測定
・カーボン・オフセットの実施
・社員の意識変容のための社内コミュニケーション

この社内イベントでの取り組みを皮切りに、ゼロ・エミッション型のイベントのモデルケースをつくり、顧客へのサービス開発や企画提供を図っています。

環境配慮型イベント事例

最後に、イベント視点とサステナビリティ視点において開催されたイベントの具体例をみていきましょう。

RISING SUN ROCK FESTIVAL(北海道)

日本各地で開催される野外音楽フェスティバルは、積極的にサステナブルなイベント実施に取り組んでいます。

このRISING SUN ROCK FESTIVAL(ライジングサンロックフェスティバル)では、「50年後も野外で気持ちよく音楽を聞いていたい」というビジョンをもとに、持続可能な環境社会に向けた取り組みであるEarthCare(アースケア)を行っています。

2000年より開始したゴミの13分別や、環境に配慮した代替品を導入するなど、出店者の協力を得てプラスチック削減に向けた取り組みを実施。

さらに北海道の雄大な自然ならではの、会場で発生した生ごみから堆肥を作り、オーガニックファームでじゃがいもを育て、翌年「おかえりじゃがいも」として来場者に届ける取り組みもありました。2018年からは種植えや収穫に来場者を巻き込み、より参加型で実施していました。

ロハスフェスタ(全国各地)

ロハスフェスタは、2006年より大阪府の万博公園からスタートし、「健康とサステナブルな社会に配慮したライフスタイル」を目指す環境イベント。来場者は全国年間30万人を超えます。

イベント開催において、CO2削減のために、使用する燃料は会場で回収した使用済み天ぷら油を精製して使用し、エネルギー消費を抑えるために、会場内の電気のほとんどをバイオディーゼル発電機で作っています

さらにごみの量を減らすために、原則マイ食器・マイカトラリー・マイボトル・マイバッグの持参を呼びかけていて、忘れた場合にはリユース(有料)の購入ができるようにして、使い捨て消費を防いでいます。

 

環境に配慮したイベントの形はさまざまで、取り組むべきテーマや領域は1つではありません。世界の風潮や事例、専門企業とのパートナー協力、ツールを有効活用し、持続可能かつ環境に配慮したイベントを成功させましょう。

〈参考資料〉
地球環境の保全に貢献する社|国土交通省
リユース食器を使ったエコイベント実践マニュアル|環境省
​​会議・イベント開催時のCO2排出量可視化ツール | 株式会社テックシンカー
サステなイベントガイドライン | TOW Co.,Ltd. – 株式会社 テー・オー・ダブリュー
SUSTAINABILITY | 株式会社博展 HAKUTEN | Communication Design®
博展、カーボンニュートラルな全社キックオフイベントを実施 | 株式会社博展
アースケア|RISING SUN ROCK FESTIVAL
ロハスフェスタ SDGsの取り組み – ロハスフェスタ – Lohas Festa

(ライター:井尻 水晶)

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