コラムCO2削減エシカル消費

サステナブルファッションとは?学生の取り組み事例

2023.10.20

 

はじめに

持続可能な未来をつくる上で、「ファッション」もひとつの大きなキーワードとなります。
生活と密接に関わるファッションは、これまでもこれからも、必要不可欠となるものです。

この記事では、「サステナブルファッションとは何か」「ファッション産業が環境に与える負荷」「学生の取り組み事例」「いますぐにできる実践」について紹介します。

サステナブルファッションとは?

現在、ファッション産業では環境へ及ぼす影響が懸念されています。
ここでは、持続可能な未来へ向けた「サステナブルファッション」の定義や取り組み、「エシカルファッション」との関連性について解説します。

ファッション産業におけるサステナブルとは

「サステナブルファッション」とは、衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことを言います。

現在、ファッション業界では衣服の大量生産・消費・廃棄による環境に及ぼす影響が懸念されているのです。それぞれのファッションブランドが、独自の技術やアイディアで生産からリサイクルまでのサステナブルな取り組みを展開しています。

エシカルファッションとの関連性

「エシカルファッション」とは、「環境を破壊しない」「労働者から搾取しない」といったエシカル消費の考え方に配慮して生産されたファッションの総称です。

2004年、世界100か国以上から6,000以上の企業、団体、個人により、エシカルファッションの推進団体「エシカルファッションフォーラム」が設立されました。

そこで定められた「エシカルファッションの10の基準」は以下の通りです。

・安価で使い捨て型の「ファストファッション」に反対する
・生産する労働者の賃金・権利・労働環境を守っている
・持続可能な生活を支える
・有毒農薬や化学物質の使用問題に取り組んでいる
・環境にやさしい素材を使用、または開発している
・水の使用を最小限にしている
・リサイクル、エネルギーやゴミ問題への取り組みをしている
・ファッションの持続可能性を開発・促進している
・取り組みを報告し、解決策を広めようとしている
・動物の権利を守っている

サステナブルファッションの「生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組み」と重なる部分が多く、密接な関係性があるといえます。

【参考資料】
「世界のエシカルブランドと中国におけるエシカル動向に関する考察」ー国立研究開発法人科学技術振興機構
「エシカルファッションとは? 10の基準と上手に取り入れる7つの方法」ー千葉商科大学

ファッション産業が環境に与える負荷

ファッション産業はライフサイクルが短く、大量消費・大量廃棄の流れを引き起こす、環境負荷が極めて大きい産業です。

衣服の国内における供給数は増加する一方で、一枚あたりの価格が安くなっています。より多くの服を生み出し消費される流れが懸念され、国際的な課題と指摘されています。

衣服を作る段階でCO2が排出される

服1着を作る際に排出されるCO2の量は、約25.5kg(ペットボトル500ml約255本製造分)とされています。原材料調達・合成繊維を作る際の石油資源の使用・輸送時などに多くのCO2が排出されるのです。1人あたり(年間平均)が購入する衣服の枚数は18枚なので、毎年膨大な量のCO2が排出されている計算になります。

人間活動で排出される炭素の10%が衣服生産段階の排出であることから、大量生産の流れがあるファッション業界は、環境に大きな影響を及ぼします。

衣服の大量廃棄でCO2排出が懸念される

服がごみとして出された場合、再資源化される割合は5%ほどで、ほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分されます。その量は年間で約48万トンに及びます。この数値を換算すると、大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしていることになるのです。

西アフリカ・ガーナのある市場には、世界中から寄せられた古着が集まります。しかし、ファストファッションから流れてきた古着の多くは品質が低く、再利用ができないため3分の1は廃棄されてしまいます。この市場はファストファッションのライフサイクルの最終地点として、環境面や公衆衛生面で大きな負担がかかっているのが現状です。

【参考資料】
「ガーナにある「ファストファッションの終着駅」…運ばれた古着の3分の1は埋立地行き」ーBUISINESS INSIDER

サステナブルファッションに関連する学生の取り組み

ファッション業界が抱える、環境に対する大きな課題はどのように解決していけるのでしょうか。

ここでは、サステナブルファッションに関連する中高生の取り組みを紹介します。
生徒が主体となる学校内外での取り組みです。

「服活」ー徳島県立那賀高等学校の事例

徳島県立那賀高等学校では、平成29年度にエシカルクラブを設置し、家庭で不要となった衣服を回収し、必要としている人に提供することで再利用を図る「服活」を中心 に、エシカル消費に関する取り組みを行っています。

校内や近隣の保育所や小中学に回収ボックスを設置し、回収した衣服をイベントに出品したり、開発途上国に対して衣服と共にポリオワクチンを届ける「古着 deワクチン」に寄付したりしています。

「服活」は不要となった服が再活用され、ゴミの削減やCO2削減に繋がる活動といえるでしょう。

【参考資料】
『服に新たな命を吹き込む「服活」大作戦!』ー消費庁

「H.O.P.E」ー東京都立国際高校の事例

画像元:『ネクタイを再活用 女子高校生グループ「H.O.P.E」が広める「エシカルファッション」』ー朝日新聞

 

東京都立国際高校では、2018年に3年生の生徒4名が「Help Open people’s Eyes」の頭文字を取って名付けた「H.O.P.E」というグループを立ち上げました。

活動を始めたきっかけは、「SAGE JAPAN」(Student for Advancement of the Global Entrepreneurship)という大会に出場するためでした。「SAGE JAPAN」とは、高校生と大学生がタッグを組み、社会問題を解決するための社会貢献事業を考案するというものです。

「H.O.P.E」は衣服の廃棄量に目を向け、「廃棄されてしまっているネクタイ」を短く直し、オリジナルのマークをつけて、可愛らしいデザインに仕立て直しました。SNSでも発信し、学校の購買横で販売することが実現したのです。

販売したネクタイは即完売し、事業結果をレポートにまとめて提出したところ、大会で優秀賞を獲得しました。ネクタイのリメイク販売をすることで、衣服の廃棄量削減とともに校内の生徒に対するサステナブルファッションへの意識向上が図れた実践だといえるでしょう。

【参考資料】
『ネクタイを再活用 女子高校生グループ「H.O.P.E」が広める「エシカルファッション」』ー朝日新聞「SAGE JAPAN」

やさしいせいふくー都内の中高生の事例

東京都の中高生が中心となって取り組んでいる「やさしいせいふく」プロジェクトは2020年に始動しました。

「自然にやさしい」「人にやさしい」「世界にやさしい」の三つを理念に、「ありがとうと笑顔が生まれる服作りを世界中に浸透させることを最大の目的としたプロジェクト」として活動しています。

地球環境に対して多くの影響を与えながら作られている衣服が出回るなか、「やさしいせいふく」では生産工程がきちんと管理されていることを証明する「国際認証」を受けた綿を使用して作られているのです。

現在、催事への出店や学校団体向けのイベントTシャツとしてネット販売を行いながら、活動しています。化学農薬・肥料を使用しない有機農業の土壌で育てられた綿で衣服を作ることで、環境への負荷が軽減されています。

【参考資料】
『【ファッションとサステイナビリティー】都内の中高生による「やさしいせいふく」プロジェクトのメンバーに聞く』ー繊研新聞社
やさしいせいふく

私たちがすぐにでもできる実践

画像元:「サステナブルファッションこれからのファッションを持続可能に」ー環境省

 

サステナブルファッションに向けた消費者の取り組みの第一歩は、簡単で身近な行動から踏み出せます。すぐに始められるサステナブルファッションですが、自分の個性を出しながら習慣化すれば、新しくクールな自己表現にもつながるのではないでしょうか。

ここでは、日常生活のなかですぐに実践できる実践を紹介します。

今持っている服を大切に着る

みなさんが所有している服一着を、できるだけ長く着ましょう。

たったそれだけで環境負荷が減らせるのです。現在よりも1年長く着ることで、日本全体として4万t(大型トラック4,000台分)以上の廃棄量の削減に繋がります。

古くなって捨てるか迷う服でも、最新のトレンドを取り入れてお直ししたり、リペアしたりすれば、捨てずに長く着られます。少しの工夫で違う印象になるので、新しい服を買わずに済むほか、自分のスタイルを表現できる手段にもなるでしょう。

また、日々のお手入れや洗濯の仕方も重要です。素材に適した方法を心がけることで、傷みにくく長持ちします。

リユース・リサイクルで再活用する

手放した服がリユース・リサイクルを通じて再活用される割合の合計は約34%で、年々その割合は高まっています。

服一着がゴミとして廃棄・焼却されなければ、約0.5kg のCO2が削減されます。リサイクルショップなどの買取店、行政・団体等のバザーやネット上のフリーマーケットやネットオークションなどを活用し、廃棄する前に「まだ使えないか」と踏みとどまることが大切です。

また、不要になった服を売るだけでなく、古着を購入することもサスティナブルファッションのアクションのひとつです。服の廃棄を減らしてライフサイクルを長くすることに貢献し、CO2削減に繋がります。

選び方を吟味する

服を選ぶ際、「3年後にその服を着ている自分をイメージできるか」を考えてみましょう。
3年間着ても傷まないようなしっかりとした縫製や生地になっているか、トレンドに左右されないデザインか、というのもひとつの判断基準です。

また、使用している素材に着目し、環境に配慮した再生素材やオーガニック素材であるかどうかも大切です。服を手放す時のことを考え、回収サービスを提供しているメーカーから購入するのもいいですね。

【参考資料】
「サステナブルファッションこれからのファッションを持続可能に」ー環境省
「サステナブルファッション習慣のすすめ」ー消費庁

おわりに

持続可能な未来をつくる上で、ファッションは切っても切り離せない関係です。生活と密接に関わるファッションと、今後どのように向き合っていくかが重要になります。

今回は、ファッション産業が抱える環境に対する課題を踏まえ、学生の取り組み事例や、いますぐにできる実践を紹介しました。

この記事を参考に、「サステナブルファッション」について、日常生活や学校生活で活かせることを考えてみてはいかがでしょう。

(ライター:上野 ちか)


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